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TruCalling VirtualSeason3
(トゥルー・コーリング バーチャルシーズン3)

3x03 Benediction:祈り
作者: Kitty
作者補助: Sami 
校正:Phisho, King of Lost Faces
翻訳:Mhorie

早朝の光の中、神父は地面に開いた穴の前に立ち参列者に向かって話をしています。
日の光は木々の間を通って差し込み、近くでは小鳥が鳴いています。
雰囲気が暗く陰気ではなかったなら、素晴らしい日だったのでしょうが…。
家族と喪服を着た友人達は敬意を払い静かにじっとしています。
一つの棺が地面に開いた穴の近くに横たわり土に帰るのを待っています。
「なんと重大な日であることでしょう」
神父はこのような深刻なムードと戦おうとするように澄んだ声で言います。
「モニカは、天気がどうであれ、またどのような状況であれ、言うであろうことです。
 我々は大いに彼女を失った事を悲しく思うけれども、
 我々はモニカが天国で素晴らしい日を送ることを知って慰められ得ます。」
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「ちょっと待ってくれないか?」
デイビスはトゥルーが自分を急いで通り越し死体安置所に入ると言いました。
「聞きたくない、デイビス」とデイビスの方を見向きもせずに不快そうに言います。
「あたしはあなたが何を考えてるか分かってる、そして言い訳も聞いた」
トゥルーがここにいる理由の一つは死体安置所の中にある遺体のためです。
遺体は不自然な死以外のなにものでもなく明らかに攻撃による特徴のある年配の男性です。
トゥルーは遺体の精気のない顔をのぞき込むと少し眉をひそめました。
彼女が何を待っているかは明白です。
もし巻き戻しが起きないのなら彼女はここにいる必要はありません。
「トゥルー、俺はすまないと思っている」とデイビスは遺体をじっと見下ろすトゥルーの隣に立って言いました。
「すまない?よしてよ」とトゥルーは静かな怒り調子できつく言います。
「単に飲み物をこぼした時とは訳が違う。これは…その…」
「その事は間違っていた、反省している」とデイビスはまだ弁解しています。
「申し訳ない…」
トゥルーの顔は一瞬柔和になり彼を許そうとしているかのように見えました。
「でも、もう遅いんだ。キャリーはもう知ってる、それは変えることはできない。
 もし君が俺を信頼してくれるなら彼女は俺達の助けになる…」
「その事はもう忘れよ、デイビス。あなたを信頼してるよ」
トゥルーのしかめ面はデイビスと断絶する前よりもっと元気が戻っていました。
彼女はまだ手ごたえのない遺体に注意を戻しました。
「彼は求めてこないわ、あたしは必要なしね…」
「トゥルー、仕事についてはどうする…」
「あなたがあたしを裏切ったとき言ったはずよ」とトゥルーは目を細めて言います。
「あたしは気分の悪い思いをしたの、神様だってあたしが一度も休みをとったことがないのを知ってる。
 だから遺体が望まないならここにいる理由がないわ」
「トゥルー、君に考える時間が必要なのはわかるが、君は…」
トゥルーはデイビスが次の言葉を出す前にドアから外の方に目をきょろきょろさせてデイビスを無視しました。
デイビスはトゥルーが行ってしまうのを見ながら頭を振って、後方の遺体に向かって歩き何かつぶやいていました。
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神父は聖書を胸に抱え、生まれたての赤ん坊のような表情で参列者を見渡します。
何人かの参列者は失った悲しみに嘆き、他の人達も一生懸命耐え厳粛に静かに立っていました。
「真に、あなたがたに告げます、小麦の粒が地上に落ちたままならば、それはただ一粒の小麦のままです、
 しかしもしそれが芽を出したならばそれはたくさんの小麦を実らせるでしょう」
神父は集まった参列者の反応に注意をするために一瞬止めました。
そしてそのことは確認せずに継続しました。
「自分の愛する者はいずれ失うでしょう。
 そしてこの世における人生を憎む者たちは永遠の命のためにそれを保持しようとするでしょう。
 仕える誰もが、神の恩恵に与るでしょう…」
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キャリーはコツコツとヒールを響かせながら歩いてきます。
キャリーが中に入ってきたときデイビスは遺体の準備を開始していました。
デイビスはキャリーの方に目を向けるとたった今トゥルーとの間に起こったことに
気が動転していることは明白でしたが笑顔をになりました。
「トゥルーはここにいないの?」
キャリーはトゥルーを捜し回って尋ねます。
「い、いや、彼女は、あー、彼女は…数日の休暇をとっているんだ」
デイビスはまだキャリーの援助にたいしてどのような態度を取るべきか自信がなくどもりました。
「まあ」とキャリーは驚きを装って言います。
「それはちょっと問題ね…どうしてかしら?」
「それは問題がない…つまり、その…」とデイビスが緊張し呪文のように続けます。
「それは俺が話したから、その…君に全てを」
キャリーはトゥルーに話したことを知って露骨ににっこり笑います。
彼女はデイビスに近づき、彼女のゲームの一部なのか本当の感情なのかは分からないが彼を抱きしめました。
デイビスは彼女の感触に震え完全に彼の心からトゥルーを押し出したように思われました。
「心配しないで」とキャリーは野球に負けた子供を慰めるかのように言いました。
「彼女は機嫌を直すわ。私が約束する」
デイビスはそれを信じるかどうか確かではないがゆっくりとうなずきます。
「ああ・・・」
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棺が地面の中に下げられ、最初の土がその上にかけれられると神父は大きく開いている穴の中を凝視します。
参列者の嘆く声がひと際上がり耐え忍んでいた者達もこの時には皆嘆き悲しみました。
「全能の神、我々は確かにあなたの娘のモニカをあなたの元へと委ね、
 復活の確かな希望の中に永遠の安らぎを主イエスの御名において、この肉体をこの場所に委ねます。
 大地は大地へ、灰は灰へ、塵は塵へ。
 亡き魂に主のご加護があらん事を。
 こう主は言います、彼らはそれらの行為が彼らの後に従うためにそれらの仕事を休むでしょう。
 おお、我々はそれらに対してあなたに感謝します、我々は愛していますしかしもう会う事はできません。
 あなたの腕の中にあなたの使用人、モニカを迎え入れます、
 そしてあなたの知識と愛でその増加することを与えてください。
 彼女は、あなたの天の王国で、礼拝における強さから強さまで行くかもしれません。
 我々の主イエス・キリストの御名において。アーメン」
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参列者が今日通夜のために最後にレセプション会場に集まると神父は静かにそこを横切りました。
小さな部屋の中に多くの人々が集まっています。
大部分が参加者と後に残された家族と花が置かれたテーブルで占められていました。
彼は目的場所に行くまでの間時々立ち止まっては励ましの言葉をかけたり哀悼の意を表しました。
彼は誰の目にもつかない部屋に入ると一人の少年が座っていました。
そして小さな腕に頭に沈めていました。
「何しにきたの?」
少年は神父が目の前に立っているとわかると不快そうに尋ねました。
少年は頭を起こし神父に顔を見せる前に涙をぬぐい去りましたが少年の頬の上には痕が残っていました。
「よく分かりますよ」と神父が応えます。
神父は少年に近寄って優しく少年の肩に手を置きました。
かすかな笑みが少年の顔に浮かび上がりました、現時点の状況で少年が微笑していることは驚くべき事でした。
「どうしたのですか、チャンス?さあ、なんでも私に話してごらん」
「…ブーン神父」
チャンスが不快を露にした目を大きく開いて神父を見上げて言います。
「静かに…大丈夫だから」とブーン神父は後ろ手にドアを閉じて言います。
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トゥルーはふんわりとしたポップコーンでいっぱいの大きなボールを運んで寝室の中に入ると長い安堵のため息を漏らします。
混乱した死体安置所から解き放たれ、この新たに発見された自由に彼女の足取りに弾みがあります。
ジェンセンはベッドから彼女を見上げて隣りに座るのを見ると微笑しました。
「それじゃあ、準備はいいかい?」
彼は機嫌よく尋ねると彼女は二人の間にポップコーンのボールを置き座りました。
「いいわよ」彼女はえくぼを浮かべニコニコと笑い返事しました。
彼はクスクス笑ってテレビのスイッチを入れるとすぐに古いホラー映画が再生されました。
トゥルーはスクロールする映画製作者リストには関心を払わないで、時々彼をちらっと見ながらテレビと両方を見ます。
「君に休みをくれるなんて本当にデイビスは本当にいい人だなあ」とジェンセンはテレビを見つめながら言いました。
「彼がくれたんじゃないの…あたしが勝手に休みにしたの」
 トゥルーは上司との間に起きたことに触れることを望まない様子で言いました。
「でも、僕は君が休みをとったことがうれしいよ」とジェンセンはトゥルーにキスをして微笑みました。
「あたしも」と彼女がつぶやきます。
トゥルーはあごを上げ優しく彼にキスします。
ジェンセンの目はトゥルーの方を見るとまたテレビに視線を移しました。
トゥルーは少し眉をひそめますがひと握りのポップコーンを掴んで離れ何も言いませんでした。
彼女はポップコーンを食べながらもう一度ジェンセンに向けますが彼はテレビに焦点を合わせます。
テレビには女性が助けを求めて通りを走っているシーンが流れています。
そしてトゥルーはその光景に思わずくすくすと笑い出しました。
ジェンセンは再びクスクス笑って彼女に腕をまわしました。
「今時の女性はヒールで暗くて怖い路地裏なんか走らないって知ってる?」
トゥルーはポップコーンの残りを口の中に放り込んで言います。
「まあ、正直彼女らは頭が良いとは思えないけど」とジェンセンはトゥルーを近くに引き寄せて言います。
「少数の女性達だっていうのは分かってる」
「あなたはあたしが頭が良いと思う?」
トゥルーは彼の台詞の陳腐さに面白がって微笑みます。
ジェンセンは何かを言おうとしましたが彼の注意は再び後方のテレビに変わります。
女性が画面上で殺されるシーンを彼は静かに見つめています。
トゥルーは彼を見つめた後、当惑して多少テレビに嫉妬しているように見えます。
ジェンセンはトゥルーをもう少し強く抱きしめます。
トゥルーはジェンセンにもっとぎゅっと抱きしめて欲しいと期待して微笑みます。
彼女は彼にキスするために身を預けますが彼はほんの少しだけ彼女の肩をぎゅっと抱きしめました。
「ジェンセン?」
トゥルーは少しもじもじしはじめて当惑で尋ねました。
ジェンセンは手をより強く握るだけで返事をせず静かにテレビを見続けています。
「ジェンセン?」
今度はもう少し大きな声で再び言います。
「うーん?何…ごめん」彼はちょうどシーンが変るのと同時に目をテレビから離して言いました。
「あの、ちょっといい?」
それが彼女に切っ掛けを与えるかのように彼の顔をのぞき込んで尋ねます。
「いいよ」と彼は小さくうなずき微笑んで言います。
「この映画って、あたしが子供の頃パパが見せてくれたのを覚えてる…」
彼はテレビに背中を向け、その目は何かを思い出しているようでした。
多分彼の子供時代か殺された人物なのか、
トゥルーは彼を見ましたがどちらなのか分かるはずがありません。
「なんで聞いたの?」
「ええと…、あたしはただ…」
トゥルーが答えようとしたとき電話の音に遮られました。
トゥルーはジェンセンを振り返りましたが彼は微笑みながら肩をすくめます。
彼女も少し微笑んで電話を取りに行きました。
「もしもし」
こもった声が話しだすと彼女はちょっと待って髪をかきあげます、明らかに話したくない相手からの電話でした。
「分かった、行くよ」
彼女はジェンセンに振り返ると彼は心配顔をしていました。
「死体安置所から、あたしが必要なんだって」
「君は今晩休みをとったんじゃないのかい?さっきそう言ったと思ったんだけど」彼は立ち上がって言います。
「そうなんだけど、でも…」彼女は肩をすくめ「とにかく行って来るわ、すぐに戻ってくるからいいでしょ?」
「しょうがないよ、僕としては引き止めておきたいけど…忙しいんだろ」と彼はテレビに振り返りながら言いました。
テレビの場面はちょうどもう1つ別の殺人が起きていました。
トゥルーはほんの少しの間彼を見て頬に軽くキスしました。
彼女はテレビに夢中になっている彼の背中をもう一度見てから部屋を出て行きました。
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「今回は何なの、デイビス?」
トゥルーは遺体の検死を行うスタンダードルームに向かって歩きながら尋ねます。
「一人の男性で…四十代後半から五十代前半…」とデイビスはトゥルーの目を直接見ないように言います。
デイビスはトゥルーともっと十分に話し合うことを望んでいますが、今はその時期ではないとあえてしませんでした。
「心臓に一撃だ、犠牲者は通夜の会場で発見された。彼は…」
「神父さん?」
トゥルーは遺体をじっと見て驚いて言います。
ブーン神父は検死テーブルの上に横たわり、テーブルの上には彼の個人データが置いてありました。
トゥルーは興味深く遺体をじっと見下ろしています。
「誰が、なぜ神父を殺すの?」
トゥルーは混乱して尋ねます。
「そ…それは、新聞で彼のことについて読んだよ。
 俺は君が何も知らなかったことに驚いたよ」とデイビスはいつものようにどもって言います。
「それってどういうこと?」
トゥルーは神父からデイビスに目を戻して尋ねました。
確かに神父がそれほどひどい事をしたとは思えません。
デイビスは何も言わないでテーブルの上に手を伸ばして、トゥルーに広げたシワだらけの新聞を手渡します。
彼女が『訴えられた神父』という見出しを読んだとき彼女の口はショックで開きました。
彼女は読み続けて次にデイビスを振り返ります。
「彼が…子供に性的虐待…?」
「訴えられたんだよ」とデイビスは彼女の手の新聞を指して言います。
彼女が何か言おうとしたとき神父はトゥルーに頭を向けました。
「お願いだ…」と彼が言うと一日が巻き戻りました。
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トゥルーは横に転がり目を覚ましました。
後ろにカバーをけって彼女は眉をひそめます。
「今回は調査が難しいわ」
トゥルーはベッドから出てドレッサーに歩き、黒いタンクトップを出し胸にそれを抱えます。
彼女は小さなコンパクトなミラーを見ると険しい顔つきのままでした。
「今までの犠牲者も誰も何も言わなかったか」
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カラフルなオフィスでマリオン・アダムスは陰気なビジネススーツで場違いに見えます。
彼女はテディベアの形をした大きい名札をつけています。
彼女の手には子供っぽい絵が描かれたページが開かれた工作用紙のノートブックを持っていました。
マリオンはそれをホーリーに返すと眉をひそめます。
同じ形のピンク色をした名札は彼女のボヘミアン風のドレスに合います。
「私はチャンスがどこで性的虐待に言及したのか見損ねたわ。
 そのセクションは離婚の審議中で彼の感情でいっぱいだったわ」
マリオンはため息をつくとホーリーは2ページ前にひっくり返えしたとき腕時計を見ました。
ホーリーは子供たちに絵を見せている幼稚園の先生のように本を上げ、指をページの中央あたりに指し示しました。
マリオンがそれを読むと目を丸くしました。
「彼は本当にブーンを憎んでたのね。これはいいわ。非常にいい」
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トゥルーは口にピンク色のドーナツを銜えたまま新聞販売機から新聞を抜こうと格闘していました。
やっとのことで新聞を抜き出すことに成功しますが、彼女は新聞をわきの下に挟むとしわが寄っていました。
トゥルーは自分の手を見て、そして販売機が油のシミで覆われているのを見ました。
彼女は向きを変えてカフェの外のテーブルに座ります。
新聞を下に置いた後、彼女はバッグからティッシュを取り出し手についた油を拭こうとしました。
するとジャックが微笑みながら彼女の真向かいに座りました。
「いや、そのまま続けて。ドーナツを銜えたまま。君は静かにしていればとっても良い客なのになあ」
トゥルーの目は細くなります、そして彼女はもう1枚ティッシュを取り出しドーナツを持つために使います。
「その上、君にそのピンクが似合ってる」
ジャックは続けます。
「古い決まり文句の、よい若死は今日覆されたよ。
 このブーンは死ぬべき理由のある教科書的な見本だ。少しも救う価値はない」
「救うのがあたしの仕事…決め付けないで」
「そう、それじゃあこの子供たちは救うに値しないって言うのかい?」
「それとこれは違う」
ジャックは話を中断し前に乗り出し彼女の手をつかみました。
「彼は死んだままだ、そして君は手をだしちゃいけない」
トゥルーはジャックの手を振りほどき目を合わせませんでした。
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ハリソンが歩いてくるとトゥルーはベンチに座って新聞を読んでいました。
「それはデイビス?それともジャックかい?」と彼は隣に座って尋ねます。
「待って、待って、俺のスパイダーセンスは両方だと言ってる」
「うん、でも一番近いのはジャック」
トゥルーはひと呼吸おきます。
「スパイダーセンスって?あなたはデイビスと一緒にその映画を見るべきじゃなかったわ」
「オーケー、じゃあ俺の『ギャンブラー的感』では例の日だといっている」
「もしあなただけがトラックでその運ならよかったのに」
トゥルーは、彼女の指をパチンと鳴らして言います。
「ここに犠牲者が載ってる」
彼女は折られた新聞を手渡し見出しを見せます。
『もう1つのスキャンダルがボルティモア司教区を動揺させる』
「ジャックを振りはらうためにバス停を二つ通過してから逆戻りしたわ。
 まるで『マルタの鷹(訳者注:映画の題名)』みたいだった」
「これは間違ってるよ」ハリソンは当惑顔で眉間にしわ寄せてつぶやきました。
「何で?」トゥルーは彼に顔を向けて尋ねます。
「俺はこの男を知ってる。彼は子供に性的な虐待はしない。
 それより子供の母親に色目を使っててそれどこじゃないよ」
「もう一回?」眉根にしわを寄せ尋ねました。
「俺は同業の女探偵を見ればすぐ分かる。
 ゲイダー(訳者注:ゲイを見分ける人)のようにね。目を見りゃわかる。
 彼は必死な主婦に聖職者として活動をしていた。
 子供に性的虐待をするような好色家じゃあない」ハリソンは彼女に説明しました。
「好色家ってなによ?」
「親父が俺のためにその日の言葉が書かれた日めくりカレンダーをくれたんだ」ハリソンは肩をすくめます。
「それならなんで子供は嘘をついたの?」
「子供たちがそんなこと言ったのか?」
ハリソンはトゥルーのうんざりした顔を見て一呼吸おきました。
「俺が知ってる訳ないだろ?俺がガキの頃は嘘をつきまくった、今でも変わらない。
 俺はこの人気がある日曜学校の教師と一緒にカトリックのカードをしようとしていたとき彼に会ったんだ。
 4週間もの毎日彼女を待つのに俺は彼とぶらついていたんだ」
彼はため息をつきました。
「リンジーだよ、俺たちは付き合ってるんだ」
トゥルーは目をそらしました。
「あっ、俺のこと信じてないな、まあいいや。で彼を救うつもりなんだろ?」
彼は前かがみになって顔をしかめて真剣にトゥルーを見ました。
「もちろん」彼女の視線はハリソンから足元の地面へ滑り落ち信念を持って言います。
「ジャックの言うことに耳をかすなよ。
 姉さんは悪人を救う事になるなんて思っちゃいないだろ?もし姉さんがそうしたとしても?
 姉さんは神じゃない。姉さんは神の支配する新しい試験官で若い女性なんだ。もしそうなら」
ハリソンは姉を元気づけるために一生懸命言います。
彼女は笑います、そして本当の微笑みが彼女の顔を飾ります。
彼女は目の上に手を当ててベンチに持たれかけリラックスします。
「それは難しい問題ね。そのことは忘れる」
ハリソンは鼻で笑って頭をかがめました。
「デイビスに話した?」
彼は鋭い顔つきをして尋ねます。
「いいえ」
「そうだろうと思った」
トゥルーは立ち上がり目をきょろきょろさせて新聞をつかみます。
彼女は目を細めて返事をしました。
「いいのよ」
それから彼女は向きを変え歩き去って行きます。
ハリソンは彼女の後姿に「人間は誰でも過ちをするんだ」と叫びました。
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デイビスが死体安置所のオフィスで椅子に座っていると、キャリーが入って来たので彼の手がとまりました。
彼は彼女を見上げて口を大きくあけて微笑みます。
そして彼の心配事は彼女の出現によって吹き飛んでしまったようでした。
彼女はいつもトゥルーが座っている椅子に座りました。
「私のクライアントがキャンセルしたの、それで考えたんだけど…」
彼女は少し肩をすくめ、
「その代わりにここに来たのよ…」
「おお、それは」
彼は少しそわそわして、何を言うべきか考えようとネクタイを直しました。
「トゥルーはどこ?」
キャリーはあたりを見回しトゥルーを捜し回り、いないと分かると驚くべき行動をとりました。
「彼女は、あー彼女は…」トゥルーの不在を説明しようと思いデイビスはつぶやきました。
彼は巻き戻った内容を知らないため、この同じ会話がすでに行なわれたことは知らないけれども、
それのことについてまだ用心しています。
彼はまだトゥルーとの話し合いの過程でキャリーを諦めず仲間にできると信じています。
「ハリソンが…つまり、あー」彼は早口に言います。
最終的には言葉を続けました。
「例の日…」
「まあ、本当に?」と興味津々という表情で言います。
彼女は満面に笑みを浮かべ、肘をデイビスの机に置き前へ乗り出しました。
「それで私達はどうしたらいいの?」
「うーん」と彼は少し下唇を噛み、キャリーに話す最もスマートな考えであるかどうか曖昧に言います。
「まあ…」
「続けて」と彼女は彼に明らかに不自然な笑みを浮かべ強く主張します。
「あなたが私に話してくれれば…多分手助けしてあげられるわ。
 トゥルーはたった一人、結局はね。仲間に私達がいれば彼女にとって有利になるとは思わない?」
「ああ…」と彼は心の中でこの考えを繰り返してつぶやきました。
キャリーは何も言わずに椅子に深く座り、彼女の顔には同じ微笑みを浮かべています。
明らかに彼女はこの事がどこに向かっているか知っています。
「まあ、いいだろう」とデイビスは知っていることをキャリーと共有するために前に乗り出して言います。
「俺はハリソンからの電話で…」
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トゥルーは歩きながら金属版に書かれた文字を読みました。
『アダムス・メイフェア。弁護士』片手にはカード、もう片手にはメモ用紙を持って。
「トゥルー、俺はドックまで行ったよ」とジャックは彼女が角を曲がると壁に寄りかかっていて言いました。
「君はどのバスで行ったんだい?」
「あんたが乗らなかった方よ」
彼は彼女を無視して続けます。
「素晴らしいカードだ。言わないで、当ててみせる。マスコミカードだろう?」彼は眉をひそめます。
「素晴らしい計画だ。『ニューヨーク・タイムズ』でさえでここの人間からは何も得られていない。
 これは俺の勝ちかな?」
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ハリソンは携帯電話で話をしながら低い黄色い家の前の縁石に乗りつけます。
「ええ、ナンバー3206?ありがとうデイビス、助かったよ。
 何、トゥルー?いや、姉さんは教会に行った。そう、アディオス」
彼が自動車から出るとため息をつきました。
彼の表情は強張っていましたがドアの前の『神の祝福がありますように』と書かれたマットの前に到着すると彼は微笑んでいました。
やり手の自然な雰囲気が彼を取り巻いています。
彼はチャージテーマソングでチャールズの曲を口ずさみながら手を上げドアをノックします。
ドアが開くと赤い髪をした気難しく見える中年の男が出てきました。
「こんにちは、ランパネリさん。ハリソンといいます、それで少し質問をさせてもらいたくて来たんですが」
ドアはハリソンの顔の前でバタンと閉まりました。
ハリソンはその反応に驚きました。
そして彼が去ろうと振り返ると歩道で小さな子供がアリの巣に虫眼鏡を当てて遊んでいるのを見ました。
ハリソンは少しの間子供を見下ろしてから子供の方に歩きました。
ハリソンは子供の隣に屈み込みましたが少年はハリソンの存在に冷静でした。
「それを使うんならもっと晴れた日じゃないとな」とハリソンは笑顔で見ながら言います。
子供はただ肩をすくめましたがハリソンは継続します。
「君はそこに住んでるのかい?」とハリソンは顔にドアを叩きつけた家に向かって尋ねます。
「うん…」
「君の名前は?」
「チャンス」少年はハリソンを見ずに答えました。
「じゃあ、ブーン神父って知っているかい?」
ハリソンはしゃがんだ姿勢になって尋ねます。
「なんなの?」とチャンスは急激に見上げて言います。
「僕はブーン神父さんは嫌いだ…」
「すごい恨みがこもってるな」とハリソンはいくらかを眉をひそめて言います。
「なんで彼を憎むの?」
チャンスは立ち上がり下顎を突き出て言います。
「お兄ちゃんは何で僕に聞くの?」
「おい、おい」とハリソンはチャンスの背の高さに合わせて腕を広げて言います。
「俺はまともだよ。安心して、いいね」
「僕のママに用があるの?」
チャンスはついにハリソンを見上げて尋ねます。
「えっ…君のママ?」
「そう…」チャンスはうなずいて言います。
「ママは死んじゃった、誰も前には気にかけなかったけど、今も皆がそうしてる。
 そして僕のパパはその事について話をしたくないって。
 一日中ドアを閉じて泣いてる、でもパパがあの人の事を話すとは思わない」
「それはブーン神父の話かい?」
ハリソンはわずかなしかめっ面をします。
小さい少年はハリソンを睨みつけます。
「僕はあの人を憎んでる!あの人について聞くのはやめてよ!パパは知らない人に何も話すなって言ったんだ」
ハリソンは何かを言おうとしましたが、家の方からドアの開く音と閉じる音が聞こえてきました。
ハリソンは眉をひそめてチャンスを見下ろし小さな声で「ママにすまない…」と歩いてその場を後にしました。
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トゥルーは店でいっぱいの混雑したプラザを曲がりオフィスビルの中に入りました。
太陽が彼女の目の前にあり目を細めました。
「トゥルー」とジェンセンは手にバッグを持って彼女に向かって来ながら言いました。
「君の名前を呼んだのに」
「ゴメン、一日中そこにいたから」
彼女は頭をジェスチャーで表現します。
「完全にぼんやりしてた」
「君は何を監視してるんだい?」
彼はビルに顔を向け尋ねます。
「そうだ、トゥルー、町で唯一スキャンダル記事のスクープを得た新聞で何をしようとしてるのかな?」
ジャックはにっこり笑ってリラックスしながら尋ねます。
彼はポケットから手を出してジェンセンの手を握って歓迎します。
「何?」
ジェンセンは頭を振る前に尋ねます。
ジェンセンは二人を奇妙な目で見て無関心さを装い、
「君とジャックは知り合いだって分かってるけど、君との関係をちゃんと聞いてない」と言いました。
「ジャック、帰ってくれない?」
トゥルーは目に怒りを込め声を荒げて言いました。
「トゥルー」
「いや問題ないジェンセン、俺は君らにコーヒー一杯ぐらいならおごってやれるよ、いやドーナツかな?」
「それはいい」
ジェンセンはトゥルーにとがめるような顔つきで言います。
トゥルーは深呼吸をして決してジャックから目を離さず彼らの後に続きました。
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ハリソンは運転しながらダッシュボードにキャンデーの包み紙とナプキンの間に置いてある携帯電話を手に取り、
怒った表情で電話を掛けています。
「もしもし」
デイビスの声は大きく音が割れていました。
「やあ、ハリソンだ。子供の父親の所に行くのは中止だ。
 姉さんが何したか知ってるかい?そのいぶかるような事をさ?
 ドアが開くなりいきなり鼻にドアを叩きつけられたからさ」
「まあ、彼女は我々にとってはフロードだ、我々はただのメリーとサムに過ぎない」とデイビスの声が伝えます。
彼の口調はトゥルーとの間に起きたことに狼狽しているのは明らかでしたが、
キャリーからの刺激で自信を取り戻すことができたようです。
ハリソンはハンドルを回しながら鼻を鳴らします。
「いや、それを言うなら、姉さんはシドニー・ブリストーで、あんたがマーシャル。俺がディクソンだ」
「マーシャルだって?いや、彼女はバフィーで、俺がジャイルズだろう」とデイビスは言います。
「あんたがジャイルズ?ホルムアルデヒトの匂いをでラリッてんじゃないの。
 ウィロー…成長する前のウェスリーだよ」
ハリソンは驚いた素振りで少しぞっとして困惑顔のようです。
「絶対この会話を誰にも話しちゃだめだぜ」
「わかった」
デイビスは面白がっているように聞こえます。
「で何が知りたいんだい?」
「ブーン神父の住所」
「チャーノック・ウッディウィンドゥ・アドミラル・アームズの # 412だ」
「サンキュー、ウィロー」
ハリソンは笑います。
「面白い。とにかくトゥルーはどこにいる?なぜ彼女がしてないんだ?」
ハリソンは眉をひそめてシワだらけの紙を拾い上げて電話の近くで片手でバリバリと音をたて、
ため息をついてそれを後部座席の洗濯物の上に投げ入れました。
彼は外に向かって「ジャック、バイ」と言いました。
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トゥルーがデジタル時計を見ていると携帯電話が鳴りました。
「もしもし?」と電話を取り上げ言います。
彼女のしかめっ面は顎を拳の上に乗せていた赤い痕で更に不機嫌な顔つきに見えます。
ジャックはジェンセンとコーヒーを飲みながら雑談し続けてトゥルーの送り続ける物凄い視線を無視しています。
「あたしは知らない、5時ごろ」彼女は男性たちにまだ用心深い視線を送りながら言います。
「今、目が離せない状態なの、ポーランドソートの侵略みたいに」
「ああ、トゥルーは少し魅力的な浮気っぽさを持っている女の子だ」とジャックはニヤッと笑いながら言います。
ジェンセンは声も出さずに口だけ動かし目だけがその話に驚いているように見えます。
「用事ができたから行くよ」
トゥルーは二人を無視してそっけなく言いました。
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「くそっ!」
ハリソンは側面に『アドミラル・アームズ』と書かれたボロボロになったベージュ色の団地の階段を上りながらうなります。
遠くには灰色の石造りの教会塔が見ることができます。
白い字で『412』と書かれた茶色のドアに着くとハリソンはノックしました。
ドアが開くとデイビッド・ブーンはセーターにスラックス姿で出てきました。
「こんにちは、ブーン神父、俺はハリソン。メラニーとの待ち合わせで日曜学校の教師とブラブラしていた」
ハリソンは高齢の男を目を細めて見ます。
「うわーっ、顔色がその神のネックレスと一緒で本当に青白いよ」
ブーンはため息をついて天を仰ぎます。
「やあ、ハリソン、忘れてはいないよ。どうしてここに?」
「さあ、わからない」ハリソンは肩をすくめます。
「噂か…気にしていない。中に入って座わらせてくれないか。しかし長時間は無理だよ。今晩、通夜があるんだ」
ブーン神父はハリソンを中に入れるようドアを広げながら言います。
「あなたは本当に抱きしめたくなるほどいい人ですね」
ハリソンは暗いアパートの中を歩きながら冷ややかな笑みを浮かべて言います。
「本当に」
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トゥルーは新聞のスクラップを読みながら静かな郊外の通りを歩いています。
「黄色い家、黄色い家」と彼女はつぶやきます。
「神父を守るんじゃないのか?」
ジャックは彼女のそばを歩きながら尋ねます。
「今あたしが本当に欲しいのはテイザー銃かトウガラシスプレーよ」
ジャックはトゥルーの前方に回り込み笑みを浮かべます。
「そうだ、そのことについて考えてみて欲しい。
 君が急速に失っている道徳的なご高尚は、もし君が暴力に訴えたならどこに行くのか?どうだい?」
ジャックがトゥルーの肩越しにジェンセンの自動車が曲がり角で停まったのを見ると笑みは大きくなりました。
「ルーシー(訳注:聖人の意)、君がどう釈明するのか聞きたい」
トゥルーはジェンセンの自動車を見ると顎を引きました。
ジャックが顎を引っかいている腕にある時計をトゥルーは振り返って見るともうすぐ五時になろうとしていました。
トラックが黄色の家の方向から彼らを超えてスピードを増しました。
トゥルーはジャックに悪態をついてジェンセンの自動車に走り出しました。
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ハリソンは首を掻きながら辺りを見回しながらグレーの格子柄の椅子に座ります。
デイビッド・ブーンは眉を上げ彼を見つめながら茶色のソファーに座ります。
部屋はきちんとしていますが装飾品は商売物のように思われます。
ハリソンの後ろにはグアダループ・バージンとキリストの絵が飾ってありました。
「その顔色を隠すのにいいファンデーションがあるよ」
「青白い顔色が私の一番の問題だ」とブーン神父は答えます。
「ちょっと聞きたいんだけど、あなたを殺そうとしているような人物に心当たりは?」
ブーンは目を閉じてため息をつきます。
「何のことかね?君は今までに自分に耳をかたむけますか?」
「ないけど、でも真剣な話、あなたは安全な場所にいないと?
 そうだ、アイスクリームを買いに行かないかい?トゥッティフルッティをさ?うまいんだぜ、皆好きなんだ、ホントだよ」
ハリソンは彼を見つめます。
「ソーダでもハンバーガーでもいいや…」
「何の話をしてるのだね?その子供はすでに教区をすべてだと思い込んでいる、
 彼らはほかに何を欲しがっているのか?それは全てモニのため、全てが悩みの種だ」
ブーン神父は眉をひそめて椅子から立ち上がりながら言います。
「俺はその事がそうじゃないって分かってる。あなたは好色家だけど女性と」ハリソンはにっこり笑います。
ハリソンは神父が顎をこすりながらゆっくりと歩のを見つめます。
神父が何かの考えに没頭していることは明白です。
彼の目はハリソンを見ています。
しかし彼の手は小さなドレッサーに伸び小さいアンティークな木製の箱に留まっています。
彼は数回その箱の上で指をコツコツと叩きそばを離れました。
ブーンは驚いているように見えます。
「好色家?それは凄い言葉だね」
「ああ、俺は語彙を持ってるんだ」とハリソンは口をとがらします。
「そして日めくりカレンダーの言葉だ」
「君は不可解な男だ。本当に謎だよ。
 しかしあと5分で誰かが押し入って私を撃とうとしているという多くの疑いを持っている」
ハリソンは青ざめて首をこすります。
「話の…」
突然ラ・バンバのようなうるさい大きな警報が鳴り響きだします。
「俺の車…」と彼は跳び上がって肩越しに叫びます。
「中に入ってドアに鍵を掛けて…」と彼は叫びながら開いた玄関を通ってトゥルーのわきを通り過ぎます。
「俺の車…ナンバー412。なんてこった、俺の車…保険に入ってないんだぜ…」
ハリソンは階段を急いで下りると赤毛の男のわきで喚きました。
トラックはハリソンの車のわきに不自然な状態で停まっていて左のテールライトはきれいになくなっていました。
ハリソンはトラックまで走り蹴りを入れながら叫びました。
「どうすんだよ…まだ修理代も払ってないってのに…この野郎…」
ラ・バンバのような音が響き渡る中、銃声がしました。
ハリソンは振り返ってトゥルーを見ると彼女は手すりのところにかがみ込んで手で顔を覆っていました。
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ハリソンは自分の玄間の方向へ、トゥルーは家の中へと身を護るために急いで隠れました。
しかしトゥルーはハリソンと彼の車が大丈夫かと確認するのと同じぐらい銃声がどこからしたのか探りを入れます。
彼女が中に入ったとき口に手を当てました。
「お前等、そこを動くな!」
ランパネリはトゥルーの方に銃を向けて叫びます。
トゥルーは防衛と恐れのため腕を上げ直ちに動きを止めてためらいます。
トゥルーはランパネリの後ろで横たわっているブーン神父を見ると、彼は血を止めようと肩を手で押さえていました。
ブーン神父はまだ死んでいません。
彼が死ぬ必要がないことをトゥルーは知っています。
「待って…」トゥルーはパニック状態で叫びます。
「銃を下に置いて…」
ランパネリは頭を振り後に横たわる神父に注意を向け止めを刺すために銃を突きつけました。
「いや、俺はこの野郎がしたことに腸が煮えたぎってるんだ。俺の息子に!性的倒錯者め、死に値する」
トゥルーは何も言えず神父をただ見下ろすだけです。
彼女の顔は哀れみを示しません、彼女を正気に保っている唯一のことは不安です。
「そのことを知ってるの…」彼女は男の武器を下げさせようと抗議します。
「知ってる!」とランパネリは神父のすぐそばに近づいて怒鳴りました。
「チャンスが俺に言ったんだ、お前がクラスの後に引き留めたんだってな、そうだろうが?」
ランパネリは目を細めて銃を前へグイっと動かしました。
ランパネリは激怒でツバを撒き散らしながら「そうなんだろ!?」
「あ…ああ」
ブーン神父は痛みに顔を歪ませ言葉を詰まらせながら言いました。
ブーン神父はすでに大量の血を失っていましたが、自分の周りに何が起きているのかまだ意識はありました。
ブーン神父は目を見開き、痛みのため意識が鈍り始めると目をつぶりを繰り返しています。
「チャンスは…チャンスは…」彼は話をするのも大変な状態でしたが続けました。
「チャンスがどうした!?」
トゥルーが見つめているとランパネリは叫びます。
「はぁ?お前は自分が息子にしたことを認めるんだな!?」
ランパネリは額の血管から血が噴出すのではないかと思われるぐらい顔中で怒りを表していました。
トゥルーは何度もハッと息をのみます、しかしそれでも彼女は腕を上げていました。
「何とか言え!」
ランパネリは怒鳴り散らします。
「彼は…トラブル・メーカーだ」とブーン神父は早口で言い、きちんと座ろうとしましたが激しく後ろによろけます。
血は今も広がり続け病院に運ばなければならない状態です。
「しかし…」と神父は生気のない顔にかすかな微笑を浮かべます。
「良い…良い…子だ…」
トゥルーは神父のわずかな笑みに目をそらします。
何の話をしようとしているのか彼は人には言えない何らかの秘密があり、
その事についてはトゥルーは好意は持てませんでしたが、彼女はするべき仕事を持っています。
トゥルーは後ろを向いているランパネリに体当たりし銃を奪い取るのは簡単なことでした。
そして後はブーン神父を病院に連れて行くだけなのですが、
神父の微笑がトゥルーの心の中に繰り返しまだフラッシュバックし彼女は動けないままでした。
二人が話をしているた間にランパネリは腕を上げブーン神父は非常にたじろいでいました。
そしてトゥルーはギュッと目を閉じたとき、銃声が響きわたり神父のゼーゼーという呼吸音はもはや聞くことができません。
トゥルーは目を開け息を殺しました。彼女の顔はまるで口から心臓が飛び出したかのようです。
ちょうどその時ハリソンは急いで中に駆け込んでくると、床に横たわった神父の遺体を見てその場で立ち尽くしました。
ハリソンはブーン神父の上下をしない胸を見るとショックで叫び声をあげました。
「何が…!?一体何が起きたんだ!?」とハリソンはランパネリがまだ銃を持っていることを忘れて大声で言いま
す。
トゥルーは口がきけません。
ランパネリはその問いに答えるように話し出しました。
「俺は殺らなければならなかったんだ…」とランパネリは今自分がしたことのショックで、
ハリソンというよりも自分自身に向けて言っているようです。
「奴は…チャンスを傷つけた…俺は…」
「違う!」
ランパネリの手にはまだ煙をあげている銃があるにもかかわらず、ハリソンは烈しく怒りながら強く否定しました。
「彼に罪はないんだ!あんたの息子を傷つけちゃいない!俺はそれを証明できる…」
「何っだって!?」
トゥルーはやっとの思いで声をだしました。
ランパネリは何も言わず、ただ銃口を下におろしました。
ランパネリはまだ苛立った顔つきをしていましたが目は真剣にハリソンを見つめます。
多分ランパネリの頭の中には単に怒りだけでほかの事は考えられない状態なのでしょう。
「これを見て欲しい…」ハリソンはブーン神父が先ほどそっと触れていたアンティークな箱を持っていました。
ハリソンはこの箱の中に何があるのか確信はありませんでしたが、この箱がそうではないか、
あるいは神父にとって重要なものだと思いました。
ハリソンは箱を開くと中に手紙を見つけました。
「それは一体何だ?」
ランパネリはそれを見て喧嘩越しに言います。
「手紙だ…」とハリソンは取り出しながら言います。
彼の頭の中でスイッチが入ったように「ラブレター…モニカ…あんたの奥さんからだ…」とつぶやきました。
トゥルーはそれを見て口を緩めました。
「それは何?」
ハリソンが手紙を開き読み取り始めます。
「デイビッド、私の最愛のデイビッド…あなたが言ったように事をうまくいかせるためにとても悩みました。
 けれども私はそんなウソをトラヴィスにつき続けることはできないわ。
 私が別の男性を好きになってしまったなんて。チャンスのことについて彼に話すべきよ。
 あなたの立場は分かってるわ、何年ものあいだ神父になることがあなたの夢ですもの。
 でも彼らは共に知るべきよ。病気は進行しているわ、そして私は嘘をつき続けることができない。
 トラヴィスはチャンスがあなたの息子であることを知るべきなのよ。すべての愛を込めて 、モニカ…」
ハリソンが読み終えると部屋は静寂に包まれました。
誰も長い間口を開こうともせずに、トラヴィス・ランパネリは銃口を自分の頭に向け、
彼の赤い目からは涙があふれていました。
「チャンスは…俺の息子…じゃなかった」自分自身に言い聞かせるようにつぶやきました。
ハリソンはトゥルーの方に目を向けると彼女は神父の遺体に見下ろしていました。
トゥルーのショックはゆっくりと静かに薄れ始めていきましたが彼女の目には後悔の色が浮かんでいました。
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夜になりパトカーが到着して、トゥルーはブーン神父の家の外で残っていました。
ハリソンはトゥルーの近くで静かに佇んでいる前で彼女は行ったり来たりしていました。
ついに彼女は止まってまだ困惑した表情で彼の方に目を向けます。
「姉さんは知らなかったんだ…」とハリソンは首の後ろに手をやりながら姉を慰めようとします。
「姉さん、今回の事は姉さんの責任じゃない…」
「ええ、分かってるわ」とトゥルーはハリソンに視線を合わせないように悲しげに言います。
「いや、分かってないよ」とハリソンは強く言います。
「姉さんにできることはなかった。姉さんが中に入る前に彼は死んでいた、そうだろう?
 トラヴィスって奴が…彼を…姉さん、だから自分を責めるのはやめろよ」
トゥルーは静かにため息をつき、神父の死がいつ起こったかについて彼に訂正しようとはしませんでした。
罪悪感は重々しく彼女に重くのしかかっています。
そしてそれは彼女が学ばなければならない何かであることを知っています。
トゥルーは何か言う代わりに「そうね…」と静かに言いました。
「ジェンセンに会いに行くんだろ?」
ハリソンは尋ねます。
「ジェンセンが姉さんの後を追っていたのを知ってる。会ってみるのは良い考えだと思うよ…」
トゥルーは再びため息をついて頭を振ります。
「ううん…今は家に帰ってぐっすり眠りたい」
「なんで?」とハリソンは腕時計を見ながらトゥルーの方に顔を向け尋ねます。
「まだ早いだろ…」
トゥルーは下を向いてもう一度ハリソンの視線を避けました。
司祭の死は彼女の心を混乱さ心をかき乱しています。阻止する事ができたはずの何かを知ります。
多分もし彼女がブーンの犯した罪をそれほど信じていなかったなら、
彼女は同情的になって本気でブーンを救ったかも知れません。
最後にトゥルーは顔を上げて「明日から仕事に出ようと思う…」と言いました。
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リチャードはジャックが入って来ると机の上を侵略している書類の山から顔を上げました。
リチャードはジャックに向かって目の前の椅子に手を差し出してため息をつきました。
「掛けてくれジャック、ノックしてくれてありがとう」
ジャックは生意気な笑みを浮かべリチャードの机の真正面にある革張りのソファに座りました。
ジャックは頭の後ろに腕を回し足を伸ばしました。
「今晩は俺たちの勝ちだ…」
「うむ 、だが我々は勝ってはいない、そうだろう。我々は途中で手助けを受けた」
リチャードは机の上の書類を見返し興味なさそうに言います。
「そしてトゥルーは教訓を疑問視するように…それは素晴らしい出来だ」
「お言葉ですが」とジャックはリチャードに発言の許可をとろうと顔を向けました。
「お前は手助けを受けた」とリチャードは頭を起こさずに鋭く言います。
「キャリーからか、ならイエスだ」とジャックが静かに笑みを浮かべながら言います。
「デイビスから手助けを受けたようだが、うまくいったようだ…」
「そうだ、そうなんだ」とリチャードは顔を上げて言いました。
「だが、どれほど長くそれが続くと思う?お前が奴等に打ち込んだくさびは?」
「それの表情から…」ジャックは立ち上がりながら言います。
「生意気をいうな」とリチャードはジャックに警告します。
「トゥルーは妨害をするかもしれん、しかし我々は彼女に能力があるのを知っている。我々は警戒が必要だ…」
「俺はできると思う…」ジャックは肩をすくめます。
リチャードは頭を振ります。
「いや、その質問を彼女に…?」

終わり

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