ANOTHER TRU CALLING
アナザー トゥルー・コーリング

The Switch:交代。

あらすじ。
猛烈な嵐が発生しトゥルーの代りにハリソンがやり直しを起こします。
彼は何とかトゥルーに信じてもらい犠牲者を救うのを手伝ってもらなわなければなりません。
以前ハリソンが望んだやり直しではあるが、果たして彼は犠牲者を救う事ができるのか?

第1章。
ハリソンはダイナーの席に深く座り、時折ドアの方を見る事を3回ほどしていました。
まだトゥルーが来た様子はありません。
「姉さんはどこに行ったんだ?」と彼はコーヒーを飲み干しぼそぼそと言いました。
「もう注文は決まったの?」
中年のウエートレスがうんざりしたような笑みを浮かべ耳の後ろから鉛筆を取り尋ねました。
「コーヒーをもう一杯」ハリソンは頭の中であと一杯分のコーヒー代ならあると計算し答えました。
彼にはもうそれだけのお金しかありませんでした。
彼は前日に競馬でスッテンテンになっていました。
今朝はトゥルーを朝食に誘いお金を貸してもらおうと考えていました。
しかし再び彼女にお金を借りることについて少し眉をひそめました。
先週も彼女からお金を借りていました、そしてまた借りるのはどうかと。
彼女は理解してくれる、と彼は説得しようと今のところはただ不安な時間を過ごしていました。
彼は再びドアを見ました、しかしまだ彼女は現れません。
ウエートレスはコーヒー持ってきてテーブルの上に置きます。
彼が嬉しそうに頷くと携帯電話が大きな音を立てて鳴り出します。
着信番号を確認するとそれはトゥルーでした。
「ゴメン、ハリソン、今日は行けそうにないわ」とトゥルーが大きな声で叫びました。
彼女はどこか騒々しい場所にいるように思われます。
「オーケー」とハリソンが答えました。
「後で会えるかい?」
「ハリソン」とトゥルーがため息をついて言いました。
「あたしだって今はほとんど文なしなの。明日にならないと」
「どうして俺が金を貸して欲しい事を知ってるんだ?」とハリソンが文句を言いました。
「そうか?やり直しの日だな?」
「違うわ」とトゥルーが答えました。
「あんたの声の調子で分かるのよ、間違いなくその調子じゃ”お金を貸してくれ”でしょ」
ハリソンは笑いました。
「そんなに分かりやすいか?」
「間抜けなほどにね」とトゥルーが笑いながら言いました。
「明日まで持ちこたえられる?」
「多分」とハリソンはコーヒーを飲み終え同意しました。
「でもあんたが餓死するのはいやだから。あたしと一緒にテイクアウトかピザでも食べるんなら今晩夜勤だから」とトゥルーが言います。
「ありがてぇー」とハリソンはコーヒーの代金を支払って表の道路に出て行きます。
「それじゃあ、また」とハリソンは歩道を歩きながら電話を切ります。
ハリソンは競馬のいノミ屋の前を通りその日のレースを見ます。
彼が予想した二つのレースは見事に外れがっかりします。
しかしまだ彼は競馬に懲りていませんでした。

まだ夕方になったばかりだというのにハリソンは食事にありつこうと死体安置所へと足を向けます。
ギャンブル仲間からもらった昼食のフライド・ポテト以外今日1日中何も食べていませんでした。
そして彼は約束したテイクアウトの食事が待ちきれませんでした。
午前中いい天気だったのに午後からはその光も消え失せ、道路を急いで歩いていると突然どしゃ降りに遭いました。
明るく照らされた都市の真ん中では稲光に気付きませんでした、しかも落雷にも彼は気づきませんでした。
やっと死体安置所に到着したときには彼はずぶ濡れで、廊下に水の足跡を残していきました。
「姉さん?」と彼が死体安置所に入りながら叫びました。
「彼女は仕事で外出中だぞ」デイビスはオフィスの中から声をかけます。
「君が来るって言ってたな。もしよかったらピザがあるけど」
「ありがてぇー」ハリソンはオフィスの中に入って椅子の中に体を深く沈めました。
ハリソンはトゥルーに会いに来るのを気にしないデイビスが好きでした。
ハリソンはトゥルーの秘密を共有しているのがたった二人だけだからだと、
デイビスが自分を受け入れてくれているというのは分かっていました。
デイビスにとってジャックやルークは数に入っていません。
彼らの誰もがトゥルーのために近くにいませんし、打ち明けていなかったからです。
「その仕事の出先でさ、姉さんに助けを求めると思うかい?」
ハリソンは机の上からの1切れのピザを取りながら話を振りました。
「そうは思わないよ」とデイビスが答えました。
「僕は今までに起きたやり直しの記録をとってきた、そしてあるパターンに気づいたんだ、特定の日に…」
デイビスが見付け出したパターンとこれまでの数カ月にわたって計算した長い複雑な説明を始めたとき、
ハリソンは自分の振った話題がはぐらかされた事に気づきました。
彼はうわの空で適当に相槌を打っていました。
そしてデイビスが一呼吸置いた時ハリソンは話題を変えるために話し出します。
「それじゃこの嵐についてはどう思う?」雷が頭上で鳴り響くとハリソンは尋ねました。
「実は変なんだ」とデイビスが答えました。
「今晩は嵐の予報なんてなかった。この一週間はいい天気が続くはずだったのに」
「本当か?」ハリソンは尋ねました。
ハリソンは地元での競馬がなかったので天気予報を見ていませんでした。
そしてここから帰れるかと知りたかったのです。
「デイビス?」トゥルーの声が他の部屋から声をかけました。
デイビスが驚いたのをハリソンは見ていました。
ハリソンはもう死体が運ばれてくるのに慣れてきていました。
デイビスはトゥルーのいるオフィスにいきハリソンはもう一切れのピザを食べ終わると立ち上がります。
「一体どうしたんだ?」デイビスはハリソンにあごをしゃくり尋ねました。
「とっても変なのよ」とトゥルーはハリソンにあっちへ行けというようにあごでしゃくりながら答えました。
「言ったでしょ…」
「忙しそうだから、俺はもう行くよ」とハリソンが言いました。
「オーケー」とトゥルーは気を取られたような顔でうなずきました。
「夕食をありがとうな」とハリソンが付け加えました。
「じゃあまた明日」
トゥルーは目をきょろきょろさせて翌朝ダイナーで会うことに同意しました。
「それじゃ」とハリソンが言いました。
「バイ、ハリソン」とトゥルーは明らかに仕事に戻ることを熱心に望んで言いました。
ハリソンは心の中でため息をつき、姉が毎日のようにデイビスみたいになっていくと思いました。
「さようなら」とデイビスがトゥルーより更にうわの空で付け加えました。
ハリソンは頭を振ってそしてオフィスを去りました。
ハリソンが部屋を出て行ったとき嵐はまだ猛威を奮っていました。
女性の死体がテーブルの上に置かれています。
彼女は眠っているように見えるとハリソンは思いました。
彼は誰かに彼女が起こされるのではないかと思い少し震えました。
それは一瞬でした彼は死体を見つめ、ドアに近付いてさえいませんでした。
彼は頭の振り目をそらしました。
彼がトゥルーとデイビスから目を逸らしたその時、ささやき声が聞こえました。
「何か言った、姉さん?」
ハリソンは声がしたのがオフィスからではないと分かっていたが聞いてみました。
彼は女性の死体を見ていました。
「何も言ってないわよ」とトゥルーが叫び返しました。
「家に帰るんでしょ?」
「ああ」とハリソンは数フィート離れた女性の死体をまだ見つめながら答えました。
突然女性は頭を彼に向けました。
そしてささやき声がどこから聞こえてきたのか彼の心に疑いがありませんでした。
「助けて」と彼女は稲妻が鳴り響いた時もう一度ささやきました。
ハリソンはデイビスやトゥルーに悪ふざけはするなという時間がありませんでした。
恐怖で金切り声を上げる時間も持っていませんでした。
以前トゥルーから聞いた奇妙な感覚とは、この瞬間自分で経験するまで理解できませんでした。

ハリソンはあえいでベッドから起き上がりました。
彼の鼓動は早まり、息を荒げていました。
「何ていう、悪夢だ」と彼はもう一度背をベッドに預けあえぎながら言いました。
彼は手を額に当てると汗をかいていることに気づきます。
彼は起き上がりベッドから出てラジオをつけました。
たとえそれがラジオの音声であっても彼は悪夢から覚めた事を確認したかったのです。
ラジオから流れてくる明るい声を聞いてハリソンは誰もいない部屋でも少し安心し始めます。
陽気な声のプレゼンターが最新のニュースと天気を告げます。
「今日、嵐になるなよ」ハリソンはトゥルーに会う準備をしながらぼそぼそ言いました。
今彼は彼女に話す事ができなかったという悪夢から覚め、落ち着いてきたと感じていました。
彼女に援助を求めているのに断られるという考えに頭を振りました。
多分彼女はもう一度の金の無心に答えてくれると思い直します。
ハリソンはダイナーに急いぎ、夢の中でもトゥルーが遅れていたなという偶然に笑みを浮かべ、
夢で持っていたのと同じブースに座りました。
いつもは反対でトゥルーがハリソンを待っていました。
ハリソンはコーヒーを飲むお金があるかとポケットから小銭を引っ張りだしました。
彼は手のひらに小銭を乗せ数えると眉をひそめました。
夢の中で持っていた金額と全く一緒でした。
そんなはずがあるわけがない。
もしかしたらとハリソンは店内を見回しお客達の顔や置いてあるものを見ました。
しかし残念ながらハリソンには分かりませんでした。
彼はテーブルに近づいてくるウエートレスが夢で注文を取りにきた人物だと分かりました。
しかし彼とトゥルーは何年もの間この同じダイナーに来ていました。
だから彼がダイナーに行った夢を見たとしても、ウェートレスが一緒でもおかしくはありませんでした。
ちょうど彼が二杯目のコーヒーを飲もうとした時、彼の携帯電話が大きな音を立てました。
さらに、デジャブーが強くなってきます。
彼は着信番号を見てトゥルーだと分かった時、胃が飛び出すほどの驚きを感じます。
「ゴメン、ハリソン、今日は行けそうにないわ」とトゥルーが大きな声で叫びました。
それは彼女がどこか騒々しい場所にいるように思われます。
ハリソンは沈黙しました。
トゥルーの発した言葉は寸分たがわず夢で聞いた通りでした。
背後の騒音も夢と同じでした。
今ハリソンはあの悪夢は夢ではなかったことに気づきます。
今回はトゥルーではなくハリソンが一日をやり直している事に間違いがありませんでした。
「なあ、やり直しの日だろ」とハリソンはついに声を出しました。
「違うわよ」トゥルーは返事をします。
「あなたの考えなんか…」
「違うんだ、姉さん」とハリソンは早口で話し続けました。
「俺がやり直しの日を体験してるんだ」
「分かったわ、ハリー」とトゥルーはうめくような声で言います。
「とっても面白いわよ」
「姉さん、本当に今日はやり直しの日じゃないのか?」
彼の声はほとんど聞き取れないほど小さな低い声で尋ねました。
「違うわ」とトゥルーは懸念の声で答えました。
「でも俺は」ハリソンは立ち上がってコーヒーの代金を払ってダイナーから急いで出ます。
「どこにいるんだ、姉さん?」と彼は歩道に出ると尋ねました。
「絶対に話をしないと」

第2章。
すぐにハリソンはトゥルーのアパートに行き階段を昇ります。
トゥルーが言ってた通り玄関のドアは下の部分が蹴られて壊れ、ドアの蝶番が一つ外れてぶら下がっていました。
一人の作業員がドアを交換しようと、壊れているドアを外そうとしていました。
「おいおい、姉さん、何があったんだ?」ハリソンは尋ねます。
彼は作業員を超えて中に入るとトゥルーと電話で話した時に聞こえてきた騒音がこの事かと理解しました。
トゥルーは手にコーヒーを持ってカウンターのそばに立っていました。
彼女は少しにやにや笑いました。
「あんたが私に話してくれるんでしょ?」
「どうして、俺が分かるんだよ?」彼はコーヒーを注いで、作業員から聞こえない場所に座って聞きます。
「だって、もしあんたが本当にやり直しの日を体験しているなら同じでしょ」
トゥルーは彼の横に座りもう一度にやっと笑いました。
「わかんねえよ」とハリソンは言います。
「でも同じなら、これも昨日起きたはずよ」とトゥルーが説明しました。
「どうしてあたしがダイナーに行かなかったか聞いたんじゃないの?」
「気が散ってて」とハリソンがぼそぼそ言いました。
「そんな事考えてなかったよ。でも本当にやり直してるんだよ」
「そうなの」とトゥルーは目を泳がせ言いました。
「いいかげんにしてハリー、冗談はおしまいよ」
「姉さん、これは冗談なんかじゃないんだ」とハリソンが主張しました。
彼はトゥルーに本当の事だと証明するにはどうしらいいのか分かりませんでした。
死体安置所で女性に助けを求められた事を信じてもらわなければ、
彼には一人で女性を助ける事はできませんでした。
この力は姉の能力であり彼の物ではありません。
彼女こそが見知らぬ他人を救うため、町中を走り回るのにふさわしい人物でした。
「これはあたしからお金を巻き上げる新しいウソのつき方なの?」トゥルーはしかめっ面をし尋ねました。
「違うんだ」とハリソンが答えました。
「確かに今は金がないけどさ」
「あたしもよ」とトゥルーはドアを指さして言いました。
「この修理代の請求がきたら、あんたと同じ文無しになるの」
「だから何があったんだよ?」ハリソンは尋ねました。
「廊下でケンカしていた隣の人が、家のドアをこんなにしたのよ」
「ここに押し入ろうとして?」ハリソンは興味を持って尋ねました。
「姉さんを襲おうとして?」
「そうじゃないわ」と頭を振ってトゥルーは答えました。
「あたしがお金を持っていないことが分かったでしょ、他に何かある?」
「姉さんの助けだ」とハリソンはテーブルにコーヒーを置きながら言いました。
「もし姉さんが俺を助けてくれなきゃ、死体安置所の女の人が今日死ぬことになる」
「いい加減にしてよ、ハリー」とトゥルーはため息をついて言いました。
「信じられないわ。今日は忙しいのよ。
 それにその女の人を”救う”事じゃなくて、あんたが助けてもらいたいのは昼食じゃないの?」
「それはひどいな」とハリソンは笑顔で言いました。
その言葉は確かに朝から少なくとも一回は彼の心によぎったものでした。
「今日あたしは夜勤だから一緒に来て分けよう…」
「テイクアウトだ!」ハリソンはトゥルーが言葉を言い終わらないうちに言葉を発しました。
「そうだよ、その言葉を姉さんが言うのを知ってたんだ」
トゥルーは再び目を泳がせます。
「いつあたしがその言葉を言うか分かったの?」と彼女は驚いたふりをして言いました。
「あたしが働き始めたときから、あんたは一週間に一回は言ってるじゃない」
「今晩、嵐がくるんだ」とハリソンが言いました。
「デイビスがこの事は予報になかったって」
「いつでも天気予報は正確なわけじゃないわよね?」トゥルーは皮肉ぽく尋ねました。
「オーケー」とハリソンが立ち上がって言いました。
「俺と一緒に来てくれ、そうすればもう一つ別の方法で証明できる」
「ドアが直るまで、出て行けないわよ」とトゥルーが指摘しました。
「そこをなんとかさ」ハリソンは強く言います。
「俺が姉さんに本当の事を話しているんだと信じてもらえないと、死体が来ちまうだろ」
「オーケー、オーケー」とトゥルーはついに同意しました。
「よかった」とハリソンは食べ物をあさりに冷蔵庫に向かいながら言いました。

一時間後、ハリソンはやり直す前の日にいたノミ屋の中にトゥルーを連れて行きます。
「少し金を出してくれないか?」と彼はカウンターに近づきながら尋ねました。
「ハリソン!」トゥルーは叫びました。
「ちょっと、あたしの最後のお金まで競馬でスル気なの?止めてよ」
「大丈夫だよ」とハリソンが答えました。
「俺は今日をやり直して覚えてるんだから。どの馬が勝つか分かってる。確実だよ」
「ハリソン」トゥルーの声は忍耐強い調子で始まりました。
「あたしが今までやり直ししてきた時に、お金儲けのためにこの力を使うのは間違ってるって言ったはずよ」
「ああ」とハリソンがゆっくりと答えました。
それはいつもの会話の繰り返しでした。
「でもさ、これは金儲けじゃない、俺が今日をやり直している証明だ」
「オーケー」とトゥルーが同意しました。
「それなら、どの馬が勝つか言うだけで証明できるでしょ。
 何も賭ける必要はないわ。あんたがお金を掛けてなくてもレースは同じ結果になるはずよ」
「でも俺は昨日2レース予想したんだ」と彼は言い返します。
「あんた掛けていたの?」トゥルーは尋ねました。
「いや」とハリソンはこの会話がどこに行くのか見えてきて小言を言われたくないと思いました。
「だったら今日も同じようにして」とトゥルーは指摘しました。
「でも、姉さん…」ハリソンはあきらめきれず続けようとします。
しかし女性の命がかかっていました。
トゥルーと長く議論しあっていたらそれだけ多くの時間が失われるでしょう。
スクリーンの方に向いて彼はレースが始まろうとしていたのを見ました。
前日を思い起こして彼は結果を思い出しました。
「グレーがずっとリードするけど、最終コーナーでコケる。ラッキーレディーが最初に入ってくる」
トゥルーはハリソンが言った通りにレースが展開するのを混乱と懐疑的な思いで見ていました。
「なっ」とハリソンが笑顔でトゥルーに振り返ります。
スクリーンに振り返って彼は次のレースが始まるのを待ちました。
「オーバー・ザ・ヒルが一着だ」と彼は確信に満ちた声で言いました。
「これでも姉さんは俺が賭けるのを許さないのか?」
「まったくね」とトゥルーは睨みつけて答えました。
このレースも同じく彼が予測した展開になりました。
「それじゃ次のレースはどうだ?」とハリソンの向こう側に立っているたくましそうな男が割って入ってきました。
彼は先ほどからの会話を聞いていて、どんな情報でも利用したいと熱心に望んでいました。
「ゴールデン・スターさ」とハリソンが答えました。
男は疑わしげにスクリーンを見ました。
「あれは大穴だぞ?」と彼は疑うように尋ねました。
「間違いないよ」とハリソンがうなずきました。
男はそれに満足して賭けの申し込みにぎりぎり間に合います。
ハリソンはうらやましそうに彼の世話を焼きます。
ハリソンもこのレースでひと儲けしようとしましたがお金を持っていません。
「姉さん?」と彼は彼女にお金を借りようとしました。
このレースはその日で一番高い配当だったからです。
「すぐに元は取り返せるからさ。なんなら賞金を分けてもいいよ」
「ダメよ、ハリソン」とトゥルーは頑なに拒みます。
先ほどの男が戻ってきてハリソンの横に立ちます。
おそらく彼はもし負けたらハリソンをボコろうとしているに違いないとハリソンは思いました。
三度目のレースが始まりました。
先ほどハリソンが言ったようにレースの展開が進みます。
ハリソンは隣にいるトゥルーを見ました。
彼女の顔は青白くなり、心配そうな顔色に変わります。
「よしっ!」ハリソンの横にいた男は大声で言いながら拳を宙に上げます。
「よし、やった」と彼はハリソンの背中を叩き、ハリソンは倒れそうになります。
彼は賞金を受け取るためカウンターの方に向きました。
「もう信じただろ?」ハリソンはトゥルーに尋ねました。
「ええ」と彼女は小さく頷いて答えました。
「どこか静かな場所で、この事を整理しましょ」
ハリソンがドアに向かうトゥルーの後を追おうとすると、さっきの男がハリソンの腕をつかんで大きく握手をし、
お礼に50ドルを手渡しました。
ハリソンはにっこり笑って男に感謝し、トゥルーが嫌そうに眉をひそめ見つめているのを無視します。

公園への道を歩き、トゥルーはベンチに座りました、そしてハリソンは彼女の隣に座ります。
「一体どうなってるの?」トゥルーは尋ねました。
「どうしてあんたが?どうして今なの?」
「分かんないよ」ハリソンは肩をすくめました。
「姉さんに会いに死体安置所に行ったら、姉さんは外回りをしてた。
 姉さんが死体と一緒に戻って来たんだ。
 俺は帰ろうとして、あの女性の脇を通った時に助けを求められたんだ」
「あたしがその女性を運んだの?」 トゥルーは尋ねました。
「ああ」
「じゃあ、どうしてその女性が現場であたしに助けを求めなかったのかしら?」
「分かんない」とハリソンが答えました。
「分かってるのはあの女性が俺に助けを求めた事だけ。
 そして姉さんが今まで教えてくれたのと同じように、俺の一日が巻き戻ったんだ」
「で、その女性は誰なの?」トゥルーは尋ねました。
「どうやって死んだの?」
ハリソンは座ったまま動きが止まりました。
「ハリソン?」トゥルーは尋ねました。
「どうかしたの?」
「分からないんだ」とハリソンがささやきました。
「全くその女性の事については何も知らない。
 彼女の名前も、何も。
 俺は姉さんと違って、そんな細い事に気付くわけないだろ。
 俺を選んだのは、運命の失敗だな」
ハリソンは手で頭を抱え前へ屈みこみます。
トゥルーは腕を彼の肩にまわします。
彼女は何も言いませんでした。
ハリソンは彼女が慰めの言葉が出ない事を悟ります。
命が危険に晒されている女性がいるのに彼はその女性を救うための手がかりを何も覚えていませんでした。

第3章。
「来て、ハリー」とトゥルーは立ち上がりながら言います。
「二人で調べるわよ」
「どうやって?」ハリソンは尋ねました。
彼は立ち上がりません。
「デイビスよ」とトゥルーはベンチからハリソンを引っ張り、死体安置所へと彼を引っ張ります。
「デイビスもやり直しをしてると思ってるのか?」ハリソンが尋ねました。
もしそうなら十分に女性を救う手助けになります。
「ううん」トゥルーは混雑した通りを渡りながら頭の振って答えました。
「もしそうなら、あたしに電話してくるはずよ」
「なら、どうしてデイビスが助けになると思うんだ?」
ハリソンは彼女が走るので追いかけながら尋ねます。
「デイビスはあたし以上に今まで多くの事を知ってるはず」とトゥルーが答えました。
「彼なら何をしたらいいか分かるはず」
ハリソンはあまり確信は持てませんでした。
しかし他に良い考えが浮かばなかったので黙ったままトゥルーの後について行くことに決めました。

二人が死体安置所に到着したとき、デイビスはコンピュータの前に座っていました。
「デイビス、問題が発生したわ」トゥルーはドアを開けるやいなや切り出します。
「やり直しの日かい?」デイビスは尋ねました。
「そうだけど違うわ」トゥルーは座りながら肩をすくめて答えました。
ハリソンも座ってスイッチの切り替わるデイビスの反応を待ちました。
「何だって?」デイビスはトゥルーが話した内容に驚きハリソンを心配そうに見て叫びました。
「君がトゥルーの代わりにやり直しをしたのか?」
ハリソンはうなずきました。
「俺はその女性を救うのに役立つ情報を持ってない事を除いてね。
 姉さんはあんたなら何か考えつくかもしてないってさ」
「興味深いね」とデイビスが思いにふけって答えました。
「非常に興味深い。もしかすると君たちが姉弟だからじゃないかと思う。
 さっき言っていた嵐が関係しているのかも。
 それとも君とその犠牲者は特別な関係になるのかも」
「それはすごいわ、デイビス」トゥルーは少し苛々した調子で言いました。
「でも今はその事は後にして、ハリソンが犠牲者の事を思い出す手伝に全力を注いでくれない?」
「もちろん、もちろんだ」とデイビスが答えました。
「それで、ハリソン、君はその女性についてどのぐらい覚えているんだ?」
「何も」とハリソンは惨めそうに答えました。
「もう姉さんにはその事を話したよ」
「思い出さないといけないんだ」とデイビスが指摘しました。
「その女性はどのように見えた?」
「死体」とハリソンはしかめ面で答えました。
「ハリソン」トゥルーは緊張した声で介入しました。
「もう少し詳しく思い出してみて?髪の色は何色だった?」
「ブルネットだ」ハリソンはついに質問に答えることができて嬉しそうに答えました。
「目の色は」トゥルーは継続しました。
ハリソンは眉をひそめました。
あの女性が振り向いて彼に助けを求めた時の彼女のささやき声を思い出し、その時開いた目の色が何色だったのか?
「茶色だ」と彼は椅子から跳び上がって言いました。
トゥルーとデイビスの手助けで糸口が見つかってきました。
そして死体安置所での光景が鮮やかに彼の心に蘇ります。
「髪はすごく長くてストレートだった。
 顔色は青白くて、ケバイ化粧をしてたよ。
 そしてバラの形のネックレスをつけてた」
ハリソンが話をした事をデイビスはコンピュータに打ち込みます。
「年齢は?」デイビスは尋ねました。
「アー、よく分からない」とハリソンが口ごもりながら言いました。
「多分二十代半ば」
「名前については何か?」デイビスはスクリーンから顔を上げずに尋ねました。
「二人が名前を言ってるのは聞いてないよ」とハリソンは再び椅子に体を深く沈めながら答えました。
「でも姉さんは前にも名前が分からなくても助けただろ?」
「ええ」とトゥルーは用心深く答えました。
「でもいつもはもっと細かく、場所や目撃者とか他に何かもっと。
 あたしがどこからその女性を運んできたか分かる?」
「いや」ハリソンは頭を振りました。
「オーケー」とデイビスが言いました。
「これだと僕のシステムじゃその女性を見つけだすための十分な情報がないな。
 それじゃ論理的に考えまよう。
 君はトゥルーと一緒にピザを食べるために来たんだろ?」
「ああ」とハリソンはその通りかどうか疑わしそうに戸惑って答えました。
「君が到着したとき、トゥルーは回収のために外出中だった?
 だがここにあったピザはまだ熱かったかい?」
「ああ」
「そして、トゥルーが戻ったとき、君はまだ食べていた?」
「そうだけど?」ハリソンは返事しました。
「なるほど、そういう事ね」とトゥルーが言いました。
「その日あたしが注文する、そのピザをね。
 いつも同じ場所の店を使ってるから、ここに運ばれるのは早かったはずよ。
 ハリソンがここに来た時、そして食べ終わる前にあたしが戻ってきた時にまだ熱かったとしたら、
 そんな遠くに回収に行ったはずはないわ。そうでしょ、デイビス?」
「その通り」とデイビスが同意しました。
「多分この近所の回収だったに違いない。この市内のエリアのどこか」
「それじゃ俺の見た女性と一致するブルネットがこの辺りに住んでるのか?」
ハリソンは自分の事じゃなく姉の事のように疑うように尋ねました。
「ネックレスは?」トゥルーは尋ねました。
「あんたはバラの形だって言ってだでしょ」
「ああ。すごく小さかったけど、高そうだった。
 リンジーが気に入るような感じの。
 あんな高価なものは俺には買う余裕なんてないさ」
ハリソンは昔の恋人を思い出して眉をひそめました。
彼は過去の失敗を思い出しました。
「デイビス、あなたはネットで地元の宝石商に電話して、
 そういった形のネックレスを扱ってるかどうか調べて?」
トゥルーは電話帳をつかんでハリソンに投げました。
「ハリソン、あんたはこれで宝石商に電話してみて」
ハリソンは電話に手を伸ばした。
しかし彼がダイヤルしようとしたその時、こんな時に聞きたくもない声が遮りました。
「よお、いいか」とジャックが出入り口に寄りかかって立っていました。
「出てって!」トゥルーは侵入者を睨みつけて命令します。
「ただ友好的な会話をしようと来たんだが」ジャックはにやにや笑いました。
「今日、向こうのスタジオで君に会わなかった事に驚いたんだ。
 君が俺の意見を取り入れてくれたと思ったんだが。
 君が今朝あそこにいなかったから、君は彼女の運命をそのままにしておこうとしたんだと思ったよ。
 賢明な決定だ。全員を救うことができるわけじゃない」
「出て行けって言ったのが聞こえなかったのか?」ハリソンは立ち上がってジャックに向かって近づきます。
「そんな事言うなよ、ハリー」とジャックは傷ついた表情で言いました。
「ここに来たら完全に歓迎されると思ったのに。どうやら俺の間違いだったようだな」
ジャックはトゥルーに振り向き捨て台詞ではない言葉を言いました。
「このままの方がいいぞ、トゥルー。
 実際もう時間がない。時計は進んでるんだ。
 それにもう時間を掛け過ぎた。
 もう彼女をそのままにしておくんだ。
 君に勝ち目はない」
ハリソンは珍しく苛立って電話帳をジャックの背後に投げつけました。
「気にしないで、ハリー」とトゥルーは落ち着かせようと弟の腕を抑えます。
「聞いただろ」とハリソンが答えました。
「奴は勝ったと言って浮かれてるんだ。
 まるで人の命をゲームのように。
 あんな奴…俺は…」
「無視しなさいよ」とトゥルーは机に弟を連れ戻し言いました。
「もう終わった事よ。あたしがあんたを助けるから、その女性を救いましょ」
ハリソンは椅子に深く座りながら頷きました。
彼は姉がそんな事を言うとは思ってもみませんでした。
もしろ姉がそんな風に感じていたことに驚きました。
彼女が床に落ちた電話帳を拾い上げようとしたとき彼は彼女を見つめました。
トゥルーがハリソンから目を離した時、彼は彼女が自分で言った事に気づいていないと分かりました。
ルークの死は彼女が思っている以上に影響を与えているようです。
どうにか彼は彼女がジャックとの戦いに全て勝てるとは信じていない事に気づきます。
唯一の違いは今回は彼の失態であり、トゥルーではないということです。
「ジャックはおかしな事を言ってたな、スタジオって?」デイビスはコンピュータの前で静かに尋ねました。
「あいつはあたしがやり直しをしてると思ってるわ」とトゥルーが悟りました。
「やり直す前の日にあたしが知っている事があるんだわ、そしてジャックも。 スタジオについて重要な何かが」
「俺が知らない何かか」とハリソンは椅子にもたれて座って目を閉じため息をついて言いました。
「俺が知ってる事じゃないのか。ちぇっ、全くひどいもんだぜ。
 俺がやり直すべきじゃなかったんだ。
 この力は俺じゃなく姉さんのものだ。俺には不向きだよ」
「そんな事言うのは止めて」とトゥルーは命令しました。
「あたし達でやるの、あきらめちゃダメよ」
「オーケー、何か考えでも?」ハリソンは少し楽観的な口調で尋ねました。
もしトゥルーが解決策を打ち出せれば自分にもできると思いました。
「町の向こう側にテレビスタジオがあるぞ」とデイビスが提案しました。
「犠牲者はそこで働いていたんじゃないか?」
「確認する価値はあるわね」とトゥルーが答えました。
「行くわよ、ハリソン。スタジオの周辺でその女性を探してみるの。
 デイビス、あなたは宝石商を調べておいて。
 もしスタジオがダメだったら、あなたのバックアップが必要になるから」
「もちろんだ」とデイビスが答えました。
「もしなにか進展があったら電話をしてくれ」
「分かったわ」とトゥルーは死体安置所からハリソンを追い立てながら同意しました。
「さあ、行くわよ」と彼女は外の道路に出ると言いました。
朝の日差しは雲の後ろに消え失せていました。
そして予測していた嵐が地平線に姿を現しました。
「ジャックは一つだけ正しい事を言ったよ」とハリソンは暗くなっている空を見ながら言いました。
「時計は進んでいる」
「それならこんな所でボヤボヤしてるより急いだ方がいいわ」とトゥルーはスタジオに向いながら言いました。

第4章。
トゥルーが混雑した交差点に差し掛かるとハリソンはトゥルーに追いつきます。
「姉さんは毎日どうしてるんだ?」
ハリソンは姉がすでに起きてしまった事実を知っているプレッシャーにどう対処しているのか興味がありました。
「毎日じゃないよ」とトゥルーはちらっと後ろを見て答えました。
彼女はしかめ面で後部を彼に向けました。
「どうしたんだよ?」ハリソンは彼女が何を見たのかと振り返って尋ねました。
「何にも」トゥルーはペースを速めながら答えました。
「何か見たと思ったんだけど…何もなかった」
「ジャックの姿でも見たのか?」ハリソンは再び振り返って道路を見まわします。
しかしどこにもジャックの姿はありません。
しかしトゥルーがハリソンの注意をそらした時、彼は誰かが見つめている事に気付きます。
「行くわよ、ハリー」とトゥルーは彼の腕をつかんで引っ張ります。
彼らがテレビスタジオに到着したのは直ぐでした。
ハリソンはその辺りを見回して、雰囲気が落ち着いている事に安心しました。
「いるかどうか分かる?」トゥルーは楽観的な声で尋ねました。
「いや」ハリソンは頭を振って入口に近付きました。
トゥルーが建物の中に入ろうとすると受付係りの女性が笑顔で近づいてきました。
「何か御用ですか?」と彼女はかん高い声で言いました。
「あたし達、ここで働いてるはずの人を探してるんですけど」トゥルーは始まりました。
「ただその女性の名前が分からなくて。
 容姿を言ったら今日ここにいるかどうか分かりますか?」
受付係は少し眉をひそめました。
「私はここで働き始めたのは最近なんで」と彼女が答えました。
「その人は、長くてストレートのブルネットの髪をしてるんだ」ハリソンは言います。
「目の色は茶色で、二十代半ばだと思う」
「そういう人はここには沢山いますから」と受付係が応えました。
「それからバラの形をしたネックレスをつけているんだけど」とトゥルーが付け加えました。
「申し訳ありません」受付係は頭を振りました。
「中に入ってその人を探してもいいかな?」ハリソンは受付の後ろのドアに近づきながら尋ねました。
「申し訳ありません、ここを通すわけには行かないんです」と受付係が答えました。
「ほんの少しだよ?」ハリソンは少し近づき尋ねました。
「申し訳ありません」と彼女は繰り返しました。
「お通しするわけには参りません。
 お帰りになった方がいいと思いますよ。
 でないと警備に連絡をしなければならなくなりますから」
彼女は正面玄関にいる体の大きな警備員に向かって頷きました。
「オーケー」とトゥルーが微笑しながら言いました。
トゥルーは踵を返し建物から立ち去ると、ハリソンはトゥルーの後を追います。
「無駄足だったな」とハリソンは外に出るとすぐに言いました。
「もっと情報が必要ね」とトゥルーは建物の外壁の周りを歩きながら言いました。
「何をするんだ?」ハリソンはトゥルーが薄暗い路地の向こう側に何を探しているのか知りたくて尋ねました。
「中に入る別の方法」トゥルーは漠然と答えました。
「こっちのは入り口はないわね。この周りのどこかに非常口があるはずよ」
「ここがジャックの言っていた場所かどうかも分からないのに」とハリソンは指摘しました。
「奴はスタジオって言っただけだぜ」
「分かってるわよ」とトゥルーは道路に戻って言いました。
道路の街灯が点灯していました、すでに夕暮れになっていました。
「デイビスに望みを賭けようぜ、宝石商で何か分かったかも」
ハリソンは死体安置所に戻る道を歩き始めます。
「もう少し情報があったらな」とトゥルーが静かに言いました。
「もし俺がこんな事になるのが分かってたら、もっと沢山覚えていたよ」とハリソンが謝りました。
「それはあんたのせいじゃないわ」とトゥルーは慰めるように言いました。
「あんたにこんな事が起きるなんて分からなかったんだから」
「でもさ、もっと色んな事を覚えておけばよかったよ」
ハリソンは姉の仕事に対して興味を持っていなかったことに憤慨していました。
「姉さんと夕食を食べようとして死体安置所に行っただけだったから。
 俺があそこでもっと色んな事に興味を持ってたらこんな事にはならなかったのに」
「あんたが死体安置所に来るのが、
 ただで食事をしに来るだけなのを知らないとでも思ってるの?」トゥルーは笑いました。
「あんたが死体安置所に興味を持っていないことは分かってるわ。
 もし興味があったら、そっちの方が心配よ」
「そうなのか?」ハリソンは尋ねました。
「もちろんよ」とトゥルーが答えました。
「もしあんたがあたしの仕事に興味を持ち始めたら、大事な弟が誰かと入れ替わったって、
 本物のハリソンを探すわ」
ミステリアスな女性を救う事ができなかったがハリソンは気分良く感じて笑いました。
「これからどうする?」と彼が尋ねました。
「他の方法を考えてみるわ」とトゥルーははっきりとした決意で言いました。
直ぐにハリソンは今まで考えてもいなかった可能性があったことを悟りました。
「もう一度やり直すのはどうだ」と彼は明るく提案しました。
「前に強盗の時そうだったじゃないか。ただ今回は姉さんがやり直すんだ」
「そんなのダメ」とトゥルーは頭を振って答えました。
「第一にまだ彼女を救うのに十分な情報がないわ。
 第二にもう一度あんたがやり直すかもしれない。
 それにいつもそうなるわけじゃないわ。知ってるでしょ」
「メリッサか」ハリソンはため息をつきました。
彼は以前自殺した学生を救えなかった事を思い出しました。
「そうだな、良くない考えだ」と彼は同意しました。
「いい考えが浮かんだわ」とトゥルーは角を曲がった時ニヤリと笑って言いました。
「ジャックも間違いなくやり直してる、そして必要な情報を持ってるわ」
「どう考えたって奴が姉さんに手を貸すなんてありえないぜ」とハリソンが指摘しました。
「あたし達によ」トゥルーは訂正しました。
「そしてあいつは手伝ってる事が分からないはず」
「はぁ?」ハリソンは混乱した表情で姉を見て立っていました。
とうとうプレッシャーに負けてしまったのか?
「あたし達の方が有利よ…」トゥルーは説明しました。
「どうやってさ?奴は全ての情報を持ってるんだぜ」とハリソンが論じました。
「全ての情報じゃないわ」トゥルーはにっこり笑います。
「あいつはあたしじゃなく、あんたがやり直しをしている事を知らないわ」
「それにどんな意味があるんだ」とハリソンが答えました。
「あたしはジャックと少し話してくる」とトゥルーが提案しました。
「そしてあいつの知っている情報を引き出すわ、そしたら次にその女性を救うの」
「どうして奴が姉さんに情報を話すと思うんだ?」 ハリソンは尋ねました。
「奴が姉さんの手助けになるような事は何も言わないと思うぜ」
「あたしがもう知ってるように思わせればいいのよ」とトゥルーが指摘しました。
「あんたは死体安置所に戻って、デイビスを手伝って。後で行くから」
「いやだよ」ハリソンは頷きません。
「一緒に行くよ。残された時間はあまりないんだ、まだ手がかりすらないんだぜ。
 後で集まる時間がないかもしれないじゃないか」
「オーケー」とトゥルーが同意しました。
「今は口論してる暇はないからね」
「それでどうやってジャックを見つけだすつもりだ?」彼らは道路を歩きながらハリソンは尋ねました。
「あいつはあたし達のところに来るわ」
トゥルーはダイナーにハリソンを引っ張り二杯のコーヒーを注文します。
「どうして分かるんだ?」ハリソンはブースの一つに座って尋ねました。
「死体安置所を出てから、俺は奴の視線なんか感じなかったぜ」
「あたしは感じた」トゥルーは彼の反対に座り身震いして言いました。
「あたし達がスタジオに到着する前にあいつを見失ったけど、
 この道を出た時にもう一度感じたの」
「本当か?」ハリソンはドアをちらっと見て尋ねました。
「確かよ」とトゥルーはコーヒーをすすって言いました。
「あいつは我慢しきれなくなって出てくる。ただあたしが話をするからね」

第5章。
ハリソンはトゥルーを信用しなければなりませんでした。
ブースで五分のほど座っていると、ジャックがドアを通って、
ハリソンの隣りの席に座りながらコーヒーを注文しました。
ジャックは席で手足を伸ばしてコーヒーをすすりました。
誰も沈黙を破ることをしようとしませんでした。
ハリソンはトゥルーから目配せされるまで彼が口を開くかどうか分かりませんでした。
「どうして君は彼女を救おうとしないんだ?」ジャックはついに尋ねました。
「してるわ」とトゥルーが答えました。
「ただあんたと話をしたいと思って、これがあんたの注意を得る最も良い方法だと思ったの」
「何の話をしたいんだ?」ジャックの声は嫌疑で重苦しく尋ねました。
「どうしてあたしが彼女を死なせるつもりだと思ったのか?」とトゥルーが気軽に答えました。
「全てを投げ出して、あんたにその人の命を弄ばせるのかと?」
ハリソンはジャックに向き反応を見ます。
ハリソンはジャックに反応がないことに驚きませんでした。
ジャックは今まで以上にポーカーフェイスを保っていました。
ジャックは全く誰にも分からないようにしています。
彼はじっとしていて宙を見つめていました。
「君はまだ理解してないな、トゥルー」
ジャックはできの悪い学生に教えるように、悲しげに頭を振りました。
「君は他人の命に干渉してるんだ。
 俺はただ君がやろうとしている事を止めようとしてるだけだ。
 今まで君が救ってきた人間たちは死ぬ運命にあった」
「俺もその中の一人か?」ハリソンはたまらずに危なげに静かな調子で遮ります。
「そうだ」とジャックがハリソンに振り返らず答えました。
ハリソンは怒りが増大するのを感じました。
トゥルーはハリソンがそんな反応をするのを嬉しく思っていないだろうと思います。
しかしハリソンはトゥルーが自分を救うためにやり直し奮闘すると思っています。
彼女はいつも見知らぬ人を救いました、そして彼は彼女が自分のために同じことをすることを知っていました。
ハリソンはトゥルーが気を付けろと言っていた時、その脅威を真剣に受けとめることができませんでした。
ハリソンはジャックが今しているあからさまな無視に彼の命について話されるのは望んでいませんでした。
ハリソンもう一言言おうと口を開きましたが、
トゥルーが彼の向こう脛を蹴飛ばしたので悲鳴を抑え黙りました。
ハリソンが彼女をちらっと見ると彼女は再びジャックに向きます。
「それじゃ、どうして運命を変えちゃいけないんなら、やり直す力があるの?」トゥルーは尋ねました。
「これは起きてはいけない事なんだ」とジャックが答えました。
「もしやり直す事が君の言う通りだとすれば、どうして俺もやり直す必要があるんだ?」
「あんたも助けることができるんじゃない?」トゥルーは諭します。
ハリソンはトゥルーの注意を得ることを望んで再び彼女を見つめます。
彼女はついにハリソンの視線に気づきます。
ハリソンは何気なく窓の外を見ます、彼が言いたかった事は今、雨が降り始めてきたことです。
舗装面の上にはねている数滴の雨粒が嵐が始まる事を予告しました。
そして数分の内にどしゃ降りへと変わりました。
ハリソンがやり直す前の日も夕方早く死体安置所に向かう途中で降り始めました。
トゥルーがいつ犠牲者を車で引き取りに行ったのかは定かではありませんでしたが、
それほど時間的に離れているとは思えません。
時間はなくなってきています。
そしてジャックは何も話さず協力はしません。
彼はテーブルの向こう側のジャックを見るとジャックも同じように窓を見ていました。
ジャックの姿はあまりにも自然な形でした。
そんなジャックを見てハリソンはジャックが始めから何を狙っていたのか悟りました。
ジャックは時間稼ぎをしていたのです。
どういう訳か分かりませんがジャックには彼らが立ち往生している事を知っているようで、
今は勝つために時間稼ぎという手を使ってきたのです。
そしてこの問答を繰り返している間にも、あの女性は困難に陥って死に向かっていました。
ハリソンはもう手遅れかも知れないと思い始めます。
「姉さんは今日、やり直してない」とハリソンは何気なく言います。
ついにジャックはトゥルーではなくハリソンに顔を向けます。
ジャックのポーカーフェイスが崩れはじめハリソンは少しにやにや笑いました。
ついにジャックは一日中保っていた感じを崩します。
「彼女だろ、でなきゃ俺が戻るはずがない」とジャッはが初めて混乱した表情で答えました。
「ハリソン」とトゥルーは警告しました。
「ふざけている場合じゃないの」
「奴はもう知ってるよ」とハリソンが答えました。
「少なくとも今日はいつもと違ってる事をね、ただ何なのか理解できないだけだ。
 奴の知りたい事を教える代わりに、俺達の知りたい事を教えてもらうのさ。
 いいだろ、ジャック?」
ジャックは視線をハリソンからトゥルーへと動かし再びハリソンに目を戻すと静かに座りました。
「君は本当にやり直しをしていないのか?」ジャックはトゥルーに尋ねました。
「そうよ」と彼女はハリソンを睨みつけて答えました。
ジャックは意地悪そうな笑みを浮かべて深く座ります。
彼はコーヒーの一口飲んで少し頭を振りました。
「俺は誰がスタジオなんて情報を渡したのか不思議だったんだ?」ジャックは頭を振って尋ねました。
「どうしてテレビスタジオなんかにね?」
「犠牲者はテレビには関係ない人なのね?」トゥルーが尋ねました。
彼女の口調は明らかに答えを知っていて、ジャックからの答えは期待していませんでした。
「さあね、俺が知ってるのは」ジャックはニヤニヤ笑いながら頭をゆすっていました。
「君らの行動が今日は何かが違う事を教えたんだ」
「どこに行けば彼女を見つけられるんだ?」ハリソンは雨が段々と激しくなる窓を見て苛々しながら尋ねました。
「俺が本当に話すと思ってるのか?」
ジャックはメニューを広げ選んでるようなふりをしながら軽蔑的な目を向けます。
「ええ、話すわよ」とトゥルーが答えました。
「どうしてそう思うんだ?」とジャックは目を上げずに続けます。
「もしあたしたちに話そうとしないんなら、もういなくなってるはすよ」
「俺は腹が減っただけだぜ?」
「後をつけてきただけでしょ」トゥルーはジャックの目の前のメニューをひったくって片側に寄せ返答しました。
「あんたはあたしと戦うのが好きなのよ。それを楽しんでる。
 まるでゲームでもしてるみたいに、それなのに今日はそれがなかった。
 楽しみがなくなったからよ、でなきゃここに座っていないわ。
 だからあんたはあたし達に教える必要があるんじゃない?」
「俺の事をそんな風に見てたのか?」ジャックは思いにふけって返事しました。
「ええ」とトゥルーがためらいなしで答えました。
「もし犠牲者が今日死んでも、あんたにとっては空しい勝利よね」
「でも勝ちはゆずれない」とジャックが返答しました。
「でもあんたは満足しない」
「彼女を救って何になるんだ?」ジャックは静かに質問しました。
「もしやり直しが起きなかったら、正しい状態を壊そうとしてるのは君の方だぞ?」
ハリソンは口を開きかけましたがトゥルーに足を蹴られる気配を感じ口を閉じます。
「多分それが正しいことだからよ」トゥルーは答えました。
「それとも君も俺とゲームするのが好きなんじゃないか?」ジャックはにっこり笑いました。
「俺は君が考えてるほど君と違ってるとは思ってない」
「姉さんは人を救ってる、あんたは人を殺してるじゃないか」とハリソンがぼそぼそ言いました。
「それどと違ってるじゃないか」
「俺は人を殺したりはしない」とジャックは傷ついた表情で答えました。
「俺は元々の運命をあるがままにするのを確認しているだけだ」
「本当?」トゥルーはきつく言います。
「それじゃルークを死に追いやったのもあんたじゃなく運命だったて言うの?」
ハリソンはトゥルーが落胆していくのが分かりました。
ジャックは時間稼ぎをする議論に戻す事に成功しました。
ハリソンはトゥルーを落ち着かせようと手に手を重ね、
今日は二人の役割が色々な点で入れ替わっていると思いました。
「論理的に考えてみようぜ」ハリソンは少しデイビスみたいに言ったのを心配しながら提案しました。
「ジャックは今日早くに死体安置所現れた」
「そうなの?」トゥルーは質問しました。
「だから今日早くに何かが起きたに違いない」
「ハリソンに一ポイント」ジャックはうなずいてにっこり笑いました。
「だがそれだけじゃ彼女を見つけることはできない」
「名前が必要だ」とハリソンがぼそぼそ言いました。
「ああ、そうだな」とジャックがうなずきました。
「そんなのも知らないとは恥ずかしい事だな」
「だからあんたと話すことにしたんだ」とハリソンはジャックが名前を言うのを期待しないで言いました。
ジャックはもう一度窓の外を見てから肩をすくめます。
「ディーナ・マジソンだ」
ジャックが犠牲者の名前を言った事に二人は驚きます。
トゥルーはジャケットから携帯電話を取り出しすぐにデイビスに電話します。
彼に情報を伝えると彼女は席から跳び出し出口を目指して進みました。
ハリソンは彼女を追いかけます。
「ありがと、ジャックは?」ジャックは皮肉ぽくテーブルから言いました。
ハリソンは振り返ってジャックを睨み付けると、
ジャックはコーヒーを飲み終え「ゲーム開始だ」と声に出さずに口だけ動かすのを見ました。
「奴がウソを言ってないってどうして分かるんだ?」二人が外に出るとすぐにハリソンは尋ねました。
「あたし達と違うからよ」とトゥルーはデイビスの連絡を待ちながら答えました。

第6章。
トゥルーはデイビスから連絡を受けると、ハリソンはトゥルーの脇について急ぎます。
「どのぐらい?」トゥルーはしかめ面で尋ねました。
「何歳まで歳を絞り込める?」
「二十代ぐらい」とハリソンは彼女に思い出させました。
「そう言ってる」とトゥルーはうなずきました。
「分かった、デイビス、今朝何らかの事件に関係していたかもしれない人を警察とか病院に当たってみて?」
「デイビスはそんな事までアクセスできるのか」ハリソンは尋ねました。
「ええ」とトゥルーがうなずきました。
「でも聞かないでよ、えっ何、デイビス?
 警察の発表で今朝四番街の写真スタジオで襲われた事件があったのね。
 それは彼女に違いないわ。
 今行くわ。それほど遠くないから」
トゥルーは電話を切って走り出しました。
彼らは歩行者の間を縫い自動車の隙間をかいくぐりながらスピードを出しました。
数分後、彼らはスタジオに到着しました。
建物は薄暗く、その前ではブルネットの髪をした女性が鍵を掛けていました。
「ディーナ?」トゥルーは道路を横切って走ってきながら呼びました。
「その人じゃない」ハリソンは道路を渡り切ってあえぎながら言いました。
「彼女は休みよ」とドアの前にいた女性が振り向いて言いました。
「今朝はいたんじゃない?」トゥルーは尋ねました。
「そうよ、でも彼女のボーイフレンドが来て家に帰っちゃったわ」と女性が言いました。
「半日で上がったわ」
「彼女がどこに住んでいるか分かるかい?」ハリソンは尋ねました。
「あなた達は誰?」と女性は用心深く尋ねました。
「友達よ」トゥルーが補足しました。
「どうしよう」女性はためらいました。
「ディーナは私が彼女の住所を教えるのは嫌がるのよ」
「君は彼女の友達だろ?」ハリソンは行き詰った事に不安を感じた尋ねました。
ジャックが名前を教えてくれるなんて事はあまり不思議に思いませんでした。
彼は彼女がそこにいない事を知っていたに違いありません。 「そうだろ?」と彼が再び尋ねました。
「ええ」と彼女が答えました。
「それなら彼女がどこに住んでいるか教えてくれ。
 彼女は今窮地にいるんだ、だから俺達が間に合わないと」
「もしよかったら一緒に来てくれない」とトゥルーが提案しました。
「オーケー」と女性は同意しました。
「あなた達が今来た道を戻って」
ハリソンを先頭に三人が今来た道を戻ると交差点になっていました。
「どっちだ?」と彼は尋ねました。
「左よ」女性は返事しました。
「ありがとう、えーと…」
「レイチェルよ」彼女は名前を言い、三人は道路を急ぎます。 最終的に彼女は停止に絵を描きました。 「こちらは建造している彼女です。」。
「どのアパートだい?」ハリソンは尋ねました。
「第2棟の3階よ」とレイチェルも急いで答えました。
「デイビッドが何かに関係してるの?」
「彼女のボーイフレンド?」トゥルーは推測しました。
「ええ」レイチェルは顔を引きました。
「今朝、彼女がモデルをしていたことが分かった彼はスタジオに来て気が動転してたわ。
 私が警官に電話をしたんだけど、彼女は警察沙汰にしたくなかったのよ。
 私も今晩寄ってみて、彼女に問題がなかいかどうか伺うつもりだったの」
ハリソンとトゥルーは目を交わしました。
今晩レイチェルがディーナを見つけて警察に電話をしたに違いありません。
彼女は今朝起きた事件の事を警察に話し、トゥルーが彼女を回収したのが真相です。
レイチェルを先頭に三人は3階まで階段を急いでのぼると、
壁に寄りかかりリラックスして待っているジャックがいました。
「ブラボー」と彼はゆっくりと手を叩きながら言いました。
「ギリギリセーフかな」
「ギリギリって?」レイチェルはジャックを通り過ぎ廊下の端に行きながら聞きました。
ジャックはトゥルー達二人を阻み、言葉通りたった今、中から絶叫が聞こえてきました。
「ディーナ?」レイチェルはドアを叩きながら叫びました。
「警察に電話をして!」ハリソンは叫びました。
「おい、おい」ジャックは舌打ちしながらハリソンとトゥルーの前に進み出ます。
「もうお節介は必要ない」
「そこをどきなさい、ジャック」とトゥルーは彼を睨みつけて言います。
ハリソンはジャックを素通りしようとしましたがジャックは阻止します。
ハリソンはジャックの肩越しにレイチェルを見ると彼女は携帯で警察に電話をしていました。
アパートの中からの悲鳴はすでに止まっていました。
ハリソンはそれでもディーナが助からない事を意味するものではないと望みました。
廊下での緊張はナイフのようにとがっていました。
電話の鳴る音が聞こえ皆が驚きます。
ジャックはポケットに手を伸ばし電話に出ます。
「何だ?」と彼は驚いた調子で言いました。
「今か?」
ジャックはしばらくの間無言で話に耳を傾けていたかと思うと、
突然「分かった」と言って電話を切りました。
「どうやら君の勝ちのようだ、トゥルー」ジャックは肩をすくめ脇によけます。到着した警察官の足音が階下から反響しました。
警官達が3階に着く前にジャックはすでに身を隠していました。
警察がドアに到着した時、トゥルーとハリソンはわきに立っていました。
警官の一人がドアを激しく叩いている間、もう一人はレイチェルをわきへ連れて行って彼女に話を聞いています。
「警察だ、開けなさい」と警官は叫びました。
すぐにドアが開きハリソンは見守りました。
彼は入口に立ったのがディーナだったのを見るまで息を止めていた事すら気づいていませんでした。
トゥルーはそおっとハリソンをつついて眉を上げました。
彼は頷き、トゥルーは彼の上着を引っ張りながらアパートから出て行こうとしました。
「君たち、ちょっと待って」警官の一人が二人がこっそり出て行こうとしたのを見つけ呼び止めます。
トゥルーは眉をひそめました。
ハリソンは突然、彼女がなぜ現場を去ることを望だのか悟りました。
警察にこの事を説明するのは難しいでしょう。
今までに警察が似たような現場で彼女の頻繁な出現に気付いていないことにも驚きました。
警官はノートを取り出しました。
「後で連絡を取るから、電話番号を教えてくれないか、トゥルー?
 供述書をとらないといけないからね」
ハリソンは驚いて警官を見ました。
「姉さんを知ってるのか?」と彼は尋ねました。
「ああ」と警官は答えました。
「一緒の学校にいただろ。僕を覚えていないのか、ハリソン?」
ハリソンは近づいて警官の顔を見ました。
よく見ると会った事のある顔でしたが、名前までは思い出せません。
「ダン・ピーターズよね?」トゥルーは何気なく微笑で尋ねました。
「今は警察官のピーターズだ」と彼は微笑で答えました。
「あまり引き止めてはおかないよ。 ただ連絡先を教えて欲しい。
 そうすれば君達二人とも帰っていいよ。
 後で供述書を取りに行く時連絡するから」
トゥルーは連絡先を言うと、ハリソンも彼女に従いました。
彼らは警官に別れを言って、仕事を続けることを委ねました。
「どうやって説明するつもりだ?」警官達が聞こえない所に来るとすぐにハリソンは尋ねました。
「分かんないわよ」とトゥルーが答えました。
「いつもなら警官があたしに聞く前に逃げるから。
 残念だけど今回はダンがあたしを見つけたから。
 何か考えるわ、あそこで何をしていたのか。
 もうダンが現場に来ない事を望むわ」
「可能性の話だ」とハリソンが言いました。
「行こうぜ、デイビスが俺達がどうして入れ替わったのか分かったかどうか?」
「いいわよ」とトゥルーはハリソンと腕を組み同意しました。
「途中でピザを買いしょ、あんたのおごりで」
「俺のおごり?」
「もちろんよ、今日はあんたの事で活躍してあげたんだから、ピザぐらいおごってもらわないと。
 それにノミ屋でお金を受け取ったでしょ」
「忘れてたよ」とハリソンは笑いながら言いました。
「オーケー、おごるよ。
 今回の入れ替わりは今回だけだと思うか?」
「分からないわ」とトゥルーは頭を振って答えました。
「次にやり直しが起きるまではね」
「俺はもう二度とゴメンだな」とハリソンが答えました。
「もう疲れたよ。姉さんがどうやってこんな事乗り切っているのか不思議だよ」
「まあ、あんたが街中でしてる事よりは簡単だよ」とトゥルーは笑いながら言いました。
「もう一度やり直す力が欲しい?」ハリソンは尋ねました。
「もし二人の内どちらかと言うんなら、私の方がいいわ」とトゥルーが答えました。
「あんたが役に立たないって言うわけじゃないよ」
「もし姉さんが今日をやり直してたんなら、もっと早く分かっただろうにな」とハリソンが指摘しました。
「もうこんな事が起きないように、今晩を境にしばらくの間死体安置所は避けるよ。
 その代わり姉さんはデリバリーを俺のところに配達させないとな」トゥルーとハリソンは笑いながら、デイビスが説明を思いついた事を望み死体安置所に向かいました。

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薄暗く狭いバーにジャックが入っていきます。
彼はビールを注文して辺りを見回します。
すぐにバーの端に座っている、場違いな上等なスーツを着た男を見つけました。ジャックは彼に近づき彼の隣に座りました。
「今日はいつもと違っていたのが分かったか?」とジャックはビールの飲み尋ねました。
「それは重要じゃない」とリチャード・デイビーズはそっけなく答えました。
「それじゃ何が悪かったんだ?」ジャックはパズルを組み立てるように尋ねました。
「トゥルーは今回やり直しをしなかった、だがいつも通り警告はしなかった」
「たとえ何かが起きたとしても計画は変わらん」
「そうだな」とジャックは皮肉に答えました。
「俺はやり直しをするべきじゃなかったんだ、俺達の用意ができるまで」
「そういう意味じゃない」
「トゥルーがやり直せば、俺もやり直す。
 今日、彼女はやり直しをしなかった。
 でも俺はやり直した。
 あんたの試みは失敗したんだ」
「完全じゃない」
「俺達が有利になるようにやり直しをコントロールしたいんだろ。
 もし俺がやり直す切欠をを持っているなら、俺が彼女より先に死体に到着すればいい。
 だが俺じゃなかった?」
「ああ、お前じゃなかった。だが彼女でもない。他の誰だ」
「つまり他の誰かが彼女の代わりにやり直すと言う事か?」
「その通り。それが予期してなかった事だ」
「ハリソン」ジャックはぶつぶつ言いました。
「そうに違いない」
「そうだ。
 私はもしトゥルーがやり直しを引き起こすのを止めることができたら、
 お前を介入させて、代わりに始めさせる事ができると思った。
 だがどういう訳か彼女の代わりにハリソンへ変わってしまった。
 おそらくその時ハリソンが通りかかったんだろう」
「奴は昨日死体安置所にいた」とジャックが言います。
「永久的なものか?」
「いや、空中に余分な電気がある間だけだ」
「それじゃ嵐なしでもう一度やってみるのか?」
「いや」リチャードは頭を振って一口飲み物を飲みます。
「電気は彼女がやり直しを引き起こすのを妨げるのに不可欠だ。
 嵐かそれ以外の手段によって。
 我々はそれなしではできない」
「それでどうするんだ?」ジャックは敵の父親がどのように彼の利点を操ろうとするのか興味があり尋ねました。
「もう一度同じことをする。ハリソンにやり直しをさせる」
「俺としてはそれがどういう事なのか分からないな。
 今日奴はやり直しを経験した、もう一度起きる事を想定して奴は準備するだろう。
 今日でさえ、何の予告がなくても成功した」
「それはお前があいつらに秘密をもらしたからだ」とリチャードは睨みつけて指摘しました。
「そういうところが愚かだと言うんだ」
「そうであっても、奴はもう準備してくるはずだ。
 そしてトゥルーの助けによって奴は彼女以上に厄介な存在となる。
 それならどうしてトゥルーを排除しない?」ジャックは好奇心を持って尋ねました。
「それはお前をそのまま使いたいからだ、私の代わりにな。
 彼女の能力は他の誰かに移ることになる、そうなったら振り出しに戻る羽目になる。
 これは手駒なんだ」
「もしハリソンに移ったら」とジャックが論じました。
「ハリソンだったらか」とリチャードが微笑しながら言いました。
「あいつを見ただろ。 あいつはトゥルーとは違う。
 あいつなら毎回、安易な事をするだろうな。
 犠牲者よりも自分自身のためにもっと有効に使うだろう。
 あいつに相談する者が誰もいなければ。
 今日はトゥルーに頼ったが、次にはそうはしないだろう」
「どうしてそんな事が言えるんだ?奴は俺に頼る可能性もあるんじゃないか」
「分かっている。お前とはそこでおしまいだ。
 いや、少し立て直すつもりだ」
「あんたは奴に話すつもりか?」
「そんな事はしない」リチャードはつばを吐きました。
「もう少し息子の事が知りたい。
 あいつにもう一度選択選択肢を選ばせる。
 あいつに能力を持つ事の素晴らしさを教えるんだ、あいつには話さなくても私には分かる。
 トゥルーは意固地で頑固だが、
 ハリソンは弱く、はるかに簡単に操れる」
「そう思うのか?」ジャックは懐疑的に尋ねました。
彼が見たハリソンはまるでトゥルーのような存在でした。
リチャードはハリソンがそんな風だったと理解しているのかと思いました。
「ああ」とリチャードは立ち上がって答えました。
「次にはもっと違う事になる。
 次にはハリソンはトゥルーではなく、我々になびく事にな」
「間違いないか?」
「間違いない。
 次にあいつに助けを求める者はトゥルーになるんだからな」
リチャードは立ち上がってそしてバーを去りました。
ジャックはビールを飲み干すと雨の中へと出て行きました。

おしまい。