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ANOTHER TRU CALLING
アナザー トゥルー・コーリング

The GHOST:幽霊。

あらすじ。
犠牲者の死がトゥルーが目を覚ます時より早いとき、
彼女はやり直しに異常な副作用があることに気付きます。
ジャックは何がしかの答えを持っているように思われます。
しかし彼女はどのように既に死んでいる者を救う事ができるのか?


第1章
トゥルーは仕事に入るため死体安置所の入口へと歩いていました。
デイビスがすでに彼女のシフト時間前に運ばれてきていた男の遺体の脇に立って作業をしていました。
「おはよう、トゥルー」とデイビスは遺体から身の回り品を回収しながら気が散っているような状態で言いました。
「おはよう」と彼女はフレンドリーな微笑で答えました。
「忙しいの?」
「いや、それほどでも」とデイビスは遺体のIDの入った札入れを見ながら答えました。
「アラン・スミス。小一時間ほど前に運ばれてきたんだ」
「死んでからしばらくたってるわね」とトゥルーは遺体の肌の色を見て言いました。
遺体の肌は一時間前に死んだばかりの色ではありませんでした。
デイビスが彼女に札入れを手渡すといつもの癖で、万一後で必要になるかもしれないと遺体の彼の個人詳細情報を暗記しました。
「今朝早くだな、おそらく」とデイビスが答えました。
「続きをやっておいてくれないか、直ぐ電話をしなくちゃいけないんだ」
「いいわよ」とトゥルーが返事をするとデイビスはオフィスへと引き上げました。
彼女が遺体から目を逸らしたときわずかな音に彼女は遺体の顔を見ました。
今ではよく聞く音で最初の頃に比べて最近では驚きもしませんでした。
「助けてくれ」とアラン・スミスの遺体は頭を彼女に向け助けを求めてきました。
トゥルーはやり直しがやってくるのを感じ、一瞬後にはあえいでベッドから身を起こし自分自身を落ち着かせました。
彼女はベッドから飛び出すと急いで仕度を整え今日の犠牲者を救うために建物から出て行きました。
彼女が通りを急いだのは、遺体の死亡推定時刻が早朝であり、彼を救うのに十分な時間がない事を思い出したからです。

15分後に彼女は札入れで見た住所にたどり着きドアに歩み寄りノックをしました。
中からの返事はありませんでした、彼女は強くドアを叩きました。
もし彼が家にいなかったなら彼女はどこを探していいか分かりませんでした。
「そこの人は今朝からずっと返事がないのよ」と彼女の後ろから声がかけられました。
トゥルーが振り返ると中年の女性が階段に立っているのを見ます。
「私は隣に住んでるんだけど、今朝も同じように宅配便のノックにも返事がなかったわ」
「彼は働いているんですか?」トゥルーは尋ねました。
「いいえ、先週失業したばかりよ」と女性は頭を振って答えました。
「仕事探しに出かけたと思います?」
トゥルーが尋ねましたが、たとえ隣人といえども彼の行動を知っているとは思えませんでした。
女性が肩すくめて目をそらした時点でそれは分かりました。
トゥルーは後ろのドアに向いて曇りグラス越しに中を見ようとしました。
はっきりとは見えませんでしたが、それでも明らかに男性の輪郭が階段の下に横たわっているのを見ることができました。
遅すぎであったことを悟った彼女はため息をつきました。

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しばらく後にトゥルーは死体安置所でデイビスに失敗したやり直しについて話していました。
「それじゃやり直しが再び起きたとしても君は早く到着する事はできないのか?」デイビスが難しい顔つきで尋ねました。
「そうね」トゥルーは頭を振りました。
「何かが変わるとは思えないわ。建物の中からは何も音が聞こえなかったし、
 それに目を覚ましてすぐにそこに行ったんだから。そのわずかな間に死んでいるんだわ。
 間に合うはすがないのよ」
「彼は君のやり直しのスタート時点より前に死んでいるんだな?」デイビスが尋ねました。
「前にもこんな事が起きたケースはないか?」
「ううん。犠牲者に到着する時間はいつもあったわ。
 時には間一髪って事もあったけど、決してこんな不可能な状態じゃなかった。
 たとえまたやり直したとしても間に合わないわ」
「多分それは全員を助けることが可能ではないケースだな」デイビスは小さな声で指摘しました。
いつもの会話ではジャックの邪魔が入らないようにするにはどうしたらいいのかというのが話の主題でしたが、
今回そうではないため彼女が言うべき事は何もありませんでした。
ジャックは今朝いませんでした、たとえ彼がいたとしても彼女が犠牲者を救うのを止める事は何もしなくてもすんだでしょう。
今回は運命自身が彼女の仕事を止めるために介入していたように思われました。
この後の数時間トゥルーとデイビスは状況全体を論じました、
そして彼らは様々な角度から検証してみましたがまだ釈然としていませんでした。
結局は彼らはできる限りの事はやったという事から、今回限りの変則であると思うことに決定しました。

その事の説明は何もできなかったと決定して、トゥルーは後方のアラン・スミスの横たわる死体安置所へと歩きました。
彼女が「助けてくれ」とはっきりした男の声を聞いたときには、まだ彼女は遺体に届いていませんでした。
またトゥルーはやり直すのかとそのまま巻き戻るのを待ちました、しかし次の一瞬彼女は巻き戻っていない事に気づきました。
彼女は遺体に近づきました、しかしいつものように遺体は動きませんでした。
目は閉じられ頭はまっすぐ上を向いていました。
遺体が声を出した兆候は見受けられず、彼女は短い間それについて考えていました。
「あなたはあたしに助けを求めた?」と彼女はついに奇妙な出来事にもかかわらず
バカバカしいと想いながらも遺体に声をかけました。
「ああ」と男性の声が答えました。
今回はトゥルーはずっと遺体を見ていましたが全く動いていない事を確認しました。
「ハリソン、あんたでしょ?」彼女は死体安置所のドアに向かって言いました。
こんな子供っぽいイタズラをするのは彼女の弟ぐらいなものです。
「俺はこっちだよ」と再び今回はもっとはっきりとした弟の声とは違う声で言われました。
トゥルーは振り返りデイビスがまだコンピュータの前に座っているオフィスのドアの方を見ました。
出入り口に立つのはアラン・スミスでした。
すぐに彼女は頭を回してテーブルの上の遺体を見ました。
彼はまだそこにいました。
しかし信じ難い事に穏やかに彼女を見てオフィスの出入り口に立っていました。
「双子?」と彼女は尋ねましたが彼が部屋に入ってくるには彼女の脇を通っていかなければならない事を知って喉を押さえました。
「いいや」と男は答えました。「俺はアラン・スミス。少なくともそうだった」
「幽霊?」トゥルーは身震いをして言いました。
彼女は話かける死体や巻き戻しについてはもう慣れっ子になっていましたが、
実際に死体安置所に立つ幽霊には恐怖を覚えました。
「多分ね」とアランは彼女に向かって来ながら答えました。
トゥルーは彼をかわすために手を上げました、彼はその手を避けると遊び半分に彼女の手を叩きました。
彼の手が彼女の指に触れたとき少し冷たい感じがして、トゥルーは再び短い悲鳴を上げました。
「デイビス?」トゥルーはまだコンピュータの前に座っているデイビスに大声で呼びかけました。
「どうしたんだ?」デイビスはドアのところに来て尋ねました。
「あなたは彼が見える?」トゥルーは詮索好きな顔をして自分の遺体を見下ろす幽霊の方向を指差して尋ねました。
「誰をだい?」デイビスは険しい顔つきで尋ねました。
「アランよ」とトゥルーがストレッチャーの方向にアゴをしゃくって答えました。
「ああ、彼は見えるよ。彼は君が来る前にここに来たんじゃないか」
「彼じゃなくて、もう一人の方よ」とトゥルーが否定しました。
「遺体の脇に立ってる」
「アー、いや」とデイビスは心配そうな感じで頭を振りで答えました。
「もう一人とは、どういう意味だい?」
「あの、その、幽霊よ」ついにトゥルーは恥ずかしさを抑えて死体安置所の中をウロつき
壁のボードを見ている犠牲者の幽霊を見た事を認めて答えました。
「幽霊?」デイビスが笑いました。
「いいね、トゥルー。君の近くにいるのか」
「冗談なんかじゃないわ」とトゥルーが強く言いました。
「そんな事言わないのはあなたの方が良く知ってるでしょ」
デイビスがほんの少しの間を置き考えにふけってトゥルーを見ました。
「その通りだな」と彼は同意しました。
「すまないが。本当に幽霊が見えるのか?」
「彼は間違いなくあそこにいるわ」とトゥルーは部屋の向こう側を指さして言いました。
「俺を無視して二人で俺の事について話をするの止めてもらえないかな?」とアランが部屋の向こう側から不平を言いました。
「彼は何をして欲しいって言ってるんだ?」デイビスが尋ねました。
「自分を無視して二人で話をするのは止めてくれって」とトゥルーは目を泳がせ答えました。
「あなたは全く見たり聞いたりできないの?」
「いいや」
「それであんたは俺を助けてくれるのか?」アランは少しイライラして尋ねました。
「どうやって?」トゥルーは尋ねました。
「あたしは人を救うのを手伝ってるわ、でも、あなたはもう死んでるじゃない。
 助けを求めるのは少し遅くない?」
「多分彼には心残りがあるんじゃないか」とデイビスはトゥルーの話から要点を拾い上げて提案しました。
「そうじゃないよ」とアランが肩をすくめて答えました。
「誰かにお別れを言いたいとか?」トゥルーは尋ねました。
「いや」
トゥルーはデイビスに頭を振りました。
「殺されないようにするとか、殺人者を捕まえて法の裁きを受けさせたいとかじゃないのか?」デイビスが尋ねました。
「いや」アランはトゥルーの傍を過ぎて椅子に座って答えました。
椅子が少し動くとデイビスが息がつまり、空の椅子が動くのを見てトゥルーの腕をぎゅっとつかみました。
アランはデイビスの反応に気付いて、もう一度ニヤッと笑うと椅子を動かしました、
デイビスが興奮して1フィートも飛び上がりました。
「それじゃどういった助けが欲しいの?」トゥルーは尋ねました。
トゥルーは横腹に奇妙な感覚を感じたとき、アランは返事の代わりにニッコリ笑いました。
彼女はこの犠牲者が今まで助けてきた誰よりもはるかに多くの問題を抱えているのではと密かに疑いを持っていました。

第2章
「どうなの?」アラン・スミスの幽霊は彼女にニッコリ笑い続けますがトゥルーの質問には答えません。
「俺ってあんたを緊張させてるのか?」と彼は立ち上がって彼女に向かってゆっくりと近づきながら尋ねました。
「少しね」とトゥルーは向かってくる幽霊から徐々に離れようとしながら認めました。
「あたしは一度も幽霊を見た事がないの」
「一度も?」デイビスはどこに幽霊が立っているのか見ようと努力しましたが見る事はできませんでした。
「ええ、もちろんないわ」とトゥルーが答えました。
「あたしがどうして見るの?」
「まあ、大抵の人は君も知っているように一生のうちにはっきりと幽霊を見る事がある」
デイビスは誰もがその事を知っているというような調子で説明しました。
「そうなのか?」アランは明らかにデイビスの話に興味を持って
デイビスが彼を見る事も聞く事もできない事を忘れ尋ねました。
デイビスの幽霊や霊界談義は誰も望まずトゥルーはアランの質問を無視して、
その代わりに再び彼女への助けを求めた理由を求めました。
「もちろん先に進む事だろ」アランは返事しました。
「あんたは天国に俺を導くために送られた天使じゃないのか?」
トゥルーは明らかにたとえ彼が死んでいなかったとしても会話がかみ合わないことに奇妙な顔つきをしました。
「他に何かあるんじゃないの?」と彼女は彼がまた座ろうとしたので強く尋ねました。
彼が部屋の中を飛び回ることに彼女は悩み始めていました、
そして少なくとも彼がじっとしていてくれたらデイビスが見えない幽霊を見ようと
部屋の中を見回さず一箇所を見ていてくれる事ができるはずです。
「そうは思わないな」とアランは座って肩をすくめて答えました。
「俺は死んでここから動けないでいる。興味はあるよ、どうして死体安置所から動けないのか」
「あたしはそうは思わない」とトゥルーが言いました。
「多分この場所じゃなくてあたしに関係があるんだよ」
「そりゃいい」アランはにっこり笑いました。
トゥルーは彼をにらみつけました。
「彼は何て言ったんだ?」デイビスは彼女の表情を見みて尋ねました。
「何にも」とトゥルーは自分に取り付いているという考えに微笑んでいたアランを睨み付けながらつぶやきました。
「じゃあ、あたしじゃないって言うならどうして成仏しないの?」
「トゥルー?ここにいるのか?」ハリソンの声が死体安置所の奥のドアから聞こえドアが開きました。
「ここにいるわよ」とトゥルーは彼が入ってきたにもかかわらず返事を返しました。
彼女の目はアランから離しませんでしたがアランは入ってきたハリソンを見ました。
「あれは誰だい?」アランはハリソンの方をしかめっ面をして尋ねました。
「弟よ」とトゥルーは何も考えずに答えました。
「そんなの分かってるさ」ハリソンはにっこり笑いました。
「それなら問題ないな」とアランは答えて笑みが彼の顔に戻りました、そして彼は椅子に座りました。
「あんたはどうして欲しいの?」トゥルーは我慢をしきれなくなり再度繰り返しました。
「20ドルか30ドル都合して欲しいんだけど」とハリソンはトゥルーの厳しい質問にオドオドしながら答えました。
「あんたじゃないわ」とトゥルーはついにハリソンの方に向きため息をついて言いました。
「少し待ってくれない?」
「もちろんだとも」とハリソンは答えるとアランが座っている椅子に座ろうとしたました。
トゥルーはすぐにハリソンがアランを見る事ができない事を悟っていました、
しかし彼が椅子に座ったとき何かを感じ悲鳴を上げて椅子から飛び出して椅子を睨み付けました。
「一体何だ?」と彼は慌てて部屋を見回して尋ねました。
「冷たかったのか?」とデイビスが興味本位で尋ねました。
「霊界の者達は周りの空気を冷たくする傾向があるんだ」
「デイビス、お願い」とトゥルーがため息をついて言いました。
「霊界?」半信半疑でハリソンは尋ねました。
「彼も同じ様だな、俺を見れないという事は、俺は君に取り付いた幽霊に間違いないな」とアランは喜びながら指摘しました。
「それで俺たちはどうするんだ?」
「黙ってて!」トゥルーはイライラさせる幽霊についに堪忍袋の尾が切れて露骨に叫びました。
「ゴメン」とハリソンはまたトゥルーが自分に言ってるものだと思って謝りました。
「あんたじゃなくて」とトゥルーは椅子に腰掛けてため息をついて言いました。
「それじゃ、少し金を貸してくれる?」ハリソンは明らかにできるだけ早く遺体安置所から出たそうに尋ねました。
「もう少し考えさせて、あんたもよ」トゥルーはぶつぶつ言いました。
トゥルーは自分に取り付いた幽霊の問題についてどうしようかと考え数分が静かに過ぎ去りました。

「君は白い光だとか他に何かを見たのかい?」
デイビスはついにたまりかねてアランが机の近くに立ってるにもかかわらず空の椅子に向かって質問を投げかけました。
「誰があんたに教えたんだ、テレビの見すぎじゃないのか?」アランは目を泳がせて尋ねました。
「彼は何って言ったんだ?」デイビスがトゥルーに尋ねました。
「何も」
「彼って誰なんだ?」ハリソンはデイビスが沈黙を破った事でトゥルーが話し出したので尋ねました。
「それはその上にいる男の人の事よ」とトゥルーはぶっきらぼうに答えました。
「それじゃ、助けを求める代わりに幽霊になって蘇ったんだ?」ハリソンは尋ねました。
「かっこいい」
「実際、彼は助けを求めてきたわ」
トゥルーは次にハリソンに巻き戻した時間が遅過ぎであった事やそのために起こった奇妙な副作用について説明を行ないました。
「それじゃもう一度やり直しをする代わりに幽霊に取り付かれたって事か」とハリソンが笑いながら言いました。
「トゥルーは今日何をしたとしても間に合ったとは思ってないんだ」とデイビスが指摘しました。
トゥルーは頷いてアランが机に寄りかかって立ったのを見ました。
アランは熱心に会話を聞いていましたが彼の顔には混乱の表情を浮かべていました。
「何?」トゥルーは尋ねました。
「死体が君に助けを求めまて、もう一度その日をやり直すって?」アランは尋ねました。
「俺がそんな事信じるとでも思ってるのか?」
「どうして?」トゥルーは尋ねました。
「あんたは幽霊でしょ。心を開いたらどう」
「ポイントはそこだ」とアランが答えました。
「それで今俺たちは俺がここで何をしているのか、そしてどうすればあの世に行けるか分かろうとすべきなんだ」
「自分自身で何かしなければならない事はないの?」トゥルーは尋ねました。
「誰かに言いたい事とか?」
「何も思い浮かばないな」とアランが答えました。
「俺としてはそれが解決するまで君に取り付いていないといけないんだと思う」
「そう言うんじゃないかとビクビクしてたわ」とトゥルーが答えました。
「何て言ったんだ?」ハリソンは尋ねました。
「解決するまであたしに取り付いているって」とトゥルーがため息をついて言いました。
「それはあまり良くないな」とハリソンが笑って指摘しました。
「誰も見る事も聞く事もできない幽霊に取り付かれている事を考えてみろよ」
「ええ、独り言を話してるって、皆はあたしの頭がおかしいと思うでしょうね」
「他の可能性を考えてないな」ハリソンはにっこり笑いました。
「幽霊だったらポーカーで他の皆のカードを見て姉さんに皆の手を教えてくれる事もできるじゃないか。
 考えてみろよ。一財産稼げるぜ」
「俺は君の弟の考え方のほうが好きだな」アランはにっこり笑いました。
「もしあいつが俺を見られれば一緒に一財産作る事ができただろうな」
「全く」とトゥルーが嘆きました。
「何だ?」ハリソンは尋ねました。
「幽霊はあんたのモラルと一緒だって」とトゥルーが答えました。
「あたしにそんな事しろっていうの?」

第3章。
三十分後、トゥルーは自分に取り付いている幽霊の問題についてどうすべきかまだ理解できていませんでした。
デイビスは見えない幽霊を目の前にワクワクして、そしてトゥルーが二人の間に入ってアランを質問攻めにしていました。

いいえ、彼は天国や地獄が存在しているのかどうか知らないって。
いいえ、まだ光は見てないって。
死んだとき、痛かったかどうか思い出す事ができないって。
いいえ、エルビスには会ってないって。

一方でハリソンはアランをポーカーゲームに連れて行こうとトゥルーをおだてて自分の考えを押し付けようとしていました。
トゥルーは繰り返しハリソンにアランはそんな事に興味がないことを言いました。
しかしアランはそのアイデアに大喜びで、
もしただ二人してトゥルーに彼らのアイデアを納得させることができたなら完ぺきな場所を知っていました。
トゥルーは頭痛がし始め目頭を押さえました。
「外の空気を吸ってくるわ」彼女はついにその場を離れました。
デイビスはガッカリしているようでしたがそのまま椅子に座っていました。
ハリソンとアランは立ち上がって彼女の後を追いかけます。

彼女は再びハリソンがお金を貸してくれと言い始めてので小さくうなりました。
それから再び彼女は考えました。もし彼にお金を渡したら出て行くから少なくとも幽霊と十分に話し合いができると思いました。
彼女は近くのATMマシンに行くと20ドルを引き出しました。
彼女はハリソンにお金を手渡すと大喜びしましたが、
死体安置所に来る前に本来行こうとしていた場所急いで行くようには見えませんでした。
トゥルーは天高く澄み渡った秋の空を見上げると近くの公園へと歩きました。
彼女はハリソンとアランが後をつけてきても驚きませんでした。
「それじゃあポーカーゲームについて…」アランは始めました。
トゥルーは空を仰ぎ目を泳がせました。
それはまるでハリソンが二人いて彼女を悩ませているようでした。
けれども少なくともアランは今お金の必要性はありません。
「あんたがどうしてここにいるのか理解する必要があるの」とトゥルーは公園でベンチに腰を下ろし言いました。
「それがポーカーでお金を増やすためだとは思わないわ」
「君は俺をあの世に送るのを助けるためだと思う」とアランは思いにふけって提案しました。
「でも、どうやればあんたをあの世に行かせてあげられるのか分からないのよ」とトゥルーが指摘しました。
「こんな事初めてだし」
「多分姉さんはそいつに取りつくべき家を見つけてやる必要があるんじゃないか」とハリソンが示唆しました。
トゥルーはハリソンがまじめに言っているのかと彼の方に向きました。
声の調子からは判断は難しかったが彼の表情がまじめからはほど遠かったことで明らかになりました。
彼の次の言葉でそれを確証しました。
「幽霊屋敷かなんかを開いてさ、観光客にそれを見せるんだよ」
「何で俺が?」アランは嫌そうなそぶりで尋ねました。
「見世物かよ」
「そのアイデアは嫌いだってさ」とトゥルーが笑いながら言いました。
「あたしは教会かそんなところに相談してみたらどうかと思うんだけど」
「それはちょっと待たっ方がいいじゃないか」とハリソンが道の向こうをアゴでしゃくって言いました。
「誰がここに来たと思う」
トゥルーはハリソンの言葉に目を向けました。
彼女のやり直しの日はもっと悪くなっていきます。
ジャック・ハーパーが彼女が望んでもいないのにこちらへ来ようとしています。
「彼は誰だ?」男がこちらを見つけて歩いてくるのを見てアランは尋ねました。
「悪魔の化身だ」とハリソンは何気なくジャックをにらみつけて答えました。
「よう、久しぶりじゃないか」ジャックは冷たい微笑でハリソンに言いました。
「今日は本当にあんたの相手をしている時間がないの、ジャック」とトゥルーは立ち上がって言いました。
「君は今日のラウンドで勝ったじゃないか」とジャックが難しい顔つきで言いました。
「どうしてそんなに敵対視するんだ?」
「何に勝ったっていうの?」トゥルーは尋ねました。
彼女の体が急によろめきました。
多分それは彼女の気のせいだったのかもしれませんが、
彼女はジャックの視線が彼女とハリソンとアランにも注がれていると思いました。
ジャックも同じようにアランを見る事ができるのか?
「よう、スミスさん、今日ここで会うなんて思わなかったよ」とジャックは笑いながら言いました。
「遠くにいたものだから会えなかった」
「俺を見られるのか?」アランは驚いて尋ねました。
「ああ」とジャックは変な表情を浮かべ答えました。
「俺は君個人に取り付いた幽霊じゃないようだな、トゥルー?」
「幽霊?」ジャックは尋ねました。
「俺をからかってるのか?」
トゥルーは頭を振りました。
「今まで、あたしだけが彼を見る事ができるんだと思ってたわ」
ジャックは手を伸ばしてアランに触ろうとしましたが空振りしました。
彼は驚いた素振りでまた同じ事をしました。
「いい加減にしろよ」ジャックが三回目に手を伸ばしたときアランはきつく言いました。
彼は手を引いてその手で髪を掻き揚げました。
「本物の幽霊だ」ジャックは頭を振りました。
「こんな事があるのは聞いてるが、自分では一度も見たことがない」
「誰でも幽霊の事は知ってるさ」とハリソンが指摘しました。
「あいつを見た今、怖気づいたんじゃないのか」
「普通の幽霊のことじゃない」とジャックが明らかにしました。
「つまり、やり直しの幽霊の事だ。あんたが死んだ時間は俺たちがやり直す前だったはずだ」
「あんたもトゥルーと同じようにやり直せるのか?」アランは尋ねました。
「ああ、トゥルーと全く同じように俺はやり直せる」とジャックが答えました。
「全くトゥルーと同じじゃないだろ」とハリソンが指摘しました。
「トゥルーが命を救っている時奴は…」
「バランスを元に戻す」とジャックはアランに向かってわずかに笑みを浮かべて話を遮りました。
「…人を殺してる」ハリソンは睨みつけて言い切りました。
「話を戻して」とトゥルーが言って話を遮りました。
「あんたはこれが前に起きたのを聞いたって?」
「ただの噂さ」ジャックは肩をすくめました。
「誰から?」トゥルーは続けました。
「君が知らない人からさ」
「でもその誰かをあたしは知ってるかもしれないわ」トゥルーは続けます。
「あたしはただあんたもやり直せるって知っているだけ。あたし達以外に同じ力を持ってる人がいるっていうの?」
ジャックは肩をすくめて話に乗ってきません。
「いいわ」とトゥルーはため息をついて言いました。
「それじゃどうして巻き戻ったのか教えてくれない、彼を救う事もできないし、もう死んでいるのに?」
「予想できるだろう?」ジャックは不安を与えるような笑みで尋ねました。
「予想できないわ」とトゥルーがきつく言いました。
「彼はどうしてまだここにいるの?」
「誰も俺のようじゃないって思ってるんだろ」とアランは傷ついた振りをして言いました。
「君が彼を救うチャンスを持ってるからだ」ジャックは返事しました。
「死んでるのよ」トゥルーは不必要に指摘しました。
「だがそれは彼が助けを必要としないわけじゃない」
「要点を言って」とトゥルーは我慢しきれなくなり要求しました。
「彼の遺体は君の助けを得られないかもしれない、だが彼の魂については?」
「何だ?」アランは尋ねました。
「俺の魂はとても素晴らしいぞ」
「体から離れてるからな」ジャックは返事しました。
「あんたは死んでいるんだ、でも生き方のせいで次にどこへ行くべきなのか明確じゃない。
 あんたは聖人でも悪魔でもないからな」
「お前の方こそ悪魔なんじゃないか」ハリソンは口出しする事に抵抗できませんでした。
ジャックは彼を無視してトゥルーの方に向きました。
「それは確かなの?」と彼女が尋ねました。
「確かだ、ただ俺の聞いた噂だがな」
「それじゃ彼は良い行いをするまで天国に行けずに幽霊としてここにいるって言うの?」
トゥルーはアランを見ました。
それがどれぐらい難しい事なのか?
「あるいは何か悪いことをして…」アランの声は小さくなっていきました。
トゥルーはアランが幽霊にもかかわらず前より青白く見えました。
「心配しなくていい」とジャックが慰める調子でアランに言いました。
「俺たちがあんたに手を貸しやる」
トゥルーはベンチに深く座りました。
それにしてはあまりにもジャックがブラブラしているように見えました。
もっと悪いのはルークを殺すような男に任せたらアラン・スミスの魂は苦痛に苛まれるのではと不安を掻き立てました。
いつも彼女はやり直しの回が増えるほど何かが彼女の仕事をもっと困難にすると彼女は思いました。
最初はジャックが彼女の仕事と努力を無駄にし、今は幽霊が彼女の召命を変えていること。
彼女はもう命を救い始めて1年が立ちます。その事に慣れ始めさえしていました。
けれども魂を救うというのは彼女自身の仕事ではなく最有能な人にと感じました。

第4章。
「それであなたはどう思う?」
トゥルーはジャックが現れ幽霊についての解釈をデイビスに尋ねました。
デイビスは電話の向こうでしばらく黙っていました。
トゥルーはジャックとハリソンが和気藹々と語り合う問題の幽霊を見つめました。
彼女は彼らの言葉の中から「フルハウス」という言葉を聞いて心の中でうなりました。
『バカの一つ覚えみたいに』
「ジャックはこのやり直しの幽霊について誰から聞いたと言っているんだ?」 デイビスがついに尋ねました。
「言わないのよ」とトゥルーがジャックへ落胆した目をして答えました。
「嘘をついているかもしれないしな」
「アランの事についてはそうかも。でも以前に起きた同じ事については、そう思えないわ。
 あいつ物凄く興奮していたから、いつも以上に口が軽かったわ」
「幽霊の事を調べてみて、もし何か有効な方法を見つけたら、君に電話をするよ」とデイビスが提案しました。
「君は見張っていた方がいい、もしジャックが真実を話していて、
 君が目を離したりしたら、アランが重大な問題をかかえているかもしれないからな」
「分かったわ」とトゥルーが答えました、デイビスがいつも的確な想定をするのには驚きませんでした。
「絶対に目を離さないようにするわ。
 残念なのはジャックを追い払えない事だけど。
 あなたと同じように幽霊を見て興奮しているわ」
「俺の興味は純粋に科学的なことだ」デイビスが憤慨しました。
「そうよね」トゥルーはにっこり笑いました。
「『エルビスに会ったか?』は明らかに科学的な答えを必要とする決定的な問題だわ」
デイビスが笑い返しました。
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「オーケー、いいわよ」とトゥルーは他の人たちのところ歩きながら言いました。「どんな計画を立てたの?」
「考えたぜ」とハリソンは始めました。
「ダメよ」トゥルーは彼を拒否しました。
「俺はまだ何も言ってないじゃないか」とハリソンが指摘しました。
「いいわ」トゥルーは妥協しました。「それがトランプゲームに関係なかったら、始めてもいいわ」
ハリソンは黙ったままでいました。
「じゃあ?」トゥルーは尋ねました。
「楽しみを全部奪う気なのか」彼はからかいました。
「オーケー、他にどんな考えがあるの」トゥルーは少しも弟のコメントに関わらずに尋ねました。
「ルーレットはどうだ?」
ジャックは意地悪そうな笑みで尋ねました。
トゥルーはほとんどの人が丘の方に走って行ってしまうほどの剣幕で彼をにらみつけました。
彼はそこで動けない状態になりました。
「教会に行ったらどう?」
トゥルーが提案すると三人の男たちの顔は気落ちした表情になりました。
彼女がアランに宗派を尋ねようと彼を見たとき、彼は彼女の左の肩の上の方を見て顔を輝かせました。
彼女は何が彼の注意を引きつけたのか見るために振り向きました。
こちらに向かって歩いて来るのは場違いに見えるほどの背の高い美しいブロンドの髪をした女性でした。
トゥルーは遠くからでさえ彼女が悲しみに沈んでいる事を見分けることができました。
トゥルーは後ろのアランとその他の者へ向き直りました。
ハリソンの視線は同じく女性に釘付けとなって、
顔には品定めしているような表情を浮かべ向こうの女性を見て立っていました。
ジャックの視線も彼らと同様に女性の歩く方向を見ていました。
「彼女、俺の方を最初に見たぞ」とハリソンが嬉しそうに言いました。
トゥルーはハリソンに女性は彼らを見てたわけじゃないことを言おうとしましたが考え直しました。
もしハリソンが彼女をナンパしたとしたら少なくとも一人は彼女とトランプの話をしている事になるでしょう。
それはいい事かもしれません。
「実は俺を最初を見たんだ」とアランが言いました。
トゥルーはアランに死んでいるのだから彼女に声や姿が見聞きできるわけながいと言おうとしましたが思いとどまりました。
アランの声はトゥルーに女性が誰なのか知っていると言ったからです。
「あなた彼女を知ってるの?」と彼女が言いました。
それは質問ではありませんでした、その言葉には十分な確信を持っていました。
「彼女は俺の妻なんだ」とアランが言いました。
「まあ、どちらかと言えば未亡人なんだけどな」と彼が難しい顔つきで訂正しました。
それで彼女が悲しそうな雰囲気をしているのかとトゥルーは悟りました。
トゥルーは女性が近づいてくると悟られないように女性の方を向きました。
「彼女は俺がまだ死んでいることを知っているとは思えない」アランは言いました。
「彼女は知ってるように見えるけど」とトゥルーが答えました。
「いや彼女は知らない」アランは否定しました。「俺を信じてくれ。君が彼女に話かけて欲しい」
「彼女のところに行って、そんな事彼女に話すわけにいかないわ」とトゥルーは驚いて答えました。
「質問攻めにされるわ」
「彼女に何が起きたのか言わなければ」とアランが強く主張しました。
「急いで、彼女がもうすぐ来る」
トゥルーはどう説明しようとかと悩みながら再び女性を見ました。
女性が彼らの方向に手を振ったとき、彼女は見守りました。
一瞬、彼女はアランを見ることができて彼に手を振っているのかと思いました。
しかし、女性が近づいて来たとき彼女の進行方向の道の向こうにもう一人の女性が近づいてきた事で違うと分かりました。
「一体どうしたんだ?」ハリソンは一方的な話題についていけなくて尋ねました。
「彼女はこの幽霊の奥さんだとさ」とジャックが答えました。
トゥルーはもう一人女性が近づいてくるのを見続けました。
アランは彼の妻が誰と会おうとしたのか見て、大きなあえぎ声を漏らしました。
「どうしたの?」トゥルーは二人の女性が間近にきたので小さな声で尋ねました。
ジャックはアランの方を見て眉を上げました。
一方ハリソンは最初の女性と変わらぬくらい美しいエキゾチックな地中海風の女性を振り返って見ていました。
彼は小さく口笛を鳴らしました。
「二人が知り合いだとは知らなかった」とアランは二人の女性たちがためらいがちに挨拶するのを見て言いました。
「説明してくれる?」トゥルーは僅かに疑いを持っていたけれども話しがどの方向に向かっていくのかと思い尋ねました。
「もう一人の女性は?」ジャックはアランが肩をすくめ頷くのを見て大声で笑いました。
「どうしてあんたの魂を成仏させるのに、こんな問題が出てくるのよ」とトゥルーが目を泳がせて言いました。
「今日は少し決めつけがちだだな、トゥルー?」 ジャックはにやにや笑いました。
「死神がそう言う」とトゥルーが返答しました。
「俺は人を殺す事はしない、ただ君がバランスを崩そうとするから阻止してるんだ」とジャックはさりげなく繰り返しました。
「この話は昔っから無意味だったわね」とトゥルーが答えました。
「あんたがどう言い繕っても殺人犯以外の何者もでもないと思わざるおえないわ」
「不愉快だなトゥルー、本当に不愉快だ」とジャックは彼女の言葉に傷つけられたかのように胸の上に手を置いて答えました。
「あたしにはそんな風に見えるのよ」とトゥルーが二人の女性たちに視線を戻しながら答えました。
二人の女性がベンチの方に行ったのを見ながら、もううんざりだとトゥルーは思いました。
それはジャックがまだうろついているという事はこの巻き戻しでバランスを取ろうとする
ジャックの思惑を先読みし混乱していました。
今までのどんな巻き戻しでもトゥルーとジャックは全く同じで、そして彼女は勝つでしょう。
彼女は1度、彼に負けたことがありました。
彼女は以前彼の不正直さを過小評価していました。
ジャックがどうやって場所などを特定するのか分かりませんでした。
今彼女はよくわきまえていて、そして再び彼を過小評価するようなミスはしないでしょう。
彼女は彼を追い払う事ができないかもしれないし、姿を消して彼女が十分に助ける事ができるかもしれない。
もし彼が近くにいようとしていたとしたら、彼はうっかり口を滑らせて何か言う可能性も十分にありました。
何かとは彼女が知らない別の誰かがやり直しをしている事や、あるいはその他のやり直しについてのことなど。
多分、うっかり口を滑らせそれが誰であったのか話をするでしょう。
彼女は心を決め振り向きました。明るいが偽りの笑顔で彼女はジャックの方に向きました。
「それじゃ、あんたはこれからあたし達がどうすればいいって言うの?」と彼女は人をだますような甘い声で尋ねました。
ジャックは一瞬コケそうになりましたが直ぐに立ち直り。
「俺は彼女たちに話をしに行くべきだと思うな」と彼は女性たちの方向に頷きながら提案しました。
「そりゃいい」とハリソンが同意しました。
「あんたじゃなくて」とトゥルーは弟が女性たちに向かって行こうとするのを阻止しようと手を上げて言いました。
「ええーっ、なんでだよ姉さん」と彼は主張しました。
トゥルーはハリソンの腕を掴んで周りの皆から引き離しました。
「俺は手助けできるだろ」とハリソンが言いました。
「前にもやったじゃないか」
「分かってる」とトゥルーが答えました。
「今はあんた達三人に構ってられないの、分かるでしょ」
「それじゃ、俺はジャックの傍で待ってろっていうのか?」
ハリソンはスネた声で尋ねました。
今回トゥルーはハリソンにジャックの傍にいろという命令にハリソンがスネたふりをではなく
心底傷ついている事を悟って少し後悔しました。
「ハリー、今日は何がどうなるのか分からないの。
 これはあたしが最初にやり直しをした時と同じぐらい新しい事なんだよ。
 本当に何が起こっているのか分からないの、それにあいつを追い払う事ができないと思ってる。
 でもあいつは何か知っているように思えるわ、そしてもっと問題を起こすようなたくらみをしてるかもしれない、
 どこかに行かれるよりあたしと一緒にここにいる方が良いのよ」
「奴はあいつを誘惑してるぜ」とハリソンが真剣な表情で話を遮りました。
「何が?」トゥルーは尋ねました、彼女の思考は弟の言葉によって失われました。
「その事についてだけど、姉さん」とハリソンは声を殺し後方のジャックとアランをちらっと見ながら言いました。
「姉さんは生かす、そして奴は死神だ。
 生き返させる代わりにどんな危機な事があるっていうんだい?」
トゥルーは弟が非常に良い点をついてきたと思いうなずきました。
ジャックは悪魔と同じぐらい油断がならなく邪で、そして今彼はそれを証明するチャンスを持っていました。
彼女は彼がアランと一緒に笑っているのを見ました。
どんな事で彼を誘惑しているのかは分かりませんでした。
「俺なら助ける事ができる」とハリソンが繰り返しました。
「今じゃないわ、ハリー」とトゥルーは頭を振って答えました。
「どうして?」彼は聞き返しました。
トゥルーは弟を見て彼に真実を話すのをためらいました。彼女は弟が好まないという事を知っていました。
「なんでさ?」と彼が尋ねました。
「それは…」トゥルーはためらいました、しかし弟の顔には彼女が答えるまで行かせないという表情をしていました。
「それは、あんたもジャックと同じように彼を誘惑してるからよ。
 あんた達二人は彼にカードの不正行為の手伝いをさせる。
 すぐに全員と話できるわけじゃないし、それにあんたは全くこれまでのところ助けになってないわ」
「姉さんは俺が故意に奴の魂を危険にさらすとでも思ってるのか?」 ハリソンは驚きました。
「故意じゃないけど」トゥルーは大急ぎで返事しませんでした。
「でも…」
「姉さんは本当に俺が…」ハリソンは手を上げて降参して踵を返しその場を後にしました。
「ハリー!」彼がトゥルーから離れると弟を呼び止めました。
「忘れていいよ、姉さん」彼は直ぐに返しました.。
トゥルーは弟が視界から姿を消すのを見て愚かにも泣きたい気がしました。
彼女は家族の中でもハリソンを溺愛していました、そして彼女は彼が彼女に対して腹を立てているのが嫌でした。
「問題でも?」
ジャックは同情的な顔で彼女に言いました。
トゥルーは最初の頃とは違ってジャックの顔つきと声でそれがでまかせだと認識しました。
「全然」彼女は彼とアランに向かって歩きながら嘘をつきました。
彼女は後にハリソンのことで心配するでしょう。
「それであんたはあたし達に何を話そうとしたの?」
アランは2人の女性を見ました。
「俺は真実は問題外であると思う?」

第5章。

トゥルーは横目でジャックに合図を送ると彼はアランから離れて二人の女性を見つめながら
ゆっくりとベンチに腰を下ろし話し出しました。
「これは楽しみだな、トゥルー?」ジャックはニヤニヤしながら尋ねました。
「俺たちが一緒にこんな仕事をするなんて。そう思わないか?」
「何も思わないわ」とトゥルーが答えました。
「あいつがどうしてあたしに付きまとっているのかあんたが知ってるとは思えないわ。
 どうせ認めないと思うけど」
「なあ、トゥルー、本当にさ、俺が今までに君に嘘をついた事があるかい?」
「そう、少し考えさせて。
 うーん。
 ええ、いつもあんたは嘘をついていたわね」
トゥルーはジャックが目的のために事件を再構成しようとしていた事を思い出すのを止めようと口を閉ざしました。
「それは多分、過去にすごく小さな嘘ぐらいついたかもしれないな」とジャックが認めました。
「しかし、もっと良い事のためだ」
「あんたの言うもっと良い事って何よ?」
「トゥルー、トゥルー」とジャックは頭を振りながら言いました。
「何度もこの話を繰り返す気か、いい加減分かって欲しいな」
「何をそれほど確信してるの?」 トゥルーは尋ねました。
ジャックはニヤニヤと笑って答えると、トゥルーはその顔を見るたびにいつもイライラとさせられました。
「オーケー、それじゃ」とトゥルーはジャックが無意味な口論を返す前に言いました。
「どうしてアランがまだこの世にいるのか知っているの?」
「言っただろ、俺は巻き戻しの幽霊についてのうわさを聞いたんだ」
「誰から?」トゥルーは答えを期待しないで尋ねました。
「なあ、トゥルー、今はそんな事に気を回すなよ。そこのスキャパーが俺たちの助けを必要としているじゃないか」
「あんたはどんな手助けをする事ができるの?」トゥルーは尋ねました。
「道徳的指導さ」とジャックの声が漠然と恩着せがましい調子で言いました。
「道徳的指導?」とトゥルーが笑いながら言いました。
「あんたが?」
「君は正しい事をしていると思っているようだが、そうじゃないんだぞ」とジャックが指摘しました。
「俺の仕事は君が干渉することで宇宙の秩序を乱す事を阻止する事だ」
「宇宙の秩序?」トゥルーは皮肉っぽく質問しました。
「宇宙ならもうしばらくの間は安全だと思うわ」
「君は分かってない」とジャックが論じました。
「しかもポイントがずれている」
「ええ、この話をこのまましばらく続けるつもりなの?」
トゥルーは振り返ってアランの妻とその友達がの隣に立つアランを見ました。
彼女はアランが意図的に彼女達に間違いを起こすとは思いませんでした、
しかしもし彼女たちが公園から出て行けば彼は彼女達を忘れるかもしれません。
「要は」ジャックは芝居がかった効果のためにひと呼吸おきました。
「要は君の意見が俺とずれている事にかかわらず、君は俺がしている事を人類の利益のためだと信じる必要があるんだ。
 君が間違っていないと信じるのと同じようにね」
トゥルーは止めさせようと口を開きましたがジャックは手を上げて阻止しました。
「俺たちの差は別として」彼は継続しました。
「どうして俺が友好的な幽霊の死後の事まで破壊する事に興味を持つと思うか?
 彼は死んでいるんだ。
 あいつが天国に行こうが地獄に行こうがどうなろうと問題じゃない、俺はもう勝っているんだからな」
「どうなろうって?」トゥルーは尋ねました。
「まあ君がどう思っているのか俺には分からないが、だが実際君は求めてきた人たちを助けるためになんでもする、
 たとえあいつが死んだままでもな?」
「違うわ」とトゥルーが答えました。
「俺たちはあいつが先に行くのをただ手伝うだけだ」とジャックが言いました。
「俺は勝っているんだ、だからあいつが次にどこに行こうが俺には何の損もない」
「オーケー」とトゥルーが言いました。
彼女は彼の論理が正しいことを認めなければなりませんでした。
それに彼女はそれ以上の良いアイデアが浮かびませんでした。
「なあ、トゥルー」とジャックはトゥルーの肩に腕を置きながら言いました。
「俺たち二人、お互いの仕事は平行線だ、ちょうどこんな風に」
「気安く触らないで」とトゥルーは彼を振りはらって、彼女たちの方にいるアランに向き歩きながら言いました。
「あんたらは信じないだろうな」とアランはトゥルーとジャックが近づいてくるのを見て言いました。
「この二人が俺を殺そうとたくらんでいるのを」
彼はトゥルーとジャックを見て立っていました。
「それがどういう事か分かるか?」
二人がアランの傍に来るとアランは静かに尋ねました。
「えーと、アラン」トゥルーは話し出しました。
「あんたはもう死んでいるのよ」
「なあ、トゥルー」とジャックはアランの脇に近づきながら言いました。
「そんな思いやりのない言葉を言うのは、さっき死んだばかりの者に言う言葉か?」
「あたしはただ、アランの事をもう少し考え直す必要があると思うの。
 彼の命はまさしく誰にも危険にさらされないわ」
「それなのに君は俺の事を非情だって言うのか?」
ジャックは同情してアランを見ながら言いました。
「彼は死んでいるが、まだ傷つく感情は持っているんだぞ」
ジャックがトゥルーへの無頓着な態度に対して責め続けるとトゥルーは目を閉じました。
彼女の頭痛の種は益々増えるばかりで、そしてもっと悪いことはアランがいつ離れてくれるのか分からないことでした。
今回は今までの巻き戻しとは全く異なっていました。
アランは巻き戻しの日が終われば消え去るのか、あるいはいつまでも彼女の近くにつきまとっているのか?
彼女はジャックがその特別な疑問への答えを持っていて、
そしてその事をジャックに尋ねる事によって失うべき物は何もないと決断しました。
おそらく彼は嘘をつくでしょう、しかし少なくとも彼は彼女に恩を着せるのをやめるでしょう。
「あたし達のタイムリミットは?」と彼女はジャックが息継ぎをして言葉を止めるとすぐに尋ねました。
「タイムリミット?」アランが尋ねました。
「それはこの巻き戻し日が終わったら俺が消え失せるかもしれないって事かい?」
「そうよ」とトゥルーが答えました。
「ジャック?」
ジャックはあいまいに肩すくめました。
「さっきも話しただろ、トゥルー、俺はただこの事についてのうわさを聞いただけなんだ」
「でも、あんたはあたしにその人が誰なのか教えようとしないじゃない、
 ならあんたがその人に電話をして、この事を聞いてくれてもいいんじゃない?
 役に立つ事をしてよ」
「オーケー」とジャックはもう一度肩をすくめて答えました。
ジャックはジャケットの内ポケットに手を伸ばし携帯電話を取り出しながらトゥルーから離れていきました。
トゥルーは彼が何を話すのか聞こうとしましたがすでに聞こえない場所に移動していました。
彼女はジャックのいないこのチャンスを逃しませんでした。
「聞いて、アラン」と彼女は決して目をジャックの背中から離さずに大急ぎで言いました。
「ジャックは心の中ではあんたに何かしてあげようなんて思ってないわ。
 あいつは冷酷な殺人者よ。
 でもあいつはあんたがここにいる理由をあたしよりずっとよく知ってる、
 だからあたし達はあいつと一緒に行動しないといかないの。
 でもあんたのために言っておくわ、あいつを信用しない方がいいわ」
「彼は君がそう言うだろうって言っていたよ」とアランが言いました。
「君の弟も俺に彼を無視するように言っていたよ、
 でもその時弟さんが植込みに目をそらしていたんでまじめに受けとめるのは少し難しかった」
「そう、それならあたしの話を真剣に受けとめて」とトゥルーはジャックから目を逸らし真直ぐにアランを見ながら言いました。
「絶対にあいつを信用しちゃだめなの」
「たった今俺が愛する二人の女性が俺を殺そうとたくらんでいる事が分かったところだ」とアランはベンチに目を戻しらみつけて言いました。
「信用できる人間は少ない」
「あたしを信用して」とトゥルーがもう一度ジャックの方を用心深く見て言いました。
「俺には何かするためには君たち二人の力が必要に思える」アランはそう言うと背後から二人に近づいてくるジャックの方に目を向けました。
「何かいい方法がみつかった?」とトゥルーはジャックが傍に来るととすぐに尋ねました。
「本心か、トゥルー、君の言い方からすると俺を追っ払いたいように聞こえるぜ」
「その通りよ」とトゥルーが答えました。
「それで連絡した相手は何て言ったの?」
「彼はやり直しのゴーストは非常にマレだといっていた」
「本当に?」トゥルーは皮肉たっぷりに言いました。
「あたし達は一年以上の間やり直しをしているけど、一度もそんなのは見たことがないわ、
 それであんたの相手はそれがマレだって言ってるの。
 へえーっ。ありがとう。非常に参考になったわ」
個人的に彼女はジャックが口を滑らせて連絡をとった相手が男性だという事を聞いてほくそえみました。
しかしそれは、ふっと思い出した事であまり長くは続きませんでした。
それはもしジャックが後に誤って「彼女」と言ったなら。
彼が情報を撹乱させるための手段かもしれません。
「俺の知り合いはもう一つ言っていたな」とジャックが言うと再び黙りました。
トゥルーはジャックが知らない事をいい事に楽しんでいるようでした。
彼女はだまされないように催促はしませんでした。
「聞いた話ではアランが消えるのか俺たちの前からいなくなるのか俺たちには気付かないそうだ。
 実際は消えるんだろうがな、それに何が起きるのか知る由もないが」
トゥルーはジャックの言葉をじっくり考えました。
二人はある種類の感覚をもっていました。
彼女はかつてハリソンに死んだことを覚えているかどうか尋ねたことがありました、
しかしその日の出来事はすっかり記憶にはありませんでした。
もちろん彼女はその事を覚えています。
しかしそうであっても聞かずにはいられませんでした。
ルークがどこにいようとも安らかだという保証が欲しかったのです。
けれども保証はありません、彼女が持っているのは信念だけです。
どうにか自分の信念を貫こうと決心しました。
彼女の心にはジャックがまた嘘をついているかもしれないとの思いがありました。
けれども彼女の直感は彼が真実を話していると言っています。
アランは姿を消すでしょう、そして彼女は決して彼に何が起きたのか分からないでしょう。
「分かったわ」とトゥルーは目の前の二人の男たちを見て言いました。
「あそこにいる二人の女性に話をしに行くの、行かないの?」
「いや」とアランが頭の振って言いました。
「俺には分かってるんだ」
「それで」トゥルーは言葉を促しました。
「彼女たちが誰も殺さないようにしないといけないんだ」とアランが答えました。
「でも彼女たちはあんたを殺してないでしょ」とトゥルーが指摘しました。
「あんたは階段を滑り落ちて死んだんだから。違うの?」
「ああ」とアランがうなずきました。
「何カ月間も前からあのカーペットを直そうと思ってたんだ。
 でもそんな事じゃなく。
 俺を殺そうとする彼女たちの計画で他の人間が殺されるかも知れないという事なんだ。
 それが俺がまだここにいる理由だと思うんだ。
 彼女たちが間違って他の人を殺さないようにするのが」
「使命だな」とジャックが笑って言いました。
「君がやるんだろ、トゥルー?君は命を救うことにかけてはエキスパートだ」
「あんたは彼女たちが他の誰かを殺すのを見届けるのが役目でしょ?」トゥルーは尋ねました。
「おい、トゥルー、俺たちはもうこの事については終わってるんだ。
 俺は人殺しはしない。運命を維持しているんだ。
 昨日遺体安置所に運ばれてきた遺体はアラン一人しかいないから、他の誰かが殺された事はないはずだ。
 なら、今日は再び誰かを殺されないのを見届けるしかない」
「だったら、何も手を降さなければこのままって事よね」とトゥルーが指摘しました。
「君はそんなリスクを背負う事を望むのか?」ジャックは尋ねました。
「俺たちの言動で何も変わっていないとでも言うつもりか?
 ほんのわずかな事でも大変な事に変化するかもしれないんだ。
 その事を今までずっと君に話してきていたんだぞ」
「彼女たちには何も話てないじゃない」とトゥルーが答えました。「交流が無い以上何も変わるはずが無いわ」
「分かてないな」とジャックは頭を振って言いました。
「俺たちは昨日この公園にはいなかっただろ。
 彼女たちは俺たちの事を刑事かなんかだと思って殺人計画を変えるかもしれないじゃないか。
 二人は俺たちに気付いてこっちを見ていたんだぞ」
トゥルーは再び横切っていく彼女たちがこちらを見ているのを知ってジャックが正しいのを確認しました。
彼女たちは不安そうな目でこちらを見ていました。
「分かったわ」とトゥルーはため息と共に言いました。
「でも今干渉しなければ事は悪化しないで、誰も遺体安置所に運ばれる事は無いはずよ」
「そうかな」とジャックが答えました。

第6章
トゥルーはジャックにリードされ公園から出て行くとき再び二人のを見ないように意識的に努力をしました。
トゥルーもジャックも彼女たちの事を無視したわけではなく、
アランに見張りをさせ報告させるというユニークな方法を取ったからです。
「まだこっちを見ている」アランは歩き続けるトゥルーたちに報告します。
「君が彼女たちに疑いを持たせたのかもな、トゥルー」とジャックがニヤリと言いました。
「あたしが」トゥルーは睨みつけて返しました。
「俺は事前に怪しまれないようにしていたからな」とジャックは模範生のように指摘しました。
「俺としては二人を見張ってると思わせたほうがいい結果になると思うがな」
「ただ歩き去だけよ今は」とトゥルーは少しペースを速めて答えました。
「他に何か考えがあるのか」ジャックが彼女の肩に気軽に腕をかけながら小さな声で耳打ちしました。
トゥルーは眉をひそめて二人の注意を引きつけないように何気なく振りはらおうとしました、
しかし彼女の肩にかかったジャックの手は思った以上に強く、
大騒ぎしないで振りほどく事はできませんでした。
彼女は歯を食いしばって再びペースを速めました、
そして二人が見えなくなったと確信するとすぐにジャックの腕を払いのけニヤニヤする表情を睨み付けました。
「早くこの巻き戻しが終わって欲しいわ」
トゥルーはアランを見る前に彼女たちが追いかけてきていないのを確認して言い放ちました。
アランがトゥルーとジャックに合流して彼女たちが公園のベンチからまだ動いていないのを確認すると安堵の表情を浮かべました。
「それで二人はどういう計画を立てているんだ?」通りを歩きながらジャックはアランに尋ねました。
「モニークは重りが俺に落ちて来るように彼女の家のジムの設備を壊そうと言ってた」
トゥルーはもしアランが生きていたなら顔色を変えるだろうと思いましたが変えませんでした。
すでに重り彼を押しつぶしているかのように彼は喉まで手を伸ばしました。
「モニークはあんたの奥さんか?」ジャックが尋ねるとアランは頷きました。
「でもあんたの他に誰が個人用のジムを使う?」トゥルーは困惑した表情で尋ねました。
「公共のジムなら犠牲者は別の誰かになるかもしれないけど」。
「普通は誰も」とアランが答えました。
「でも設備のテストするために今日の午後何人かの友人を呼んだんだ。最近仕事を失って金が必要だったから」
「でも彼女が他の人にジムを使わせないでしょ?」トゥルーは尋ねました。
「そうとは限らなさ」とアランは頭の振りながら言いました。
「彼女は俺が仕事を失ったことは知らないんだ、
 そして俺は彼女が出て行った後いつものように仕事に行った振りをしてたんだ。
 その間に来てもらえるよう昨日二人の友達にスペアキーを渡しておいたんだ。
 モニークは近くで働いているから、日中に彼女と部屋で会う危険は犯したく無かったんだ。
 彼女たちは今日また会う約束をしていたよ」
「じゃあ、その事を阻止すれば問題も無いように思えるが」とジャックが思慮深い表情で言いました。
「話を最後まで言ったら?」トゥルーは苛立たため息で尋ねました。
「もちろんだ」ジャックはニヤッとしました。
「皆が俺たちと同じなわけないし、それに君らはここで見てるわけだ、君らが行動しなかったなら」
「要点を言って」とトゥルーはジャックに厳しい口調で結論を急がせました。
「まあ最初のときはあの二人はここからアランを見つけるために家に行ったに違いないだろう、
 既に死んでいるのを知った二人はジムに細工する必要はないだずだ。
 だが今日は君がアランの死体を見つけた、だから何も知らない。
 二人が最初に心配になるのはアランが仕事からいつ帰って来るかだ。
 それまでにジムの設備を壊してしまい、計算ミスにより他の誰かを殺してしまう」
トゥルーはアランの遺体を見つけたときの事を思い起こしました。
警察がチョークで線を引っ張っていたのか、家主と連絡を取るためにメッセージを書置きしていたのか。
しかし彼女は思い出すことができませんでした。
「誰かが二人に何が起きたのか言うかもしれないわ」と彼女は強く主張しました。
「ジムは後ろの方にあるんだ」とアランは言いました。
「寝室を通らなくてもジムに入ることはできる。
 二人の計画を考えれば、そんなに長い時間かけるとは思えない」
ジャックが再び考え込むとトゥルーは同意して頷きました。
彼女はジャックが他の誰も死なせないようにする事を考えているのだと思いたかった。
ただ他に誰も死体安置所に運ばれなからといって、それはまだ誰も死んでいないことを意味しませんでした。
彼女は他の誰かが死ぬのを阻止するために最善を尽くすでしょう、しかしジャックは何か別の考えがあるのか?

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1時間後にトゥルーはデイビスに何が起きたのかについて説明するため電話をしていました、
そして今彼女とジャックはアランの家の後ろに周り駐車したトゥルーの車に座っていました。
幽霊のアランは後部座席の中央に座り運転席と助手席の間から顔を出していました。
「ねえ、どうして体が無いのに車に触ったり座席に座れるのよ?」トゥルーは尋ねました。
アランは難しい顔つきで肩をすくめて深く座りました。
「無粋な質問だな、トゥルー」とジャックが半分微笑して言いました。
「医者になることを望む前に人との付き合い方を学んだ方がいいぜ」」
「知りたいって思うのは自然な事でしょ」とトゥルーが答えました。
「それに普段なら何も問題はわないわ」
「問題ないか?」ジャックは厳しい笑いで尋ねました。
「問題っていうのを知らないな、トゥルー。
 問題ないのは普通の人たちであって、俺たちじゃない。
 初めて君が巻き戻しをした日、選択肢はあったはずだ。
 何もせず、助けを求める者のために走り回らなければ普通でいられたはずだ。
 普通に戻りたいのか?
 なら何もしないのが一番だ」
「何も起きなければね」トゥルーは睨みつけて返事をしました。
「それなら聞かせてくれ。 トゥルー」ジャックは真剣な表情でトゥルーの方に向きました。
「まず君が医師になっていると仮定して、
 まだ巻き戻しがあって人を助けていたとする。
 最初の日に誰かを手術して命を救ったとする。
 そして後で遺体が君に助けを求めてくる。
 病院では死者が出るのは当たり前の事だ。
 そして君は助けを求められた者を救うため手術をやめなけれはならないだろう。
 どうするんだ?どちらを選ぶ?
 今君はデイビスとハリソンに召命を手伝ってもらっているが
 それは彼らの召命ではない、君の召命だ。
 君は誰の命を救うべきか選択しなければならないが、そんな権利はないんだ。
 君に人の生き死にを決める権利はない、それが俺がいる理由なんだよ」
「じゃあ人を救うのが召命じゃないんならどうして巻き戻しが起きるのよ?」トゥルーは指摘しました。
「君が人を救うのが召命ならどうして俺も一緒に巻き戻しをするんだ?」ジャックは切り返しました。
「俺には堂々巡りに聞こえるな」とアランは二人の会話に割り込みました。
「それでもまだ続けるつもりかい?」
トゥルーがアランに振り返るとアランは増築したジムの方にアゴをしゃくりました。
モニークは一人で誰かに見られているのを恐れるかのように辺りを見回していました。
トゥルーが座席に身をかがめるとジャックも同じように身をかがめました。
「今中に入った」アランがそういうと二人は車から降りてジムの方に歩き出します。
トゥルーは腕時計を見て時間を確認します。
「何か考えはあるのか?」ジャックはニヤリとしながら次の言葉を言いたそうにしていました。
トゥルーはそれに気付いて何も言わずに言葉を待ちました。
「あの未亡人をどうにかうまく言いくるめられるんじゃないか」
トゥルーは歯を食いしばりました。
彼女は冷静な状態を保っていいられることに感謝しました。
しかしいつまでそれが続くか分かりませんでした。
「誰があそこにいるんだ?」ジャックはトゥルーがその言葉を理解する前に既にジムの中へと踏み込んでいました。
彼女がジャックの言葉を理解したとき驚いて息を呑みました。
二人はいつもの口論を繰り返していたため次の行動をどうしようかという考えがまとまっていませんでした。
「あなたたちここで何をしてるの?」モニカはウエイトマシンの後ろに半分身を隠し身構えて尋ねました。
「アランが俺にここのジムの点検をしてくれって言ってきたんだ」ジャックは人懐っこい笑みを浮かべて言いました。
「なあ、君は今朝公園にいなかったかい?」
「あなたはアランの友達?」
モニカは警戒した表情を浮かべ尋ねます。
そして何気ない仕草で手に持ったドライバーを隠しました。
「一緒に働いているんだ」ジャックは何気なくジムの中を見回します。
「アランはこの中の機器を何台か売るって言ったんだよ、それで仕事でいないときに来て見て欲しいってな。
「今朝公園にいただろ?一緒にいたのは…」
「デビーだ」アランはジャックが名前を思い出す振りをすると言いました。
「…デビーだろ?」ジャックは名前を思い出す振りをして指を鳴らしました。
「あなたもデビーを知ってるの?」モニカは一層心配そうに尋ねました。
「ところでさ」トゥルーは遮りました。
「ジャックがここに来たのはこのジムの中の機器を見て買いたいものがあるかどうか見に来たのよ。
 あたしはジャックが無駄使いしないようについてきたの。
 男ってそうでしょ?」
「そうかも」モニークはぼそぼそと言いました。
「アランって職を失ってからも今までと同じようにお金を使っているわ」
「失業したのを知っていたのか?」アランはモニークが聞こえない事も忘れて尋ねました。
「先週デビーに会って教えられなかったら失業した事すら知らなかったわ」
モニークはその事を知った経緯に失望して続けました。
「どうやってデビーと知り合ったんだ?」ジャックはぶっきらぼうに尋ねます。
「失礼だよ」トゥルーは小さな声でモニークに聞こえないように言いました。
モニークは部屋の向こうに行きます。
「彼女とは昔からの友達よ」彼女はベンチに座って言いました。
「彼女が結婚式に招待したいって連絡してきたのよ。
 彼女が結婚する相手の写真を見せたとき私の夫だったのを見て驚いたわ」
「結婚式?」アランは驚いて尋ねます。
「誓ってもいい…絶対…結婚なんて」
トゥルーはアランのショックを受けた声を聞いて彼が混乱しているのを確信しました。
家の中から鳴り響く電話のベルの音に皆の注意が集まります。
トゥルーは腕時計を確認しました。
時間通りデイビスが掛けてきたのです。
「出なくていいのか?」ジャックがモニークに言うとトゥルーに目を向けました。
モニークは立ち上がりジムと家を繋ぐドアを通り抜けます。
「何をたくらんでいるんだ?」ジャックはわずかに口元の緩むトゥルーに尋ねます。
「それじゃ何から調べてみる?」トゥルーが尋ねます。
「えっ?」ジャックは分からず聞き返します。
「これから調べてみる?」
トゥルーはさっきまでモニカが脇に立っていたウエイトマシン近づき笑みを浮かべます。
「確かめるのよ、彼女が何をしていたのか、念のために」
ジャックはニヤリとしましたがさっきの質問を覚えていました。
「誰が電話をしてきたんだ?」
「誰だか当ててみれば?」トゥルーはニヤリとします。
「デイビスだろ」ジャックは考えます。
「そうだな、彼女に事故の事を教えるためにデイビスに電話させたんだろう。
 でもどうして彼女が今ここにいるって分かったんだ?」
「十分毎に電話をするように頼んだのよ」トゥルーは少し自慢するように言いました。
自分たちが立ち去った後も誰かが来て罠を仕掛けるかもしれないと思っていました。
「最初から言ってくれればよかったんだ」ジャックは傷ついた振りをして言います。
「言ってなかった?」トゥルーは皮肉を込めて言いました。
「でもまだあんたを信用したわけじゃないからね」
トゥルーはジムに戻ってくるモニークの音を聞きます。
「大丈夫?」トゥルーは気の動転している彼女に聞きます。
「遺体安置所に行かないと行けなくなったわ」モニークは答えます。
「また別の日にしてくれないかしら?」
「遺体安置所って?」ジャックは驚いた振りをして尋ねます。
「事故があったのよ」モニークは説明しだします。
「今朝アランが階段から落ちて死んだって、信じられないわ」
「連れて行ってあげようか?」トゥルーは心配して尋ねます。
モニークは頷きました、そして彼らは外の車へと行きました。
トゥルーがアランがいなくなってしまったのを知ったのは皆で外に出たときです。
彼女は辺りを見回しましたがどこにもいません。
「行っちまったようだな」とジャックは彼女の耳にささやきました。
トゥルーは呆然として頷き、皆を死体安置所に連れて行きました。

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「それで彼は突然消えてしまったんだね?」
ジャックも途中からいなくなってしまいモニカも帰ってからデイビスは尋ねました。
「彼が消えてしまうのも気付かなかったわ」とトゥルーは疲れた顔つきで言いました。
「ジャックが言った通りに、姿を消してしまったわ」
「君はどこに行ったと思う?」
「分からないわ。
 あたし達は彼の奥さんが誰を死なせてしまうのを防いだ。
 でもそれで本当によかったのか、彼がどこに行こうとしていたのか分からない」
「多分ジャックはアランがここにいた理由について嘘をついたんじゃないかな」とデイビスが提案しました。
「多分アランは、君が彼の遺体を発見した事で色んな事が変わってしまったため、君に助けを求めたんじゃないか?
 コースが外れないように運命が介入したんだ」
「でも間に合いもしないのにどうして運命は巻き戻しさせたのかしら?」
「それは分からないな」とデイビスは答えました。
「我々が知らない事は沢山ある、我々ができる事は正しいと思った事だ、その中からできる事を探すんだ」
「その通りね」とトゥルーが微笑しながら言いました。
「そうだよ」
「それでジャックが幽霊について話した事は全て真実だと思うかい?」
「いいえ」とトゥルーは即答しました。
「もっと何か知ってそうだったわ。
 あいつの裏には情報を渡している誰かがいるわ、それが誰なのか見つけ出してみせる」
「それは誰だと思う?」
「口を滑らせて男だと言ったわ」とトゥルーは考え込みながら言いました。
「多分また口を滑らせて、あたし達に何かヒントを与えるわ」
「多分ね」デイビスは認めました。
「だがあいつは隠し事がうまいからな。
 前のときはあいつの計画すら知らなかったからな」
「でも今は何を見つけ出そうとしているのか分かってるわ」
「気をつけろよ」デイビスは警告します。
「あいつがどれほど危険な存在なのか分かってるだろ」
「二度と負けるわけにはいかないわ」とトゥルーが決心して言いました。
「ジャックが勝ったなんて言うなよ」ハリソンは出入り口から言いました。
「あんたの負けの定義しだいよ」トゥルーは肩すくめて返事をしました。
「アランは消えたわ、ジャックが言ったとおりにね」
「それじゃ姉さんは今日一日ジャックの言うとおりにしていたのか?」ハリソンは椅子に座って言いました。
「一緒にやったわ、でも誰も死なせなかったわ」とトゥルーが答えました。
「誰かが死ぬなんて知らなかったんだろ」とハリソンが指摘しました。
「ジャックは姉さんに暗示をかけたんだよ、真実を話していたわけじゃない。
 やつの頭の中はおそらく騙す事でいっぱいなんだ」
「ジャックが何て言ったか知ってるの?」トゥルーはデイビスと弟の間に立ち尋ねました。
「あんたは一日中ここにデイビスといたの?」
「そうだよ、姉さんの計画を邪魔するジャックに備えて、ここにいるしかなかったんだ」ハリソンは睨みつけて答えました。
「そういう意味で言ったんじゃないよ」トゥルーはため息をついて言いました。
「あんた自身のために良かれと思って言ったんだよ」
「何が?」ハリソンはにっこり笑いました。
「仕事は?」
トゥルーは目を泳がせました。
ハリソンがいつも通りに戻っているのを見て安心します。
彼女は弟が長い間自分に対して腹を立てないことは知っていました。
「実際、ハリソンは君のためにインターネットで調べていたんだ」デイビスはトゥルーが驚くような事を指摘しました。
「調べもの?」トゥルーはデイビスがジェスチャーで示したコンピュータへを見て尋ねました。
彼女は履歴をチェックして弟が捜していたページの数を見て驚き開いた口が塞がりませんでした。
「俺はジャックが口を滑らせたのを聞いて、他に巻き戻しに関係している人物がいると思ったんだ。
 それで調べてやろうと思ってね」
ハリソンはトゥルーの脇に椅子を持っていき、既に見つけていた最も有力なサイトを彼女に見せました。
「でも確証はないわ」トゥルーは結論に達しませんでした。
「ああ」ハリソンはしかめ面で認めます。
トゥルーはモニタから顔を放し弟を見ます、そして彼は失望していました、
彼女のような人たちがいたとしても名前や住所を載せているはずがなかったから。
公園から帰った後、彼はまっすぐに遺体安置所に来て姉の役立つ事を証明しようとして過ごしたに違いありません。
「悪かったわ、ハリー」とトゥルーはハリソンを抱きしめ言いました。
「今朝あんな事を言うべきじゃなかった、あんたはここで素晴らしい仕事をしてたんだもんね。
 続けてやっていればいつか必ず見つけることができるわ」
「それじゃ俺がやった事は間違いじゃないんだな?」ハリソンは尋ねました。
「うん」
「役にたったのか?」
「ええ」
「いい仕事をしてるだろ?」
「ええ、いい仕事だわ」とトゥルーは少しづつ話題が「イエス」としか言えないようにさせるので用心しました。
彼女の心配は弟の次の言葉によって裏付けられました。
「それじゃ、そのいい仕事をした弟に少し金を出すのもイヤとは言えないよな?」
「イヤよ」トゥルーはにっこり笑いました。
「その問いには答えは『ノー』よ。
 今日はもうお金を渡したでしょ、あれで全部よ」
「クソ」ハリソンは笑みを浮かべて言いました。
「言ってみただけだよ」
トゥルーとデイビスは笑い、そしてトゥルーはコンピューターに戻ります。
「僕はどこにアランが行ったとしても、彼は大丈夫でと確信しているよ」とデイビスは彼女の横に座って言いました。
「あたしもそう思いたいわ」とトゥルーは答えました。
「そう信じないと頭が変になっちゃう」
「俺もあいつは元気だと思うよ」とハリソンは彼女に保証しました。
「あいつは俺とよく似ているから、どこに行ったとしても無事だよ」
「いい指摘ね」トゥルーは笑います。
アランがどこに行ってしまったのか知る方法はありませんでした。
そして彼がいい所に行ったと信じる事しか彼女にはできませんでした。
それは彼女の人生の中で彼女のもとを去っていった人たちに対する唯一の方法でした。
彼女がするべき事は与えられた力を有効に使い行動を起こして多くの人々を救う事です。

おしまい。