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TruCalling VirtualSeason3
(トゥルー・コーリング バーチャルシーズン3)

3x04 Among The Dead:死の狭間で
作者: Kitty
作者補助: Tina 
校正:Mandi
翻訳:Mhorie

ジャック・ハーパーは気が狂ったような顔つきで白い病院の中へと疾走しています。
しかし彼の顔は今よりも若々しく見え、独りよがりの顔つきと目の端々に見える優越感の雰囲気はありません。
これは我々が知っているジャックとは思えません。
これはジャックの過去に起きた出来事です。
今、彼の顔には明らかに不安の色が浮かんでいます。
急いだジャックは息を切らしフロントの前に立ち止まり彼に気付かずお喋りしている看護師に近づきます。
看護師はすぐに彼を認めると振り返り唇を結びました。
彼女はすぐに色々な種類の書類を差し出し尋ねました。
「医者に診てもらう必要があるなら…」
「そうじゃない」とジャックは彼女を遮るために震えている手を上げて言います。
「妹…メラニー・ハーパーは。妹が何号室に入院しているのか教えて欲しい」
彼女は面会許可の申請書を差し出し、申請書の書き方を説明して微笑します。
「確かに、間違いはないわね」と彼女は何度も患者に繰り返したであろう笑みをちらりと向けて明るく言います。
「確認させてください…妹さんのお名前をもう一度お願いできますか?」
「ハーパー…」ジャックはまだかすかに光っている汗の滴を額に浮かべたままカウンターに突っ伏して言います。
彼の震えは差し当たり止まったように見えます。
「メラニー・ハーパーだ」
看護師はうなずいてフロントの中のコンピュータの前に座ります。
ジャックはモニターを覗き込むと、彼女の指はキーボードの上を走ります。
ジャックは待っている間不安感を募らせます。
看護師のタイプの手が止まるとジャックを見上げ笑顔で「42A号室よ」
そしてジャックの後ろを指さします。
「このホールの奥の方右手に入り口が二つあるわ…それで…」
「ありがとう!」ジャックは彼女が言い終わらないうちに大急ぎで言い駆け出していきました。
ジャックはドアのすぐ外に掛けてある金属プレートを一瞥して部屋番号を確認しました。
彼はこれから妹に会うという辛い雰囲気にため息をつき病室に入って行きました。
白い壁とそれにマッチした家具は通常の病室であり彼の心配は鎮められていきます。
「なんでもないじゃないか」ジャックは妹の傍に歩みより言います。
メラニーは弱々しくにっこり笑い「待たっわ?」
メラニーの横たえた背中をジャックは優しく起こしジャックの差し出した手をつかみします。
「兄さん…どうしてここに来たの?」と彼女は空元気と分かる陽気な声で尋ねました。
「いいかげんにしないか、メル。お前は妹じゃないか」とジャックは手を振り質問を却下しました。
「いつも兄さんは来ないじゃない」と彼女は幽霊のように唇に微笑を浮かべて言います。
彼女の言葉に悪意は感じられません、しかし彼女は見舞いに来ないというジャックに訴えます。
「俺は今ここにいるじゃないか」とジャックはメラニーの手を柔らかく握り応えます。
「私が電話をしたからでしょ」とメラニーはクスクス笑いながら言います。
ジャックはため息をついて腰を起こしメラニーの手を放しました。
しばらくの静寂の後メラニーは無造作に話し出しました。
「兄さん…私はもうすぐ死ぬわ…」
ジャックはこの言葉を理解しましたが頭を横に振りました。
「そんな話はしなくていい。お前は死んでいないじゃないか…ただの病気だ」
「ただの病気、はぁ〜。兄さん…お医者様は前に"長くはもたない"って言ったわ…」とあざけります。
「それなら新しい医者に診てもらおう」とジャックは強く主張しました。
「俺が医者を見つけてやる。お前は死なない、そうだろう?お前は生きてサムと幸せになるんだ…」
「サムは私の元から去ったのよ、兄さん」とメラニーが静かに言い次に低い声で「4カ月前に…」と付け加えました。
「メラニー、お前は死なない」とジャックは繰り返します。
「どうして?」
ジャックは微笑みその顔は自信に満ちています。
「大丈夫…。俺に任せておけ」
ジャックがもう一度メラニーの手を握ろうとしたとき、メラニーはジャックの顔を見つめました。
「兄さんがそう言うんなら…」
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現在に戻り、
トゥルーは死体安置所の廊下をゆっくりと歩き、中に入る前に少し立ち止まりため息をつきました。
トゥルーが中に入った途端デイビスは机から顔を上げて笑みを湛えて彼女を迎入れるために立ちました。
なぜなら以前あった話し合いでトゥルーはデイビスを許したためです。
「トゥルー」デイビスはまだ顔中に笑みを浮かべて言います。
「あー、その、どうだい」
トゥルーはデイビスの言葉遣いがいつも以上におかしかったため思わずクスクスと笑ってしまいました。
しかしキャリーが部屋にいることを知ると彼女の笑いは長く続きませんでした。
「あたしは元気だよ、デイビス」トゥルーは穏やかに言いましたが唇に小さな冷笑を浮かべました。
「完全とはいかないけど…」
「ああ…そうか…」
デイビスは少しうつむいて言います。
「で、でも、あー…良かった」
トゥルーとキャリーは見つめ合い気詰まりな無言の時が広がります。
「私は出かけるわ」キャリーはトゥルーを見ながらデイビスに話しかけました。
「2時までならいつでも来れるわ。」
彼女はトゥルーににっこりと笑い「遅刻しないようにね」と言いました。
「さようなら」デイビスは言います。
デイビスにとってキャリーはまだスターのような存在で彼女を見る目つきが物語っていました。
キャリーの笑顔は更に大きくなりデイビスにさよならのキスをするために前へと出ました。
彼女の唇が彼の唇をかすめるときデイビスは愚かにもにっこり笑ってしまいました。
これは彼女がデイビスに対していつもしている行為ではないことは明白です。
真実はどうか分からないけれども、トゥルーの鳥肌をデイビスが気付くとは思えません。
トゥルーは嫌悪感を露骨に顔に出しましたが、キャリーが出て行くとき同じように偽りの微笑を送りました。
トゥルーは背中をデイビスに向けてため息をつきました。
「あたし達、本当に話し合う必要があるわ」
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過去に戻り、
ジャックは一人でビンを手に混雑したバーのカウンターに座っています。
病院にいたときと同じように不安と心配の顔つきをしていましたが、更に痛みと怒りを表していました。
それは彼の顔中いたる所に殴られた痕があったからです。
それに耐えている痛烈なしかめっ面は痛々しさを増すばかりです。
彼はぼんやりと座り恐る恐る首をさすってビールビンの底を見つめていました。
バーテンがしかめっ面をしてジャックに近づくとジャックはバーテンを腫れて充血した目で見上げます。
「そこまでにしておいた方がいいぜ、相棒」バーテンはジャックのわきにある何本かのビンを顎で指して言いました。
「それは俺が決めることだ、ほっといてくれ」とジャックは手を振りながら言います。
バーテンは彼を見つめジャックの着ている青いジャケットに付いているプラスチックのバッジを見ました。
「あんたは何の仕事をしてるんだ?医者か何かか?」
「EMT(救命救急師)」とジャックは素っ気無く言います。
「仕事中か?あんた」バーテンはぶっきらぼうに尋ねます。
「それが重要なことか?」
「それが本当ならね」とバーテンはドアに向かって頭をぐいと動かして顔をしかめて言います。
ジャックはその助言を受けて後に頭を向けビンの残りを一口で飲み干しました。
彼は手の甲で口を拭くとバーテンを見ます。
「誰も救うことができない」とジャックは立ち上がりドアに向かいながらぶつぶつと言います。
バーテンは頭を振ってジャックが後に残したビンを拾い集め始めます。
ジャックがバーの外に出ると何処かから一発の銃声が響きました。
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現代に戻り
「トゥルー、一体何を話し合うと…」デイビスは始めます。
「すまないと思ってる、いいかい。本当だ、しかし、き、君が悪意を持っているとは思えない…」
「悪意なんかないよ、デイビス」とトゥルーが叫びます。
「あなたがあたしにしたことは間違ってた…」
「分かってる、だからすまないと思って…」
「でも、そのことは許すわ」とトゥルーはデイビスを遮るために手を上げて言います。
「許すって?」デイビスは驚いて尋ねます。
トゥルーうなずきます。
「あたしはキャリーのことが好きだっていうふりをするつもりもない…彼女に話した事もいい考えとは言わない…」
「君は彼女を信頼していなのか?」デイビスは尋ねます。
トゥルーは『もちろんだ』という顔つきをしますが頭を横に振りました。
「あたしは彼女を信頼しないんじゃないの、彼女に話したことがいいとは思えない。誰かにあたしの全てを話した…秘密の正体を」
「だが、キャリーは違うだろ…」
「どう?デイビス。彼女はどう違ってるって言うの?」トゥルーは尋ねます。
「あなたが彼女とデートしているから?あたしは決してルークにもジェンセンにも話してない…」
「そう、でもジェンセンとは…」デイビスは突然腕を自分自身を抱くように巻きつけると目をそらしました。
トゥルーは驚きと心の痛みで口を開きかけましたが口を閉じました。
「まあ、ハリソンには話した…」デイビスは自分の発言を隠そうとして付け加えます。
「済んでしまったことは仕方がないよ」とトゥルーは言います。
「そのことはもう忘れよ」
「ワンダーツインズに戻っていもいいのかい?」デイビスは希望を抱いて尋ねます。
トゥルーは静かにクスクス笑って「そう…そう思ってもいいよ…」とうなずきます。
「素晴らしい」デイビスは明るくなります。
「それで君は検死ツールの再編成を手伝ってくれるんだね。しばらくその事で悩んでたんだ。今回はアルファベット順?」
「実はあたし行かなきゃならないんだ」とトゥルーは目を上下させながら言いました。
「ハリソンが朝から病気で寝込んでるんだ、ハリソンに行くって約束したから…チキンスープを作るって」
「それならマッシュルームがいい。じゃあ午後からは?」とデイビスはうなずきます。
「授業の課題があるの」とトゥルーはドアへ向かいながら言います。
彼女はデイビスの方へ振り返り肩越しに「話し合いができてよかったよ」と言うと、
デイビスも笑顔で「俺もだ」と言いました。
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トゥルーはため息をつきながらジェンセン、タイラー、エイブリーと一緒に国立精神医学研究所の混雑した廊下を手にメモ用紙を持って歩いています。
彼らの前には体格のいい教授が先頭に立ち、トゥルーの仲間達とクラスメイトが教授の後に従います。
トゥルーと彼女の友人達はためらい、自分達の会話に没頭していました。
「誰か何で頭のおかしい連中を見なきゃならないのか教えてくれ」
タイラーは白い病院ガウンを着てブツブツと独り言を言っている年配の男が通り過ぎたとき眉をひそめて言いました。
「あたし達は彼らを見てるんじゃなくて勉強をしているんだよ」とトゥルーは訂正します。
「私達が何をしているかの唯一の理由は、そうしなければならないから」とエイブリーは目を上下させながら言います。
「そうだ…勉強なんだよな」と年配の男が彼らを追い越すのと同時にタイラーは言います。
タイラーは男に歯を剥き出しにした笑顔を向けましたが患者は驚いてただ怒鳴るだけです。
タイラーは他の者達が驚くよりも早く後に飛び跳ねました。
「そして俺達はそうしてる?」
「それは必要よ」とエイブリーが再び言います。
「どうして必要なのかまだわからないけど、つまり私たち医者になるつもりなんでしょ?
 患者が見えない紫のイルカの話をしてるのを聞いて助けるなんていうのは考えたくないけど」
「それはぽかんとただ見てるだけか、やる気の問題だね」とジェンセンが熟考します。
「以外と君もそう思うかい」
トゥルーは頭を振ります。
「あたしは全くそうだとは思わない。それは…」
彼女は一瞬考え「人々を救うために、人々をね」
かなり若そうな女性の患者が聞こえない音楽に酔いしれ踊りながら通り過ぎていきます。
トゥルーは彼女を見ると一旦中断してすぐに継続しました。
「普通の人達は彼らを救ってあげることができない」彼女は微笑して「それは才能みたいなもの…」と付け加えました。
「うまい表現だ」ジェンセンは微笑しましたがトゥルーは意思表示を返すことに気が進みません。
ですが少しの間をおいて彼女はジェスチャーを返しました。
ジェンセンは気が付かないようでしたがそれは驚きではなく、
トゥルーの頭をよぎることは彼が彼女にもたらし続ける心の悩みです。
決して前にそこにはなかった小さな偶然、彼の知らない特にもう一つの裏の顔があるのを知った時の言葉、
彼が彼女の横で歩いているという事実。
エイブリーは肩をすくめます。
「それとも私達が出席するように要求されることは精神と行動障害の授業だっていえる」
「それともあれ」トゥルーは微笑します。
「頭がおかしい連中を見る事を遠足だって思えば」
「遠足?タイラー」エイブリーはあざけります。
「ねえ、私は7年生から今まで遠足はなかった。それに遠足の方がずっと楽しかったわ」
「君はどこへ行った?」タイラーは尋ねます。
「動物園」
「トゥルー、君はどう?」ジェンセンは彼女の傍ににじり寄って尋ねます。
ジェンセンはトゥルーが一歩下がったことに気づかず「最後の遠足?」と尋ねます。
トゥルーは少し赤面し「中学生のとき、フェリーで少し船酔いして…」
タイラーが笑いながら言います。
「それはすごく素敵だね。ピューク(訳注:ゲロ)・デイビーズ」
エイブリーはしかめっ面をします。
「タイラー、私達は友人だよね」
「俺が面白い奴だって忘れたのかい。電球を変えるのに何人の医学生達が必要だと思う?」
「五人よ」とエイブリーがすぐに答えました。
「一人が電球を変える役で後の四人がはしごの役。
 いい、あんたは前にもその冗談を言ったけど、そん時も全然面白くなかった…」
「冗談はおいといて…もう一つ問題ができたみたい」とトゥルーが心配そうな面で言います。
トゥルーの見ている方向を残りの者達が見ると、教授とクラスメイトが視界から姿を消したことに気づきました。
彼ら四人はどこに行くことになっていたのか気にしていなかったので精神病院の中で迷子になってしまいました。
「僕達、どれぐらい歩いていたかわかる?」
ジェンセンは自分達がどこにいるのか調べるために入口の側面にある案内図に歩み寄って尋ねます。
エイブリーは白衣の袖を捲くり上げ腕時計を確認しました。
「今5時45分…5時にこのバカな講義を終えたはずよ…」
「そりゃ素晴らしい」タイラーは口をとがらします。
「俺達頭のおかしな連中を見なくて済むんだ」
「そんな事は忘れて」とエイブリーがきつく言います。
「僕らはこの方向に行くんじゃないかと思うけど」とジェンセンは指さします。
一同はジェンセンの後に従い同じように見えるもう一つの白い廊下を行きます。
彼らが近づくと突然大きな音とそれに続いて叫び声が一つの部屋の中から聞こえてきました。
トゥルーは先頭を切り一同が彼女の後に続きます。
彼女が部屋に入った途端に年配の医者がうつ伏せで血溜まりの中に倒れているのを見て恐怖で息が止まります。
「なんて事…」エイブリーはこみ上げてくる吐き気を押さえようと口に手を当てつぶやきます。
タイラーは彼女のそばに立っていますが、陽気で遊び好きな彼も今は非常に沈んでいます。
「何があったんだろう?」ジェンセンとトゥルーが遺体を調べるながら彼女はジェンセンに目を向けて尋ねます。
「殴られたようだ」
ジェンセンは男の後頭部の髪が大量の血で目茶苦茶になっているのを見ながら静かに冷静に言います。
彼はオーガステ・ロダンの『考える人』のポーズで重い金属製のブックエンドを手に取ります。
「これで…」
「ジーザス…」
トゥルーは医者をゆっくりと仰向けにさせると白衣に着いているネームプレートに目をやり、
彼の写真と名前:フランクリン・ルイス医師と書かれていました。
彼女はゆっくりとわずかな希望を持って、やせた医者の背中を抱き起こすようにすると突然医者の目が開きました。
「助けてくれ」彼は一日が巻き戻る言葉をトゥルーにささやきます。
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トゥルーは当惑顔をして死体安置所に腕時計を確かめながら急いで中に駆け込みます。
デイビスは遺体の検死途中に入って来たトゥルーに驚いた顔つきをしました。
「トゥルー…?」
「ええ、あたしよ…」
彼女は今までにも多くの遺体を扱ってきましたが遺体にしかめっ面をして言います。
「例の日だよ」
「そうなのか?」デイビスが好奇心を持って尋ねます。「ああ、それは…その…」
彼は一瞬中断して「君はなぜ俺に話すんだい?」と尋ねます。
トゥルーは混乱しそしてうなずいて彼を見ました。
「ああ、そうか。聞いてデイビス、あたしはもうあなたを許したの。
 たとえあたしがハリソンに話しても、ジェンセンに話したとしても、あたしが悪意を持たないようにしても、
 まだあなたがキャリーに話すべきじゃなかったと思ってる。
 でも、あたしはこれ以上このことでもめようとは思ってない…」
デイビスの目は丸くなり彼女はひと呼吸おきます。
「冷静になって?」
デイビスはゆっくりとうなずいて微笑します。
「俺らの関係は元に戻ったと…」
「ワンダーツインズ、そう言いたいんでしょ」とトゥルーは既に聞いた駄洒落を言います。
「それで、今回はあたしが戻ったのは、フランクリン・ルイス医師が撲殺された…」
「君は撲殺する現場を見たのかい?」
デイビスは驚いて尋ねます。
「実際には見てない。その後の現場を見たの」トゥルーは説明します。
「それは国立精神医学研究所だった…」
「君はそこで何を?」 デイビスは眉を上げて尋ねます。
「大学の講義だよ…でも、誰が何のために医者を殺したいと思ったのか。特にそんなふうに…」
トゥルーは鮮明に現場を思い出してしかめっ面をします。
「多分患者かも?」
「かもしれない」とデイビスが熟考します。
「君は知ってるかな…」と彼はトゥルーの視線を避けるように遺体の方に向きを変え静かに言います。
「何?」彼女は尋ねます。
「キャリーはそこで働いていた…」
「彼女が何?」
「俺らが最初に会ったとき、か、彼女がそこで働いたと言った。俺らは過去の仕事とかそんな事について話をしていた…」
トゥルーがデイビスを見つめだすと彼は心地悪くなり始めます。
「俺は…彼女なら彼を知っているんじゃないかと思うんだ。以前から…」
彼は完全にトゥルーから焦点を別の方に向けて中断します。「彼女はそこで働いたんだ…」
「あたしは彼女を巻き込むのは賛成しない…」とため息をついて言います。
「トゥルー、彼女はこの男が誰であるか知っているかもしれない」とデイビスは少し自信を取り戻して顔を上げて言います。
「何の関係がある?君の彼女に対する悪意とこの男の人生に…」
トゥルーが同情的になってうなずきます。
「オーケー…でも、彼女に例の日だって言わないで。ただその男が誰なのか聞いて。
 それだけがあたし達の知りたい事だから」彼女はドアに向かって振り返りながら言います。
「どこに行くんだい?」
「ハリソンのとこ、スープを作りにね…」トゥルーが簡単に言います。
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ジャックはベッドの縁に座って片手を頭に置きもう片方の手には電話を持っています。
彼はまだダークブルーのボクサーパンツを履いていて朝寝していました。
「俺がそれをするかしないかは問題じゃない」ジャックは強く要求します。「俺が望むかどうかだ…」
「お前はやるんだ、ジャック。論議は終わりだ」とリチャードは素っ気無く言います。
「俺はあそこに戻りたくない…」
「まあ聞け」とリチャードは強制的に言います。
「もしお前が行かないのなら、運命は変わってしまう。いかにお前自身の過去に触れたくないと望んでも、我々はそうすることはできん」
リチャードはほんの少し間をあけ「誇りには思ってはいないが過去の全てを持っている」
ジャックは大きなため息を漏らします。
「あんたが…あんたが正しいよ。どうせ戻ってきたんだ。俺は普通じゃない男だ…」
「そうだ、お前には目的がある」リチャードは同意します。
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過去に戻り、
寒い雪が積もった夜、アスファルトの上にジャックの横たわっている姿があります。
彼は目が開いていてまっすぐに見つめて、それが見ることができる唯一のものであるということです。
彼の青白い瞳は顔に降り積もる雪を見ています。
通行人は男が撃たれて地上に横たわっていると理解すると恐怖の絶叫が響き渡りました。
「道を開けてください」男の声はEMTの一人でした。
「通りますので道を開けて…なんってこった…ジャックじゃないか…」
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現在に戻り、
「オーケー、ほらマッシュルームのクリームシチュー」とトゥルーはハリソンが毛布の中に包まっている寝室に入りながら言います。
彼女が彼のいるところにトレーを運びながらボールからでる湯気を手で仰いでいます。
「マッシュルームのクリームシチュー?」ハリソンは鼻づまりの嗅覚でやかましく文句を言います。
「チキンはどうしたの?俺は病気なんだ、ほら姉さん」
「そうするつもりだったんだけど」とトゥルーは彼の前にトレーを置いて言います。
「マッシュルームが風邪に効くって聞いたから…」
「なんでいいのさ?」彼は目の前のネバネバしたグレーの物体にしかめ面をして威圧するように尋ねます。
「実はそこまで聞いてない」とトゥルーが言います。
「ところで、今日は例の日なんだ。
 それでもしあんたが誰かの生命を救うことを望むのなら、些細な事で5分おきに電話するのはやめて欲しいんだけど」
「俺がそれをやったのか?」ハリソンは見せかけの驚きで言います。
「そいつは俺の事とは思えない…こんな状態を利用をして。でも姉さんがここにいる間は…面倒を見てよ」彼はにっこり笑います。
「まあ、面白い冗談」とトゥルーが言います。
「でもあたしは真剣だよ、ハリソン。どんな場合でもここには来ないよ、スナックを持って来るとかチャンネルを変えるとか…」
彼女はしかめっ面をします。
「漫画でも読んでなさい」
「いいよ、いいよ」とハリソンはスープをすくいながら手を振りながら言います。
「ウェッ」と彼はスープを飲み込むと言います。
「参考までに、姉さん料理がひどく…。つまり、その、どうやったらこんな風になるんだ?」
「まあ、意見をありがとうございますハリー」とトゥルーが言います。
ちょうどその時トゥルーの携帯電話が鳴り電話を出すと、
ハリソンは『ひどい』と言ったスープをガツガツ食べていてその事にほほ笑みました。
「もしもし?」と彼女が電話にでます。
「トゥルー、俺だ」とデイビスの声が伝えます。
「キャリーに話をしたんだが、彼女はルイスを知らなかった。でも色々調べて電話をしてわかったんだが。
 トゥルー、彼は国立精神医学研究所で働いていない…彼はシャンクマンセンターの医者だ…」
「シャンクマンセンター?」
トゥルーはデイビスがキャリーを欲することについて『彼女の手助けはいらない』と言ったことを却下しようと尋ねようとしましたが、
トゥルーは仕事に集中することにしました。
「でも、それって、ジャックが最初に一日を巻き戻す体験を始めた彼を収容したところじゃ?」
「ああ…」デイビスは言います。
「分かった…そこに行ってみる」
トゥルーはキャリーによってもたらされたこの情報がどれほど信頼可能か確かではないけれども言います。
けれども手がかりがわずかしかないのでそれはしかたがありませんでした。
彼女は電話を切って後ろのハリソンを見ます。
「あたし、行くからね…」
トゥルーが行こうとするとハリソンはスプーンを置きました。
「オーケー…もし何かあったら電話する…」
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トゥルーは目の前の大きなシャンクマンセンタービルを見上げます。
彼女は実際の年齢よりも少し上に見られるように白衣を着て髪を後ろに束ねています。
「うまくいきますように」と彼女はビルの中に入りながらつぶやきます。
トゥルーが中に入るとすぐに今まで以上に難しい事になりそうだと悟ります。
『多分みんなは自分に気付かないだろう』という考えは恐らくあまり望めないかもしれません。
けれどもトゥルーは穏やかに看護師達が談笑しているフロントを無視して通り過ぎようとしました。
「すみません」看護師の一人が大声で言います。
トゥルーは息を飲み何か言い訳を考えようとしましたが、
看護師はトゥルーのすぐ後ろの誰かと話をするために彼女を通り過ぎて行った途端に彼女は安堵しました。
トゥルーは安堵のため息をついて廊下を歩き続けます。
しかしすぐに今度は若い三十代半ばのかなりハンサムな医者が近づいてきました。
彼は暗めの茶髪と薄い緑色の目をしていてパリッとした白衣が似合いすぎていました。
「君は…ここで仕事をしているのかい?」
彼の口調には軟派な響きがありありとでていました。
トゥルーはそれに気付いて、ここで働いていると言わない方がいいと悟ります。
「いいえ、違うわ」と彼女が控え目に言いますそして彼の目をまっすぐに見つめ、
「人と会う予定なの…フランクリン・ルイス医師と…」
「ああ、なるほど」と彼はにっこり笑って言います。
「君がメリッサ・レビンかい。ルイス先生はいい人だ、素晴らしい…患者を好きだ」
彼はトゥルーに手を差し延べ握手をします。
「僕はスペンサー。ムーア医師だ。もし僕が必要なら呼んで欲しい」
「その時はお願いする、スペンサー」と彼女は上手に誤魔化して微笑んで言います。
「私はメリッサよ、それで本当に間抜けに聞こえるかもしれないけど、どこにルイス先生がいるか分かるかしら?」
スペンサーはうなずきながらクスクス笑い言います。
「心配ないよ。この病院はすごい迷路みたいだから」彼は自分達が立っている廊下の後ろを指さします。
「それならまっすぐに行って、左に曲がって、非常に無粋な赤い植物にぶつかるまで行ったら右に曲がるんだ。
 そこから3番目のドアだよ」
トゥルーは微笑します。
「本当にありがとうございます」
「おや、感謝されるとは、メリッサ、もし希望が持てるならまた会えないかな。迷子にならなきゃね」
スペンサーは歯を光らせて微笑みながら言います。
「それに期待してる」とトゥルーは彼の指示に従い離れる前に言います。
スペンサーは彼女に明らかに興味を持っていて去るのを見送っています。
トゥルーが角を曲がるとスペンサーも歩きだそうとしたその時ジャックが歩いてきました。
スペンサーはしばらくジャックを見つめていると二人はお互いを確認しました。
ジャックは少し心の中で憤慨感を持ち医者を睨み付け頭を振ります。
「やあ、ハーパー…不思議だよ…君がここに戻って来るとは思わなかった」
スペンサーは少し考えて
「また、新しい…話があるのかい?」
ジャックは内心むっとしてスペンサーを睨みつけながら頭を振りました。
「スペンサー…俺はただここに…友人に会いに来ただけだ」
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トゥルーは開いているドアをノックしようとすると、中にいたフランクリン・ルイス医師は彼女を見て少し驚いた表情をしました。
トゥルーの笑顔は弱々しくまだこの医者の最後を覚えていてその時の状態を想像してしまいました。
しかし彼は今死体ではなく彼女がそれを変えるチャンスを持っているという事実が大いに助けになりました。
「どうも、はじめまして。私の名前は…メリッサ・レヴィンです」とトゥルーが明るい声で礼儀正しく自己紹介をします。
「ああ、レヴィンさん」とルイス医師は彼女に握手するために立ち上がりながら言います。
ルイス医師はトゥルーに握手すると椅子に深く座って肘を机の上に戻しました。
「明日、君が来ると思っていたんだが…」彼はトゥルーの背後の壁に掛かってる時計を見ると2時でした。
「それに4時だったばすだがね…」
「本当にすみません。スケジュールがゴタゴタしてまして、それに…」と謝罪をしました。
彼は手を上げ「それは問題ないんだが、君と話をするには…」
彼は机の上の書類の山を手で示しました。
「今は少し忙しいんだよ」
「そのようですね」とトゥルーは立ち上がりながら言います。
「それなら明日また来た方がよろしいですね」
彼がうなずいた後彼女は「私は国立精神医学研究所に行かないといけないので…」
と何かしらの手がかりになるかもしれないと思い付け加えます。
彼は急に見上げて、椅子にもたれて座りながら手を組みます。
「君がムーア医師を知っていたとは知らなかった…」
トゥルーは口を開きかけましたがルイス医師は続けます。
「彼は私を求めている、常にね。だが、運良く彼は手に入れられないだろう。
 国営精神医学研究所でのインタビューは無意味だ。
 彼は知っている…私の仕事はここにあると。
 それでお願いなんだが、彼に私が申し出を受け入れるように責めたてるのをやめるように言ってもらえないだろうか?」
彼はトゥルーを見て「明日なら君に付き合えるよ…」と付け加えます。
「はい、もちろん」トゥルーは素っ気無く言います。
「必ずお伝えします」
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ジャックは速足で、どの部屋かを探そうとしたときにはすでにその場所にいました。
彼はルイス医師のオフィスに入る直前にトゥルーに出くわしました。
彼はまばたきをするといつもの生意気なそして自信に満ちた顔でトゥルーにニヤッと笑いかけます。
「治療を受けに来たのかい?」と彼が尋ねます。
「あんたが治療を受けた方がいいんじゃない?」
トゥルーはこの絶好の機会をいいことに思いっきり侮辱します。
「あたしの記憶が確かなら、ジャック、治療を受けていたのはあんたじゃない」
ジャックの笑顔はすぐに消え睨みつけました。
「あんたに相応しいスイートホームに見えるんじゃない?」
ジャックは何も言いません、そして彼女は背後のドアにうなずきます。
「彼は今のところ忙しいんだって、でもあんたの事は止めない。彼なら自暴自棄な人の話をよく聞いてくれるよ」
トゥルーが彼のそばを通り過ぎ別の部屋に入るとジャックは唇を結びます。
ジャックは彼女に何も言わず、ノックもせずに部屋の中へと入ってきました。
ジャックが入った途端にルイス医師は見上げ驚いていた顔つきをしました。
「ジャック?…君はここに何にしに来たんだい?」
ジャックは席に座り微笑みます。
「私はいつここに来たか覚えていますよ」
ルイス医師はばかげた答えにクスクス笑います。
「私は一日を繰り返していた?」
「覚えているよ、うむ」と医者は考え眉をひそめて前へ乗り出して言います。
「それは」とジャックはもたれて座り彼のゲームに気付いていて言います。
「私はまた頭がおかしくなってしまったんじゃないかと思うんですが…」
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「ビンゴ」トゥルーがファイルを見つけハンドバッグの中にしまいながらつぶやきます。
ちょうどその時彼女の携帯電話は鳴り、部屋にこっそり入り込んでいたためその音に驚きました。
彼女は速く電話を取り出し「もしもし?」とささやきます。
「姉さん、聞いてくれよ…今大丈夫かい?」ハリソンは小さな咳をしながら尋ねます。
トゥルーはうめくような声で言います。
「ハリソン!もうこの話はしたでしょ…」
「違うよ姉さん、バットマンを読んでくれって言ってるんじゃない」とハリソンは抗議します。
「ただ…退屈でさ。エブリーが何をしているか知ってるかい?彼女に電話をしようとしたんだけど…」
「彼女は多分行く準備をして…」トゥルーはそこで友人たちに出会ってしまうと思い止まります。
彼女はまたうなると「ハリソン、あたしの手助けをしてくれる?」と言います。
「どんな?」ハリソンが尋ねます。
「姉さん、もしも気付いてないんなら…俺にはちょっとできないかも…」
「もう一度エイブリーに電話をして…彼女に病気だって話して。本当に…本当に病気なんだから」
トゥルーは説明します。
「オーケー?でもそれがどんな助けになるのさ?」
「あんた自身が困ってるてことを言って、エイブリーに看病してもらうようにして。
 もしあたしとエイブリーがそこに行かなければタイラーもおそらく行かないから。もしタイラーが行かないなら…」
「やってみるよ。姉さんよりもウマいスープを作ってくれるように頼んでみる」とつぶやきました。
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「どうもありがとうございます」とジャックは立ち上がりながら言います。
「少しだけど話せて本当に良かった」
「それは良かった、私もうれしいよ、だがいつでもというわけにはいかないよ」とルイス医師が言います。
「もちろんそれはないです」ジャックは微笑します。
ジャックは棚の上に置いてあった数々の写真に目を向けて尋ねました。
「それでジュリアさんはお元気ですか?」
ルイス医師は妻の写真を見るとジャックに目を戻しました。
「元気だよ、妻はとても元気だ。良い日をジャック。」
ジャックはもう一度写真を見ると心の中に何かが沸き起こりうなずきました。
「あなたと一緒に話せて本当に良かった…」
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「もう問題の容疑者を見つけた」トゥルーが国立精神医学研究所に向かういながら携帯電話で話しています。
「彼の仕事を欲しがってる医者がいる…」。
「クラシックな響きだな」と言うとデイビスは熟考します。
「君はその人物が殺人者であると断言できるのかい? 俺は医者が撲殺するなんて分からない。
 つまり…それは、あー…有罪である証拠があるのかい」
「それは間違いないと思う」とトゥルーが言います。
「でも、今は同級生に出会わないようにしてルイス医師の命を救わなきゃいけない」
「オーケー、トゥルー。幸運を祈るよ…」
「ありがとう、デイビス」
トゥルーは病院内に急いで前に医師の遺体を見つけた場所を思い出すため見回します。
彼女は右側の廊下の方向に急ぎます。
トゥルーは腕時計を確認すると4時25分になっていました。
彼女はペースを速めると廊下でスペンサーに出会い直ぐに立ち止まりました。
「スペンサー?」彼女は驚いて尋ねます。
「なんてうれしい驚きなんだ」とスペンサーは彼が持っていたメモ用紙から見上げて言います。
「メリッサ、ここで君に会えるなんて。君はルイス先生と一緒に話をしていたと思ったんだが」
「そうだったんだけど」とトゥルーはスペンサーを疑い深くじろじろ見て言います。
「ここであなたに会うなんて不思議ね…」
「ああ、まあ僕は上司に推薦してもらったんでね。ルイス先生はここ仕事にふさわしい」
トゥルーは胡散臭い雰囲気を感じました。
「まあ、もう僕の無駄話で君を引き留めたりしないからさ」
スペンサーはトゥルーに背を向け立ち去ります。
トゥルーは彼の後について行こうとしましたがその時二本の腕が彼女のウエストの辺りを掴んでどこかの部屋の中に引っ張りました。
「何!?うっ…」
誰かの手が彼女の口を覆い腕へ注射針が刺さりました。
彼女は数回瞬きをするとゆっくりと滑り落ちるように眠ってしまいました。
ジャックは彼女を放して彼女を見下ろしています。
「すまないな」ジャックは言うとトゥルーをドアからもっと楽な場所に彼女を引っ張って寝かせます。
「君に勝たせるわけにはいかないんだ…今回だけでなくな」
彼は立ち上がり彼女を一瞥するとドアから外に出て何事もなかったように歩きだしました。
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過去に戻り、
ジャックは一人白い部屋に座ってまっすぐに前を見つめ震えながらブツブツと独り言を言っています。
彼はベッドの縁で体を左右に揺らし始めるとドアが開きフランクリン・ルイス医師が入って来ました。
ルイス医師は目の前のジャックに微笑んではしゃぐように、
「今日はどんな風に感じているかね?ハーパーさん」と尋ねました。
「それが…それがまた起きた」とジャックは静かに言います。
「ああ、どのように昨日を感じたか尋ねるべきだったね」と医者はジャックの状態を見て笑顔で言います。
ジャックはこの冗談がそれほど面白いと思いませんでした。
「先生はもうアンナのところから戻ったのか?」
医者はもう笑っていなくて、
「私の私生活は君には何の関係もないよ。ジャック」と皮肉を言います。
「先生は自分が正しいと思っているんだろうが、浮気相手が患者なら関係ないとかじゃなくて犯罪だ」
ジャックは震えを止めて返答しそれでも繰り返された日のために錯乱状態になっています。
「君は私に何を望むんだね、ジャック?」医者は同情的になって静かに尋ねます。
「俺を助けてくれ!」ジャックは突然叫びました。
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ジャックは写真に写っていた女性が歩いているのを見ながらニヤッと笑いドアから少し離れた壁に寄りかかっています。
ルイス医師の妻ジュリアはルイス医師が一人でインタビューを待つ部屋の中に突然割り込み激しい口論が始まりました。
しかしジャックが自分の勝利を確信して眺めていると、トゥルーはどこからともなく走って来て部屋の中へと入っていきました。
ジャックはビックリして次第に落ち着くと彼女の後ろから駆け込みます。
「ど、どうして…?」ジャックは小さな声でつぶやきました。
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「そんな事をしてはダメ」
トゥルーはすぐさま言います。
ジュリアは前回ルイス医師の命を奪ったブックエンドをしっかり掴んでいました。
トゥルーは犯人がスペンサー・ムーアではないことに少し当惑しているように見えます。
しかし彼女はどこで間違ったか判断している余裕はありませんでした。
「お願い…それを下に置いて…」
「ジュリア、お願いだ…」ルイス医師は後ろに見て電話を掛けるために道をあけながら言います。
ジュリアは殴るためにブックエンドをより高く上げましたがジャックが部屋に入った途端に彼女はためらいます。
「ジャック…?」とルイス医師は驚いて言います。
トゥルーはまだジュリアが持っているブックエンドに用心しながらジャックを睨みつけます。
「ジュリア…ルイスさん…あたしはあなたがなんでこんな事するのかわからない。でもそれは間違ってる…」
「彼は今まであなたを裏切っていた」ジャックは続けます。
「何年もの間だ。ジュリア、誰が裏切りとその痛みを持ったまま生きていくんだい。
 あんたが愛する男は今まで他の誰か…彼の患者と…浮気していたんだ」
「ジュリア、それだけはダメ…」トゥルーは言います。
「お願いだ」とルイス医師は助けを乞います。
「今までずうっとだ、ジュリア。今がチャンスだ。彼はやり直すチャンスはある」ジャックは続けます。
「だが、彼は昔からの生活を残すことは望んでいない。
 あんたはそれを知ってる、そして俺も知っている…ジュリア、自由になりたいとは思わないか…?」
ジュリアは全員を見渡し後ろを向きました。
全員の言葉を聞いた事で見て分かるほど震えています。
彼女は不安で怖がっているように見えましたがついに長い絶叫を上げ涙ぐんでブックエンドを投げ捨て部屋から急いで出て行きました。
トゥルーはジャックが敗北に気が動転しているのを見て安心しているように見えます。
ルイス医師はジュリアの後を急いで追い、言い訳をするのかあるいは妻を慰めようとしているのは誰の目にも明らかです。
「あたしに薬を打ったわね、ジャック」トゥルーは怒りで目を細めてうなります。
「それは運命のためだ」とジャックが返答します。
「ソラジン(訳注:麻酔薬)だったから運がよかったよ」彼女はにらみつけます。
「おかしいな、ケタミン(訳注:麻酔薬)だったと思ったが」
ジャックは肩すくめ「キャビネットから見つけて手に取ったのが、それが俺の敗因だな」
トゥルーはジャックを睨みつけながらジャケットのポケットからしわだらけのファイルを取り出しました。
「まだおかしいと思う?」
ジャックはファイルを見ると目を丸くします。
「どこでそれを手に入れたんだ?」
「見つけてきたんだよ」
トゥルーはファイルを引き寄せてにっこり笑います。
「興味があるのは、ページの上の方にあるあんたが撃たれた事件。これは何?ジャック。スクープ?」
ジャックは何も言いません、そしてトゥルーはファイルを彼の胸に押しやります。
二人とも目をそらさずにジャックはファイルをつかみます。
「あたしが何を考えてるか分かる?」
彼女は吐き捨てるようにささやきます。
「あんたが隠してる秘密…あそこでは見つけられない」
彼女はファイルを放しジャックがその場であ然としているまま去っていきました。
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過去に戻り、
ジャックは以前と同じ場所に一人で目を瞑ったまま座っています。
看護師が入って来ると目を開き見上げました。
看護師はジャックに向かって微笑みましたが彼の表情に変化はありません。
「あなたに面会の方が来てるわ」看護師は面会人が入れるようにドアを開けたまま言います。
ジャックは誰が面会に来たのかと困惑しているように見えます。
そしてパリッとしたスーツを着た年配の男性が入って来ました。
看護師はうなずくとドアを閉じて出て行きました。
「あんたは何者なんだ?」ジャックは座りなおし混乱しながら尋ねます。
「私の名前はリチャード・デイビーズだ、ジャック」
「そう、それであんたは俺に何の用があるっていうんだ?」
「君に救いをもたらすために」とリチャードは素っ気無く言いました。
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現代に戻り、
トゥルーはアパートの出入り口にジェンセンが立っているのを見て驚きます。
彼は花束を持っていて彼女の目が花束に向けられると彼女は明るく微笑みました。
彼女は彼に感じていた緊張と抵抗のすべてが差し当たり消えていきます。
「君は今日来なかったね。何があったんだい?」と彼は尋ね彼女に花束を手渡してキスをしようとします。
彼女は彼にキスしてからドアの錠を開けました。
「死体安置所に行かなければならなかったの、それにハリソンが病気で」
「ああ、それはエイブリーから聞いたよ」とジェンセンは頷きましたがすぐに口をとがらせ、
「僕はたった一人だったんだ…」
「先に行っちゃったの?」彼女はそこで彼に出くわさなかったことがうれしくて尋ねました。
彼はうなずいて遠くを見るような顔つきをしました。
「僕は拒否することができなかった」
トゥルーはそれに気付かず花びんに花を入れるためにその場を離れました。
彼女が戻るとジェンセンが窓の外を凝視していることに気付きます。
「ジェンセン…?」彼女は彼に向かって数歩近づき静かに尋ねます。
「うーん?」と彼は窓を離れて尋ねます。
「ああ、考え事をしてた…」彼は愛らしく彼女に微笑むとカーテンを引き下ろしました。
「どんな事考えてたの?」 彼女は彼を見つめて尋ねます。
「君の事」
「えっ」トゥルーは小さな声を立てます。
ジェンセンは彼女を引き寄せると腕を彼女のウエストに回しました。
ジェンセンはトゥルーに激しいキスをしました。
彼の手は彼女の背中をしっかりと抱き更に彼女を抱き寄せようとしています。
彼が小さな声を漏らすとトゥルーは突然離れます。
「長い日だった」と彼女は目をそらし静かに言います。
「それで?」彼は少しきつく言うと直ぐにいつもの魅力的な微笑みを浮かべました。
「それは問題ないよ…僕らは…急ぐ必要はないんだよ」
「ううん、つまり」
彼女はため息をついて言います。
「本当に長い日だったから…疲れてるの」
「ああ、そうか」
彼は目をそらしてドアを開けると静かに言います。
「ゆっくりおやすみ…後でまた会おう…」
「分かってる」と彼女は彼が立ち去るまで床を見つめて言います。
ドアが閉じると寝室に向かいながら口早につぶやきます。
「私…何をしてるんだろ?」
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「リチャード、俺達は全てに勝つつもりはない」ジャックは大きなオフィスビルの中に急ぎながら電話をしています。
「いや、ジャック、我々はできるんだ。だがお前はゲームをすることにあまりにも忙しい…」
「そうじゃない。それに、これは助けになる…」とジャックは抗議します。
「それならいいがジャック、さもなければ我々は困ったことになる」
「大丈夫」とジャックはエレベーターの中に足を踏み入れるとき電話を切って繰り返します。
中に入ると黒髪に薄い青い目をした女性ににっこりと笑いかけます。
「君は見たことがあるような…」とジャックはネームプレートを見ようと頭を反り返らせながら言います。
女性は眉を上げます。
「私の名前はミッシェル。ミッシェル・キャリーよ。何か御用かしら?」
「そうだ、君はリポーターだ?…」ジャックは今思い出したふりをして楽しげに言います。
ミッシェルは自分を知っていてくれた事に興味をそそられているように見えます。
「ええ、そうよ」
彼女は微笑します。
「私の仕事がら身近に感じるのは当然よ」
「ほんの少しだけ」とジャックが言います。
「でもさ、正直なところ俺は新聞の特種を持ってるんだ。
 もし君がそれを書くことに興味を持っているなら、少し情報をあげてもいいかなって思うんだけど」
「それは何?」ミッシェルは尋ねます。
「少女についてなんだけど。トゥルー・デイビーズっていう…」

お終い

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