ANOTHER TRU CALLING
アナザー トゥルー・コーリング

The Cruise:クルーズ

あらすじ
リチャード・デイビーズがトゥルー、メレディス、ハリソンをクルーズに連れて行こうとすると、
トゥルーは父親の心変わりに疑問を抱きます。
彼女の家族はバラバラになり、同じ船に乗り合わせた乗客が死ぬとやり直しが起きます。
しかしトゥルーは家族をまとめるよりも犠牲者を救うことの方が簡単に思えます。

第1章。
「トゥルー、遅れるよ」デイビスは死体安置所のオフィスでトゥルーがコンピュータの前にまだいたのを見て警告しました。
彼女は肩をすくめて答えます。
彼女は父親と家族一緒お夕食には本当は行きたくありませんでした。
「準備できたか、姉さん」ハリソンはそう言いながら入口から入ってきました。
「ええ、あと少し、これでお終いだから」とトゥルーは気乗りしませんでしたが、ハリソンと同じぐらいの表情で答えました。
もう彼女としても長引かせる事はできなくなり、弟に合流するために立ち上がりました。
「ジーンズなの?」と彼女は彼を見てすぐに尋ねました。
「あそこはジーンズじゃ入れないわよ」
「そうか?」ハリソンは小いさくニヤリとして返事しました。
「確かにあそこには俺は入れてもらえないかもな、でも親父から仕事の事をあれこれ言われなくて済む。
 残念だけどな」
「あたしとメレディス姉さんでパパのお小言を聞けっていうのね。ありがと」
「感謝されると思ってたよ」とハリソンはにっこり笑います。
トゥルーは彼の腕に腕を組み、仕事に没頭しているデイビスにさようならを言うと外へ出て行きました。

トゥルー達二人はレストランにつくと受付に立ってメレディスを探しました。
「あんた、ジーンズを履いてきたの」メレデスがハリソンを見るとすぐに指摘しました。
「ああ、そうだよ」と彼はもう一人の姉に同じことを言われうんざりしたように答えました。
「申し訳ございませんが、そのような服装では当店への入店はお断りしているのですが」とデスクにいた女性のホストが頭を振って言いました。
「ああ、そう」ハリソンは肩をすくめ目をそらして出口へと向かいます。
その途中父親とすれ違った事にハリソンは気づきません。
「帰ることはないぞ?」
リチャードはハリソンを呼び止めデスクの方へと向かわせます。
「申し訳ありませんが、ここでは」とホストの彼女は頭の振って説明しました。
「ジーンズではお入りしていただくわけには」
「ああ、だが今回だけは例外を認めてくれないかね」とリチャードは何気なく彼女の手にお金を握らせながら言いました。
「そうですね、今回は大目に見ます」彼女は微笑むと、レストランの一番奥のコーナーのテーブルに案内します。
「よかったわね」とトゥルーはホストの言葉にがっかりしたハリソンにささやきました。
「よかっただろ?」リチャードは皆を促した後言いました。
「楽しい家族の食事会だ。
 また一緒に大きくなった子供たちと食事をするのもいいものだな。
 私たちはこれまで何年も離れ離れで過ごしてきた。
 お互いその償いをしようと思う」
「それがあたし達の欠点ね」とトゥルーが指摘しました。
「パパの家族はここにはこないの?」
「私たちの家族だ、トゥルー」、とリチャードは緊張した微笑で訂正しました。
「みんな家にいる。今回は四人になりたかったんだ」
「それで、話って何?」トゥルーは尋ねます。
トゥルーは早く事を終わらせようと、核心をついてきました。
最近彼女たちは父親と何回か食事会を行っていました。
その度に口論となり、一晩中こんな事が続いていました。
「何をだね、トゥルー?」リチャードは返事しました。
「子供たちと一緒に楽しい家族の食事会だ。
 そして、後で、お前たちのためにサプライズを用意している」
「どんなサプライズ?」メレディスは少し疑い深く尋ねました。
彼女は店内をざっと見回しました。
トゥルーは父親がメレデスの見合の相手を用意しているのではという感じがしました。
彼女はしばらくの間、結婚についての話を我慢していました。
そして父親が何かを企んでいる事は容易に察しがつきました。
注文した食事が到着し、トゥルーは父親が質問を避ける事に成功したことに気付き損ね、メレディスはまだ店内を見回していました。

食事会はかなり心地よく過ぎ去りました。
ハリソンはもう仕事を持っているのかと尋ねられることはなく、
トゥルーも生活の事をああだこうだとやかましく言われない事に気付きました。
そしてメレディスも誰かいい人がいないかとの話もありませんでした。
トゥルーが分かった事は、今まで自分達と談笑している男が今までの数年間に渡って知っている父親のようではないということでした。
トゥルーはメレディスとハリソンが父親のサプライズの発表をする頃には、二人とも父親に心を惹かれているのを見て深く疑いました。
「バカンスだって?」ハリソンは尋ねました。
「俺達4人だけでか?」
「そうだ」とリチャードは微笑しながら答えます。
「一週間のクルーズを、我々だけでだ。
 いい休暇になるぞ」
「あたしは仕事があるから」とトゥルーは指摘しました。
「私もよ」とメレディスもトゥルー以上のガッカリした顔で付け加えました。
「お前たちが1週間、休暇をとることができると信じてるよ」とリチャードは強く主張しました。
「娘が二人ともいないなんて事はよしてくれよ」
「私は有給休暇をとれると思う」とメレディスはトゥルー越しに明るい微笑で答えました。
トゥルーはメレデスを無視しました。
唐突な申し出に、彼女はいつもやり直しのためデイビスを度々一人で残していました。
そのため、彼女は働かなければなりませんでした。
「デイビスは休みをくれるさ」とハリソンはトゥルーが父親に答える前に言いました。
「なあ、姉さんもそう思うだろ」
「目的は何?」トゥルーは冷やかな表情で父親に尋ねました。
「何もないさ」と彼は悲しそうな微笑で答えました。
「残念だよ、お前がそういう見方しかできないとはな。
 私としてはお前たち三人とこの一週間のバカンスを楽しみたいだけだ」
彼女は納得できませんでした。
それはいつもの父親とは異なり、意外でした。
何かしらの目的があるはずですが、彼女はそれが何なのか分かりませんでした。
彼女はもう一度、クルーズの事を楽しみにしているメレディスとハリソンを見ました。
自分達を集めて何を企んでいるのか?
トゥルーはもし父親が何かを企んでいたなら、彼女としては一緒に行き何か事が起きないようにするのがいいと思いました。

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「パパは何かを企んでいるわ」とトゥルーはこれで何十回目かの言葉を繰り返しました。
「そればっかだな」ハリソンは父親がチケットをとったクルーズ船が就航に向けてやってくるはずのドックで座って待っていました。
「今まで誰かに、疑い深い奴って言われなかったの?」キャシー、とハリソンの新しいガールフレンドがトゥルーに尋ねました。
ハリソンがにっこり笑った間に、トゥルーは目を泳がせて答えました。
トゥルーはおそらくキャシーは見送りに来たのだと思いましたが、ハリソンの目的はは父親を悩ませようとして連れて来たのだと思いました。
トゥルーもハリソンも父親が定職も持たないものが彼女を作るとは何事だと言うに違いない事を知っていました。
食事会のレストランの席でキャシーの名前が出た時、ハリソンは彼女がインテリアデザインの仕事をしているとは言わずに、
ダイナーでウエートレスとして働いているとだけ話していたのをトゥルーは思い出しました。
父親は今までとは態度が打って変って機嫌がよく、若いうちは遊びまわるものだと言い、
挙句の果てには自分の若いころの事を持ち出しました。
トゥルーとハリソンはお互い目を丸くして驚きました。
それでハリソンは見送りにキャシーを連れて来ることに決めたのでしょう。
トゥルーはハリソンが無茶をしないことを望みました。
自分達家族の問題が他の者達に飛び火しないことを。
彼女は父親がハリソンとリンジーの事で引き起こした問題を思い出しました。
しかしトゥルーのやり直しのおかげでハリソン自身は覚えていませんでした。
今回は傷つくのははキャシーではないでことを希望しました。
メレディスは手荷物を持ってすぐにやってきました。
ハリソンはキャシーに別れを告げる事に夢中でした。
「ああ、お願いだから個室があってよ」とメレディスは父親がタクシーで到着したときにつぶやきました。
「ああ、みんな、揃ってるな」とリチャードはタクシーからケースを引き出しながら言いました。
「君は、キャシーだね」とリチャードはいつもの調子とは異なり、友好的な微笑で黒い髪の少女を歓迎しました。
「君は今週いっぱい、ハリソンと離れているのが平気かね?
 一緒に来たらどうだい?」
「家族旅行じゃなかったの?」メレディスはウエートレスに向かって軽蔑的なしかめっ面で尋ねました。
トゥルーはメレディスがほとんどキャシーの事を知らない事を思い出しました。
メレディスはハリソンが彼女と付き合う事を知った時に、また別の娘に乗り換えたぐらいにしか思っていませんでした。
「彼女は家族も同然じゃないか」とリチャードは微笑で言いました。
トゥルーはキャシーがハリソンのニヤニヤした笑いを抑えつけようとしたのを見守りました。
「私は仕事がありますので」とキャシーは表情を元に戻して、残念そうに頭を振って答えました。
「では、次の時は?」リチャードは嬉しそうな微笑で尋ねました。
トゥルーは尚いっそう疑い深くなっていくのを感じました。
何かがおかしい、何かいつもの父親の態度とは違うと感じました。
しかし父親の態度からは何も不自然さは感じられませんでした。
トゥルーは自分の荷物を持つと、キャシーがさようならを言い。とリチャードの乗って来たタクシーに乗って彼女は帰っていきます。
トゥルーの疑いは非常に増してきていました。
そして彼女が父親を見た時、リチャードが腕をハリソンの肩に回し「いい子を見つけたな」と嬉しそうに言うのを見ておかしいと思いました。
トゥルーが唯一面白く感じたのは、メレデスとハリソンが船に乗り込んだとき二人とも不安そうな顔つきをしたのを見たときでした。

第2章。
船が離れ始めると、トゥルーは手すりに寄りかかって立っていました。
彼女は下の群衆に向って手を振る他の乗客とは異なり、まだ何かが正しくないという感じを振り払うことができませんでした。
彼女は誰かに見つめられていると感じ、首筋をさすりました。
それは先月からずっと感じていたもので、誰かが彼女を秘密に調べているのではという感覚が強く、彼女は胃が痛みました。
彼女は向きを変えずに、想像をしています。
彼女は今までの数ヶ月間、ジャックが彼女の後をつきまとっているのを感じていました。
後ろにジャックの気配を感じても、現実的にはジャックが後ろにいるはずがないのは分かっていましたが、
それでも自分が正しいと思っていました。
振り返っても後ろにジャックの姿を見つけられないだけで、彼女が振り向いた瞬間ジャックは人ごみにまぎれて姿を隠してしるだけだと。
それでも1、2回ぐらいは路地や出入り口で何かを感じ振り向いたときにジャックが屈んでいるのを見つける事ができました。
「何か悪いことか?」ハリソンは彼女の隣で埠頭の群衆に向かって手を振りながら尋ねました。
「なんでもない」とトゥルーは用心深く答えました。
「ただ悪い予感がするだけ」
「まだ誰も死んでないだろ」とハリソンが彼女の耳にささやきました。
「だから少しはリラックスして、楽しんだらどうだ。
 俺たちよりも姉さんの方がこういう事が必要なんだぜ」
「ありがと、ハリー」トゥルーは彼にほほ笑んで軽く抱きしめると、
無理に笑顔を作って群衆に向って手を振りました。

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「相部屋なの?」父親がメレデスとトゥルーを部屋に案内したとき、メレディスはショックで尋ねました。
「お前が嫌がるとは思わなかったな」とリチャードはわずかにしかめ面で言いました。
「お前たちが子供だったころは、一緒の部屋だったろ」
「あれ以来、嫌になったの」とメレディスは憤慨しながら窓際のベッドにスーツケースを置いて開けながら言いました。
「たった1週間でしょ」とトゥルーが言います。
「そのぐらいの期間なら何とかうまくやっていけるわよ」
「それはケンカしないって事か?」ハリソンはドアに頭を押しつけながら笑って尋ねました。
「あたし達は大丈夫よ」トゥルーも手荷物に向きながら事務的な口調で言いました。
「私たちは廊下の向い側だ」とリチャードは向かいのドアを開けながら言いました。
「分かったわ、パパ」とトゥルーはうなずきました。
リチャードは踵を返して自分の部屋に行きます。
ハリソンはしばらくの間残っていましたが、トゥルーの不気味なしかめ面のせいで、何か言おうとしたことをだまりました。
そして父親と同じように部屋へ行きます。
トゥルーは部屋に備え付けのタンスにスーツケースの中身を移すことにしました。
ハリソンが後ろ手にドアを閉じると、部屋にはメレデス以外にいないはずなのに見られている感じが続いていました。
それは不安に駆られての空しい思いであったのかも知れませんでした。
彼女は今週は異常な力の事を忘れようとする努力をしなければならないと思いました。
一日をやり直す体験から離れ休憩をする事が彼女には必要でした。
豪華客船で丸一週間何も心配せずに過ごすことを。
「やりたい事が沢山あるわね」とメレディスが部屋に置いてあったパンフレットと旅程にざっと目を通しながらベッドに横たわって言いました。
トゥルーは一瞬、もしやり直しの日だったら、メレデスが不意に話し出した内容が分かっていてすぐに姉の考えを察知できたと思いました。
「最初に何をしたいの?」トゥルーはインフォメーションのリーフレットを拾い上げて目を通しながら尋ねました。
「何か食べたいわね?」とメレデスが言います。
「今朝は朝食を抜いてきたし、おいしそうなメニューじゃない」
「そうね」とトゥルーは同意しました。
トゥルーも今朝は父親の事で心配をし朝から何も食べていませんでした。
二人が荷物を片付け終わると、トゥルーはハンドバッグを持ってメレデスの後についてドアから出て行きました。
メレデスが目の前のドアをノックしてハリソンが出てくるまでの間に、トゥルーは客室のドアに錠を掛けて2度も安全かどうか確かめました。
「私たち、何か食べに行くんだけど」とメレディスが彼に言いました。
「あんたも一緒に来る?」
「俺が食い物の事で断るわけないだろ?」ハリソンはにっこり笑いました。
「一緒に行くよ。
 だけど、親父がさっき出て行ったんだ。
 何かを確認しに行くって」
「何を確認するって?」トゥルーは尋ねました。
「あたし達ついさっきここに来たばかりじゃない。
 パパは何を確認しに行く必要があったのかしら?」
「俺は知らないよ」とハリソンが答えました。
「聞きもしなかったし」
「他には何か言ってなかった?」トゥルーは質問しました。
「いいや」とハリソンは肩すくめて答えました。
「すぐに戻って来るんじゃないか。
 俺たちがどこに行ったか、メモを残しておけばいいさ」
「オーケー」とトゥルーは弟の部屋に入り、しばらくしてから出てきました。
「こんな事って変だとは思わない?」トゥルーは尋ねました。
「あたし達のために突然バカンスだなんて」
「まあ、おかしいとは思うわ」とメレディスが同意しました。
「でもどうして素直に受け取れないの?」
「おかしいと思うからよ」とトゥルーはぼそぼそ言いました。
メレディスは目を泳がせます。
「リラックスしようぜ」ハリソンが再び彼女にアドバイスしました。
「金は全部親父持ちだし、死体もないんだしさ」
メレディスは弟に眉をひそめました。
「これから食事しようっていうのに、どうして死体の話なんかするの?」
「悪かった」とハリソンは反射的に謝りました。
トゥルーとハリソンは共にメレディスがトゥルーが死体安置所で働いていることが嫌だというのを知っていました。
メレデスは弟は違ってトゥルーに会うために死体安置所にはめったに立ち寄りませんでした。
トゥルーが働いている事に彼女が興味を示さないのは特に不快ではありませんでした。
しかしメレデスは妹の会社で一度デイビスとの悲惨なデートをした後、特に行こうとは思っていませんでした。
彼らは父親が後から来る事を想定して客船のレストランを目指しました。

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「お前は近づき過ぎだぞ」とリチャードは客船のバーの一室で彼の真向かいに座った若者を批判しました。
「あの子はお前を感じ取っていた。
 そのせいであの子は気分を害している」
「俺は彼女には会ってないぜ」とジャックはリチャードが頼んでおいたウイスキーを手に取り答えました。
「不注意過ぎる」とリチャードが続けました。
「二度目は許さんぞ。
 お前がここにいるのをあの子に知られてはならん」
「それで、もし彼女が知ったらどうするんだ?」ジャックは言い返します。
「私とお前を結ぶ線はあの子は知らない」
「リスクが多すぎる」とリチャードは自分の飲み物をとって答えました。
それは彼らがプレーしていた危険なゲームでした、そしてその危険性はジャックもよく知っていました。
リチャードの財政状態は彼の妻が死んだ日から下降状態でした。
彼自身もやり直しの力を失ったからです。
今の彼には財産がほとんどありませんでした。
彼はジャックを見つけるために、そしてそれまでの間、トゥルーを監視するのに、
そして今回このクルーズを行う事によって彼の財産は破綻しかけていました。
残念なことにジャックはまだやり直しをする事に不慣れでした。
問題はジャックがバランスを崩さないようにしているにも関わらず、トゥルーの方が命を救うことに成功する事が多かったからです。
彼はトゥルーが犠牲者を助け続けるなら、ジャックのやり直しは終わってしまい、別の人間にその能力が移ってしまうという事を知っていました。
彼は妻を殺すように仕向けた事で、間違いを犯してしまいました。
彼はその時は妻が死んでしまう事で自分自身のやり直しも終わってしまう事に気付きませんでした。
そのため彼はやり直しの知識を使い株で儲けることが出来なくなってしまったのです。
ジャックのやり直しに助言を与えてきたのは、ほんの手始めでした。
彼がかつてのように元通りに戻るにはもうしばらくかかるでしょう。
リチャードとジャック二人の目的は、犠牲者を救うトゥルーの努力を止めることであり、ジャックのやり直しを有利にすることです。
リチャードは子供たちに背を向けていた時期に妻の能力がトゥルーに移ることは知りませんでした。
彼は後悔の念に満ちて自分自身に言い聞かせましたが、
トゥルーが彼女の母親の能力を、そして母親と同じ使命までを受け継いだのは自然の流れだと思いました。
もしその事を知っていたなら彼は妻をそのままにしておいたでしょう、そして多分違った展開になった事でしょう。
しかし今となってはそれも遅すぎでした。
トゥルーはすでに母親の運命を受け入れ、ジャックが彼女に人の運命を変えれば何かが変わるといった事を彼女は受け入れませんでした。
しかしそれはまだ彼らが負けていることを意味しませんでした。
リチャードは前にトゥルーの代わりにハリソンがやり直した事を思い出し顔に笑みを浮かべました。
ジャックはその時、戦いに負けましたが彼らが得たものははるかに大きなことでした。
トゥルーは彼女なりのやり方をするかもしれません、しかしハリソンはそうではありませんでした。
もし次にハリソンがやり直しをした時、迷わずにトゥルーに助けを求めに行くでしょう。
しかし今回のこのクルージングで息子を違った方向に向かわせるために仕組んだものでした。
リチャードはジャックになんと言っていいか待たせている間に飲み物を飲み物を終えました。
「お前は見られないことに注意しろ」とリチャードはバーにコップを返しながら言いました。
「俺をのけものにするつもりか」とジャックが強く主張しました。
「ここで何が起こっているのか教えろよ」
「お前は知るべき事を知っていればいい」とリチャードはそう言い残しバーを後にしました。
ジャックは飲み物を終えてもう一杯注文しました。
彼はリチャードの要請でここにいました。
しかし彼はリチャードの操り人形のように感じていました。
ジャックはやり直しの力の事は全く知りませんでした、それと同じぐらいリチャードの事も知りませんでした。
彼は何も知らされずにただ待っているのは好みではありませんでした。
ジャックはずるい賢い笑みを浮かべ思いました。
トゥルーに姿を見られないように言われたからといって、それは彼女の姉にもそうだという事ではないと。

第3章。
「これこそ生きてるって感じだな」とハリソンはその日の午後遅にトゥルーとプールのそばでリラックスしながら言いました。
「ふーん」トゥルーは目を閉じたまま微笑しながら答えました。
「もし親父が普通の事として誘ったとしたら」とハリソンが言いました。
「いいと思うだろ…?」
ハリソンの声はトゥルーが不安そうなしかめっ面をしたのを見て段々と小さくなっていきました。
「あんたは突然パパがこんな事をしておかしいとは思わないの?」
トゥルーは目を開いて弟の顔をじっと見るために体を起こしました。
彼女一人が疑っているだけなのか?
「なあ、いいかげんにしてくれよ、姉さん、親父にもチャンスをやろうぜ」とハリソンが言いました。
「親父は今までの詫びをしようとしてるんだ」
「あたしには何か魂胆があるように思えるわ」とトゥルーはつぶやきました。
「まあ姉さんが元気になればいいさ」ハリソンはにっこり笑いました。
トゥルーは眉を上げて答えました。
「あそこにいるライフガードがずっと姉さんを見てるぜ」とハリソンはトゥルーの右側を見てうなずくと、
彼女は振り向いてライフガードを見ます、するとライフガードはすぐに目を逸らしました。
「俺がここから離れたら、あいつはここにきて姉さんに話しかけに来るぜ」とハリソンはいたずらっぽく微笑んで言いました。
「少し、船旅でのロマンスが姉さんには必要なんだよ」
「必要ないわよ」とトゥルーはそう言いながらももう一度こっちを見ていたライフガードの方をちらりと見てしまいます。
「なあ、姉さん、少しは楽しめよ」とハリソンは立ち上がって、退屈そうにその辺りを見回しながら言いました。
弟から投げかけられた言葉に彼女はフラストレーションで見守りました。
「後でな、姉さん」と彼は姿が見えなくなる前に言いました。
「本当にもう」とトゥルーはつぶやきました。
最初、父親はオーバーナイトで個人的な計画を持っていました。
今彼女の弟はキューピッド役を演ずることに決めていました。
再び横になり目を閉じて心から父親の事を振り払おうとしました。
数分後、涼しさで誰かが彼女の前に立って影を落としているのに気づきました。
彼女はハリソンを怒ろうと目を開きましたが、ハリソンの予測通り彼が行ってしまうとすぐにライフガードが彼女に近づいてきていました。
「やあ」ライフガードはピートという名前が書いてあるシャツをきていて、晴れやかな微笑で彼女に挨拶しました。
「クルージングを楽しんでるかい?」
トゥルーは微笑して、彼が本当の事を聞きたいかと一瞬思いました。
彼女が答える前に、彼はまた口を開きました。
「聞いた方がヤボだったな」と彼はさっきまでハリソンが座っていたデッキチェアに座って言いました。
「もちろん君はクルージングを楽しんでいるはずだな。
 天気はいいし、君は彼氏と一緒だし。
 それなのにどうして楽しそうじゃないんだい?」
「彼氏?」ピートがハリソンの事を彼氏と間違えた事に気付かずトゥルーは驚いて尋ねました。
彼女は声を出しながら考え、船に乗ってから初めて本当に心の底から喜びの笑いをしました。
「だってそうだろ?」ピートは笑みで尋ねました。
「弟よ」とトゥルーが説明しました。
「家族でバカンスなの」
「たった二人で?」
「違うわ。
 あたしとハリソン、姉さんとパパよ」
「陸地で待ってるんだろ?」
「ハリソンは彼女を待たせてるけどね」とトゥルーが答えました。
「君には待っている人がいるのかい?」
「上司だけよ」とトゥルーが微笑しながら答えました。
「あたしトゥルー・デイビーズ」
「ピート・ローリングスだ」とピートは遅すぎる自己紹介をしました。
「それで今晩は君をディナーに誘ってもいいかな、トゥルー?」
「パパが家族のために何か計画してると思うわ」とトゥルーは本当に後悔したように言いました。
「明日なら?」
「いいわよ」とトゥルーが言うと、ピートは立ち上がってプールサイドの元いた位置にもどりました。
トゥルーは再び横になろうとしましたが、もうプールにいたいとは思いませんでした。
立ち上がって、彼女はピートの脇を通りながら手を振って、そして家族を探し始めました。

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メレディスは上の階のデッキ沿を歩き、手すりに寄りかかり下のプールサイドを見下ろしました。
トゥルーとハリソンがプールサイドに座っていました。
彼女は嫉妬したような眼差しで彼らを見ていました。
彼女は自分の妹弟が嫌いでした、しかし彼女は一度も彼らの中に溶け込もうという事はしませんでした。
いつも妹と弟二人で行動をして、彼女は常に外野からそれを見ているだけでした。
しばらくその様子を見ているとハリソンが立ち上がって行ってしまったのを見ました。
彼女は弟を追うかと思いましたが留まりました。
「君みたいな美しい女性が豪華客船に乗って一人で何をしてるんだい?」
そう言った男の声にメレディスは自分に話しかけているのかと思い振り向きました。
それはジャックで、魅力的な笑みを浮かべ、プールサイドを見下ろしました。
「誰か知り合いでもいたのかい?」と彼はライフガードの1人がトゥルーに話かけているのを見ながら尋ねました。
「妹よ」とメレディスは肩をすくめて答えました。
「君の方がお姉さんか?」ジャックはもう一度魅力的な笑みで尋ねました。
使い古されたセリフでしたが、メレディスは微笑しました。
「君は家族と一緒にいなくてもいいのかい?」ジャックは手すりから離れてメレディスに尋ねました。
「残念だけど。妹と一緒の部屋よ」
「彼女と一緒に来たの?」彼らは歩きながらメレディスが尋ねました。
「残念だけど」とジャックが答えました。
「僕は一人で来たんだ。君と同じように」
「昼食でもどう?」彼らがレストランに近付いたとき、メレディスは尋ねました。
「喜こんで」とジャックは彼女のためにドアを開けて答えました。

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トゥルーは全くメレディスを見つけだすことができませんでした。
しかし小さなカジノでハリソンと父親を見つける事ができました。
彼女は窓越しに中を見てから中に入って、彼らに会うことはないだろうと思いましたが、
ポーカーテーブルにいるハリソンを見て眉をひそめました。
彼はもう何か月もの間、ギャンブルをするのを止めていました。
それなのにたった数時間、船に乗った事で彼はポーカーテーブルに座っていたのです。
彼女は今まで一度も彼にギャンブルを止め困難な仕事をする決意を褒めた事がありませんでした。
もしそうしていたならきっと変わっていたかもしれないと思いました。
「ハリー、話してもいい?」彼女はテーブルに近づき彼に言いました。
彼が振り返ると、彼の顔は蛍光灯の光ででわずかに紅潮をしていました。
彼女はそれが罪悪感からか、それともいい手を持っているための興奮からかどうか迷いました。
「待っててくれよ、姉さん」彼は明らかに気が散っているように返事をしました。
「外で話すわ」とトゥルーが言うと、彼はカードを2枚捨てディーラーから2枚カードを受け取っていました。
彼女は外へとゆっくり歩きながら、どうしてハリソンを見張っていなかったのか?
第一テーブルの近くに父親がいたにもかかわらず父親はハリソンに対して何も言わなかっことにも腹が立ちました。
そしてハリソンにも、簡単に昔の悪い癖に心を動かされるのにも腹が立ちました。
「俺の言った通りにならなかったのか?
 あいつは姉さんを誘ったんだろ?」外に出るとすぐにハリソンは尋ねました。
「ええ、明日一緒に夕食を食べることになったわ」とトゥルーが答えました。
「あんたこそ、あそこで何をしてたの?」
「勝ってた」ハリソンはにっこり笑いました。
「親父が俺に教えてくれたんだ、俺は思ってもいなかったけど」
「そういう意味じゃなくて」とトゥルーは彼の腕をつかんで、急いでカジノから離れさせようとしました。
「あんたは今までギャンブルをしなくても順調にやってきたじゃない。
 パパがあんたに教えたからって、やることはないんじゃないの?」
「なあ、姉さん、俺たちはバカンスに来てるんだぜ。
 少しぐらい楽しんでもいいんじゃないか」
「楽しむ?」トゥルーは叫びました。
「ギャンブルはだめよ、ハリソン。
 あんたはまた中毒患者みたいになりたいの。
 中途半端なギャンブルなんかできないくせに。
 その事はあんたが一番よく知っているはずよね」
「俺はいつでもやめられるよ」とハリソンが反論しました。
「そこが問題なのよ、あんたにはできない」とトゥルーはハリソンの気持ちを変えようと強く言いました。
「親父が…」
「パパはこの数年かろうじて近くにいただけじゃない、それがどうして?」
「ただのポーカーだぜ」とハリソンが言いました。
「誰も傷つくわけじゃない」
「自分を傷つけてるわ」とトゥルーが指摘しました。
「あんたは今、あたしを早く追い払ってあの場所に戻ることばかり考えてるんじゃないの?」
ハリソンはトゥルーから図星を指され、紅潮した顔を隠すのに頭を下げました。
「あんたは自分で止める事が出来ないから、バカンスの間中毎日あそこに行くはずよ」
「いざとなったら親父が何とかしてくれるさ」とハリソンが言いました。
「それに他の客だって同じだろ」
「パパだってあんたをあのテーブルに近づけさせるべきじゃなかったわ」とトゥルーが強く主張しました。
「あんたはどうやったって自分自身をコントロールできないんだからパパがあんたを遠ざけてくれないと」
「なあ、姉さん」とハリソンがいつもの温和な表情を強張らせて言いました。
「これはバカンスだぜ、命の洗濯だ。
 それにこれはただのトランプ遊びだろ、大したことじゃないぜ。
 自分の事ぐらい自分で面倒をみれる」
「何か問題か、トゥルー?」リチャードが二人に近づいて尋ねました。
「パパ」とトゥルーは弟から目を離し言いました。
「あたしはハリソンがギャンブルするのがいいとは思えないの」
「ただのポーカーだろ、トゥルー」とリチャードが答えました。
トゥルーは父親がハリソンに味方をするのを聞いて、本能的に自分が間違っていたことを悟りました。
ハリソンは最初、父親と一緒にカジノに入るのを拒んでいました。
しかし残念なことに彼の意志力は父親をガッカリさせさせる事ができませんでした。
彼女が父親に振り返ったとき、彼女は怒りが再び増大するのを感じました。
「ギャンブル中毒の人間にとっては、決してただのゲームじゃないわ」と彼女はきつい声で言いました。
「もしパパがこの数年もう少しあたし達の事を見ていてくれたらわかってくれたんでしょうけど」
「私は過去を変える事はできない、トゥルー」とリチャードは悲しそうに言いました。
「ただこれからのお前たちを見ていくことしかできないんだ」
「ハリソンにコントロールするように何カ月もの間、そばに置いて仕事をさせてたのよ」トゥルーは反論しました。
「俺がここにいるのに俺の話をするなよ?」ハリソンは尋ねました。
「俺はもう子供じゃないんだぜ」
「一人前の口をきくのはやめてよ」とトゥルーが返答しました。
「パパはあんたがどれだけギャンブルでひどい目にあったのか知らないかもしれないけど、あたし達は知ってるわ」
「だからコントロールできるって」とハリソンが反論しました。
「分かった、もういい」とリチャードは彼らの間に踏み出して言いました。
「トゥルー、これは家族のバカンスだ、ハリソンだって自由に過ごしたっていいじゃないか。
 お前はカジノに戻ってなさい、私もすぐに行くから」
ハリソンはうなずいてカジノの方に引き返しました。
トゥルーは彼が行くのを見て、誤解を解こうと彼の後に続き始めました。
「待ちなさい、トゥルー」とリチャードは手を穏やかに彼女の腕に置いて言いました。
ハリソンがカジノにドアを通って姿を消したとき、彼女は父親に振り返りました。
「お前がハリソンのことを心配しているのは分かっている、だが24時間あの子を監視し続ける事はできないんだぞ」
「パパ、あの子はギャンブルに狂ってるの」
「知っているさ」とリチャードが答えました。
「だがお前ではあの子は救えない。
 あの子自身の問題だ」
「それじゃパパはハリソンを試してるの?」トゥルーは尋ねました。
「あの子がどれだけ簡単に元に戻るか?」
「そのようなものだな」とリチャードが言いました。
「お前は正しい。
 私の経験からこの数年にはそんな事はなかった。
 でもこれからは変わる。
 私はあの子の問題がどれぐらいなのか見たいんだ、そして次にあの子のためにプロの助けを借りようと思う」
「あの子は独力でうまくやっていたわ」とトゥルーが指摘しました。
「もしそれが本当なら、今頃あの子はポーカーテーブルにはいないだろうな?」リチャードは応じました。
「私を信じなさい、トゥルー、あの子はまもなく必要な手助けを受ける事になる」
「でもあの子にギャンブルをあおるような事はいい考えとは思えない」とトゥルーが強く主張しました。
「まあ、どうなるのか見ていなさい」とリチャードが答えました。
「お前はこれまであの子にずっと手を差し伸べてきたんだ。
 パパにしばらくの間、子供たちの面倒をみさせてはくれないか?」
リチャードはトゥルーを軽くたたいて、ハリソンの後に続くために振り返りました。
彼はドアのところで立ち止まり嬉しそうな顔でトゥルーに振り返りました。
トゥルーは弱く微笑して再びメレディスを見つけるために踵を返しました。
彼女は父親が何をしようとしているのか知りたいと思いました。

第4章。
その日の夜の遅く、トゥルーはまだメレディスを見つける事ができませんでした。
彼女は船内を1時間ほど探し回り、別のエリアを探しに行こうとした時、メレデスはここからいなくなってしまったんじゃないかと思いました。
彼女は一瞬船の外に落ちてしまったんじゃないかという妄想に自分を叱責します。
ハリソンは正しかった、彼女はもっとリラックスする必要がありました。
それで彼女は夕食に行く前に客室に戻ることにしました。

トゥルーが化粧直しを終えるころためらいがちなノックが聞こえました。
「どうぞ」トゥルーは鏡から顔を外さずに言いました。
彼女が口紅を引き終わった時、ハリソンが部屋に入ってきてドアを閉めました。
彼は彼女にすまなそうな表情をして部屋の向こう側に立っていました。
しかし彼は言葉を発する事ができませんでした。
「いつノックしようと思ったの?」トゥルーは笑みで尋ねると、弟の顔に安心した表情になりました。
彼は部屋を横切ってトゥルーの隣りのソファーの席に着きました。
彼が近くのテーブルの上に足を乗せたとき、彼女は彼をにらみつけましたが彼は気づきませんでした。
『まあ、自分のじゃないからいいか』と彼女は思いました。
「夕食にそれを着ていくのか?」とハリソンはトゥルーを見て尋ねました。
「もちろんよ」とトゥルーが答えました。
「親父の好きそうな格好だな」とハリソンが皮肉に言いました。
「パパがどう思うと気にしないわ」とトゥルーは手早く髪をブラシで梳かして言いました。
「あたしが着たいと思ったんだから着るわ。
 パパが普通の親みたいに心配するにはもう遅すぎるわ。
 それにあたしに何を着ろとか着るなとか言われる歳はとっくに過ぎてる」
「オーケー」ハリソンは参りましたというように手を上げてゆっくり話しました。
トゥルーはハリソンにあの後どうしたのか聞きたくて口を開き始めましたがすぐに閉じました。
もし話せば喧嘩になるのは分かっていました。
それにハリソンがなんというか分かっていました。
彼女が彼の横のソファーに座れるように彼は少し移行しました。
「あの後ポーカーをずっとやってたわけじゃないよ」と彼が静かに言いました。
「でも少しはやったのね」トゥルーは安堵のため息をつきました。
「いくら負けたの?」話題が彼から持ち出されたのでトゥルーは尋ねました。
「実は勝ったんだ」とハリソンは微笑んで言いました。
「ほら」と彼はポケットに手を入れて言いました。
トゥルーは彼が手渡した小さな平たい包みを見ました。
「これは何?」と彼女は驚いてそれに手を伸ばしながら尋ねました。
弟は誕生日や記念日にプレゼントを忘れることで有名でした。
ハリソンがリンジーにプレゼントを渡した時も適当な物を贈ってうんざりされていました。
感謝すべきことにやり直しの日にハリソンはトゥルーの助言とジャックが干渉したおかげで失敗をしないで済みました。
「言わない」ハリソンは笑いながら言います。
「開けてみろよ」
トゥルーはパッケージを破ってあけると中に新しい商品が入っていました。
それはドアにかけておく「じゃまをしないで」というサインボードでした。
しかし普通の簡素な物とは違い、2匹のうさぎと沢山の赤ちゃんうさぎの面白い写真つきでした。
「万一に備えてさ、明日の晩はよくしたいだろ」とハリソンがもう一度微笑んで言いました。
「それに俺自身のためにな、普段俺がノックしないの知ってるだろ」
トゥルーは笑いながら彼を横目で見ました。
「あたしがここに男を連れ込んだのを姉さんが何かいうかもね」
「それでもいいんじゃねーの?」ハリソンは尋ねました。
「もちろんよ」とトゥルーが答えました。
「パパはあんたを助るって言ってたけど」
「俺はまたギャンブルに戻るつもりじゃなかったんだ。
 俺は勝つための方法を、相手がはったりをかましたり、相手の表情を読んで予想をしたりするのを忘れてた。
 今思い出したよ。クソッ!」
「ねえ、ハリー」とトゥルーは悪い予感が当たったと思い言いました。
「心配しなくてもいいよ。
 あたし達が何とかしてあげるから。
 世界が終わったわけじゃないでしょ。
 ただの遊びじゃない」
「午後の間中ずっと続いたんだ」とハリソンがうなり声で言いました。
「暗くなり始めるまで気がつかなかった。
 昔と全く同じだった」
「心配しないで」とトゥルーが繰り返しました。
「あんたをポーカーができないように忙しくさせてあげるから」
「ありがとう、姉さん」とハリソンが言いました。
「ええ、まあね、あたし達は一蓮托生よ」とトゥルーは彼に抱擁をして言いました。
「見ていてもいいものだな」とリチャードが出入り口から言いました。
「皆うまくやっているようだな。
 夕食に行く準備はできているか?」
トゥルーはメレディスがまだ戻っていなかったことに部屋の向こう側を見て肩をすくめました。
「メレディスはいないのか?」リチャードはトゥルーの視線を追って尋ねました。
「今日一日会ってないわ」とトゥルーがしかめ面で答えました。
「皆は?」リチャードとハリソンは頭を振りました。
「姉さんを待とうか?」ハリソンは尋ねました。
「いや」リチャードは頭を振りました。
「あの子は我々がどこで夕食を食べているか知っているはずだ、おそらくそこで待っているんだろ」
トゥルーは眉をひそめました。
彼女はそこでメレディスに会うとは思いませんでした。
彼女はしばらくの間から客室に戻っていました。
しかしメレディスはまだ夕食に行っているようには思われませんでした。
いつものメレデスならそうなのかもしれませんが今回ばかりは違うのではと思いました。
メレデスがいつ帰ってくるか断言ができないのに彼女を待つことは少し無意味でした。
トゥルーは後ろ手にドアを閉じて夕食に向かう父とハリソンの後に続きました。

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「もう家族のところに戻らないと」メレディスはジャックとデッキを歩きながら小さなため息で言いました。
「どうしてだい?」ジャックは今朝二人が出会った場所に足を向けながらが尋ねました。
ジャックはその場所で彼女がトゥルーとハリソンが笑っているのを見ていた事を思い出させ、家族の元に帰る気持ちを変えようと思いました。
「私がいなくても大丈夫よね」とメレディスが言いました。
ジャックは心の中で自分のところに留まることを成功したことに喜びました。
「それならいいじゃないか」とジャックは歩き続けながら言いました。
「それで私たち午後からずっと私の事しか話してないけど」とメレディスが尋ねました。
「あなたはどうなの?
 ニューヨークで働いてるの?」
「差し当たり」ジャックは返事しました。
「今のところ特に難しい仕事があるんだ、でもそれが終われば都市から出て行きたい」
「それからどうするの?」
「分からないな」とジャックは思いにふけって言いました。
「ベガスなら僕の技術が役に立つかもしれない」
「どんな技術なの?」メレデスは再び尋ねました。
ジャックはニヤリと笑い、もう1つの魅力的な顔を見せました。
『リチャードがハリソンを操ることだよ』ジャックは心の中でつぶやきました。
彼はまだリチャードの計画がうまくいくとは思っていませんでした。
そして彼はもっと良いアイデアを持っていました。


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「乾杯」とリチャードはグラスを上げ言いました。
トゥルーとハリソンは彼に従いました。
「家族に」
「新しいスタートに」ハリソンは付け加えました。
トゥルーは合意でうなずき、飲み物を飲み干しました。
彼女はこの時、入口の方をちらっと見ましたが、まだメレディスの姿はありませんでした。
メレディスがいないというのに家族に対して乾杯することに多少罪の意識を感じていました。
「まもなく来るだろう、トゥルー」とリチャードはグラスを取り換えて言いました。
「おそらく新しく知り合った人と話し込んで、時間を気にしてないんだろ」
「ええ、たぶんね」とトゥルーはメニューに目を向け同意しました。
晩は十分心地よく過ぎ去りました。
トゥルーはお互いの近況に花を咲かせているリチャードとハリソンを見ながら自分自身がリラックスするのを感じました。
彼女は自分の事は多く語りませんでした。
しかし家族の二人の男性が談笑しているのを見ながら一緒に冗談を言って楽しみました。
彼女は父親が笑っているのを見て、父親が今のように笑っていたのはいつのことだろうかと思い出そうとしました。

ハリソンが父親に彼のいつもの面白い失敗談を話した時彼女は彼らとともに笑いました。
それは2年前の事であり、そしてどれだけの年月がたっていたのか悟りました。
多分ハリソンは正しかった。
そして彼女は父親にチャンスを与えるべきだと思いました。
彼らがレストランを出る時にはもうほとんど人がいませんでした。
メレディスは一度も現われませんでした。
トゥルーとハリソンはメレディスがもう戻ってきているかどうかトゥルーの客室に向かいました。
リチャードは若者にパーティーを委ね途中で中座しました。
トゥルーはリチャードがコーナーでハリソンを振り返り姿を消すのを見ました。
「なあ、よかっただろ?」とハリソンは彼女の肩に腕をかけ尋ねました。
「親父が本当に努力をしているのを認めろよ」
「ええ」とトゥルーは同意しました。
「チャンスをあげるわ」
「よかった」とハリソンが笑みで答えました。
「じゃあ、メレディス姉さんを見つけ出そう、そうすれば皆でパーティーに行ける」
トゥルーは客室のドアを開け中を見ると、すぐにメレディスがいなかったのを見ました。
「大丈夫ならいいけど」とトゥルーは心配そうなしかめ面で言いました。
彼女は部屋を見回しましたが、メレデスが戻ってきた形跡はありませんでした。
夕食に行く前と部屋の中の様子は何も変わっていませんでした。
「大丈夫だよ」とハリソンは肩をすくめて言いました。
「さあ、姉さん、この船にどんな夜の顔があるのか見に行こうぜ。
 もしかしたらメレデス姉さんもパーティーに行ってるかも」
「それが心配なのよ」とトゥルーが言いました。
「もう心配するのをやめてリラックスしてるんだと思ってたけど」とハリソンは非難します。
「心配するのをやめる?」トゥルーは尋ねました。
「そんなこと言ったら息をするのをやめろって言ってるようなものよ」
彼らが客室をでながらハリソンは笑いました。
「もし俺たち姉弟の中で息をするのをやめる事になるのは、間違いなく俺だな。
 そしたら姉さんがやり直しをして俺を助けてくれるんだろ」
「あんたにもう少し責任があったら、そんな事しなくてもいいの」とトゥルーは冗談を言いました。
「俺が無責任だっていうのか?」ハリソンは驚いたふりをして尋ねました。
トゥルーは本当に可笑しそうに声を出して笑いました。
彼らは混雑したダンス会場のバーに到着しました。
そして彼女はメレディスを探すために室内を見渡しましたが彼女の姿は見当たりません。
再び見回した時、ハリソンが飲み物を注文して代金を払っているのを見て彼女は驚きました。
「今日は勝ったって言っただろ」と彼は微笑んで言いました。
トゥルーは頭を振って再びメレディスを探しましたが、部屋の向こう側によく知った顔を見つけだしました。
彼女は頭に血が上って来るのを感じて、妄想を打ち消そうと頭を振りました。
彼女は妄想だと思い込みたいと思いました。
ジャックがこの船に乗っているはずがありませんでした。
「どうしたんだ?」ハリソンは彼女に飲み物を手渡して、自分のを飲みながら尋ねました。
「見た気が…」
「何を?」
「ジャックよ」
「また病気が始まったな」とハリソンは彼女に注意しました。
「酒でも飲んでみろって、そうすれば忘れちまうって」
トゥルーは飲み物を飲み、再び部屋の向こう側を見ました。
しかしそれは妄想でも何でもなく、部屋の向こう側で座って踊っている人たちを穏やかに見つめている、死神、ジャックでした。

第5章。
トゥルーが部屋へ帰るその後をハリソンは追いかけます。
ハリソンがついてきながらやかましく悪口を言いっているのを聞きました。
彼も同じくジャックを見つけました。
ジャックは何気ない微笑でトゥルーを見上げました。
ジャックは彼女に会って驚いているのか、あるいは彼女に見つかった事にいらいらしていると彼女は思いました。
しかしその表情は一瞬で消え、そして友好的な表情へと変わりました。
「これは楽しいクルーズだな?」ジャックはビールを飲みながら尋ねました。
「皆、友達同士だし、リラックスするには最高だ。
 そう思うだろ、トゥルー?」
「ええ、そうね」とトゥルーが答えました。
「あたしがもっとリラックスできるようにあんたに言っておくわ。
 船の外に飛び込んで」
「トゥルー、俺にいてほしくないって、それは傷つくな」とジャックはいつもの見せかけの調子で言いました。
「もし死神が飛び込むのを怖がってるんなら、俺が手伝ってやるぜ」とハリソンがにらみつけて言いました。
「ハリソン、冗談だろ。
 お前に俺が何をしたっていうんだ?」ジャックはもう1杯ビールを飲んで尋ねました。
「言って欲しいのか?」ハリソンは返事しました。
「お前さんは本当にいろんな事を学んだようだな」とジャックはため息をついて言いました。
「個人的な恨みはないと言ってるだろ。
 俺たちは友達同士じゃないか?」
「友達になった覚えはないわ」とトゥルーが指摘しました。
「あんたは初めから嘘をついていた、友達ならそんな事はしないわ」
「それなら汚点のない経歴はどうだ?」ジャックは尋ねました。
「今からやり直そうじゃないか」
「それはあんたが人を殺すのをやめるってこと?」トゥルーは見せかけの悪意のないトーンで尋ねました。
「運命を維持する事だ」ジャックは誤りを直しました。
「それはもちろんやり続ける。
 それが俺の仕事だからな」
「それな助けを求める人を救うのがあたしの仕事よ」とトゥルーが答えました。
「だからあんたが辞めるまであたし達は絶対に友達になんかなれないの」
「それならこうしちゃどうだい、この畝の上にいる間中は休戦して一緒にバカンスを過ごすってのは?」ジャックは妥協しました。
「こんなところに死体なんかあるはずないだろ?」
「奴の方が一枚上手だ」とハリソンがトゥルーにささやきました。
「あいつのためにバカンスを台無しにする気か?
 奴をほっぽって置いて楽しめばいんだ」
「あいつがどうしてここにいるのか分かればそうするわ」とトゥルーはジャックが質問に答えることを期待してジャックを見て言いました。
「俺には何もなければバカンスをしちゃいけないって言うのか?」ジャックは尋ねました。
「あたし達が乗ってる同じクルーズに偶然だって言うの?」トゥルーは皮肉に言い返しました。
「偶然の一致が多すぎるっていうんなら、あんたが何かを企んでるって事よ、何を企んでるの」
「ただ俺の友達を見てるだけさ」ジャックは微笑と肩をすくめて答えました。
トゥルーがハリソンを見るとハリソンは彼女以上に信じられないといった顔をしていました。
彼女はハリソンにグラスを手渡し、テーブルに手をつき立ち上がってジャックに向かって進みます。
「あたしから離れて、家族からも」と彼女が非難しました。
「あんたが何を企んでるのか分からないけど、そううまくはいかないからね」
「いいか、トゥルー、俺は君には興味を持ってないんだ」とジャックは突然会場中に聞こえる大声で言いました。
トゥルーは困惑した顔つきになり驚きました。
ジャックは立ち上がって彼女の肩に親しそうに腕を置きました。
トゥルーはその手を振りはらおうとしました。
しかし彼はテーブルと椅子の間を潜り抜け彼女がまったく動くことができない角に彼女を連れて行きました。
「何…」トゥルーは行方不明者だったメレディスの声がジャックから離れて聞こえだしました。
「トゥルー?」メレディスは尋ねました。
「何があったの?」
「すまないな、メレディス」とジャックが言葉をさしはさみました。
「俺はただ君の妹と弟に自己紹介してたんだ。
 一緒に今晩過ごすことができるんじゃないかと思ってね。
 でもトゥルーが理解してくれないんだ、俺がデイビーズのお姉さんに夢中になっていることを」
「あなたはジャックにちょっかいだすき?」メレディスはトゥルーをにらみつけて尋ねました。
「違う」とトゥルーがジャックの暗示に恐怖で答えました。
「こんな醜態を見せて申し訳ない」とジャックは頭を同情的に振ってメレディスに言いました。
「見ただろ彼女が俺に抱きついてきたのを?」
「そんな事はしてないわ」とトゥルーは再びジャックの腕を振り払い離れます。
「それって私への当てつけのつもり」とメレディスが言います。
「トゥルーはジャックなんかに興味は持ってないよ」とハリソンがトゥルーの援護をします。
「あんたならそんなふうに言うわね」とメレディスが軽蔑の鼻を鳴らし言いました。
「いつも一緒にいるから」
「それはどういう意味?」トゥルーはついにジャックの抱擁から離れ尋ねました。
「あんた達二人はいつも他人の入り込めない状態を作ってたじゃない」とメレディスがとげとげしく言いました。
「いつもあんた達二人で、ほかの人をのけものにしてる」
「そうじゃない」とトゥルーは心の中では姉より弟の方に偏っていたと思いながらも答えました。
彼女の能力の事については速くの段階からハリソンに打ち明けていました。
しかしメレディスにはまだその事を打ち明けていませんでした。
それは彼女が姉にこの問題に立ち入らないようにするためだと一瞬心によぎります、しかしそれだけのことです。
「私はハリソンの言い分なんて聞かないわ」とメレディスは弟を冷たい目で見て答えました。
トゥルーはハリソンに振り返り彼の足元を見ました。
彼らはメレディスが間違っている事を分かっていました。
しかしそれ以外の事については彼女の言い分が正しいと思いました。
「なあ、君たち、騒ぎはようそぜ」とジャックが言いました。
「皆で飲んで、トゥルーの誤解のことを忘れようじゃないか?」
「あたしの誤解?」メレディスがその提案を受け入れようとした時した時、トゥルーはきつく言いました。
「君がこんな事をして恥ずかしいのは分かる、トゥルー、でもその事は忘れるよ」とジャックは理解を示し言いました。
トゥルーはジャックを睨めつけメレディスの腕を引っ張って出て行こうとします。
「見張ってて」トゥルーは出て行くときにハリソンに命令しました。
彼女が最後に振り返るとハリソンはジャックに後をつけさせないようにしていました。
彼女はメレディスに何と言おうかと考えながら安堵のため息をつきました。
「一体なんだっていうのよ?」メレデスはトゥルーの腕を振りほどき尋ねました。
「私の事を1日中無視した上に、私が見つけた唯一の友達まで奪おうとして」
「ジャックなんか奪わないわ」とトゥルーはため息と共に言いました。
「あいつが嘘をついていたの、あいつの手口よ」
「どうしてそんな事が分かるの?」メレディスは尋ねました。
「ほんの少し前に彼に会ったばかりじゃない」
「あいつがそう言ったの?」トゥルーは尋ねました。
「じゃあそれが最初の嘘ね」
「もし彼が前にあなたに会っていたら話したはずよ」とメレディスがいら立ちの憤慨で言いました。
「でもそうじゃないの」とトゥルーが説明しました。
「他に何かを話してた?」
「それであんたはいつ彼に会ったの?」メレディスはバーに入っていく時にはすでに落ち着いて尋ねました。
「あいつは数カ月前に少しの間、死体安置所で働いてたの」とトゥルーが言いました。
「多分彼はあんたの事を忘れてたのよ」とメレディスが言います。
トゥルーは彼女に軽蔑の一見を与えました。
「忘れるはずがないわ、あいつはそれ以来ずっとあたしの事をストーカーしてたんだから。
 あいつの目的はあたしの人生に苦痛を与える事、そのためにこの船にまで乗ってきたの」
「ばかばかしい」とメレディスが答えました。
「彼は友好的だったわ、1日中感じが良かったもの。
 あんたのこんな行動がなかったら、あそこで彼とずっと一晩過ごしてたかも」
「あたしの言ってること聞いてる」とトゥルーはもう一度ため息で言いました。
「あいつの言った事は全部ウソなの、1日中姉さんに嘘をついてたの、そしてもしあそこに戻ればあいつはまた嘘をつく。
 それがあいつの手口なのよ」
「ばかばかし」とメレディスは繰り返し、トゥルーを通り越してバーに戻ろうとします。
「あいつは殺人犯よ」とトゥルーが出し抜けに言いました。
「あいつはルークの死に関して責任があるわ」
メレディスはその言葉に立ち止まり振り向きます。
「それって本気で言ってるの、トゥルー、私もルークが死んだことは知ってるけど。
 ジャックのせいにするなんて辻褄が合わないじゃない」
「姉さん、ジャックから離れて」とメレディスが後方のバーに戻ろうとするのをトゥルーは止めます。
トゥルーはメレデスの後に続いてジャックとハリソンを探しました。
しかし彼らの姿はどこにも見当たりませんでした。
彼女が出ようとした時、誰かが彼女の方を指さしてクルーに話をしていました。
「いったい何なの?」クルーが彼女に近づいて来た時トゥルーは言いました。
「少し前にデイビーズさんとハーパーさんという方とご一緒でしたか?」とクルーが二人に尋ねました。
メレディスが頷くのでトゥルーも頷きました。
「その方達はバーから御退出いただきました。
 この中での争い事は厳禁ですので。
 お二人ともクルーズの期間中はバーへのご入場はご遠慮いただくことになります。
 お二人がなぜケンカをなさったのかよく分からないのですが。
 何か心当たりでもございますか?」
トゥルメレデスもトゥルーはメレデスも頭を振りました。

It was easier than trying to explain the whole mess to a total stranger when she couldn’t even manage to explain to her own sister.
トゥルーは実の姉に説明することが出来ないのに、全く見知らぬ人間にこの内容は説明する事は無理でした。
二人の男たちを何とかしてもらうよう最後の言葉を残してクルーは彼女を見つめてから去って行きました。
「ハリソンのやりそうなことだわ」とメレディスがバーを出ながら再び不平を言いました。
「家族への思いやりってものがないの」とトゥルーがきつく言いました。
「姉さんは勝手にハリーを非難して、ジャックに責任があるかもしれないとは思わないの」
「ほんの少し目を離しただけでハリソンはああよ」とメレディスが答えました。
「ジャックとは大違いよ」
「それは忘れて」とトゥルーは男たちがどこに姿を消しているのか見るために周りを見てため息をついて言いました。
彼女たちはまだ彼らがバーから出ていくのを見ていませんでした。
彼女がメレデスを引っ張って行ったその間に別の出口から出て行ったに違いないと思いました。
それを念頭においてトゥルーは目を皿のようにして反対方向に歩きました。
ついに下のデッキに続く階段に座るハリソンを見つけました。
彼の外見からケンカで勝ったようには見えません。
目のまわりは黒あざができていて、唇を切っていました。
「やっぱりね」とメレディスは弟を見て言いました。
「ジャックはどこ?」
「そんなにいいか?」とハリソンが呟きます。
「自分の弟よりあんな奴の方が気になるのか」
「いいわ、自分で見つけるから」とメレディスは踵を返しジャックを探しに行こうとします。
「そんな話はトゥルーとやって、私をのけものにしてさ」
「ちょっと見せて」とトゥルーはハリソンの脇に座り言いました。
彼女は手早く傷を見ましたが特にひどい怪我ではありませんでした。
唇から垂れている血の量も見た目には派手でしたが大したことはありませんでした。
「何があったの?」
「何もない」ハリソンは目をそらしてつぶやきトゥルーを払いのけます。
「何かがあったはずよ」とトゥルーが答えました。
「あいつは何って言ったの?」
「何もないって」とハリソンは立ち上がりながら答えました。
トゥルーは彼の後に従い階段を降ります。
そしてメレディスと一緒にバーを出た時、ジャックと何があったのか詳しく聞こうとします。
「オーケー、先に殴りかかったのはあんたね?」トゥルーはいつもは弟に見せない落胆した皮肉で尋ねました。
「もうやめてくれよ、姉さん」とハリソンが警告しました。
「自分が悪くないんだったら話せるでしょ?」といら立ったトゥルーが尋ねました。
「何でも俺の事に口を突っ込みたんだな?」ハリソンはきつく言います。
「俺を見張ってないと気が済まないのか、いつでも、毎日?」
「そういうわけじゃないけど」
「それなら、終わりにしてくれ」とハリソンは声を大きくして言います。
「ただあんたのことが心配だから」とトゥルーは静かに言いました。
「心配しなくていいよ」とハリソンが答えました。
「自分の面倒ぐらい自分でできる。
 俺をいつまでも子供扱いすんなよ」
「ちがう、そういうわけじゃ」とトゥルーは気持が高ぶり答えました。
「ジャックが関係しているときだけよ、忘れてるかもしれないけど、あいつはあんたは死ぬ運命だと思ってる。
 あいつが死ぬべき運命の人間は何が何でも死なせるのを知ってるでしょ」
「それは俺の問題じゃないだろ?」ハリソンは立ち去りながら言い返しました。
今度はトゥルーは彼の後に続きませんでした。
彼女は自分がいなくなっている間に、ジャックがハリソンに何かを吹き込んだと確信しました。
ハリソンが話をしないので、彼女は直感で分かり何があったのか調べることに決めました。

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「どういう意味だ、お前がここにいる事をトゥルーが知っているとは?」リチャードはジャックを睨みつけて言いました。
「私はあの子の前に姿を現すなと言ったはずだ?」
「俺がいた同じバーにトゥルーも来ちまったんだよ」とジャックが説明しました。
「幸運な偶然だ」
「不運の間違いだろ?」リチャードは誤りを直しました。
「何があった?」
「どうして何かが起きたのを知ってるんだ?」ジャックは肩をすくめて尋ねました。
「お前のシャツの血のシミが物語っている」とリチャードが指摘しました。
ジャックはシャツを見下ろして、ハリソンと争った時についた小さな血のシミを見ました。
「何とかやったよ」とジャックが答えました。
「何とかし続ける事だ」とリチャードは言い残しジャックの部屋のドアを後ろ手に閉めて出て行きました。
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トゥルーは船内を見回りました。
しかしジャックの痕跡は見つけだすことができませんでした。
彼女はもう一度メレディスかハリソンを探そうかと思いましたが、今しばらくはお互い冷静になることにしました。
彼女は今朝リラックスのため訪れていたプールのそばに来ていました。
明日の晩のディナーデートを思い出し、すべての問題がその時までに片付いていればいいと思いました。
彼女がちょうどプールサイドのコーナーを曲がったとき、歩いて行く方向から締め殺されるような絶叫が聞こえてきました。
その声がどこから聞こえてくるのかと彼女は急いで進みます。
彼女がデッキの上に男と女の影を見たとき、彼女はまだその場所へたどり着いていませんでした。
彼女は階段に急ぎその下に着いたとき、男は手すりの上から女を押し女は下のプールに水しぶきをあげて落ちてしまいました。
トゥルーは逃げ去る男を追おうとしましたが、女がプールの中でうつ伏せに浮かんでいるのを見ました。
男を追うよりもトゥルーはプールの中に飛び込んで女へと急いで泳ぎました。
女を掴んで彼女はゆっくりとプールサイドへと連れて行きました。
プールサードに着いたとき彼女は遅すぎであったことを悟りました。
女の頭は突然のよく知っている動きをし彼女方に向きます。
「助けて」と女が囁くと時間は巻き戻し始めます。

第6章。
トゥルーは下の群衆に手を振るハリソンを見て船の手すりに立っていました。
「どうしたんだ?」トゥルーが群衆の中にジャックを捜すのを見てハリソンは尋ねました。
彼女は前日にあった感覚、彼女を見つめている者の感覚がなくなっているのに気付きました。
前日には確かにジャックが彼女を見つめていることを知っていました。
しかし今回ジャックは距離を保っていました。
「ジャックを探してるのよ」とトゥルーはハリソンのいぶかるような一見に答えました。
「姉さん、奴の事なんか忘れて、リラックスしろよ」
「あいつがここにいるんじゃ少し難しい事になるわ」とトゥルーは客室に向かいながらつぶやきます。
「想像しすぎだぜ」とハリソンは腕を彼女の肩に置いて言いました。
「姉さんは少し楽しみと、船でのロマンスが必要なんだ」
「ジャックはここにいる」とトゥルーが繰り返しました。
「やり直しの日よ、あいつはこの辺りのどこかにいるわ」
「ああ」とハリソンはその言葉を発するまで迷って答えました。
「なら、奴がここにいる事を姉さんが知っているなら、今回は乗ってないんじゃないか?」
「いいえ、この中にいるわ」とトゥルーが言いました。
「やり直しが起きたという事は、あいつは運命を変えないように同じ事が起こるようにしたいはず」
「じゃあ、早く解決した方がいいな、俺たちの休暇の残りを楽しむためにさ。
 いつでも船の外にジャックを投げだすぜ」
「あんた、昨日も同じことを言ったわ」とトゥルーは微笑しながら言いました。
「で、俺はやったのか?」ハリソンはにっこり笑いました。
「なあ、やったって言ってくれよ」
「残念だけど」トゥルーは頭を振りました。
「でもそうすべきだった」
「どうして?
 奴が何かをしたのか?」
「分からない」とトゥルーが答えました。
「あんたとジャックはケンカをしたの、そしてあんたはあたしに原因が何だったのか言わなかった」
「どうして俺が?何で言わなかったんだ?」
「分からないわ」とトゥルーが答えました。
「あんたは話さなかった、目のまわりに黒あざをつくって、唇を切って怒って出ていった」
「へえ」とハリソンが言いました。
「謝った方がいいか?」
「それは心配しないでいいわ」とトゥルーはハリソンを抱きしめると客室のドアを開けました。
「やり直しの日だから、変わるわ」
「どんな風に?」ハリソンは尋ねました。
「まず手始めに、あたしがあのベッドを使うの、今日はメレディス姉さんより先に部屋に着いたから」
彼女は前日姉が使っていたベッドを示しにっこり笑いました。
「ほかには?」
ハリソンはソファーの上に座って、メレディスが前日に見ていたパンフレットを拾って質問しました。
「今回はメレデス姉さんを一人にしないようにするの」とトゥルーは思いやりがある顔で言いました。
「メレデス姉さんと一緒にいると退屈だって言ってただろ」とハリソンが指摘しました。
「あと2時間もすればメレデス姉さんは一人で行動することになるださ」
「この後すぐあたしたちは食事をしたわ」とトゥルーが確認しました。
「ジャックと出会ったのはその後だわ」
「出会ったのか?」ハリソンは驚きます。
「違う!」
「俺が船でのロマンスを提案したからって、でも奴じゃないだろ」とハリソンはトゥルーの答えを無視して続けました。
「ただ問題を起こしたのはジャックの方よ」とトゥルーは頭を振って言いました。
「あたしは姉さんにあいつを避けるよう説明しようとして外に連れだしたの。
 姉さんは聞く耳を持たなかった、そしてあたし達があんた達二人を捜すために中に戻ったら、
 ケンカして追い出されてた、おまけにあんたは何があったのか話してくれないし」
「多分俺は姉さんのプライドを守ってたんじゃないか?」ハリソンは言います。
「姉さんがあいつを見てないとき、あいつは俺を見ていたんじゃないか?」
「えっ?」
「姉さんたち二人の間には何も起ってない、でも奴はそういうふうに見せかけているんじゃないか」
「じゃあ、それはあいつのせいだっていうの」とトゥルーがきつく言いました。
「他にも問題があるわ」
「何の事だね?」と出入口からリチャードが尋ねました。
トゥルーが振り返ると父親のすぐ後ろにメレディスがいました。
「何でもないよ、親父」とハリソンは微笑んで言いました。
「ただこれから何をしようか相談していたんだ、なあ、姉さん?」
「ええ」とトゥルーは弟の気転の速さに感謝して弟を見て同意しました。
「ここには色んな場所があるぞ」とリチャードは微笑しながら言いました。
「プール、バー、ダンスホール、ゲームセンターにカジノ」
トゥルーはカジノという言葉に顔を輝かせたハリソンを睨みつけました。
「お前がポーカー好きなのを知ってるぞ、ハリソン」とリチャードが言いました。
「今日の午後にでも行くつもりだ」
「いいえ、行かないわ、パパ」とトゥルーは言って話を遮りました。
「あたし達もう午後の予定を立ててるから、ねっ、ハリー?」
「えー、ああ」とハリソンが同意しました。
「じゃあ、また次の機会にでも」と彼が父親のガッカリした顔を見て付け加えました。
「それじゃ、荷物を解いて、食事にでも行くか」とリチャードが促します。
「そうね」とメレディスは客室の中に入って同意しました。
ハリソンは立ち上がり父親の後に続き自分たちの客室に行きました。
トゥルーは荷を解き始めました。
「それで午後の予定って?」メレデスは自分のスーツケースを開けながら尋ねました。
「うーん」とトゥルーはハリソンをポーカーから引き離すために嘘をついたので考えていないため口ごもりながら言いました。
「何なの?」メレディスは尋ねました。
「あんたの立てた予定には、私は入ってないんじゃないの?」
「そうじゃないわ」とトゥルーは大急ぎで彼女を安心させようとしました。
「ただハリソンにポーカーさせないようにするために嘘をついたの」
「またあの子をそうやって」メレディスはつぶやきました。
「あんたは私たちに干渉しすぎじゃない?」
「そうじゃないわ」とトゥルーが答えました。
「あの子のためだってわかってるでしょ」
「あの子がそう思ってるとでも?」メレディスは額にしわを寄せ尋ねました。
トゥルーは前日のハリソンも彼女の干渉に不快を示していたので黙ったままでいました。
「私はそうは思わない」とメレディスがほくそえみました。
「それじゃ、午後から何をする?」トゥルーは話題を変えるために尋ねました。
メレディスは肩をすくめて荷を解き続けました。
これは一筋縄ではいかないとトゥルーは思いました。
もし彼女が気をつけていなければ再び元通りになろうとしていました。
そしてメレデスを今日ずっと行方不明にするわけにはいきませんでした。

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「どうして私に連絡しなかったんだ?」リチャードはジャックを睨みつけて尋ねました。
「私にやり直しの日だと言う必要がないと思っているのか?」
「俺は船に乗るのに慌てていたんだ」とジャックが答えました。
「時間通りに俺がここにいることの方が、あんたに連絡するようり重要だと思ったからな」
「それで昨日は何が起きた?」リチャードは事務的な調子で尋ねました。
「犠牲者は締め殺されて、プールに投げ落とされた。
 トゥルーは正確な時間を知っている、彼女は現場で目撃したからな。
 だが間に合わなかった」
「それでハリソンは同意したか?」
「まあ、あいつはあんたと午後の間、一緒にポーカーをしていたよ。
 あんたの聞きたい事がそれだったらな」ジャックは返事しました。
「あんたの術中にあいつははまったと思うぜ」
「そうか」リチャードはうなずきました。
「あの子を説得するのは難しいとは思わなかったが、しかし思ったほど頑固ではないようだな」
「トゥルーが見つけだして介入してきた」とジャックが付け加えました。
「あんたと少し話してたな」
「ハリソンはトゥルーに耳を傾けたのか?」
「いいや、あんたと一緒にゲームに戻った」とジャックは微笑しながら言います。
「それはいい」リチャードは立ち上がり出て行こうとします。
「私はただ今日が昨日と同じようになることに専念する。
 お前はお前の仕事をして、何も変わらないようにすることだ」ジャックが頷くとリチャードは出ていきます。
ジャックは荷物を解き終わると再びメレディスを追いつめるために出て行きました。

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トゥルーはプールに行こうというハリソンの提案に頭を振りました。
ライフガードがまた彼女を見つめ、そして前日と全く同じようにハリソンは彼女を置き去りにしてまっすぐ問題の場所に行くでしょう。
メレディスがジムやレクリエーションの施設をチェックすることを提案したときトゥルーは飛びつきました。
ハリソンは退屈そうにに見えましたがすぐに説き伏せられました。
それはグッドタイミングでした。
今回トゥルーにはハリソンをどうやって見張っているのか分からなかったからです。
30分後、トゥルーとメレディスは服を着替えてジムにいました。
トゥルーはルームランナーに向かい、しばらくの間いい調子で走っていました。
それはやり直しの時に町中を走りまわっているよりはずっといい感じでした。
彼女は感謝しました。
それは今日は犠牲者が近くにいるという利点があったからです。
彼女は再びジャックがどこにいるのかと思い、そして彼が犠牲者に近寄らないことを望みました。
彼女がする事は犠牲者が襲われるまでジャックを犠牲者に近づけない事でした。
姉と弟と一緒にいなければ今すぐにでも彼女はジャックを追いつめたいところでした。
残念なことにハリソンとメレディスを見つめる視線は益々強くなっていました。
メレデスがトゥルーにジムでハリソンが自分の彼女を差し置いて女性たちを口説いていると言ったとき彼女は歯を食いしばりました。
トゥルーは今はまだ二人を見張っていないといけないと判断し、
ルームランナーのスピードをもう一段階上げ疲れることによってフラストレーションを防ごうとしました。
「今日はずいぶん張り切ってるな、トゥルー」とジャックは顔を出すなり言いました。
トゥルーはジャックの声にペースを乱しペースを取り戻そうと努力しましたが、機械のスピードを遅くしなければなりませんでした。
「誰かと思ったら悪魔じゃない」と彼女は独り言をつぶやきます。
「ねえ、紹介してくれないの?」メレディスは尋ねました。
メレデスは機械を止めてにこやかにジャックへ手を伸ばしました。
「ジャッキ・ハーパーです」とジャックは彼女と握手を交わしながら言いました。
「俺が近くにいると、トゥルーはマナーを忘れる癖があるんだ」
「他の時もそうよ」メレディスは握手しながら軽やかな笑いで答えました。
「俺達何か気が合いそうな感じだな」とジャックは魅力的な微笑で言いました。
トゥルーは機械のスピードを落とし停止するまでジャックを睨みつけ続けました。
「何しに来たの、ジャック?」トゥルーはメレディスが聞こえない場所にジャックを引っ張って行って尋ねました。
ハリソンはそのやり取りを見ていて、それまで座っていた場所から立ち上がり、トゥルー達のところに近づきました。
「だって本当の事だろ、トゥルー」とジャックが舌打ちしました。
「昨日はこんな事しなかったじゃないか?」
「ええ、でもどういうわけかあんたはあの会話を忘れたみたいね。
 あたしだけがやり直したみたいに忘れたわけ」
「おいおい、トゥルー」とジャックは笑いながら言いました。
「何を言いたいんだ」
「あんたは昨日あたしにバカンスを楽しもうって言ったんじゃなかった?」トゥルーの声はいら立ってかみついてきました。
「本当か、トゥルー、それにしては今日はマナーが悪いんじゃないか?」
「そこまで余裕がなかったから」とトゥルーが返答しました。
「あんたは何をしてるの?」
「いやー、何も」とジャックが言いました。
「俺としては立ち寄ったんで、もう一度君たちに挨拶しようと思ってな。
 メレディスと俺は昨日楽しい時間を過ごしたからな。
 残念ながら彼女は覚えてないがな」
「姉に手を出さないで」とトゥルーが警告しました。
「俺は手を出さないさ、だが彼女を俺から遠ざけることができるのか?
 彼女を見張り続けていなけりゃ彼女はどこに行くか分からないぞ。
 ハリソンがここにいるより、ポーカーテーブルに行きたいようにな」
「俺はポーカーなんかに行ってない」とハリソンは言いました。
「昨日の事を言ったんだ」とジャックが言いました。
「それともトゥルーが昨日ポーカーからお前を引きずり出そうとしたって言わなかったのか?」
「そうなのか、姉さん?」ハリソンはジャックの言葉を信じられずに尋ねました。
「ハリソンに話さなかったのか?」ジャックはがっかりしたふりをして尋ねました。
「昨日の事を弟にも話さないなんてな?
 彼に何が起こったのか言わないなんて君がいつも言うフェアなことじゃないな。
 どちらかっていえば傲慢だな」
「俺は昨日ギャンブルをしたのか?」ハリソンはトゥルーをにらみつけて尋ねました。
トゥルーはハリソンの表情からすでに質問への答えを知っているのが分かりましたがあえてうなずきました。
「もしハリソンが負けていたならそれは理解できる」とジャックがコメントしました。
「だがハリソン、お前さんは昨日連勝したんだ」祝福をするかのようにジャックはハリソンの肩に腕をかけます。
「話すつもりだったわ」とトゥルーが言いました。
「ただ話すチャンスがなかった。
 それに勝ったのは関係ないわ。
 あんたはギャンブルなんかするべきじゃない」
「それは彼が決める事なんじゃないか?」ジャックはまっとうな意見を言います。
ジャックのパフォーマンスの裏には常に隠された動機を持っていたことを知っているトゥルーには効果はありませんでした。
「こういっちゃなんだけど、ジャックの方が正しいよ」とハリソンはトゥルーに頭を振って言いました。
「姉さんが思うように、みんなの生き方を変える事はできない」
「そういうつもりじゃない」とトゥルーは言って話を遮りました。
「そんな理由なんかもうどうでもいいさ」とハリソンが答えました。
「俺の生活を守ろうとすることと、コントロールするのはごめんだ」
「もし勝っていたって聞いたら、手を出すにきまってるわ」とトゥルーが指摘しました。
「彼女の言う事も一理あるな」とジャックが言いました。
「お前は口出しすんなよ」とハリソンがきつく言いました。
「俺はお前の味方だぜ」とジャックは傷ついた振りをして言いました。
「出てって」と疲れた声でトゥルーは言います。
「オーケー」ジャックは肩すくめます。
「それじゃ俺はメレディスを探して、もう少し知り合いにでもなろう」
「メレディス?」トゥルーは話をするのをやめて部屋を見回しました。
彼女はジャックが何を意味したか悟ってうなりました。
彼女がジャックとハリソンと口論している間に、メレディスはジムから出て行ってどこにもいませんでした。
ジャックはトゥルーとハリソンに口論を続けさせ、出ていく際にニヤリと笑いました。
ジャックの仕事は差し当たり達成しました。

第7章。
「昨日俺が何をしたのか奴から聞くとは思わなかったぜ」とハリソンはトゥルーがジムからメレディスを追いかけると文句を言いました。
「ハリー、今はその話をしてる時間がない」
「昨日は俺に干渉する時間を持っていたんだろ」とハリソンが指摘しました。
「違う」とトゥルーが答えました。
「昨日とは事情が違ってる」
「そうなるようにしたからだろ」
「この話は後にしてメレディス姉さんを探すのを手伝ってよ」
「どうして?メレデス姉さんも昔の悪い癖がでたっていうのか?」
「違う」とトゥルーが答えました。
少なくともそれを彼女が心配しなくてもよかった事が幸いでした。
「姉さんはジャックと一緒に昨日過ごしてたの、今回はそうならないようにしたいのよ」
「それがどうして悪い事なんだ?」ハリソンはトゥルーの足を止めさせ尋ねました。
「考えてみろよ。
 メレデス姉さんは姉さんの事を奴に何も話すことができないし、やり直したんだからその事は知らないはずだろ。
 それにメレデス姉さんを奴が追い回すんなら、奴の言う「運命の維持」はできないだろ。
 メレデス姉さんのおかげで、姉さんは犠牲者を救うことに専念できるじゃないか」
「ジャックがそんなに簡単にあきらめるとは思えない」と数分間、弟の言葉を考えトゥルーは答えました。
「あいつはメレディス姉さんにそれほど興味は持ってないわ、あたしの姉だからよ。
 あんたがあたしの弟だから、あいつがあんたを追い詰めるように」
「俺の性格のよさにってことはないよな」とハリソンが冗談を言いました。
「あたしが何を言ってるか分かってる」とトゥルーは弟に目を向けて言いました。
「ああ、分かってるって。
 あいつがやり直しの日に現れるのは明らかだからな」
「どこにメレディス姉さんが行ったと思う?」トゥルーは身近な問題に戻ろうと尋ねました。
「どこかのバーじゃないか?」ハリソンは言います。
「全部のバーにメレデス姉さんを探しに行けばいいじゃないか?」
「あんたは出入り禁止よ」とトゥルーは何も考えずに言いました。
時々彼女は気が散ってしまい、前日にあった事と今を混同してしまうことがありました。
「それは今日じゃないだろ」ハリソンは近くのバーに彼女を引っ張りながらにっこり笑いました。

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30分後。
トゥルーとハリソンは二手に分かれ、ハリソンは客室を調べ、その間にトゥルーはプールサイドに向かいました。
この船の中で彼女が行きそうな場所は他にはありそうもなかったからです。
トゥルーはプールの近くではメレディスを見つける事ができませんでした。
しかし彼女は助けを求めてきた若い女性がプールサイドで本を読んでリラックスしているのを見つけました。
トゥルーはその女性の事を探し出そうとは思わなかったことに少し心が痛みました。
メレディスとジャックは少しの間なら大丈夫だと思い、トゥルーは彼女と知り合いになろうとプールの周りをぶらぶら歩きました。
「いい本ね?」とトゥルーは彼女の横に座って尋ねました。
「悪くはないわ」女性はサングラスをずらしトゥルーに微笑みながら返事をしました。
「船の売店で買ったのよ。
 昨日何を持って行こうか考えてたんだけど忘れちゃって、ここで読む本を思い出したの」
「みんなそうよ」とトゥルーが笑いながら言いました。
「一人なの?」
「いいえ、全部で8人で来てるわ」
「家族?」
「友達よ。
 その中に2人の兄弟がいるけど」
「兄弟か」とトゥルーは目をきょろきょろさせて言いました。
「あたしもこの辺で姉を探してるの」
「家族のバカンス?」
「ええ、姉弟3人とパパよ」トゥルーは父親がまたどこに姿を消してしまった事に眉をひそめました。
何らかの理由で彼はもう一度姿を消していました。
そして彼は家族バカンスしたいと言った前日よりも今回は更に子供たちに興味を示していました。
「あなた達家族は少し緊張してるんじゃないの?」と女性が尋ねました。
「そんな事はないわ」とトゥルーは頭を振って答えました。
「ただいつもの心が落ち着かない家族の問題よ。
 ところで、あたしはトゥルー・デイビーズ」
「ステイシー・シェルダンよ」と女性は本を脇に置き手を伸ばし答えました。
「泳ごうかな。あなたは?」
「もちろんよ」とトゥルーは立ち上がって言いました。
「客室に戻って着替えてくるわ」
ステイシーはプールの中に水しぶきを上げ飛び込みました。
そしてトゥルーは客室に戻ったついでにメレディスが戻ってきているかどうか確認しようとしました。
もう一度部屋を確認しましたが、どこもメレディスとハリソンの形跡はありませんでした。
トゥルーは速く水着に着替えました。
そしてメレディスもハリソンもしばらくの間なら自分の身は守れるだろうと、彼女はプールに急いで戻りました。

プールではステイシーの姿は水の中にはなく、他の所を見ると昨日トゥルーとデートを約束したライフガードのピートがステイシーの座っている席の脇に立ち話をしているのを見つけました。
トゥルーは心の中でハリソンの言った事を思い出し、またやられたと悟りました。
明るい微笑でトゥルーは前日に起きたことに悩まないでステイシーとピートに歩きました。

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「誰かを探してるのか?」リチャードがバーに近づくとジャックが尋ねました。
ジャックはトゥルーとハリソンが近くにいないことを確認して、リチャードに近づき、何事があったのかとリチャードに聞くために近づきました。
リチャードの表情から、ジャックは自分が何かミスを犯したのかと思いました。
「お前じゃない」とリチャードは入口から睨みつけて答えました。
「ハリソンを待っているんだ」
「どうしてハリソンが来るのを知ってるんだ?」ジャックは尋ねました。
「お前は私に昨日と違う選択をしろとは言わなかったからな。
 私はいつもと変わりない行動をしようとしているんだ。
 お前の話だとハリソンは私と一緒にポーカーをする事になっている、遅かれ早かれ現れるはずだ」
「だがそれは昨日の話だ」とジャックはため息と共に指摘しました。
時々ジャックはリチャードがあまりに長い間、ゲームをしなくなってしまったのかと思いました。
あるいは自分の娘を過小評価してるのか。
「今日はトゥルーがハリソンにべったり張り付いているはずだ」
「そういう事を聞きたいとは思わん」とリチャードはウイスキーを飲み干すとバーテンにお代わりを合図しました。
ジャックはリチャードが彼に飲み物を出すことはないと悟ったとき、ジャックは眉をひそめました。
それはまるでトゥルーと同じようでした。
「お前は昨日と同じようになるようにするんだ…あらゆる点においてな」
「俺は死んだ人が死んだままでいればいいと思ったがな?」ジャックはリチャードの言葉を理解すしてぶつぶつ言いました。
「お前は何も知らん」とリチャードがきつく言いました。
「お前は今日だけの事、そして目の前の事だけしか考えていない。
 お前はより大きな展望を持っていない、我々がここで成功しなければどうなるかというな」
「それなら説明してくれないか?」とジャックは飲み物を注文しながら言いました。
「あんたはハリソンがやり直せばいいと思ってるが、それをまず説明してくれないか?」
「あいつは私の息子だ、お前がどう思うともな」リチャードは今まで以上に意味深に答えました。
そして今まで以上に苛立っています。
「あいつはトゥルーの弟だ、彼女と一緒で。
 あいつは助けを求められればその声を無視しないだろうな。
 どうしてあんたがあいつに対して確信しきっているのか俺には分からない」
「それはあの子は、ハリソンはトゥルーと違って献身的なタイプじゃない。
 あの子は見知らぬ人間を救うために自分の生活を犠牲にするタイプじゃない」
「それはトゥルーが自分の生活を犠牲にしてるっていうのか」とジャックが論じました。
「ハリソンは彼女と違って両方の価値観を無視するっていうのか?」

“Because no one can do that.
「なぜなら誰もそれをすることができませんから。
 お前なら分かるはずだ、トゥルーがその価値観を見いだせない事を、あの子への負担は重くのしかかり何かを犠牲にしなければなくなる。
 トゥルーはやり直すことを優先するために医大へ入る夢を断念するだろう」
「そう思ってるのか?」ジャックは尋ねました。
ジャックは今まで見てきた事からトゥルーはかなり上手くバランスをとっていました。
彼女は夢をあきらめてはいませんでした。
医者、友達、家族、死体安置所の仕事、彼女の天命。
彼女はジャックの示唆する努力にもかかわらず、何も断念しようとはしていませんでした。
「自分の娘の事は分かる、あの子は母親とまったく同じだ、エリスと全く同じように天命に人生をかける事になる」
ジャックは目をそらしてカクテルをとりました。
リチャードの声は恨みがこもり、ジャックは以前に聞いたことのあるその声が嫌でした。
ジャックはリチャードと彼の妻に何が起きたのかと思ったのは初めてではありませんでした。
リチャードが自分の妻を殺されるように仕向けたのはなぜなのか。
しかしこの数ヶ月間の間にジャックは、リチャードが妻の事になると押し黙ってしまうのを知っていました。
「で、ハリソンは?」ジャックはついに尋ねました。
「ハリソンは犠牲者を助けないと確信してるのか?」
「お前は私の息子の本当の姿を見たと思っているのか?」
リチャードはグラスを干すとニヤリと笑い、すぐにバーから出て行きました。

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その頃ハリソンはあらかたメレデスがいそうな場所を探し終え、すでにメレディスを探すのをやめていました。
彼は父親と一緒に時間を過ごす方がましかもしれないと思い、父親を探すために元来た道を引き返し始めました。
ハリソンがバーに来るとドアの外からジャックとリチャードが一緒に座っているの見て、二人を引き離すべきかと考えました。
トゥルーが正しかったように思えました。
ジャックはリチャードを通して、トゥルーに接近するためにはどんな努力でもするつもりだと思いました。
ハリソンがまだ心を決めかねている間に、リチャードは席を立ちあがり外で待っていたハリソンに出くわしました。
「やあ、親父」ハリソンは声をかけました。
「探してたんだ」
「ハリソン」リチャードはドアに振り返り不安そうに返事しました。
「私に何の用だね?」
「ただ親父と一緒にいたくてさ」とハリソンは微笑んで答えました。
「邪魔だったらいいけど」ハリソンはドアに向かってうなずいて、ガラス戸の向こうのジャックがまだ同じ席にいるのを見ました。
「いや、大丈夫だ」とリチャードはハリソンに会話を聞かれていないと悟り落ち着きを取り戻し答えました。
「ただ飲む相手が欲しくて、乗客の一人を誘ったのさ」
「それならあいつは変な奴じゃなかったかい?」とハリソンはかなり明るく冗談を言いました。
「それならお前が一番いい相手だという事を証明してくれないか」とリチャードは中に戻りながらハリソンを導いて提案しました。
「親父がおごってくれるんならね」とハリソンはバーに近づきながら笑って言いました。
ハリソンはジャックの近くの席に座れば、ジャックが何か言うのではないかと思いました。
リチャードがバーの端でバーテンに声をかけた時、ハリソンはジャックに近付かないようにする機会をつかみました。
「よした方がいいぜ」とハリソンは父親が聞こえない事を確認したうえでジャックに怒って言いました。
「何をよすんだ、ハリソン?」ジャックは何もしていないという感じで返事をしました。
「何の話をしているのか俺にはさっぱりだな。
 姉さんと一緒で疑い深くなってるんじゃないか?」
「親父を使ってトゥルーに近づくつもりだろ」ハリソンはささやきました。
「そんな事はさせない。
 親父は姉さんの事は知らないんだ、ましてデイビーズ家の事はな。
 もし親父があんたの事や、トゥルーに何をしているか知ったら、親父はあんたを朝飯に食うぜ」
ハリソンはジャックが返答するのを待ちながらジャックを見つめました。
しかしジャックは言葉を発する代わりににっこり笑って冗談を考えているかのように頭を振ってグラスを干すと立ち上がって出て行きました。

第8章。
トゥルーはステイシーと一緒に午後の間一緒に過ごし、ステイシーは今晩のピートとのデートをあれこれと彼女から助言を得ようとしていました。
二度目のこの日、ステイシーとピートがデートする事について、
トゥルーは実際はピートが彼女を裏切っているわけじゃない事は分かっていましたがそうは思えませんでした。
今トゥルーはステイシーが夕食のためにステイシーの客室でデートのための衣装選びを手伝っていました。
笑ったり、冗談を言ったりして二人は楽しい時間を過ごしていました。
しかしトゥルーはステイシーの今晩が前日とは異なりデートをすると分かっていても不安は拭い去ることはできませんでした。
トゥルーにとって良かったことは、ステイシーがトゥルーの発する否定的な感情を気に留めていない事でした。
トゥルーはステイシーの興奮が少し伝わり、
ステイシーがピートにダブルデートできるように友人を連れて来るように頼んだときトゥルーは自分が興奮している事に気付きました。
客室のドアがノックされるとトゥルーは立ち上がり、ステイシーはどのアクセサリーにしようかと迷っていました。
「何かご用?」トゥルーはドアで若者に尋ねました。
当惑で興奮した男にトゥルーは頭を振ってドアから見えない位置に座っていたステイシーを呼びました。
「ウェインなの?」ステイシーは頭をドアの方に向けて尋ねました。
「中に入って、何の用か言って」
彼女は部屋の中央で腕を伸ばしくるくると回りながらドレスの素晴らしさを演出していました。
「殺しのドレスか」彼は微笑しました。
トゥルーはその言葉に背筋に寒気を覚えます。
ドレスは彼女が前日に身につけていた物とは同じではありませんでした。
そしてトゥルーはこのドレスが殺されるためのドレスではないことを望みました。
「完ぺきでしょ」とステイシーが言いました。
「それでほかの皆は今晩何をしてるの?」
「僕らはみんなで夕食を食べてるよ。
 君を探しに来たんだ、今朝君がケビンと一緒にいたあと姿を消したから」
「彼はバカよ」とステイシーがきつく言いました。
「何であんな人が一緒に招待されたのか分からないわ。
 私たちの仲間でも何でもないのに、ただ現われて、誰も彼を誘ったことを認めないんだから」
“He’s just lonely,”Wayne sighed.
「あいつは一人ぼっちなんだ」とウェインがため息をついて言いました。
「誰もあいつにはいなくなってくれって言えないんだよ、たとえ船の上でなかったとしてもね。
 だから少しは我慢してくれないか?」
「あいつがどんな奴か知ってるでしょ」とステイシーは招かれざる客にいらだちながらネックレスのチェーンの留め金を失敗します。
「あいつは私の妹とデートして、私と二股かけてたのよ。
 それを嘘をついたうえに、最終的にはメルをとって振られたのよ」
「それは昔の事だろ」とウェインが指摘しました。
「そういう事は忘れて、バカンスを楽しむ事はできないのかい?」
「あたしもウェインと同じ意見よ」とトゥルーは会話の内容を聞いて、ケビンがステイシーを殺した相手だと思いました。
「そんな奴にあなたのバカンスを台無しにされるのはナンセンスよ」
「そうよね」とステイシーはため息をついて言いました。
「今週はその事を忘れるわ」
「よかった」とウェインは手を打ちトゥルーを感謝の目で見ました。
「自己紹介がまだだったね」とウェインはトゥルーがステイシーのネックレスを手助けしようとした時に言いました。
「トゥルー・デイビーズよ」とトゥルーはネックレスを持ったままステイシーの後ろから手を伸ばしウェインに握手しました。
「もう私は行くわね、でないとピートが待ちぼうけを食ったと思うから」とステイシーはドアから外に出て言いました。
「もしウェインが結婚していなかったら、あなたに紹介したんだけど」
「いいのよ、気にしないで」とトゥルーは恥ずかしそうに微笑んでいるウェインに言いました。
「ステイシーと一緒にいるなら君はあれに慣れないとね。
 彼女は何も考えずに口が先に開くから」
「彼女とは昔からの知り合い?」トゥルーは尋ねました。
「僕ら全員ね」とウェインが答えました。
「だからって彼女と付き合ったことはないよ。
 僕としては彼女の率直なあの態度がいつか身を滅ぼさない事を願うよ」
「そうなると思う?」
「思うよ。
 彼女はケビンの裏の顔を許せないんだ。
 あいつはあいつで彼女の言葉を無視するタイプじゃないし」
「彼は危険だと?」
「分からない、でもステイシーが大変なことになるのは望まないな。
 彼女の妹は一度も僕らにどうしてあいつを捨てたのか言わないし、それが何よりも心配なんだ」
トゥルーは立ち上がり額には深いしわを寄せしかめ面をしました。
「あたしももう行くわ」と彼女はドアに進みながら言いました。
「あたしの家族もあたしが夕食に来るのを待ってると思うから」
「ああ、君に会えてよかった、トゥルー」ウェインは立ち上がって彼女のためにドアを開けました.。
「いいバカンスを」
「あなたもね」と彼女は部屋を出て腕時計を確認すると夕食に着替える時間がない事を知りました。

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トゥルーが到着したとき、メレディス、ハリソン、父親はレストランですでに座っていました。
「姉さん、今までどこにいたんだ?」ハリソンは満面の笑みで尋ねました。
「午後の間中いなかったじゃない」
「あたしじゃないでしょ?」
「ああ、親父が俺のためにポーカーの助言をしてくれてさ…」トゥルーの非難がましいしかめ面に彼の声は小さくなります。
「ハリソン、今朝あたしが言ったこと聞いてなかったの?」トゥルーは落胆したため息で尋ねました。
「聞いてたさ、親父にもギャンブルはしないって言ったけど、今はバカンスの最中だろ、誰も傷つけるわけじゃない」
『くそっ』とトゥルーはテーブルの向こう側の父親を見て思いました。
彼女は前日のハリソンのことを忘れていました。
弟にギャンブルをしないように言う代わりに、父親がハリソンをポーカーに誘わないようにしていました。
「お前が何を思っているか分かるよ、トゥルー」リチャードは手を上げて慰め始めました。
「だが今はバカンスの最中だ、私としてはハリソンを含めて皆、楽しんで欲しいと思っている。
バカンスの間はポーカーぐらいさせてやっても何の問題もないだろう」
「そうだよ、姉さん」とハリソンは彼女に言います。
「ほんの少しやっただけで、金だって負けたわけじゃない」
「その事を言ってるわけじゃなのは分かってるでしょ、二人とも無責任よ」とトゥルーが言いました。
彼女はこれまでの数カ月にわたってハリソンと築き上げた信頼関係を水の泡にするのに腹が立ちました。
ほとんどはジャックの事でハリソンを見張ることができず父親とポーカーをさせた事に対してでした。
彼女は家族旅行を台無しにしないようにそれ以上何も言わずメニューを手に取り顔を隠しました。
「それで姉さんは新しい友達ができたみたいじゃないか?」ハリソンは尋ねました。
ハリソンは声には出さなかったが意味ありげにトゥルーに犠牲者との接触に成功したことを尋ね、トゥルーは顔を上げました。
「彼女はそこの部屋のすぐ向こう側でデートしてるわ」とトゥルーが言いました。
「ライフガードの彼とね」
「そりゃよかったじゃないか」ハリソンは言ってトゥルーが顔を向けた部屋のコーナーを見ました。
トゥルーはピートとステイシーが注文の食事を待っている間、冗談を言いながら笑っているのを見て嫉妬を感じました。
「ここにいる間に、姉さんのために相手を見つけないとな」とハリソンは意地悪そうに提案しました。
「そしてメレディスもな」リチャードが冗談を言うと、トゥルーとメレディスは二人に干渉している2人の男たちの考えに恐怖で見かわしました。
トゥルーは二人が探し出してくっつけようとしている人物がポーカー好きな男だったりしたらどうしようかと想像して困りました。
「オーケー、多分な」とハリソンが笑うとトゥルーはテーブルの下で彼をけりました。
食事が届くとトゥルーはクルーズの残りのためにハリソンを見張り続けることと、再びギャンブルの話をしない決意してかなり明るくなっていました。
彼女は最初の日と同じように過ごすことに成功していました。
しかしまだ残りの日々を残念な結果になるのではという不安は拭いきれませんでした。
デザートを食べ始めるころ、ハリソンはトゥルーをつつくと、ステイシーの方を見てうなずきました。
「何かトラぶってるみたいだな」と彼はしかめ面で言いました。
トゥルーは部屋の向こう側を見てる彼の視線の先を見て直ちに同意しました。
ピートは立ち上がっていました、そしてなだめようとしているのはケビンであるのをトゥルーが確認しました。
ケビンは前日にプールの上で見た男と同じ背丈と体格でした。
そしてステイシーのデートの相手はトラブルを避けようとしているように思われました。
部屋を見回したトゥルーはジャックがどこにもいない事を確認して安心しました。
少なくとも心配するべき事が一つなくなったからです。
「何があったのか聞いてくるわ」とトゥルーは皆から離れようとすると、他人の事に口出しをするなという父親の言葉を無視して行きました。
「どうしたの、ステイシー?」トゥルーは明るい微笑で尋ねました。
「呼んでもいないのに来たのよ」とステイシーは立ち上がって、ピートが赤い顔をして動こうとしないケビンを帰らせようとしているのを睨みつけていました。
「警備員を呼んでこよう」とピートは少し怖がって状況を見ていたウエートレスの1人に来るように合図して言いました。
彼女は彼の言葉にうなずいて、素早く動きました。
しかしケビンは警備員の事など全然無関心でいました。
数分後、2人のがっしりした警備員がレストランに到着して、口論はしていなかったがまだ腹を立てているケビンを連れて出て行きました。
「この後は大丈夫だよ」とピートが言いました。
「こんな事をした後は警備員が彼を見張っているから」
「本当に大丈夫?」トゥルーはステイシーが少し震えていたのを見て尋ねました。
「ええ、大丈夫よ」と彼女が答えました。
「あなたは戻って、夕食を楽しんで。本当に、平気だから」
「あなたが平気ならいいんだけど?」トゥルーはステイシーの相手にうなずいて家族の方に戻りました。
自分のテーブルに戻ったトゥルーはトラブルは避けられたと思い安堵のため息をつきました。
彼女は今までのやり直しの中でも家族の問題は置いておいて、こんなに簡単でいいのかと心配になりました。
そしてなぜジャックが阻止しにこなかったのか。
ジャックは彼女が知る限り自分の家族にちょっかいを出した以外に、ステイシーの死を確実なものにしようとしないことが少し奇妙に思われました。
心配は膨らんでいきました。
彼女は家族の問題、ステイシーの命を救う事に関して大した事はしていませんでした。
彼女は飲み物を飲んで家に帰ってデイビスと話をするまで、この問題について考えないことに決めました。
彼女はジャックが何かしらの仕掛けをしていたに違いないと確信していました。

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「それで今回の言い訳は何だ?」リチャードはジャックを軽視しながら肩をすくめて尋ねました。
「俺はもっと効率的に時間を利用することに決めた」とジャックはリチャードが思っていた答えとは違う答えをしました。
「お前は時間のバランスを保つために、運命が変わらないようにするために時間を戻っているんだ、それ以外にはない」
「トゥルーは事態を変えるために何もしていないのか」とジャックが指摘しました。
「あの子の事は関係ない」リチャードはジャックの客室のテーブルに握りこぶしをたたきつけました。
「故意じゃない」とジャックは少しリチャードの前から下がり答えました。
ジャックはリチャードの性格についてのうわさを聞いていました。
そして彼は確かにその受けとりを終わらせたいと望んでいはいませんでした。
「故意かどうかではない、お前は女が死ぬ事を確実にするための事をすべきだったんだ。
 いったい何をしていたんだ?遊んでいたのか?」
「俺は猫を置いたのさ、あんたの子供というハトの前にね」とジャックは微笑しながら言いました。
「まあ、将来的には家族の事は私に任せておいて、お前は自分の仕事に集中するんだ。
 分かったな?」
「ああ、わかったよ」とジャックは皮肉を込めた声でうなずきました。
「それでいい」とリチャードは言い捨てドアを閉め客室を後にしました。

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「それでバカンスはどうたった?」トゥルーがバカンスから戻り仕事に戻った最日にデイビスは尋ねました。
「丸1週間やり直さなかったんだろ。記録じゃないか?」
「まだ記録には載せないで」トゥルーはしかめっ面をしました。
「死神がそうはさせてくれなかったわ、文字通りの意味と比喩的にもね」
「バカンスの間にやり直しが起きたという意味かい?」
「ええ、そしてジャックもついて来たわ、少し変わった感じだったけど」
「君は犠牲者を救ったんだろ?」
「ええ、彼女はピンピンしてる」とトゥルーがうなずきました。
「でもそれは運が良かっただけ。
 全くわけが分からなくて」
「僕らはジャックが自分のゲームをしているのを知っていた」とデイビスが指摘しました。
「重要なことは君があいつに勝ったことだ」
「ジャックの事じゃないの」とトゥルーがしかめ面で認めました。
「あたしの事よ。
 集中できなかった、彼女を救うべきなのにメレディスとハリソンをトラブルに巻き込まれないように時間を使っていた。
 彼女が助かったのは運が良かっただけ」
「君の家族にトラブルがあったのか?
 犠牲者を救う事とその問題の板挟みになることは非常に厳しいやり直しなのは分かる」 
「そういうことじゃないの」とトゥルーは椅子に沈みこんで言いました。
「あたしはそういった問題は意図されていたんじゃないかと思ってる。
 そういった問題は誰かの命と交換にできるものじゃない、でもあたしは忙しくて、分からなくて…」
トゥルーは頭を?き毟ります。
彼女はやり直しの力に答えて猪突猛進でやってきました。
しかし運命は彼女自身の欠点に対して償いをするために邪魔をした事に驚きました。
「僕としてはこれは将来学ぶべき経験と見ていいと思うが。
 少なくとも君は家族をトラブルに巻き込まないようにしたんだろ?」
「できなかった」とトゥルーが言うと、デイビスが手をのばしてコーヒーを持って彼女の前に立っていました。
「ハリソンはまたギャンブルをするようになったし、パパとメレディスはいつもの自己中だし。
 些細な事で毎日口喧嘩だったわ」
「でも今は普通に戻ったんだろ?」
「メレディスはいつも通りに仕事に戻ったわ、でもハリソンはまだポーカーに夢中のまま」
「そうか」
「あなたはあたしが支配欲の強い女だと思う?」
「いいや」とデイビスは直に答えました。
「それはハリソンが言ったのかい?」
「そんな意味をね。
 ジャックはハリソンにあたしが自分の好きなように彼をコントロールしてるって吹き込んだらしいの」
「君は姉弟の話になると心底一番いいようになるようにしようとしてるね。
 そしてどんな事を言われてもハリソンなら心のどこかでそのことを知っていると確信しているよ」
「たぶんね」とトゥルーがコーヒーをすすって答えました。
「休み中に起きた事は忘れて、いつも通りの君に戻ってくれ」
「いつも通って、普通にやり直しができるってこと?」トゥルーは弱く冗談を言いました。
「ああ、その通りだ」とデイビスは答えると、トゥルーを仕事に追いたてました。

おしまい。