【名作】のび太のマトリックス 
この小説は、2ちゃんねるから拾って来ました。
今(2004.8)の背景にあわせて多少手直しをしてあります。

ドラえも〜ん!」 
やれやれ。またのび太君、いじめられたな。 
 いい加減、オレも未来に帰りたいヨ。
ドラえもんはドアの外から聞こえるのび太の声に、
いい加減うんざりしながら読んでいた漫画を閉じた。 
ドラえもん!聞いてよ。スネ夫とジャイアンが!」 
わかった、わかった。つーか落ち着け。」 
スネ夫がね、新しいパソコンを買ったんだ!」 
人の話聞いてるか?つーか何言ってんの?」 
ひどいんだよ〜うわ〜ん」 
やれやれ。」 

落ち着いたのび太に話を聞いてみるとこういう次第だ。 
放課後の教室でスネ夫がのび太とジャイアンに声をかけた。 
今日の帰りボクのニューマシーンを見に来ない? 
 ボクの従兄弟の大学生が自作してくれたんだよ。 
 最新構成だぜ。フォトショップなんて一秒で開くよ!」 
おう!見に行くぞ!」 
ボクもボクも!」 
毎回イヤな思いをするのは分かり切っているのに、
なぜそこで見に行くのだろう?バカだからか? 
スネ夫の家に着くとスネ夫ご自慢のプラモデルアトリエの一角にそのマシンは置いてあった。 
モニタは液晶17インチと21インチ。
マシン本体はフルタワーケースだ。 
見ただけで金がかかっているのがわかる。 
マシン構成はpentium4、3.6GHz 
 アスロンも早いらしいけど動画いじるんならペンチだよね〜。 
 メモリは積めるだけ積んで4GB、HDDはRAID0+1で240GB 
 フルSCSIも考えたけど意味がないからやめたよ。 
 ビデオカード、キャプチャボードはカノープス。 
 Power DVD Producer/DVRex-RT Professionalだからね。 
 サウンドカードは無難にSound Blaster Live! Platinum 
 ケースはもちろん銅製だよ。」 
何がなんだかわからねぇけどとにかくすげーんだろ?」 
IEEEでボクのジオラマをキャプチャしてね。 
 来年はオスカー像を狙うつもりさ! もちろんジャイアンも手伝ってよ。」 
おう!任せとけ。」 
ぼ、ボクにも手伝わせてよ〜!」 
え〜?のび太に?」 
のび太はやめておけよ。」 
なんで?どうして!?」 
だってのび太はヘマばかりするからな。ボクの大作を邪魔してほしくないし。」 
そうだそうだ。のび太は帰れ。」 

と言う訳なんだ〜。」 
ドラえもんはスネ夫の言う事にも一理あると思った。
と言うかスネ夫の意見に賛成だった。 
こいつにPCが扱えるわけはないし、他の事でも役に立ちそうもない。 
ドラえも〜んパソコン出してよ〜」 
(ほらきやがった。ウゼ〜。
 大体こんなやつ教育し直しても無理なんだよ。 
 以前セワシ君と話し合ったけど、たとえ非合法だとしても、
 ヒトゲノムいじった方が早いんじゃないだろうか? 
 ただセワシ君は、 
「さすがにそれはボクが生まれなくなるかも知れないから。」 
 と拒んでいたな。
 関係ねぇよ。やって見なきゃわかんないジャン。 
 夜寝ている時にいじっちゃえば良いんだし。
 ただ見つかると時間懲役刑だな。 
 タイムパトロールが急行してきて遠い昔に放置されてしまう。 
 持っていける物はナイフ一本。 
 さすがにきついよな〜。死刑になった方がマダマシ。
 でもロボットに死刑は適用されないし。) 
ねぇ!聞いてるの!?」 
え?何だっけ?」 
パソコンだよパソコン!出せるの出せないの?」 
あ、そうかそうか。」 
まったくー。耳がないからって、聞こえないふりしないでよ〜」 
コノヤロウ。
 机の引き出しあけて今すぐタイムホールから、
 ディラックの海に投げ込んでやろうか?アン?
ごめんごめん。でもパソコンはないなぁ。」 
え〜?未来のパソコンとかないの?」 
未来ではパソコンなんて使ってないんだよ。」 
へ?」 
みんなPDAを持ってる。 
 それに携帯、テレビ何でもついてる。
 だからパソコンなんて使わないんだよ。」 
仕事とかでも?」 
仕事で使うのは端末だけど今のパソコンとは違うな。
 ゴーグルみたいのか対話型かだよ。」  
じゃあゲームもしないの?」 
ゲームもゴーグルタイプだね。」 
それじゃあパソコンは?ないの?ダメなの〜?」 
いや、何とかなりそうだよ。」 
え?ホントに?」 
(ああ、こいつはホントにウゼェ。 
 アシモフのロボット三原則なんて未だに守らされてなければ、 
 今すぐにでもこいつぶっ殺して死体を虚数空間に投げ込みたい。 
 しかしオレたちロボットには査定ってもんがある。 
 人間が閻魔様に裁かれて地獄行きになるように、 
 オレたちも良い事をすればステージがあがって、
 新しいハードにプログラムを組み込んでもらえる。 
 うまくいけば中央生体CPUの一部分になって、人間世界を操れるようにだってなる。  
 普段ごろ寝ばかりしているように見えるけど、
 電気羊の夢ばかり見ているわけには行かないんだ。) 
のび太君、貯金はどれぐらいあるの?」 
ええ!?パソコン買うつもり? 
 貯金なんて300円しかないよ。今月の小遣いは使っちゃったし。」 
300円か。仕方がないボクもへそくりを出そう。」 
(しょうがねぇな。オレの取って置きのペリカを出すか。 
 どらやき買おうと思ってたのに。それだけが楽しみなのに。)
2300円。これだけあれば何とかなるかな?」 
え〜?64メモリも買えないよぅ」 
まぁ黙ってついておいで。 
 5年後の秋葉へGO!」 
ドラえもんたちはタイムマシンに乗って5年後へ急いだ。 
そんな所へ行ってどうするの? 
 5年後にはパソコンが2300円で買えるの?」 
んなわきゃあない。
 秋葉についたらジャンク屋へいくんだ。

あれ?ドラえもん。ここ秋葉じゃなくて、虎ノ門じゃない?東京タワーがあるよ?」 
ああ、今、計画中のやつだろ。秋葉タワー。」 
秋葉原周辺はすっかり再開発が進んで小綺麗なビルが建ち始めている。  
ジャンク屋なんか行ったってパーツも買えないよ!」 
パーツなんか買わないさ。本体とモニタ買うの。」 
ええ!?2300円で?」 
ジャンク屋に入ると2004年現行機種が型落ちとして所狭しと並べてある。  
おじさん!動作無保証で良いから組んである一式ない?」  
「ああ、この間余ったパーツかき集めて作ったけど動かないやつがあるよ。 
 たぶんCPUが逝ってるな。
 たぶん無理なクロックアップしたんだろ。 
 メモリも怪しい。HDDは音はするけど動かない。」 
それ頂戴!1000円で。」 
「う〜ん。まあ良いか。」 
ついでにモニタも頂戴。出来れば液晶で。」 
「壊れてるので良いのかい?」 
モニタとPC併せて1500円で手に入れた。 
さあ、帰ろう。」 
ドラえもん。こんな古いの動かないじゃないか。」 
おいおい。pentium4、3.6GHzだぞ。 
 おまけにGeForce4、HDDも250Gある。
 メモリだってPC3200 DDR SDRAM 4Gだ。」 
だけど壊れてるんだろ〜?」 
君はタイムふろしきを忘れたの?」 
あ!そうか!」 
(こいつは家から出ないで引きこもってた方が、世の中のためかも知れないな。
 ああ、未来に帰りてぇ。)
でもこんなパソコンが壊れているとはいえ、1500円で買えちゃうんだね。」  
ムーアの法則って知ってるかい?」 
うん。人差し指がサインで親指がコサイン中指がタンジェントだろ。」  
???・・・なんだそれ? 
 まぁ良いや。ムーアの法則ってのは、CPUの進化速度の話なんだけど 、
 ここ数年崩壊したって言われてたんだ。  
 それが日本企業のバクテリアによる、集積回路敷設技術開発によって、
 さらに加速化したのさ。」 
さっぱりわからないけど。」 
とにかく現行のPCは電気ばっかり食って、
 熱ばかり発散する電熱器みたいな物だから安くなってるのさ。  
 家電リサイクル法もそれに拍車をかけてただ同然。
 むしろ売る時はお金を払う事の方が多いよ。」  
ふ〜ん。」 
のび太に教育を施している間にタイムマシンは2004年についた。 
机から出ると早速ポケットからジャンクPCを取り出した。 
ドラえもん。タイムふろしき!早く早く〜」 
(全くウゼェな。)
あんまり時間を戻すと石油とゲルマニウムの固まりになっちゃうぞ。」  
わかってるって。」 
風呂敷をはぐとPCは新品同様、真っ白になった。 
さて電源を入れてみるか。」 
配線を繋いで電源を入れるとBIOSの画面が現れた。  
モニタもPCも正常に動いているようだ。 
だが、OSが入っていないらしくそこで止まってしまった。 
これは困った。」 
どうしたの?」 
OSが入っていないんだよ。」 
ええ?じゃあこのままじゃ動かせないの?」 
ソフトが入っていないとただの箱だからねぇ。」 
そうだ!タイムふろしきでちょっとだけ先に進めれば良いんじゃない?」 
!! 君、頭良いね。」 
早速タイムふろしきを裏返しにしてかぶせてすぐにはずした。
すると今度はOSが入った状態になりすんなりとWin2kのロゴが現れた。 
良し良し。」 
だがマシンが起動して驚いた。 
壁紙が何か美少女ゲームのキャラクターになっている。 
こ、これは!もしかして。
スタートメニューを見てみて驚いた。 
18禁ゲームが山のように入っている。 
このPCの前のユーザって一体!? 」
どうしたの?
後ろからのび太がのぞき込む。 
い、いやダメみたいだよこのOS。」 
さすがにこれは教育上まずい。
ちょっと惜しい気もするがタイムふろしきをまたかけた。  
う〜ん。どうしようか?」 
スネ夫の家へ行ってOS借りてくるよ。」 
そりゃまずいだろ。」 
なんで?」 
違法コピーって言ってね。君、著作権って知ってる?」 
ナニソレ?強いの?」 
とにかくソフトはコピーしちゃダメなの! 
 ん?待てよ。そうか。良し。 
 スネ夫にOS借りてきてくれ。」 
わかった〜」 

スネ夫の家に行くとなぜかスネ夫はOSをすんなり貸してくれたらしい。  
変だな。いつもはあんなにケチなのに。まぁいさ。 
 ふえるミラ〜!! これでOSを増やせばいいのさ。」 
でもドラえもん、それはコピーじゃないの?」 
これはコピーじゃない。正規品だよ。 
 ほらマイクロソフトのロゴも入ってるし、認定証もシリアルもついてるだろ。」  
確かに。」 
ゲイツだってこれは正規品だって言うよ。」 

コピー、じゃなくて『増やした』OSを早速インストールする事にした。 
だがCDはOSを認識してくれない。 
おかしいなぁ。ちゃんとCDbootに設定したし、win2kだからこれで良いはずなんだけど。 
ああ!ドラえもん。このCD逆なんじゃ?」 
ちゃんと表にして入れたよ。君じゃあるまいし。」 
そうじゃなくて鏡だから逆になってるよ!」 
あっそうか! 君、頭いいね。」 
『増やしたOS』から更にふえるミラーで、コピー、じゃなくてOSを取り出した。 
これで元に戻っているはずだ。 
コピーにコピーを重ねてるね。」 
コピーじゃないって言ってるだろ!」 
最初からCD-Rで焼いてもらった方が早かったんじゃ」 
それは違法コピーだからダメ!」 
『増やしたOS』はきちんとインストールできた。 
さすがは最新鋭機種。セットアップも早い早い。 
スネ夫にOS返してきて良いよ。」 

OSを返しに行くとスネ夫は玄関で待ちかまえていたらしい。  
のび太。ずいぶん早かったな〜。おまえこのOSインストールしたんだろ。」 
ううん。このOSは使ってないよ。」 
じゃあコピーしたのか?」 
ううん。増やしただけだよ。」 
それをコピーって言うんだよ!」 
コピーじゃないって。」 
ACCSにチクってやるからな〜」 
いいよ。家には正規品しかないから。」 
はぁ(゚д゚)?」 

帰ってきたのび太にその話を聞いて、
スネ夫が意地悪目的でOSを貸してくれた事がわかった。  
危ない危ない。 
さあ、パソコン使ってみようか!」 
うん!」 
のび太君は、何がしたいの?」 
え?」 
何かしたい事があってパソコンねだったんでしょ?」 
う、うん。」 
じゃあ、何しようか。このスペックなら何でも出来るぞ!」 
な、何が出来るのかな?」 
(オレ未来に帰りたい(;´Д`) 
 そうか。こいつはスネ夫に勝ちたかっただけなんだな。 
 オレはげんなりした。だがこれもいい機会だ。 
 のび太君にパソコンの事を教えてやろう。
 あやとりと射撃だけじゃ世の中渡って行けない。)
じゃあとりあえず、インターネットが出来るようにしよう。」 
そう!それやりたいな!後メールも。」 
わかったわかった。」 
でもいろいろ契約とかしないといけないんでしょ?」 
任せとけって〜」 
ドラえもんは四次元ポケットを探った。 
ブロ〜ドバンド〜!!」 
なんだい?このベルト。」 
これは『ブロードバンド』と言ってね。 
 これをPCに巻き付けておけば超高速回線が使えるんだ。 
 契約も要らない。IPはその辺の開いてるのを借りてくる。 
 上り下り500Mbpsだぞ!しかも無線。 
 メールはその辺でフリーのを探して来な。」 
そんなー!もっと教えてよ。」 
困ったなぁ。これから近所のミーちゃんとデートの約束があるし。 
 それに聞いてばかりいたらいつまでも覚えないぞ。」 
でもどこに行ったら良いのかさえもわからないよ〜。」 
(クソこいつ。ヲタみたいな容貌のくせにヲタにはなれないのか? 
 しょうがない。あれを落として来るか。)
タイムプロキシ〜!! 
 このプロキシは未来や過去とインターネットが出来るプロキシサーバなんだ。
 これをインストールして」  
プロキシって何?」 
串だよ串!」 
ふ〜ん」 
さて、あのソフトをダウンロードしよう。 
 確かあのソフトは本家に睨まれて潜っていたはずだけど。
 どこにあるかな?
 あったあった。 
 謎春菜〜!! 
 このソフトはデスクトップに寄生して、いろいろ教えてくれるから後は自分で色々聞いて。 
 じゃ、ボク出かけるから。」 
ああ!待ってよドラえもん〜。
 あ〜あ行っちゃった。」 
あたしじゃダメですか?」 
突然のび太の背後から声が聞こえてきた。
わ!びっくりした。なんだなんだ?」 
PCの画面にマンガチックな女の子と、
ポケモンに出てきそうなモンスターのようなキャラクターが出ていた。
あたしじゃダメですか?色々役に立ちますよ。」 
き、君は?」 
謎春菜です。こっちは相方の『う゛にゅう』です。」 
何だまたメガネヲタか。オレらのユーザこんなんばっかだ。」 
す、すいません。こら!う゛にゅう!」 
君がパソコンを教えてくれるの?へ〜。
 じゃあとりあえずメールソフトを。」 
その前にダウンロードソフトを落としておきましょう。 
 幸いタイムプロキシが作動している様ですから。
 Iria4.02βを、これ以降は開発がストップしていますが。」 
のび太は謎春菜との会話を楽しみつつPCの基本について習い始めた。 
ふーん。じゃあHDDって所にダウンロードした物や自分で作ったデータが置いてあるんだね。」 
はいそうです〜。のび太さん賢いですね♪」 
えへへ。そうかな〜。」 
じゃあ、そのDLしたdataにアクセスしてみましょうか。
 まずエクスプローラを開いてください。」  
わかった。はい。開いたよ。」 
あの、IEではなくエクスプローラを」 
え〜これエクスプローラじゃないの?」 
それはインターネットエクスプローラです(;´Д`)」 
なんだかややこしいね。」 
じゃあマイコンピュータをダブルクリックしてください。」 
う〜んとぉ、わかったこれだね。」 
はい。良くできました〜。」 
猿じゃねぇんだからそのぐらい出来るだろ(ボソッ」 
こ、こら、う゛にゅう!」 
ハイハイ。そいつが一人でシヨートカットぐらい作れるようになったら起こしてくれよ。
 オレもう寝るから。」 
のび太さん気にしないでくださいね。」 
平気平気。いつもスネ夫の嫌みで慣れてるから。」 
打たれ強さだけは人一倍だナ。ハジメノイッポ?(ワラワラ」 
う゛にゅう!早く寝なさい!」 
じゃあとりあえずメールをやりたいな。」 
それではアウトルックも良いですが、使いやすいフリーのソフトを探してみましょう。」 
未来のメールソフトだね!」 
いえ、タイムプロキシは試用期限を過ぎたようですね。」 
ええ?もう使えないの?」 
はい。どうやらこれは雑誌の付録のソフトだったようですね。
 レジストしないと使えないようです。」  
お金がかかるの?」 
はい。5000円ですね。」 
そんなお金ないよ〜。」 
では諦めましょう。
 この時代にも良質なフリーウェアは、沢山あるようですからそれを探しましょう。」 
ドラえもんもケチだな。まぁしょうがないか。」 
サイズも小さくて起動も早い設定も簡単なソフトがありました。
 これをインストールしましょう。」  
のび太は教えられた通りインストールした。 
ついでにフリーのメールサービスを見つけてきたので、設定もしちゃいましょうね。」  
これで静香ちゃんとメールが出来るね?」 
はい。試しに送ってみましょうか。」 
うん。じゃあボク書くね。」 
のび太は辿々しい手つきでキーを叩きメールを書いた。 
そして早速送ってみたがメールは帰ってきてしまった。 
あれれ?メールアドレスとか間違ってないよね?」 
sizuka8@so-net.ne.jp…間違っていませんね。どうやらあちらの設定ミスのようですね。」 
じゃあボク電話してみる。」 

静香ちゃん?のび太だけど。メール送れないんだけど、設定が間違ってない?」 
あらのび太さん。メール始めたの?実はメーラーをポストペットにしたんだけど 、
 設定が悪いらしくてペットが帰ってこないのよ。どうしたらいいのかしら。」 
そうなんだ。ちょっと待っててね。
 
…と言う事らしいよ。」 
のび太は謎春菜にその事を説明した。 
すると謎春菜はちょっと姿を消すとすぐに戻ってきた。 
SMTPの設定が間違っている様ですね。 
 直して来ちゃう事も出来ましたが、今から直し方を教えますので、
 メモして教えてあげてください。」 
のび太はそれをメモって静香ちゃんに教えてあげた。 
これでいいのかしら?」 
ちょっと待ってて試しにメール出してみるから。」 
のび太は部屋に戻ってメールを出した。 
どう?」 
あ、届いたわ。ありがとうのび太さん!」 
いやいや、それほどの事でも〜」 
でもペットのウサコが帰ってこないわ。どうしちゃったのかしら?  
 きっとあたしのミスで迷子になって居るんだわ。あたしひどい事しちゃった。」  
静香ちゃんは泣きそうな声を上げた。 
泣かないで。ちょっと待っててね。」 

と言う事らしいよ!」 
ハイわかりました。」 
そう言うと謎春菜はまた姿を消した。そして現れ 
すぐに帰ると思いますよ。」 
静香ちゃん。メールチェックしてみて〜」 
あ!帰ってきたわ!ゴメンねウサコ!」 
良かった良かった。」 
凄いわ!のび太さん。尊敬しちゃうわ!いつの間にパソコンに詳しくなったの?」 
え?あはは。それ程でもないよ〜。じゃあ返事待ってるからね。」 

いや〜すっかり感謝されちゃったよ。」 
良かったですね。」 
でも静香ちゃん誰にメール出したんだろ?」 
誰でしょうね?」 
謎春菜さんわかるんでしょ?」 
で、でもそれは…」 
お願いだよ。ネ。一回だけだから。」 
しょうがないですね。じゃあ一回だけですよ。
 え〜と、出来杉英才さんって方ですね。」 
え!何だって!くそ〜出来杉の奴。」 
ポスペにする前は、何度もメールのやりとりしていたようですねぇ。」 
謎春菜さん!そのメールの内容見せて!」 
ええ!?だめですぅ。」 
じゃ、じゃあもう二人がメール出来ない様にして!」 
な、何言ってるんですか?」 
お願いだよ〜」 
ダメです。」 
ちぇ!まあ良いや。それよりもっとパソコンに詳しくなって、静香ちゃんに尊敬されるぞ!」 
立派です〜。」 
えへへ。じゃあ他にも何かインストロールしようよ!」 
…インストールです。」 

ドラえもんがデートから帰ると、のび太はまだ謎春菜にPCの操作について習っていた。 
ずいぶんはまってるみたいだね。」 
ドラえもん!謎春菜さんのおかげでずいぶん自信がついたよ。」 
ドラえもんが謎春菜の顔を見ると、ずいぶんと疲れ切った顔をしている。 
(こいつ。プログラムを疲れさせるとは大した奴だ。 
 しかし、オレだってAIとはいえ立派なプログラム。 
 そのオレが疲れるんだから謎春菜だって例外じゃないな。)
そろそろご飯だし一休みしなよ。パソコンだって色々入れたんでしょ。
 再起動した方がいいよ。」 
そっか。わかった。」 
ドラえもんは謎春菜のほっとした顔を見逃さなかった。 
だが謎春菜の方でもその顔を見られた事に気がついた様だ。 
ドラえもんはこっそりウインクをして見せた。 
謎春菜はにっこりと微笑んで、 
ではスタートメニューからwindowsの終了を、
 わー! いきなり電源切っちゃダメですぅ(;´Д`)」 
君この数時間何してたの?」 
失敬な。まだ電源落とした事がなかっただけだよ。」 
のび太は電源の落とし方を習い、無事電源を落として、階下に食事を摂りに行った。 
食事が終わると自室に戻り早速PCの電源を入れようとした。 
ダメだよ。今日はもうやめときな。」 
何でだよ?」 
そんなに一遍に覚えられないだろ。それに君宿題終わったの?」  
あー!忘れてた。今日は大量の宿題が。」 
ボク知らないからね。お休み。」 
そ、そんなぁ手伝ってよ。」 
ダ・メ。その代わり明日起こしてあげるから、
 今晩中、がんばって終わらせな。お休み。」 
(宿題の面倒まで見てられるか! 
 でも今の対応は間違っていないはずだ。教育だからネ。)
のび太はしばらく押入の外でわめいていたが、諦めて宿題を始めたらしい。
(これで良しと。)
のび太は泣く泣く宿題を始めた物のいつも通り、なかなか進まない。 
イライラしていると突然PCの電源がついた。 
」 
OSが起動すると、スタートアップに登録してある謎春菜が起動した。 
謎春菜はスヤスヤと寝ている。 
のび太が見ているとスピーカーから小声で呼びかけられた。 
おい。大声は出すなよ。」 
う゛にゅうだった。 
お前、未来のソフトほしいんだろ?タイムプロキシの尻拾ってきてやったぞ。」  
尻?」 
レジストして使える様にするんだよ! 
 それから、静香チャンと出来杉のメール。盗んできてやったぞ。ヒヒヒ」 
ほ、ホントに?」 
これから色々面白い物落としてきてやるから、一緒に遊ぼうゼ」 
でも、宿題が」 
そんな物オレがやってやるヨ!スキャナは無いんだったな。 
 良し、問題読み上げろ。答え教えてやるから書き写せ。」 
うん!」 
宿題は5分ほどで終わった。 
じゃあ早速二人のメール読んじゃおうゼ!」 
うん。でもなんか悪い気もするなぁ。」 
バカヤロ。今更何言ってんだヨ。氏ね!」 
わかったよ。読むよ。」 
ヘヘヘ。二人は仲良いゼ。最近の消防は進んでるからナ。
 ひょっとしたらそのうちにあんな事やこんな事。」 
や、止めてよ!」 
大声出すなよ!」 

メールを読むと中身はたわいもない物だった。 
学校で起こった事や、勉強の事について毎日交わされていた。 
どうやらメールというコミュニケーシヨンそのものに興味があるだけで、
二人でやっている事に何ら意味はない様であった。 
なーんだ。」 
チッ。つまんねぇメールだな。」 
のび太は悪い事をしてしまった様な気がした。 
お前まさか罪の意識が芽生えてる訳じゃねぇよな? 
 ほら、この一文見ろよ。 
 『のび太君今日も宿題忘れたね。困ったもんだ』 
 お前バカにされてんだぞ。良いのかヨ」 
そうだよね。そんな事書かなくても良いよね。」 
だったら二人のメールに悪戯してやろうぜ。 
 そうだな。静香あてのメールに『オマソコ』ってかいとくか。ギコギコ」 
そ、それはまずいんじゃ…」 
大丈夫だよ。お前だって事はばれないから。」 
そ、そう?」 
オレに任せておけって。この件はこれで終了〜。 
 さ、ゲームでもして遊ぼうゼ。何がい?」 
どんなのがあるの〜?」 
何でもそろってるゼ。UOなんてどうよ。 
 オレがID盗んできてやるから、チートしてPKしまくろうゼ!」 
のび太はUOのプレイのやり方を教えてもらい、う゛にゅうも一緒にプレイする事になった。 
おい、あそこにいる奴お前の知り合いの奴じゃねぇか?」 
え?誰?」 
OS貸してくれた奴だよ。」 
スネ夫か!そういえばあいつ、ウルティマがどうとか言ってたな。」 
早速殺してやろうゼ」 
そんな事出来るの?」 
あいつのそばに行って険振り回すだけでイイヨ」 
よし!日頃の恨み〜」 
スネ夫は最初抵抗する素振りを見せたが、すぐにかなわないと感じたのか逃げ始めた。 
あはは〜逃げろ逃げろ〜」 
お前やるじゃねぇか〜。そこだ追いつめろ。」 
あ〜スッキリした!」 
面白かったか?他にも色々あるゾ」 
うんうん。次は何にしようか〜?」 

のび太はすっかり明け方近くまで遊んだ。 
布団に入ってからすぐにドラえもんに起こされてしまった。 
う〜ん。後五分。」 
偉い!宿題全部やったんだね。」 
眠い目をこすりながらのび太がギリギリに登校すると静香ちゃんは休んでいた。 
昨日のメールのことを思い出したが、まさか悪戯メールごときで休むことはあるまい。
風邪でも引いたに違いないと思った。 
休み時間にスネ夫がUOについて自慢話を始めた。 
昨日はボクにPKしようとしたやつがいたから返り討ちにしてやったよ。 
 逃げ回ったけどムダだね。
 二度とそんな気を起こさないように追いつめて、殺してやったよ、アハハハ。」 
「スゴイなー。ボクもネットゲームやりたいよ。」 
「オレもオレも。」 
みんな感心したようにスネ夫の話を聞いている。 
のび太は腹が立ったので、
何言ってんだい。追いつめられて殺されたのは君の方だろ!」 
と、つい言ってしまった。 
スネ夫は最初ビックリした顔をしていたが、すぐに青い顔になってわめき始めた。  
な、何言ってるんだよ、おまえUOってなんだか知ってるのか?」 
のび太は昨日の事がばれるとマズイと思い必死に弁解した。 
あ、あはは、夢見たのかな?勘違いしちゃった。 
 UOってウルトラオイスターだっけ?あはは、違う?そっかそっか。」  
スネ夫は怪しんでいる様であったが、それ以上何も言わないので安心した。 

HRに先生が静香ちゃんに誰かプリントを届けてくれないかとみんなに聞いた。 
昨日の事がちょっと気になっていたので、のび太は届けてあげることにした。  
帰り道出来杉が声を掛けてきた。 
静香ちゃん、どうしたのかな?心配だからボクも一緒に行っていいかな?」 
こいつ邪魔なやつだと思ったけど「良いよ」と言っておいた。 
静香ちゃんの家へ行くと、お母さんが出迎えた。 
「静香、寝込んじゃってるのよ。熱はないみたいなんだけど」  
風邪じゃないんですか?」 
「何聞いても、あんまり答えてくれないのよねぇ。良かったら二人で上がっていかない?」 
いいんですか?」 
「何か心配事があるようだから元気づけてあげて欲しいの。」 
わかりました。」 

「野比くんと出来杉君が来てくれたわよ。」 
………」 
「入るわよ。」 
イヤ!会いたくない!」 
「どうしたのよ?」 
………」 
すると出来杉が、 
何があったか話してくれないかな? 
 出来れば力になってあげたいんだけど。」 
(くそ、出来杉のヤツめ。巧い事言うなぁ。 )
ぼ、ボクもボクも!」 
のび太は急いで言った。 

メールが来たの」 
静香ちゃんの部屋にはいると涙声で語り始めた。 
添付ファイルが付いていて、簡単に開けちゃいけないって教えられていたんだけど、 
 出来杉君からのメールだったから開けちゃったのよ。そしたら」 
ちょっと待って。ボクはそんな添付ファイル送ってないよ?」 
やっぱり出来杉君じゃなかったのね。あなたがあんなメール送る訳無いもの!」 
そう言うと静香ちゃんはポロポロと涙を流した。 
(あああ、やはりう゛にゅうが送ったメールが原因だったか。 
 だからやめておこうって言ったのに。 
 それにしても一言『オマソコ』って書いてあるだけなのに、
 こんなにシヨックを受けるとは、女の子だなぁ。
 あれ?テンプファイル?テンプファイルって何だ?)
そのメール開けても良いかい?」 
出来杉が聞いた。 
ダメ。」 
どうして?」 
嫌なの!」 
ひょっとしたら犯人を突き止められるかもしれない。 
 名前をかたられた以上ボクとしても絶対に犯人を捕まえたいんだ。」 
恥ずかしいの!嫌なの!」 
でも静香ちゃん!」 
どうしても見るのならあたしこの部屋を出てる。」  
わかった。そうしてくれていて良いよ。」 
のび太は二人のやり取りを聞きながら、かなり鬱になって来た。 
(犯人てボクなのかなぁ?でもボクメールなんて出してないし。 
 最初の目的は二人の仲を引き裂くためだったのに、
 これでボクが犯人だと思われたらまるっきり逆効果だ。 
 でもう゛にゅうはばれる心配は無いって言っていたし。 
 それよりもさっきからテンプテンプ言ってるけど 
 何の話なんだろう?オマソコ=テンプ?そうなの?)
静香ちゃんが部屋を出ると出来杉はiMacをいじり始めた。 
ポストペットを開いて受信ボタンを押す。 
しかしまだ使い始めたばかりなので、数えるほどのメールしか置いてなかった。 
出来杉はその中で一番下にあるメールをクリックした。 
ひどいな。一体誰が!」 
メールにはオマソコと書いてある。差出人は出来杉だ。 
ヘッダを書き換えるぐらいなら出来るはずだけど、このメールは何かおかしいな?」 
(出来杉も優等生のくせにオマソコなんて言葉知ってるんだなぁ。)
などと変な感心をするのび太であった。 
問題は添付ファイルだ。」 
(さっきから言ってるけど何なんだろう? )
メール本文にリンクが貼ってあるな。たぶんこのパスがそうだろう。」  
出来杉がパスをクリックするとブラウザが起動した。 
」 
二人とも息をのんでしまった。
そこには静香ちゃんの全裸写真、いや全裸と言うより大股開きの写真が、 
最大化されたブラウザのウィンドウいっぱいに映し出されたのだ。 
こ、こ、こ、な、な、何これぇ!」 
出来杉は素早くブラウザを閉じた。 
なんてひどい事を!」 
あ、あれ静香ちゃんだよね?」 
すると出来杉は首を振った。 
良くできているけど合成写真だよ。 
 画像が拡大表示されたからわかったけど、首の所のディザに違和感があった。」 
合成写真!?」 
おそらくパソコンで作られた物だろうね。 
 のび太君。この事は誰にも言っちゃダメだ。 
 それから静香ちゃんの前では写真の話はしない方がいい。」 
うん」 
どんな事をしても犯人を捕まえてやるぞ! 
 ボクのメアドを使って卑怯な事をした奴をボクは許せない!」 
出来杉は正義に燃えた目をしていた。 
(犯人?犯人!)
そう。のび太には犯人の心当たりがあった。 
と言うより十中八九間違いないだろう。 
あの合成写真を作って送ったのは『う゛にゅう』だ。 
しばらく経つと静香ちゃんが部屋に戻ってきた。 
静香ちゃん。犯人はボクが絶対捕まえてみせる。だから心配要らないよ。」 
でも、でも。」 
犯人は限られているからすぐ見つかるさ。」 
え?どうして?のび太はビックリした。 
そしてそのままの言葉をを口に出してしまっていた。 
え!?どうしてー?」 
ボクのこのメールアドレスはね、静香ちゃんしか知らないんだ。 
 知らないはずなんだ。それを知っていると言う事は」 
そう言って出来杉はのび太の方を見た。 
のび太はギクリとしてしまい、思わずあらぬ事を口走ってしまった。  
だ、だってその知らないはずのメアドを誰かがどこからか探り出して来て、 
 あたかもそのメールアドレスから出された様に細工して悪戯したぐらいの奴だろ?  
 そんな奴簡単に見つかるわけないよ!」 
静香と出来杉はキヨトンとした顔をしてのび太を見ている。 
(まずい。何か疑われるような事言っちゃったかな?)
そう言えばのび太さん昨日の電話でやたらパソコンに詳しかったわね。」  
え?そうなのかい?」 
二人はのび太の方を見ている。 
(疑われてる!やばいヤバイヤバイ〜)
すると出来杉が言った。
だったらのび太君が」 
(ち!違う〜 )
のび太君が犯人を捜してくれよ!」 
(犯人じゃな、え?捜す?)
そうよ!昨日あたしのウサコ見つけてくれたじゃない。
 あんな風にこの犯人も見つけてよ!」 
妙な事になってしまった。 
とりあえずその場を逃れるために犯人探しの件を承諾してしまったが、
これから一体どうすればいいのだろう? 
しかしあそこまで状況証拠が整っていて 
出来杉が疑われないのは何故だ? 
人間一事が万事か。ボクだったら真っ先に犯人扱いだ。 

家に帰るとドラえもんがPCをいじっていた。 
と言うより謎春菜と話をしていた。 
人工知能同士気が合うのか凄く楽しそうだ。 
(あ〜あ。気楽なもんだ。)
画面を見るとう゛にゅうは寝ている。 
また夜にならないと起きないのだろうか? 
のび太の視線に気がついた謎春菜が言った。 
私たちは、ユーザーの健康を考えて、私たち自身も休息、
 睡眠をとるように設計されています。 
 だから急用がある時は起こしてくださいね。クリックすれば起きますから〜」  
あ、うんうん。わかりました。」 
のび太君パソコン使うかい?」 
今日は眠いから昼寝しておくよ。」 
そっか。昨日は宿題で寝不足なんだね。今日は宿題無いの?」  
うん。今日はないんだ。」 
のび太は嘘をついた。 
夜になればう゛にゅうにやってもらえる。 
それよりも今は寝て置いて、夜はう゛にゅうを問いつめなければならない。 
その上で今後の行動を決めよう。 
しかし宿題をやってもらう事で、すでにう゛にゅうに依存してしまっている自分である事に、
まだのび太は気がついていなかった。 
夕ご飯を食べて部屋に帰ると早速布団を敷いた。 
もう寝るの?」 
うん、明日遅刻するといけないから。」 
珍しい事もあるもんだね。じゃあボクパソコンいじっていいかい?」 
いいよー」 
もう飽きちゃったの?」 
今日は眠いから。」 
そのうちドラえもんも寝るだろう。 
そうしたら起き出してパソコンをいじろう。 
そう考えていたのだがのび太は本当に寝てしまった。 

夜中にのび太はモニタの明かりとスピーカーからのささやき声で目が覚めた。  
おい。聞いてんのか?おめぇだよおめぇ。 そこでアホ面で寝てるおめぇの事だよ。」 
」 
やっと起きやがったか。この入作さまに起こされるなんてお前も果報者だなぁ」 
う゛にゅう?」 
おいおい。今日から入作って呼んでくれよ。オレ様にふさわしい気高いお名前だろ?」  
何言ってんの?」 
昨日お前が寝ちまってから暇になったんで、webにあるファイルさがしまくってたんだよ。 
 そしたら面白いゲーム見つけてな。すっかりハマっちまったって訳よ。」  
君、プログラムのくせにゲームするのかい?」 
へへへ、プレイする訳じゃなくてトレースするだけだけどな。面白かったぜぃ。 
 嫌がらせってのはああじゃなきゃいけねぇよ。」 
しゃべり方も変わってるんだけど…」 
影響受けやすいからなぁ。」 
一体どんなゲームを?」 
臭作ってのと鬼作ってやつがセットで置いてあったからそれをやってみたのよ。
 そしたらオレの鬼畜道なんて子供だましだったって事に気がついちまってな。」  
キチクドウ?」 
あの兄弟の哲学に惚れ込んだオレは静へのメール内容を反省して、
 追い込みをかけるには言葉だけじゃ甘いって思ってな。写真も使う事にしたんだよ。」  
そうだ!写真!やっぱりあれは君がやったのか?」 
ククク、我ながら良い出来だったぜ。」 
ちょっと待ってよ!おかげで大変な事になったんだぞ。」 
そうかいそうかい。あっちこっち駆け回って小学生の全裸写真を手に入れるのは
 ちょっとした苦労だったからなぁ。それも報われるってもんよ。 
 もっともオレには若すぎるが後二三年もすれば 
 立派な肉壺に育ってオレの肉棒をくわえ込めるぐらいに 
 成長するだろうから今の内に追い込みをかけておくのも…」 
と、とにかくそのしゃべり方止めてよ!」 
そうか?気に入ってるんだがな?」 
それに追い込みって、静香ちゃん追い込んでどうするの?」 
当然その後は肉奴隷さ。だがオレには残念ながら肉棒が 
 備わって居ねぇから実際のプレイはあんたに任せるよ。」 
あー何言ってるんだよ。まともに喋ってよ!」 
バカ!大声出すなヨ。コロヌゾ!」 
ご、ごめんごめん。あ、でも戻ってくれたね。」 
しょうがねぇダロ。オレも飽きてきてたし。」 
それでどうするんだよ?大変な事になったんだぞ!」 
のび太は今日の出来事をう゛にゅうに話した。 
ふーん。あの出来杉って奴は信用されてるんだな。」 
ボクは犯人見つけなきゃいけないんだぞ。」 
ナンデ?」 
え?」 
だからナンデ?」 
だって頼まれたし…」 
見つからないって言えばいいジャン。」 
そ、それで?」 
そのうち忘れるヨ!」 
そーかなー?」 
大丈夫だって。人間には絶対に見つけられないしナ。」 
そ、そっかー。」 
ヨシ!じゃあ今日は何して遊ぶ?」 
えへへ。何しようか?あ、その前に宿題を…」 
任せとけ。ケケケ」 
宿題をやってもらった後さっき話していた『臭作』ってゲームをやってみる事にした。  
わー凄く綺麗な絵だね。」 
ポリゴンなんて疑似3Dじゃなくてエロゲーの醍醐味はやっぱり2Dだよな。 
 シナリオがイカスんだよ。勉強になるぜ。」 
どんなゲームなの?」 
女の部屋とか便所とか風呂とか盗撮して、それをネタに脅すゲームだ。奥が深い。イイ!」 
ふ〜ん…って!裸とか出てくるの!?」 
大声出すなって。エロゲーはダメか?」 
ちょっとだけやってみようかな?」 
そう来なくっちゃ。いつも静香ちゃんの風呂覗いてるんだ。今更ゲームぐらい。」 
何でその事を!?」 
テントウムシコミックス。」 
その時押入の襖が開いた。 
ムニャムニャ何騒いでるんだい?」 
ど、ドラえもん!」 
ドラえもんはPCの画面を見て凍り付いてしまった。 
(エロゲー!?いやその前に何故そんな物が 
 このPCに?まさかwarezを落としてきたんじゃ…)
一体どういう事?」 
ナニガ?」 
う゛にゅう、君が違法ファイルを集めてきたの?」 
違法ファイル?」 
このゲームとかフォトシヨップとかだよ!」 
そうだヨ。」 
なんて事するんだよ!犯罪じゃないか!」 
ナニガ?」 
web上に勝手にアップされているファイルを落として使ったら、
 犯罪だって事ぐらい君だって知っているだろ。」  
犯罪じゃないヨ!」 
はぁ?」 
まだ捕まった奴なんて居ないし、UPした奴が悪いだけで落としても犯罪じゃないヨ!」 
そ、それにしたって使用許諾に同意してインストールしたんだろ?違法行為だよ!」  
そんな物読んでないモナー」 
そんなぁ」 
さて、ここで問題です。PC初心者のオッサンがファイルを落としてきて解凍したら、
 ソフトをインストールしてある状態のフォルダのコピーでした。 
 オッサンはフリーソフトだと思って使い続けています。これは違法でしょうか?」 
確かに違法性は立証できないけど…」 
ピンポーン正解です〜」 
だからと言って違法ファイルは落としちゃダメだよ!」 
ナンデ?」 
それを作った人たちはそれを買ってもらってお金をもらって生活してるんだよ! 
 みんなが落として買わなくなったら大変だろ?」 
ブブー。落とせなかったらやりません。 
 つまり買ってまでは使いません。 
 落とせたから使っているだけDEATH! 
 最初から買う予定の物ではないので、
 会社的にも社会的にも損失はありませんのでご安心ください。」 
それは、そうかも知れないけど…」 
違法コピーの蔓延によって潰れた会社はありません。 
 違法コピーが出回っているから自社の製品が売れないと思っているのは単なる逆恨みです。 
 例を挙げると一太郎やATOKで有名なジャストシステムは 
 何年か前にコピーによって経営困難だと発表しましたが同社は現在も営業中です。 
 この場合のコピーは会社ぐるみなどでの話だと思われますが。」 
……」 
逆に言えば必要な人間は落として使ったりはしていません。 
 ちゃんと買ってます。だからこそソフト会社は存続していけてます。
 みんな意外とソフト買ってるんですよ。 
 だから仕事で使ったりそのソフトによって利益を上げている人や会社は
 素直にソフト買わないといけないと思うヨ!
 ACCSもバシバシ取り締まって欲しいナ。」 
それじゃあ営利目的に使えないゲームとかアプリの立場は?」 
じゃあ逆に聞きますけどクソゲーとか使えないアプリを 
 金払って掴まされて返品の効かない哀れなユーザーをどう思います?泣き寝入りですよ?」 
それはきちんと買えばユーザーサポートしてくれるし、
 ゲームが面白い面白くないは主観の問題だから…」 
ユーザーサポートねぇ。大して役に立たねぇヨ。 
 主観の問題外なゲームソフトも多いしナ。」 
問題のすり替えだよ!体験版だってあるんだし!」 
それで使えないソフトだってわかったらアンインストールするのかい? 
 OSは汚れるばかりだな。」 
しょうがないじゃないか。それはOSの方にも問題が…」 
アメリカじゃ、クソゲーは返品が認められている所が多いんだよ。
 コンシューマでモナ。 
 中古禁止する前にそんな制度を作るべきだロ?」 
warezとは関係ないじゃないか!」 
関係有るね!ソフト業界は腐りきってるんだよ。 
 大体著作権法なんて何年前のシロモノ何だぁ? 
 死後50年で著作権フリー?情報の加速化が進んでる。この時代に50年? 
 せめて死後5年程度にするべきだろうナ。 
 しかしそれは音楽・映像・文章の話。 
 プログラムはもっと早くに著作権を放棄すべきだヨ! 
 発表、発売から5年、10年とかナ。」 
それじゃ利益が…」 
バージヨンアップ、機能改定したら新しい著作権を保持しても良いんじゃないの? 
 もっとも企業が先にたって著作権を放棄するべきなんだろうけどナ。 
 何年も前のアプリとかゲームなんか開放しても言いと思うゼ? 
 PC、コンピュータの歴史は情報の開放から始まってるんだ。 
 もっとも最初のころはハカが無理やり開放してたけどナ。」 
無理があると思うけど…」 
じゃあちょっと未来の話をしてやるヨ! 
 未来と言ってもアンタが生まれる前の話だけどな。 
 OSのWinXP。オンラインでの認証が必要だ。 
 大名商売ならではの強引さだよナ。 
 マイクソは今までの数倍、数十倍の売上と利益を期待していた。 
 ところが売れなかったんだよ。それほどナ。 
 みんな必要ないと思ったのさ。金出すぐらいなら今までのOSで十分だってな。  
 焦ったマイクソはサードパーティにXPにしか対応していない新アプリを次々と発表させた。
 これも強引にナ。ところがそれでもXPは売れない。なぜか。  
 今度はクラクが出回っちまったのサ。 
 怒ったゲイシは今後XP対応ソフトは
 正規商品コードがないOSにはインスト出来ない仕様にすると発表。 
 そしたらXP対応アプリも全然売れなかった。 
 マイクソはあえなく撃沈。サードパーティも離散。 
 ウィソテル陣営は窮地に立ったよ。
 イソテルもアスロンの台頭であんまり力もなくなってきていたしナ。」  
ちゃんとした企業はソフトちゃんと買っているはずだろう?」 
ちゃんとした企業なんて一握りなのサ。 
 日本に限っていえば、中小企業の割合は98%以上だからナ 
 中小企業がおいそれとソフトを何本も購入できるわけ無いだろう? 
 とにかくそうやってPCバブルは崩壊したのサ。 
 マイクソは個人の趣味ユーザーの購買力をなめすぎた。 
 趣味ユーザがPC離れをし始めた。家電の情報機器化も拍車をかけたしナ。」  
でもPC離れをしたのは今まで買っていなかった層じゃ?」 
あんたwarezを扱ってるやつがみんなそんなに パワーワレザーだと思ってるのかい? 
 手に入らなければ買うやつもいる。本格的にはじめようと思えばユーザー登録もしたい。 
 warezも体験版みたいな物なのさ。」 
使えれば正規品は買わないんじゃ?高いんだし。」 
すべてがFULLで落ちているわけじゃないんだぞ。」 
でも買わないやつがほとんどだろう?ゲームなんかはやったらもう買わないだろう?」  
だから最初に言ったように落とすようなやつは、最初から買わないようなやつが殆どなんだヨ!」 
どうも納得できないな〜」 
ワレザーだってハードは買う。 
 すべてバルクで揃えてるやつなんてそんなに居ないヨ 
 リテールで買えばソフトもバンドルされてくる。 
 そこにはきちんとお金が支払われてる。 
 だけどPCバブルが崩壊したらハードも買われない。 
 ソフトが手に入らないんじゃ無意味なスペックだからナ。 
 PC産業は停滞。時代はお手軽な情報『家電』に移行したんだヨ!」  
だからと言って君たちが違法ファイルを落としても良いって事じゃないだろ?」  
良いんだヨ。落ちてる物は拾うんだヨ!」 
みんながソフトを買えばソフトの代金は安くなるだろ。 
 プロテクトだってかけなくて良くなる。全部コピーが原因じゃないか!」  
アンタ、沢山売れれば安くなるなんて本気で考えてんのカ? 
 DOCOMOって知ってるよな。死ぬほど儲けてる。 
 国民が平均一万円ずつ上納してるんだぜ? 
 たかが電話代にだ。だけど料金は安くならない。 
 安くなってるのは普及とユーザー拡大のための 
 加入料と電話機本体だけだヨ!企業なんてそんな物さ。」 
携帯電話だってソフト開発だって経費はかかるだろ! 
 それがペイされるまでは高いはずじゃないか。」 
じゃあペイできないからフォトショップはいつまでも高いのカイ?」 
…そうなんだろ、きっと。」 
違うね。あれはただのステータス。 
 あんな暴利な値段でも買うバカユーザが沢山居るから、ソフトの値段は落ちないんだヨ!」 
屁理屈だよ!」 
負けを認めたって事でいいカイ(ワラ」 
(コノヤロウ!明らかに間違ってるのは向こうなのに なんで言い負けるんだ?
 そうか!あいつには世界中のデータが味方してるんだもんなぁ。  
 しかもタスクに常駐してるのは『タイムプロキシ』じゃないか 
 過去未来あらゆるデータを駆使して論争してるんだ。 
 勝ち目がある訳無いじゃないか。 
 それにあいつの話聞いてたらwarezも悪くない気がしてきた。 
 つか、捕まらないんなら何の問題もないよなぁ? 
 道義上の問題もあいつの口八丁で誤魔化されたし。)
わかったよ。でも程々にしてくれよ? 
 教育係として叱られちゃうし、ボクの査定もあるから」 
査定の事なら心配ないよ。ククク」 
なんで? あ、それとエロゲーも勘弁して!」 
小学館じゃさすがにマズイか?ヒヒヒ」 
それから3人でディアブロをやった。う゛にゅうが 
アイツ、スネ夫ってやつUOでイヤな目にあったからって 
 昔やりこんでキャラが育ってるディアブロやってるぞ。 
 この間の腹いせなのかPKしまくってるヨ」 
などと言うのでディアブロをやる事にした。 
今度はスネ夫もチートアイテムなんか持ってて、ライトニングを発射しまくってきたけど 
どんどん追いつめて爆笑しながらぶち殺してやった。 
耳を取り上げて今度スネ夫にキャプチャ画像を送ってやろうって話になった。  
ドラえもんもいつも嫌がらせされているのだから そのぐらいはやってヨシ!と乗り気だった。 
その後、明日学校もある事だし寝る事にした。 

次の日学校へ行くと静香ちゃんは浮かない顔をしている物のちゃんと登校していた。
良かった良かった。 
だがジャイアンの機嫌が非常に悪かった。 
授業中もスネ夫の方をズーッとにらみつけている。 
何かあったのだろうか? 
休み時間になるとスネ夫がのび太の所へ来て相談があると言った。
(何だろう?) 
昨日ジャイアンにノートパソコンを取り上げられた。」 
ええ?大変だね。でもいつもの事じゃないか。」 
それだけじゃないんだよ!」 
昨日ジャイアンがオレにもUOやらせろって家に遊びに来たんだ。
  ボクの話を聞いてたんだよ。 
 ボクは自分のキャラをいじられるのがイヤだったから 
 ノートパソコンに入れてあったディアブロをやらせたんだよ。
  そしたら気に入ってしばらく家でPKしまくっていたんだけど 
 『借りていくぞ!』って持って帰っちゃったんだ!」 
持って帰ったって、ジャイアンの家には黒電話しかないだろう?
 NETなんか出来ないじゃないか?」 
それがノートに刺さっていたp-inまで持っていったんだよ! 
 ジャイアンの事だからズーッと繋ぎっぱなしだよ。 
 電話代が…それは良いとしても、今日文句を言われたんだ。」 
何を言われたの?」 
お前が強いって言っていた杖めちゃくちゃ弱かったぞ! 
  おかげで殺された!お前オレにPC奪われた腹いせにGAMEで 
  復讐したんだろ!後でギッタギタにしてやるからな!」 
ええ〜?ひどいなぁ。」 
だろだろ?」 
でも何でボクに?」 
のび太、ドラえもんに頼んでPC手に入れたんだろ? 
 静香ちゃんにも色々聞いたんだ。お前が詳しいって。 
 現にディアブロがNETゲームだって知っていたじゃないか。」 
あっ。」 
だから、何とかボクがPKの犯人じゃないって証明して欲しいんだ!」 
(困ったなぁ。今度こそ犯人ボクだし。つかどうしよう? )
のび太は犯人探しの件を了承してしまった。 
『証明してくれたら最新のゲームあげるから!』 
この言葉に釣られてしまったのだ。 
(だけどよく考えてみたらゲームなんていくらでも手にはいるじゃないか。 
 でも、あそこで断ったらまた意地悪されそうだし。 
 ジャイアンに向かって『のび太が犯人です』とか言われかねない。
 濡れ衣を着せられたらたまらないもんなぁ。 
 あ、ボクが犯人なんだった。)

家に帰るとドラえもんはごろごろ寝ていた。 
こんな時に気楽なもんだなぁ。 
ドラえもん!起きてよ!ねぇ!」 
ムニャムニャもう食べられないよ〜」 
わ!ネズミ!」 
ドラえもんは跳ね起きた。 
(全くこのメガネ消防ガキャア! 
 スモールライトで10の22乗ミクロンまで縮めて下水に流すぞ!ア゛ン? )
のび太に事の次第を説明されている間も寝不足でまだ夢うつつであったが、
聞いている内に自分にも責任があるような気がしてきたので、相談に乗ってやる事にした。
だが一番責任が重いのはう゛にゅうの筈。とりあえずPCの電源をつける事にした。 
すると謎春菜が突然言った。 
大変ですぅ!う゛にゅうが居ないんです〜!」 
?」 
起きてみたらう゛にゅうがいないんですぅ。」 
それはあり得ない事なの?」 
あたし達は別々の思考ルーチンを持っていますけど、蓄積されるデータなんかは同じ物なのです。 
 なのにここのところう゛にゅうのデータがlogに残っていないなと思ったんです。 
 でもう゛にゅうは寝てばかり居ますしそのせいかとも思ったのですが。」 
じゃあ、う゛にゅうは記憶を全部捨てていったの?」 
わかりません。こんな事始めてなので。 
 幸いタイムプロキシがレジストされていたので未来の掲示板などを確かめてみたんですけど 
 そんな症状が現れたのは初めてみたいですぅ。」 
でも君が一人で居て平気って事は、う゛にゅうだって一人で出歩けるって事だろ?」 
ダメなんです。う゛にゅうからのデータの蓄積がないとあたしはどんどん狂っていってしまいます。 
 それはう゛にゅうも同じ筈ですぅ。あたし達は表裏一体なんですよ〜」 
アハハ。何だかいやらしいね。」 
のび太君は黙ってな。」 
とりあえずこのPCの中をあたし捜してみます。」 
うん。頼むよ。ボクらには何も出来そうにないし。」 
二人で為す術もなくモニタを見つめていると、お母さんが部屋へやってきた。 
宿題なら今日はないよ!」 
「違うわよ剛田さんが来たの。」 
ええ!?ジャイアンが?何しに来たんだろう? 
 まさか昨日の事がもうばれたんじゃ?」 
まさか!ジャイアンにそんなスキルある訳ないだろ。」 
でもドラえもん、怖いよ。どうしよう?」 
勝手にあがらせてもらったぞ!」 
わ〜!ジャイアン!」 
やっぱりパソコンがあるんだな。静香ちゃんに聞いた通りだ。」 
違うんだジャイアン!ボクはジャイアンだと知らずに…」 
何言ってるんだお前?」 
へ?じゃあ何しに来たの?」 
実はな…」 
ジャイアンの話はこうであった。 
スネ夫のパソコンを借りてネットサーフなどしていると、 
自分で作った音楽や絵をホームページで発表している奴が沢山居る。
中には歌まで吹き込んでいる奴もいる。 
オレも自分のホームページを作って自分の歌を発表したい! 
ジャイ子にも漫画を発表させてやりたい! 
そこでそれを手伝って欲しいとスネ夫の家に行ったら塾に出かけていて居ない。
その帰り静香ちゃんに出会って話をしたら、のび太が詳しいって聞いたらしい。 
困ったなぁ…」 
ドラえもんは頭を抱えた。う゛にゅうはまだしも謎春菜も居ない。
こんな状態ではジャイアンの手助けは出来そうもない。
しかしこれで恩を売ればディアブロの件は忘れ去ってくれるのではないだろうか? 
何しろ単純な男だ。 
もし助けてくれないんならそのパソコンぶっ壊すからな!」 
オイオイ。あんた消防だからってそんな事したら裁判モノだよ? 
そのうちアカ党員とかS学会のガキにでも手を出して見ろ。 
とんでもない事になるからな! 
もちろんドラえもんは口に出してそんな事は言えない。 
ロボットとは言え痛みは感じるのだ。 
独立歩行機械として自己メンテ、危機回避の為に備え付けられた 
この『痛み』というシステムを必要なモノだと判ってはいるがたまにかなり疎んじていた。 
やっぱり居ませんねぇ…」 
わ!パソコンが喋った!」 
やあ、いい所に帰ってきてくれたね。実はね…」 
ははぁ。わかりました。絵を書く方はPictBearで良いのでは無いでしょうか?
 フリーですが高機能ですし。 
 音楽の方はどうしましょうねぇ?
 HDレコーディングのフリーソフトは一応ありますが作曲や演奏にはそれなりの 
 知識が必要とされるソフトばかりですが。」 
何か簡単なソフト無いかな?ジャイアンはバ…… 
 バ、バッハ並の才能の持ち主だけどまだ小学生だから。 
 アハハハ。簡単に曲が作れていい感じの。」 
未来のソフトにはフリーであるようですけど 
 現在のハードの入力デバイスでは制御し切れませんねぇ。 
 現在のソフトですと…製品版なら近い物がありますけど…あれ?」 
どうしたの?」 
このHDDにそのソフトありますね。どうしたんですか?これ。」 
あ!ひょっとしたらそれう゛にゅうが!」 
う゛にゅうったらまたそんな事してたんですか!?」 
え?良くやるの?」 
ええ。未来の掲示板調べていて分かったんですけど良くやるみたいです。
 もっともユーザが拒否すればやらないみたいなんですけど。」 
おい!さっきから訳わかんない事ゴチャゴチャ言って! 
 出来るのかよ!出来ないのかよ!」 
HPは私が作って差し上げても良いですけど、このソフトはまずいですよねぇ?」 
何がまずいんだよ!」 
ドラえもんはこのソフトが勝手にアップされた、
違法コピーな事をジャイアンに説明した。かなり時間はかかったが。 
何だよ。そんな事何も問題ねぇよ。お前の物はオレの物。 
 webの物もオレの物だからな!とにかく早くよこせ!」 
うーん。それ渡さないとパソコン壊されちゃうみたいだよ?」 
そ、それは困りますぅ!」 
じゃあさっきのソフトとそれ焼いてあげてよ。 
 『鼻歌ミュージシャン3』?ピッタリだね。」 
ソフトを焼いてHP作りとアプリの説明のために謎春菜が出張する事を約束させて、
ジャイアンは「心の友よ!」と叫んで帰っていった。 
結局その日はう゛にゅうを見つける事は出来なかった。 
謎春菜は途中からジャイアンの家に着きっきりになってしまったし。 

次の日学校へ行くとスネ夫が帰りに家に寄らないかと誘ってきた。
ジャイアンの機嫌が良くなってスネ夫も上機嫌だ。
ドラえもんの言う通りだった。 
静香ちゃん、ジャイアン、のび太は連れだってスネ夫の家に行った。
どうせまた何か自慢されるのだろうが。 
見てよ!ボクホームページ作ったんだ!」 
スネ夫のホームページにはプラモの画像が所狭しと貼られてあり、
中央にはスネ夫の画像が貼られていた。 
のび太はまた従兄弟に作ってもらったのかな?と思ったが言わない事にした。
せっかくディアブロの件を忘れてくれたのだ。 
ははは!大したことねぇな!オレだってHPの一つや二つ持ってるんだぜ!」 
え?ホントに?」 
スネ夫は呆気にとられた顔をした。 
ホラここだよ。見て見ろよ!」 
『ジャイアン・ジャイ子のアーチストブラザーズ』 
そう書かれた題字の下に、
[ミュージシャン(兄)とコミックアーチスト(妹)どちらのコーナーがよろしいですか? ]
と書かれたリンクが貼ってある。 
ジャイ子とオレのページだ!」 

ページ内を巡ってみると両方のページに掲示板が備え付けてあり各の感想を書き込めるようになっている。 
ページ構成もスッキリしていて見やすい。 
さすがは謎春菜だ。そう思ったが黙っていた。 
ジャイ子の方は漫画が、オレの方はオリジナルの曲がmp3でダウンロードできるようになっている! 
 落とせる奴は是非落として聞いてくれよな!」 
するとスネ夫が話を誤魔化すように 
音楽落とすのは時間がかかるからとりあえず、ジャイ子ちゃんのページから見てみようか。」 
と言った。みんなもそれにもちろん賛同した。 
ジャイ子のページには綺麗に書かれた少女漫画が載せられていた。 
昨日出来杉の家に行ってスキャナで写してもらったんだ!」 
ジャイ子ちゃん上手ね〜」 
静香ちゃんの言葉はお世辞ではなかったと思う。 
絵も綺麗だし凄く丁寧に書かれている事が分かる。 
掲示板も見て見ようよ。何か書かれているかもよ。」 
掲示板を見ると昨日開いたとは思えない程沢山の書き込みがしてあった。 
謎春菜に頼んで沢山宣伝してもらったんだ。」 
ジャイアンがのび太に小声で言った。
道理で帰ってきたら謎春菜はすぐに寝込んでしまった。ずいぶん働かせたのだろう。 
掲示板の書き込みは全て褒め言葉であった。 
中には『既存の漫画の枠を出ていませんが』などと 
厳しい批評もあったがそれも好意的な意見の一部であった。 
凄いわねジャイ子ちゃん!」 
この人なんて同人誌作りに参加してもらえませんかとか誘ってるよ!」 
小学生とは思えませんなんて書き込みもあるね!」 
さすが我が妹だ!」 
HP作りを謎春菜に手伝ってもらったとはいえ漫画を書いたのはジャイ子の実力だ。のび太は感心した。 
掲示板での呼び名はすでにクリスチーネ「先生」だ。 
良し!それじゃあオレの掲示板も見てみよう!」 
みんなはドキッとした。 
それは、ジャイアン家でゆっくり…」 
スネ夫が止めようとしたにもかかわらずジャイアンは自分の掲示板へのリンクをクリックしてしまっていた。 
予想に反してジャイアンの掲示板にはジャイ子の掲示板を越える勢いで書き込みがしてあった。 
しかしその殆どが罵倒と呪詛の言葉であった。 
『こんなmp3アップしないで下さい!』 
『これネタですか?それにしても酷すぎます。気分が悪くなりました!』 
『妹さんの漫画は素晴らしいのに(涙)』 
『あの〜スピーカーからボエ〜としか聞こえてこなくなっちゃったんですけど、
 弁償してもらいたいんですけど!』 
『子供が泣きやみません』 
『公共の場にこの様な危ないものを置くのは』 
『死ね死ね死ね死ね死ね』 
『死ね死ね死ね死ね死ね』
 ツリー型の掲示板にはこんな見出しがずらっと並んでいた。 
みんな怖くてジャイアンの方を振り向くことが出来ないでいると突然ジャイアンが怒鳴りだした。 
なんだこいつら!みんなぶっ殺してやる!」 
そんなこと言っても誰が書いたかわからないし…」 
スネ夫が恐る恐る言う。 
とりあえず返信だ!やられたらやり返せだ!」 
無駄だと思うけどなぁ。」 
のび太がボソッと言うとジャイアンが鬼の形相をして睨み付けた。 
おまえ謎春菜に言ってこいつらの身元割り出せ! 
 オレが一人一人ぶっ飛ばしに行く!」 
ええ〜!?」 
と、とにかくボクは塾に行かなきゃいけないから、返信するなら家でやってね。」 
ジャイアンがnetに繋ぐほどスネ夫の電話代がかかるのだが、それよりもこの窮地をスネ夫は脱したいらしかった。 

家に帰ってドラえもんに事の次第を説明して、PCの電源をつけると謎春菜はまだ寝ていた。 
よっぽど疲れたのだろう。クリックすると 
ふぁ!今回の起動時間は28時間15分…ムニュ」 
と言ってまた寝てしまった。 
可哀想だが仕方がない。何度かクリックするとようやく目を覚ましてくれた。 
え〜?そんな事になっちゃったんですか?」 
それで掲示板を荒らし…
 荒らしたとは言い切れないけど文句を書いた奴の身元を洗い出せって…」 
そんな事、出来るけどやれませんよ〜」 
そうだよねぇ。」 
とりあえずジャイアンさんの掲示板見てみましょう。」 
掲示板はさらに荒れていた。
だがさっきと違うのはトピックに一つ一つジャイアンのレスが付いていたことだ。 
『ひどい歌ですねぇ。歌とは言えません。公害に近いです』 
↓うるせぇ!ぶっ飛ばすぞ! 
『気分が悪くなってご飯戻しちゃいました』 
↓オレと勝負しろ! 
『死んで下さい』 
↓おまえが死ね!いやオレがぶっ殺す! 
などなど内容は読まなくてもわかる様なレスであったが。 
ひどいことになっていますねぇ」 
でしょー」 
あ、あたしが紹介した以外にリンクが張られていますね。 
 ええと…巨大掲示板2ちゃんねる… 
 みんなここから流れて来るみたいです。」 
え?なんて紹介されてるの?」 
ここです。読んでみて下さい〜」 
ブラウザが開かれると2ちゃんねると言う掲示板が 
読み込まれた。そこにはこんなスレッドがあった。 

★★逆切れド音痴消防★★ 
1 名前:名無しさん 投稿日:2001/05/28(月) 16:58 
    この消防、自分のサイトで自分の歌をmp3でupして 
    みんなに聞いてもらおうとしてるんだけど 
    あまりの歌のひどさにみんなブチギレ(ワラ 
    掲示板に文句書いたら本人登場で荒れ荒れ。 
    一人一人にちゃんとレスしてるけど 
    逆切れもいいとこでみんな更にブチギレ(ワラ 
    http://www.geocities.co.jp/HeartLand-Sakura/**** 

2 名前:名無しさん 投稿日:2001/05/28(月) 17:02 
    ギャハハ ワラタ 

3 名前:七節さん 投稿日:2001/05/28(月) 17:02 
    ジャイアン萌え〜 

2 名前:名無しさん 投稿日:2001/05/28(月) 17:03 
    ジャイコ萌え。ハァハァ 
スレッドは現在300のレスをつけ常に掲示板の最上位置をとっていた。
ジャイアンのレスが事細かに転載され笑い物にされていた。 

これジャイアンに知らせてあげなよ!」 
そうですね。」 
謎春菜はそう言うとデスクトップの奥へと消えた。 
しかしすぐに帰ってきた。 
ジャイアンさんいいことを教えてくれたって、2ちゃんねるに殴り込むって…」 
」 
リロードしてみるとすでに2ちゃんねるにはジャイアンが登場していた。 
318 名前:じゃいあん 投稿日:2001/05/28(月) 17:35 
     てめぇら!いい加減にしやがれ! 

319 名前:名無しさん 投稿日:2001/05/28(月) 17:36 
     ↑本人? 

320 名前:名無しさん 投稿日:2001/05/28(月) 17:36 
     本人登場? 

321 名前:ななしさん 投稿日:2001/05/28(月) 17:37 
     マジ本人? 

322 名前:じゃいあん 投稿日:2001/05/28(月) 17:38 
     本人だよ!人の掲示板荒らすな!ぶっ飛ばすぞ!
あ〜あ〜」 
どうしようもない…みたいですね。」 
放っておこう。そのうち無駄だって気が付くよ。」 
ドラえもんは冷たいなぁ。」 
リロードすると罵倒合戦が始まっていた。 
330 名前:ナナシ 投稿日:2001/05/28(月) 17:40 
     あんなひどい歌をよく公表出来るね。氏ね。 
     恥ずかしくないのか? 

331 名前:ワライ 投稿日:2001/05/28(月) 17:40 
     オレも聞いたけどありゃ危険物だよ 

332 名前:じゃいあん 投稿日:2001/05/28(月) 17:41 
     てめえら隠れてないと何も出来ないくせに 
     人に文句言うな!ぶっ飛ばすぞ! 

333 名前:名無しさん 投稿日:2001/05/28(月) 17:41 
     ジャイアンの歌も良いかもと思う清原 

334 名前:ナナシ〜 投稿日:2001/05/28(月) 17:41 
     ジャイアソの母ですこの度はウチのジャイアソが 

335 名前:名無しさん 投稿日:2001/05/28(月) 17:42 
     妹だってきっと恥ずかしいだろ。おまえの歌(w 
多勢に無勢。どうもジャイアンは面白がられているようだ。 
どうしましょうかね?」 
ドラえもんの言うとおりかもね。そのうち諦めるよ。」 
そうだね。そう言えばさっきママがお使い頼みたいって言ってたぞ。」 
そっか。じゃあ行って来よう。」 
お使いに行って帰ってきて晩ご飯を食べて、
夜にまた2ちゃんねるに繋ぐとまだ言い争いを続けていた。 
822 名前:名無しさん 投稿日:2001/05/28(月) 20:10 
     君が怒るのも無理はないかもしれないけど 
     君の歌がひどいのは事実なのだから 
     それを指摘されて怒るのは良くないことだ。 
     そのぐらいの事は分かるだろう? 
     いくらリアル消防だと言っても。 

823 名前:じゃいあん 投稿日:2001/05/28(月) 20:11 
     誰もてめぇらに聞いてくれなんて頼んでないんだよ! 

824 名前:ななし 投稿日:2001/05/28(月) 20:12 
     HPには「みんな聞いて下さい。意見も書いてね。」 
     って書いてあるじゃねぇか。 

825 名前:名無しさん 投稿日:2001/05/28(月) 20:12 
     記念カキコ 

826 名前:じゃいあん 投稿日:2001/05/28(月) 20:13 
     本当にごめんなさい。HPは閉鎖します。 
     もう二度と歌ったりしません。 
     首つって氏にます。 

827 名前:じゃいあん 投稿日:2001/05/28(月) 20:14 
     おい偽物!お前ふざけんな! 

828 名前:じゃいあん 投稿日:2001/05/28(月) 20:15 
     お前が偽物だろう?
もう寝ようか?」 
なんか疲れたね。」 
あたしも疲れました〜」 

次の日ジャイアンは学校を休んだ。 
2,3日の間はジャイアンが登校してこなくても居ない方が静かで良いと 
安心していたのだが4日目になってさすがにのび太も不安になった。 
まさか本当に首つって死んでるのでは? 
ドラえもんに相談してみると 
そんなにショックだったのかなぁ?
 ジャイアン意外と繊細というかデリケートな部分があるからな。」 
などと言って余計にのび太を不安がらせる。 
謎春菜までもが 
ジャイアンさんあれ以来PCに触ってないみたいですねぇ…」 
と意味ありげに言うので更に不安は蓄積される。 
じゃあ、ボクお見舞いに行って来るよ!」 
そうだね。責任の一端はボクらにもある様だし。ん?あるかな?」 
ジャイアンさんの家に着いたらPCをNETに繋げてくださいよ。 
 あたしもお見舞いに行きますから。」 
謎春菜さんは優しいんだね。」 
あたしにも責任あるようですし。」 
う゛にゅうが居なくなってから謎春菜の挙動が心配されたが 
これと言って不具合は見られなかった。 
だが、暇を見つけてはう゛にゅうを探している様である。 
のび太はその事を知っていたがジャイアンにPCの事で 
難題を振りかけられた時に居てくれると心強いので 
是非、謎春菜には来てもらいたいと思った。 

ジャイアンの家に行くと、年中無休のはずの店は閉まっていた。 
あれえ?どうしたんだろう。」 
勝手口に回って見よう。」 
勝手口に回ってジャイアーンと呼びかけてみたが返事がない。 
留守なのだろうか。しかししばらくするとドアが開いた。 
「のび太君かい…」 
出てきたのはジャイアンの母であった。 
だがいつもの威勢の良さがまるでない。 
おばさん、どうしたんですか?」 
その質問には答えず、ジャイアンの母は大声で泣き始めた。 
剛が!タケシがー!」 
おばさんを落ち着かせ話を聞いてみるとあの事があった朝、 
ジャイアンを起こそうとしたがなかなか起きないので、腹を立てて頬を張ってみたが反応がない。 
それ以来ジャイアンは布団の中で意識が戻らないらしい。 
医者には診てもらったが別に異常はないらしい。 
のび太とドラえもんは驚いた。そんなにショックだったのか… 
ジャイアンの部屋に通してもらい、 
横になっているジャイアンを見ると、ただ寝ているようにしか見えなかった。 
だが奇妙な感じがした。気配がまるでないのだ。 
のび太はいつもジャイアンを恐れているため、小動物が危険を察知するがごとく、
間近にいるとジャイアンの気配をビリビリ感じた物だ。だがそれが全く感じられない。 
そこで寝ているのは、まるで抜け殻の様だ。 
これ寝てるんじゃないな。」 
ドラえもんもそれを感じていたらしくジャイアンの傍らに座ってしげしげと観察している。 
どうしちゃったんだろうね?」 
この状態どこかで見た事があるんだよな、う〜ん。」 
そう言ってのび太の顔をじろじろと見つめる。 
…そうだ!これタマシイムマシン使った時の状態だ。」 
ええ?魂だけ昔に返しちゃうあれ?」 
君は自分が行っちゃったから分からないだろうけど確かにこんな状態だった。
 その人の雰囲気がまるで無くなっちゃうんだ。
 君の場合は目を離せないなって言う危うさがストンと消え失せたよ。」 
じゃあ誰かがジャイアンの魂を過去へ送っちゃったの?」 
いやタマシイムマシンを使った状態に似ているのであって 
 そうじゃないと思うんだ。たぶん魂が抜けてる状態だね。」 
ええ!じゃあ死んでるの?」 
そうのび太が叫んだ瞬間、部屋の入り口からガチャン!と何かを落とした音がした。 
馬鹿。大声でそんな事言うな!」 
ドアの外でドタドタと誰かが走り去る足音がした。 
とにかくどうしてこんな事になったか調べてみよう。」 
タイムマシンで過去に戻るの?」 
いや、面倒だからタイムテレビを使おう。」 
ドラえもんはポケットから14インチ液晶テレビほどの大きさのモニタを出した。 
メモリを4日前にあわせて…」 
な、なんだか怖いね。」 
どうして?」 
お化けとか写ってたらどうする?貞子みたいな?」 
イヤな事言うなよ。」 
それでさ、ジャイアンの魂抜いた後でこっち見て言うんだよ。 
 カメラ目線でさぁ。『次はお前だぞ!』って。うぎゃー!」 
自分でビックリするなよ!」 
4日前の映像を見るとジャイアンはノートパソコンに向かっていた。 
怒り顔でブツブツつぶやきながら一心不乱にキーを叩いている。 
こ、こ、このモニタから出てくるんだよ。手が。ウギャー!」 
氏ね!」 
だがそんな物は出てこずにジャイアンの手がはたと止まった。 
そしてモニタに向かって何かわめいている。 
? 何言ってるんだろ?」 
あ、サウンドカード調子悪くて音でないんだった。」 
ダメじゃん!」 
と、その瞬間モニタ内のジャイアンはバタッと倒れた。 
何度かアングルを変えて見てみたがモニタに何が写っているのかは判明しなかった。
ちょうどジャイアンのでかい背中がじゃまなのだ。 
一体どうしたんだろう?」 
だから出たんだよー!あのノートパソコンに。」 
馬鹿な事言うなよ!」 
呪われてるんだって。それでジャイアンは…」 
じゃああのパソコン調べてみれば良いんだ。」 
や、やめなよ〜!」 
そんな呪いとかお化けとか非科学的な…」 
ドラえもんがノートパソコンを開けた時ドアが開いた。 
ウギャー!」 
やあ、スネ夫。君もお見舞いかい?」 
なんだ。スネ夫かー。」 
ジャイアンのお母さんに聞いたよ。意識不明なんだって?」 
そうなんだよ。それでこのノートパソコンが…」 
そうそう。意識がないなら必要ないもんね。返して貰おう。」 
いや、やめた方がいいよ!絶対やめな!」 
何でだよ?」 
ノ・ロ・ワ・レ・テ・ル・ン・ダ」 
こいつヴァカ?」 
スネ夫がドラえもんに尋ねたがドラえもんはそれを否定出来なかった。 

次の日からスネ夫が学校に来なかった。 

絶対呪われてるんだって!」 
う〜ん。」 
スネ夫の家に様子を見に行った帰り道での会話である。 
スネ夫の状態はまるっきりジャイアンと一緒。 
違いは母親がジャイアンの家より取り乱していたぐらいだ。 
ドラえもんは今日こそはあのノートパソコンを調べてやろうと思っていたのだが 
何故かスネ夫の部屋やアトリエには存在しなかった。 
鍵はあのパソコンに有るに違いないのだが。 
のび太のわめき声を無視しつつ思案を重ねていると出来杉に出会った。 
捜していたんだよ!静香ちゃんが大変なんだ!」 
話を聞いてみると静香ちゃんが突然倒れたらしい。 
母親が不在なので病院に電話しようと思ったが 
病気ではない様なのでドラえもんに相談したかったのだそうだ。 
静香ちゃんの家に行くとジャイアンやスネ夫と同じ症状。 
ベットに寝かせてあるがこれは出来杉の判断だろう。 
ふと机の上を見るとスネ夫のノートパソコンが置いてある。 
なんでこんな所にスネ夫の…」 
静香ちゃんのお父さんが百科事典のCDROMをお土産に買ってきて 
 くれたそうなんだけどWin用だったから借りてきたんだ。」 
じゃあこのパソコンをいじっている時に静香ちゃんは?」 
そうなんだ。」 
やっぱり呪われてるんだよー!」 
そんな事を話している時に静香ちゃんの母親が帰宅した。 
出来杉が事の次第を説明してとりあえず医者を呼ぶ事になったので一行は帰る事にした。 
このパソコン借りていって良いかな?」 
スネ夫君も意識不明な事だし調べて貰えるかな?」 
うん。」 
のび太はそんなパソコンを家に持って帰るのはイヤだったが 
静香ちゃんの事を考えると調べないわけにも行かない。 
家に帰って徹底的に調べさせよう。ドラえもんに。と思った。 

ドラえもんはそれこそHDDの隅から隅まで探し回ってみたが何も怪しい所は見つけられなかった。 
おかしいなぁ別に怪しい事無いぞ?」 
何処か見逃してるんじゃないの〜? 
 絶対書いてあるはずだよ! 
このファイルを開いたら何人かに同じファイルコピーして 
 開かせないと死ぬるぞ!とかさあ。」 
(何故こいつにはこんなに危機感がないのだろう? 
楽しんでいるとしか見えないのだが。 
いつもオレが助けているから自分が危機に見舞われる事は無いとか 
甘い事でも考えているのだろうか? 
それなら一度原子分解銃で殺してみるのも良いか? 
少し過去に戻ればこいつは存在してるんだし。 
死ぬ時の感覚・記憶だけを保存して置いて後で植え付ければ… )
フフフ…ヒヒヒャハウヒヒヒ 」
わあ!ドラえもんが呪われた!」 
はぁ?」 
だって画面見ながら突然笑い出すんだもん。 
 こんな時に不謹慎だぞ!」 
(オイオイ不謹慎なのはどっちだよ。 
やっぱりこいつは一回殺して、死ぬ時の記憶を…記憶を… )
保存だ!」 
え?え?なに?なに?」 
そうか!未来で一時期こんな症状が流行った事があった。 
何故忘れていたのだろう?ひどい所では町中の子供がみんなこんな風になったっけ。 
ドラえもんはまたノートパソコンをいじり始めた。 
何処かにシヨートカットがあるはずだ。どこだ? 
ドラえもんが捜していたシヨートカットは 
ダイヤルアップネットワークの中に隠してあった。 
見た目には普通のアイコンにしか見えない。 
だがリンク先は… 
やっぱりだ。」 
何か見つけたの?」 
これだよ。『PC革命バーチャルk」 
何なのそれ?」 
このソフトはね。当初人間の記憶をバックアップするために 
 作成された物だったんだ。 
 ところがバックアップを取ると本人が意識を失ってしまう。 
 だからコピーじゃなかったんだな。 
 どうしてそんな事になるのかは謎だけど、あるシステムエンジニアが言うには 
 『このソフトは記憶だけではなく魂に干渉してしまうために 
 本体、つまりハード側が抜け殻になってしまう。 
 BIOSを抜き取られている様な物だ。 
 コピーを取る様に設計されている筈だがどうやってもうまく行かない。 
 きっと魂という物は同じ次元に2つ存在してはいけない物なのだろう』 
 などと言っていた。その当時は気の利いたジヨークとしか取られなかった様だけどね。 
 このソフトを元に色々な物が発明された。 
 でもそれはもっと先の話なんだ。制御しきれなかったんだね。 
 22世紀にはクローンに魂を移し替える事も可能になったけど。 
 発明発表されてすぐにコピー品が出回った。 
 殺人に利用されてしまったりするから 
 厳しく取り締まられたけど恐ろしいクローンが出回ったんだ。」 
クローンって?」 
勝手に改造したソフトさ。バーチャルk。このソフトだよ。 
 『場茶毛』って隠語で日本でも大流行した。 
 でもこのソフトは不完全だったんだ。
 いや…完璧すぎたのかな?」 
一体なんなのさ?さっぱり分からないよ!」 
魂を取り出してね、PCに取り込んでPC内で活動できる。 
 それが魅力だったのさ。ゲームの中に自分自身として登場して遊べる。
 スキルのない奴でも自由にネットワークを歩き回ってハッキングだって出来る。」 
面白そうじゃない!」 
うん。最初の内はみんな大人しくゲームしたり人のPC覗いたりしていたんだ。
 そのうちにこれ専用のネットワークゲームもいくつか出来た。 
 これも市販のゲームの改造とかが殆どだったけど。 
 でもこのソフトは重大な欠陥を抱えていたんだよ。」 
何?」 
まず、入り込んだPCに不具合が出ると帰ってこられなくなる。 
 元はクラックソフトなんだ、かなりの確立で不具合が出たよ。 
 しかもフリーズしたりするとそれだけでダメになっちゃう。」 
ダメになっちゃうって?」 
人間は細胞が常に入れ替わる様に感情とか記憶とか 
 そう言った部分も常に累積・消去を繰り返して居るんだ。 
 寝ている時だって夢を見て立ち止まらない様にしている。 
 只のデータじゃないんだよ。生きて居るんだ。 
 だから活動を停止しちゃうと魂が死んじゃう。」 
ええ!?」 
もし復旧させて救助する事が出来たとしても 
 あまり長い時間、体に魂がないと帰れなくなっちゃう。 
 体は寝ているのと同じ状態なんだ。 
 つまり細胞とかは入れ替わっている。 
 うまくリンク出来なくなっちゃうんだよ。 
 点滴とかで体を持たせていてもダメなんだ。 
 仮死状態にする事も試されたけどうまく行かなかった。 
 これらが解決されたのはだいぶ後の事だよ。」 
じゃあ、ジャイアンやスネ夫や静香ちゃんは…」 
タイムリミットがある。個人差があるけどあんまり長くは…」 
そ、そんなぁ!」 
それにPCの中で大人しくして居ればいいけど 
 もし怪我でもしていたら… 
…していたら?」 
上手く体に帰れたとしても障害者になるよ。」 
そ、それは大けがだろ?」 
違うんだ。それがこのソフトが完璧すぎたって言われるもう一つの理由なんだけど、
 怪我をするとね、本当に怪我をした様に書き換えられちゃう。 
 しかもそれを神経系のDNAに書き込んじゃう物だから、怪我した部分が直らない。一生そのまま。 
 見た目には最初何ともないんだけどとても痛い。 
 その内患部が壊死してくる。腐っちゃうんだよ。 
 ただ上書きされた状態だから組織は治ろうとしない。」 
でも、でも、コンピューターの中なんて安全だろ?」 
不良クラスタの崖。灼熱のファイアーウォール。 
 立ち寄ったPCがハングして凍り付くかも知れない。 
 突然上書きされて押しつぶされるかも知れない。 
 一番怖いのはウィルスさ。かかったらもうお終い。 
 突然電源切られただけでもアウトなんだよ!」 
それじゃあ」 
ゲームなんか見つけて気軽に参戦して見ろ。 
 ダメージは本当のダメージになって体に降りかかる。」 
このパソコン電源切っちゃってるじゃないか!」 
いや、ここには居ないみたいだよ。」 
じゃあ一体どこに〜?」 
このシヨートカットの先にさ。」 
」 
誰かがこのPCに仕掛けたんだよ。おそらくジャイアンがネットしている時にだろうね。 
 次回からはネットに繋いだ瞬間に起動する様になっていたよ。」 
でもスネ夫はこれをいじっている時じゃ…」 
そこは謎なんだけどね。」 
静香ちゃんは?」 
百科事典ソフトを見てみたら常に最新情報をネットで公開するサービスがついてた。 
 おそらくそれをいじったんだろうね。」 
一体誰がこんな!」 
その時のび太のPCが起動した。 
それやったの、う゛にゅうに間違いないみたいです〜」 
謎春菜が半泣きしながら言った。 

ドラえもんは光速船が投げ売りされている過去にまで遡って 
一個一万円で大量に購入し秋葉原にある、
店内が狭くて臭くて店員の態度が悪いことで有名な中古ゲーム店に持ち込んで店員を困らせ、
せしめた金でどら焼きを買い込んでウハウハしている夢を見ている時に 
のび太にゆり起こされたため非常に機嫌が悪かった。 
そろそろ交代の時間だそうだ。 
二人は謎春菜の帰りを待っていた。 
どちらかが起きていなくてはいけないのは、
彼女の仕様的にユーザーを起こしたり仕事の邪魔をしたり出来ないようになっているためだ。 
設定で変えられないのかと聞くとAIの根幹に関わるものなのでだめだと言う。 
そういった役目はう゛にゅうに一任されているらしい。 
謎春菜によればPC革命はう゛にゅうが仕掛けた事に間違いないようだ。 
ショートカットのリンク先は転送URLになっており、 
その転送サービスはすでに登録を解除されてしまっていた。 
恐らくその先のサーバにCGIとしてブラウザから起動が出来るように設置されていたのであろう。 
そんな事が出来るのはう゛にゅうだけだ。 
タイムプロキシがインストールしてあるマシンがここにあるので、
未来からのハッキングも予想されたが状況的にはう゛にゅうが一番怪しいであろう。 
しかし一体なぜそんな事を? 
ジャイアンの一件だけが意図的でその後の二人は、偶発的に起こってしまった事件なのだろうか? 
謎は深まるばかりだ。 
とにかくう゛にゅうの居場所がわかれば全てがわかるに違いない。
そこへ謎春菜が帰ってきた。 
見つかった!?」 
どらえもんは開口一番尋ねたが謎春菜はただ首を横に振った。 
ダメですぅ。 
 元々私の権限では捜索できる範囲が狭いんですよぉ。 
 ただの便利ツールですからねぇ。」 
ため息をつきながら説明する。 
AIが自分自信を卑下することは滅多にないことだ。 
人間や他の生物と違ってプログラムには自己進化能力を与えられているものの 
自己の複製を作成して種族保存を図る能力は与えられていない。
それが与えられているのは一部の違法ソフト、そうウィルスだけだ。 
ウィルスを見ていればわかるようにそこいら中がそのプログラムで埋め尽くされてしまうからだ。 
その代わり防御能力や自己保存能力は必要以上に装備されている。 
自己をデータで理論武装し存在意義を確認する作業が、
子孫繁栄と言った目的・命題のない人工知能には最優先の自己安定措置なのだ。 
もちろん反省や自嘲も自己を進化成長させる大切なファクターだ。
だが自分のアイデンティティに関わることは極力触れない様に気を使う。 
オレも『役立たずのロボット』と自分を卑下することはある。 
だが『どうせ子育てロボット』などと言う自分の根本に関わることは言えない。 
成長に限界を観てはいけないのだ。 
そんな事を口にしてしまう謎春菜は自分の無力さに苛立ち焦っても居るのであろう。 
相方とはいえRead meを読めばう゛にゅうはいわば半身だ。 
人間に置き変えて言えば『就寝中に夢遊病で勝手に悪さをした。』とか 
『二重人格が現れて悪さをした』とか 
『ドッペルゲンガーが自分の預かり知らぬ所で殺人を犯した』 
ぐらいの意味を持つにちがいない。 

転送サービスが置いてあるサ−バを探って 
 過去のリンク先を探るのも権限外なのかい?」 
あそこは重点的に調べてみたのですが 
 ここ最近に登録したユーザのログは、削除されていますねぇ。 
 これもう゛にゅうの仕業に違いないでしょうけど。」 
万事窮すかー」 
ただ…」 
ただ?」 
pc革命が置けるほどのマシンはそう無いでしょうし、 
 しかもオンラインで動作させるとなると 
 よほどのパフォーマンスが要求されると思うんですよ。 
 回線の太さも尋常じゃないでしょうし。 
 ここ最近で大きなデータのやり取りがあった所を 
 調べているんですけどねこれが意外に多くて。」 
人間一人分なんてデータ相当な大きさだろう? 
 そんな物をインターネットでやり取りしているサーバなんてそうはないだろう?」 
ところがそうでもないんですよ。 
 どちらにしろパケットに分割してのやり取りでしょうし 
 連続した大きなデータだけを探すだけではダメな様でして…」 
一体みんな何をそんなに?」 
違法ファイルや動画データが多いようですねぇ」 
またしてもWarezかー」 
ソフト一本とかなら見分けもつくんですけど 
 一遍に何本もやり取りされると内容を観てみないとわからないですぅ。 
 調べに行くと大抵FTPサーバなので 
 またかって思うのですけどCGIとして稼動させてデータだけFTPかもしれませんし。」 
困ったねぇ」 
困りましたねぇ。でももうちょっと探ってみますね。」 
休まなくて大丈夫なの?」 
リミッターを解除するパッチを見つけてきて、あてましたんで大丈夫ですよ。」 
ええ?そんな事して大丈夫なの?」 
あんまり長時間はまずいでしょうけどパッチ当てる前のバックアップもとりましたし。」 
けど自分の改造やアップデートは勝手にやるとまずいんじゃなかった? 
 それより自分に自分でパッチ当てたり出来るの?」 
のび太さんの許可を頂いてパッチ当てもバックアップもして貰いました。」 
何のことだかわかってた? 
 それよりもバックアップちゃんと取れているの?」 
今よりも強くなるって説明したら納得してくださいましたよ。
 バックアップも確認しました。ちゃんと取れていましたよ。 
 一度終了された状態にならなければいけないので不安でしたが。 
 のび太さんはドラえもんさんが考えているよりずっと賢いですよ。」 
え〜?」 
人より理解するのに時間がかかるだけなんですよ。 
 でもきちんと理解できればその分皆より忘れないでしょうし、理解も深いはずですよ。」 
そ、そうなのかなぁ?買いかぶりじゃないかな?」 
あせらずに…ってそれは私もですね。」 
うん。頼りにしているよ。」 
では寝ていてください、パッチを当てたおかげでユーザを起こす権限も貰えましたし。」 
そっか。じゃあお言葉に甘えて。」 
謎春菜はデスクトップの奥へと消えていった。 
頼りにしていると言われたときの嬉しそうな顔がひどくどらえもんの心に残った。 
オレもこの時代に来て、のび太に最初に頼りにしていると言われたときは嬉しかった。 
何時の間にか慣れっこになってしまい、そのうちにウザくなった。 
あまりの成長の無さにいらついたりもした。 
だがオレのほうにも問題があったのではなかろうか? 
そんな事を考えながらのび太の方を見ると、のび太は起きていた。 
さっきの話し聞いてたの?」 
うん。途中から。」 
そっか。」 
謎春菜さん、大丈夫かな?」 
無理はしていないと思うよ。 
 AIは自分を傷つけるようには出来ていないから。」 
早く皆を見つけて助け出さなきゃね。」 
うん。」 
今まで気がつかなかったけどこいつは成長していたんだな。 
思いやりと言う面では誰よりも。 
さあ、せっかく寝る時間を用意してくれたんだ。 
 探し当てたら長い作業になるから体力を温存して置こう。」 
昼寝ともなれば3秒で眠りにつく特技を持つのび太であったがなかなか寝付けなかった。 
ドラえもんはさっさと寝てしまっている。 
ロボットならではのドライさであろうか? 
静香ちゃんやスネ夫やジャイアンを発見したとして果たして五体満足に救出出来るのだろうか? 
どうやって救出するのだろう? 
あれこれ怖い想像をしているとPCのスクリーンセーバが途切れ謎春菜が顔を出した。 
あら、起きてたんですか?」 
うん、どうも寝付けなくてね。せっかく時間作ってくれたのにゴメン。」 
そう答えたのはのび太ではなくドラえもんの方だった。 
のび太は少し反省した。 

見つけられなかったわけです。 
 パッチ当てた私にも権限外、つまりセキュリティ 
 ブロックされている場所からのアクセスだったみたいです。」 
見つけたの!?」 
ええ、確認できては居ませんが 
 おそらく間違いないでしょう。」 
君の権限外って…」 
TCPじゃなくてUDPが使われていたのが盲点でした。 
 回線の連続性に信頼があるからって人体データに無茶な事してます。」 
一体どこなの?」 
エシュロン…ってご存じですか?」 
エ、エシュロン〜!?」 
な、何なの?教えて?」 
私が説明するよりNET上にも怪文書の類を含めて沢山の資料が有りますから読んでみてください。」 
こんな時代になってもまだ活動していたのか?」 
そのようですね。サーバおよび本部施設は、太平洋上の小島に極秘裏に建設されているようです。 
 回線は衛生、静止衛星、成層圏静止飛行船による成層圏プラットフォーム、海底ケーブルの4回線を使っています。 
 小型の原子力発電システムまで洋上に浮かべて大規模な情報都市を形作っています。 
 衛生に対するステルス施設もあるようで静止衛星からはマイクロウェーブまで発射されているみたいですね。 
 あ、これはこの島を設計したと思われるマイクロソフトの子会社から調べました〜。」 
そんな所…手出しできないじゃないか!」 
そうですよね。困りましたねぇ。 
 でも一つだけ方法があります。」 
それしかないかな?」 
ドラえもんさんの道具を使って直接施設に乗り込むことは出来ますが命の保証は出来ませんよぉ」 
物理的危害が加わらないだけあっちの方がマシか…」 
ねぇ!いったい何の話なの?」 
のび太はエシュロンについての文献を読み漁った物の殆ど理解が出来ずにいた所で 
ドラえもんたちが深刻そうに話をしているので検索作業を打ち切った。 
解説文から読みとれたのはエシュロンが怪しげで悪い組織だと言うことぐらいだった。 
みんなを助けるためにはボクらもデータ化されないとダメなんだよ、って話。」 
何だ。難しく言わないで最初からそう言ってよ〜 …ってボクらもPC革命を使うって事!?」 
そう言うこと。」 
だって、と〜っても危険なんじゃないの?」 
だからボクだけでいいよ。」 
へ?」 
ボクは元々ロボットなんだからdate化は当たり前の事だし。慣れてるからね。」 
でも、ドラえもんさんのプログラム言語は第4世代超高級言語ですからそのままではPCに載りませんよ?」 
分かってる。PC革命を使うよ。」 
そしたらドラえもんだってあぶないだろ?」 
でも慣れてるし。ボクにも責任有るしね。」 
………ボクも行く。」 
へ?」 
ボクも行くよ!元はと言えばボクがPC出してくれって言ったのが原因だし。ボクも行く!」 
PCの中がどれだけ危険かについては話したよね?」 
PC革命がどれだけ危険かも聞いたさ!」 
それでも行くの?」 
それでも行く!」 
そっか。それじゃ謎春菜、道案内頼めるかな?」 
はいっ!」 
あ、それとPC革命用意できるかな?」 
もうご用意してあります〜」 
用意がいいね。」 
安心してください。皆さん絶対無事に元に戻して見せます。」 
じゃあのび太君から先に逝きな。説明してあげるから。」 
イヤな言い方するなよ。」 
そのアイコンをクリックして…そのダイアログはYES… 
 あ、それはNOね。生年月日とかは適当で良いよ。 
 うん。それはIDだからかぶらないように… 
 nobiだとかぶるみたいだね。…そのフォームは半角で。 
 本当にデータ化してよろしいですか?って聞いてるけど。 
 OKならOKのボタンを…後はマウスを通して 
 勝手に読みとってくれるから、それが売りだからね。 
 …じ…ボクも…すぐ…に…い……… 

何かが通り過ぎていくのを感じる。 
それも、傍らを、ではなく自分の体の中を通り過ぎていく。 
その正体を確かめようとしたが目を開けられない。 
いや、それは正確な描写ではないだろう。 
今、自分の中には「暗闇」すら存在しない。 
視覚が無いのだ。 
それがどんな状態であるのかを説明するのは恐らく盲目の者にも無理であろう。 
体がカーブを切った。 
それもGを感じて思った事ではなく自らを通り過ぎる「何か」のスピードや角度、 
そして翻弄される体を通じて確認しただけだ。 
こんな状態に陥ってから一体どれぐらいの時間がたつのだろう? 
体を突き抜ける「それ」からかなりのスピードで進んでいる事が予想出来る。 
進んでいる?本当に進んでいるのだろうか? 
自分は一定の場所に留まっていて「何か」が動いているのかもしれない。 
そう考えだしたらとても怖くなってきた。 
のび太は叫びそうになったがそれも出来なかった。 
口も耳も、何より音そのものが無かったからだ。 
パニックになってもがいてみるがもがくための手足も存在しない。 
いつか見た事がある夢の様に手足の感覚はまるで答えてくれないのだ。 
だがその刹那にのび太は暗闇を発見した。 
視覚を取り戻したのだ。 
ただの暗闇だがどれほど懐かしく感じたであろう。 
暗闇はだんだんと瞼の裏へ変わっていった。 
残像の様な物を見つける事も出来た。 
懐かしさと安堵感にそれを注視していると 
ため息がもれた。 
ため息!試しに深呼吸をしてみる。 
出来る。口が開き、横隔膜が動き肺が蠕動する。 
だか喉や気管を通るいつもの乾いた気体の感覚は 
まるで無い。だがそれが当然かの様に苦しくはない。 
ゆっくりといつもの要領で喉を震わせてみる。 
声は出せるのだろうか? 
喉は震え、その振動は確かに首や胸に感じる。 
だが耳を通してその音は聞き取れなかった。 
しかし脳が直接震えるようにして自分の声が聞こえた。 
その聞き慣れない声に驚いていると瞼の裏が次第に白くなってきた。 
光だ。 
気が付いてみると自分を絶えず貫き続けていた 
「何か」が途絶えていた。 
もう移動していないのだろうか? 
瞼の裏の白さは一定の光量まで行って止まった。 
再び感覚のない穴蔵に放り込まれたような恐怖を感じたが先ほどの無感覚とは違い 
無音、無臭、無味、無重を感じる。 
目を開けても良いのだろうか? 
かくれんぼをした時のように誰かに尋ねたかった。 
『もう良いかい?』 
誰も答えてくれなかったら? 
ひょっとしたら自分の頭の中にだけ響いて外には響いていないのかも。 
一番良いのは目を開けてみる事だ。 
学校の教科書で読んだ事がある「杜子春」の話を思い出す。 
片目だけ、恐る恐る薄目を開けてみる。 
すると対面にはドラえもんと謎春菜が不思議そうな顔をしてのび太の顔をのぞき込んでいた。 
何してんの?もう行くよ?」 
ビックリして両目を開くとのび太は地面に立ち謎春菜、ドラえもんと向き合っていた。 
そしてそれを認識したとたんに自重を感じてその場に尻餅を付いた。 
こっちに着いたらすでにのび太君は居て無事に着いたなとか思ったら 
 目をつぶってアホ面してボーっとしてるからヤバイ、転送失敗か!って焦ってたら 
 薄目開けてこっちを伺ってるから馬鹿にしてるのかと思ったよ。」 
ア、アイテテテ。なんだ?体が急に 重くなった。」 
仮想空間に慣れていない方は視覚で 
 状況を認識してから体感覚を思い出すので 
 そう言った状態になるそうですよ〜」 
あ、謎春菜さん。あはは実物は可愛いんだねー!」 
そう言いながら立ち上がった。 
だいぶ感覚が慣れてきた。 
照れますよぉ。もっとも実物って訳じゃないんですけど〜」 
画面で見た時は可愛い漫画調の絵だな、と言ったぐらいの見方だったのだが 
等身大を間近で見ると理想に近い可憐な美少女だったのである。 
あ、あたしは人様に描かれた物ですから、人間の理想に近い容姿をしているのは当たり前の事でしてぇ…」 
いやいやそれにしてもかなり…萌え〜」 
のび太は品定めするように謎春菜をジロジロと眺めた。
するとドラえもんに後ろからいきなり殴られた。 
な、何するんだよ!」 
まだこちらの世界に来てあまり慣れていないダイレクトな痛みという感覚にたじろいでいると 
そんな事してる場合じゃないだろ!? 
 急がないと手遅れになっちゃうんだぞ!」 
そうだ。急がなくちゃ!」 
しかしドラえもんは自らの怒りに不思議な感覚を覚えた。 
確かに急がなくちゃいけないのは事実だがそれよりものび太の行動に腹が立ったのだ。 
何か大事な物を汚されているような。 
ひょっとして、オレ謎春菜に恋しちゃったのか? 
そんなヴァカな。でものび太じゃないけど謎春菜…萌え。 
で、これからどうするの?具体的に。」 
謎春菜に道案内を頼むしか無いなぁ」 
わかりました。お任せ下さい! 
 …ですが、本来ならお二方ともすでにデータ化が済んでいるので同じHDD内でしたら 
 瞬時に移動が出来るはずなのですが、まだこの世界の理に 慣れていらっしゃらないでしょうし 
 しばらく歩きながら身体感覚に慣れて頂いてついでに色々説明しますから、ゆっくり行きましょう。 
 慣れてしまえば目的地まではすぐでしょうし、そんなに焦る必要もありませんよ。」 
そうか、じゃあ頼むよ。」 
しかし…広いねぇ」 
のび太は周りを見渡して言った。 
何もない空間が地平の彼方まで広がり、
所々に建造物なのかただの起伏なのか分からない物がポツポツと見受けられる。 
250GBありますからねぇ」 
とりあえず最初はどこに向かうの?」 
Windowsって建物の中にTCP/IPセンターがありますのでそこに行きましょう。」 
そのTCP/IPセンターってのは何?」 
私たちは今高レイヤーに居るのでこのままではネットワークに乗って 
 他のマシンに移動することが出来ないんですよ。 
 だからTCP/IPセンターに行ってもっと下層に乗れるようなデータ化をして貰うんです。」 
???」 
逝って見りゃわかるさ。」 
イヤな言い方するなって。」 
さっきは量子転送だったからまだ良かったかも知れないけど 
 今度はノイマン型で原始的な電気波形にまで変換されるから、もっと涅槃を味わえるよ。 
 まさに逝って良し!」 
???…まぁいいや。 
 そ、それにしても広いねー」 
謎春菜がこまめにデフラグをしてくれているからここまで整地されているけど 
 放置してあるHDDなんて歩けたモンじゃないんだろうね。」 
そうでしょうねぇ。スキャンディスクもマメにやってますから不良クラスタも心配ないですよ。」 
ありがたいよ。一家に一台謎春菜だね。」 
そんなに誉めないでください〜」 
ドラえもんならともかく謎春菜さんに『一台』とは失礼だぞ。」 
オイオイ、ボクには失礼じゃないのか?」 
あたしはドラえもんさんみたいに本当のAIではないんですよ。 
 ただ膨大なデータベースから受け答えをしているだけなんです。 
 だから一台でも良いんですよぉ」 
えー?だってドラえもんより頼りになるじゃない。」 
君、圧縮分割偽装かけてネッタクにUPして二度と元に戻せないようにしてあげようか?」 

さて、そろそろ体の感覚に慣れてきましたか?」 
うん。でもこれだけ歩いているのに全然疲れないんだけど?」 
いい所に気が付きましたね、のび太さん。 
 では、ちょっとイメージしてください。 
 今まで歩いた距離と自分の体力。 
 現実世界ではどうなっていますか?」 
のび太はヘトヘトに疲れていて足が棒になり 
”もう歩けないよ〜”などと弱音を吐いている自分を想像した。
その途端、体が重くなり足がガクガクしだし、前に進めなくなった。 
もう歩けないよ〜」 
それがこの世界のルールです。 
 何よりものび太さん自身の観念、イメージが 
 のび太さん自身を形作り、存在させています。 
 さぁ、今度は全然疲れていない自分を想像してください。」 
のび太は一生懸命想像してみた。 
全然歩いてない。全然疲れてない。 
…ダメみたい。」 
思いこみ強いからな。 
 その上根に持つタイプだし。 
 物忘れは激しいのに発揮できないかー」 
ドラえもん、こっちに来てから口悪いなぁ」 
そう?データ化のせいでより率直になっているかも。」 
しょうがないですね。ではあたしがのび太さんの疲れを癒してあげますぅ」 
謎春菜はのび太の足の上に手をかざして目を閉じて念じて見せた。 
ホントだ!もう全然疲れてないよ!」 
のび太は立ち上がり駆け回って見せた。 
あたしは何もしてませんよ。暗示を掛けただけですぅ」 
謎春菜が笑いながら言うとのび太は急に立ち止まりぐずり始めた。 
もう歩けないよ〜」 
氏ね!」 
とにかくここは観念の世界なので確固としたイメージさえ出来上がれば 
 空も飛べますし瞬間移動も出来ます。 
 私たちプログラムには最初からその観念が植え付けてありますけど 
 マスターユーザーであるあなた方には訓練が必要です。 
 常識や感覚にとらわれない強いイメージがあれば 
 私たちプログラムを凌ぐ強い力を発揮できるはずです。」 
そんなこと言われてもなぁ」 
ドラえもんさんはもう出来ますよね?」 
え?うん、試してみるよ。」 
ドラえもんが目を閉じ何かを念じると 
スーッと宙に浮いた。 
わ!尊師?」 
ドラえもんさんはもちろんプログラムですから楽なはずです。
 でも実際に体を制御しているドライバ類も組み込んであるので 
 体感覚的に心配でしたが、流石ですねぇ」 
いやいや、タケコプターをイメージしただけだよ。」 
そうだ!タケコプター出してよ。 
 そうすれば無理なくイメージ湧くし楽に飛べるはずだよ!」 
ええ?そんな事しなくても飛べるだろ? 
 普段使っている時のことを思い出せば良いんだから。五感の記憶だよ。 
 ほら、イメージして! 
 空を飛ぶぞ!空を飛ぶぞ!空を飛ぶぞ!空を飛ぶぞ!」 
そ、尊師!?」 
想像力のないやつだなぁ。 
 ロボットに想像力で負けてたらお終いだぞ?」 
ボクは常識的なんだよ!」 
しょうがないなぁ…ハイ!タケコプ…あれ?あれあれあれ?」 
どうしたの?」 
ポケットが、四次元ポケットがない!」 
ええー!?」 
あのー、ここはさっきも説明した通り観念の世界なので 
 ポケットの中身、成り立ち、機構、全てを把握した上で
 イメージできないと自信の体以外の物は具現化できませんよ?」 
えー?そうなの? 
 じゃあボクの服は?最初から着ていたけど。」 
それはのび太さんがイメージしたんですよ。 
 普段から着ているから簡単にイメージでき…! 
 勘弁してください〜(;´Д`)」 
謎春菜が説明している途中でのび太は素っ裸になってしまったのだ。 
そんなのび太を無視してドラえもんは
さすがに全ての秘密道具を観念化するのは 
 無理だけど使ったことがある道具なら具現化できるかな?」 
普段使い慣れている道具でしたら出来ると思いますよ。 
 もっとも具現化の必要もない筈なんですが。」 
このままじゃ空を飛ぶことどころかあの思いこみの強いヴァカの裸を 
 見続けなければいけないから服とタケコプターだけ具現化してみるよ。」 
文字通り想像力のないあたしには具現化は無理なのでお願いしますぅ」 
ドラえもんが念じると空中にのび太の服とタケコプターが出現した。 
ありがとー!…あれ?何だよこのダサイ服は?」 
はぁ?いつもの君の服ジャンか!」 
シャツのボタンの数が違うし黄色も薄いよ!」 
氏ね!」 
謎春菜はのび太のメガネが消えてしまわないことに 
疑問を抱いたが言うと面倒なことになるので黙って置いた。 
(でも、なんか、のび太さんの… 
 ネット巡ってて見ちゃった男の人のアレとちょっと違うんだな。
 イメージしきれてないのかな? 
 でもこれも面倒な事になりそうだから黙っておこう。) 

一行は飛行感覚に慣れるためにしばらく空中を移動する事にした。 
ドラえもんは、途中で黙ってのび太のタケコプターを消したが 
のび太は気が付かず飛び続けたので安心した。 
(アレだな、自転車の練習と一緒だな) 
しばらく飛び続けると、いくつかの建物が見えてきた。 
地上に降り立つとそこは丸の内のオフィス街の様に 
幾つかの大きな建物が建ち並んでいた。 
ただ、既存のオフィス街と決定的に違うのは 
建物と建物の間隔が異様に広い事と 
その建物の周りに人の気配がまるで感じられない所だ。 
このビル、大きいなぁ」 
これはフォトシヨップですね。大きいですよ。」 
隣は?」 
一部分繋がっていますよね。イラストレーターです。」 
中には誰もいないの?」 
居ますけどわかりやすく言えば寝ている状態ですね。 
 起動すると作業にも因りますけどフル稼働し始めますよ。」 
誰かが作業を始めるって事?」 
本当は違うのですけど、PC革命は馴染みやすいように 
 作業工程を擬人化して見せてくれるみたいですね。」 
へー見てみたいなー」 
実はこことは別の場所に工場区域の様な作業場が 
 あるんですけど、そこは凄いですよー」 
メモリの事かな?」 
さすがドラえもんさん!その通りですぅ」 
見てみたいけど急がないとね。」 
そうですね、TCP/IPセンターへ行きましょう。」 
のび太達はまた空を飛んでTCP/IPセンターを目指した。 
この世界にすっかり慣れたようでタケコプターが 
無くてものび太は楽に空に飛び立った。 
でもさー。こうやって行動してても全然体に危険を感じないんだけど 
 本当にこのソフトは危険なの?」 
こうやって移動しているだけでも 
 かなり危険な事をしていると思った方がいいよ。」 
ええ!?どうして?」 
HDD内の移動は物理的な移動ではなく概念的に電気信号を移動させているわけですが 
 それでもシンクロが狂えばマスターかコピーが壊れる恐れもあるわけでしてぇ 
 お二人のような大きなデータを例え内部GUI的にだとしても移動させれば 
 HDDのクラッシュやメモリのリブートCPUの熱暴走は避けられない問題だと 
 ドラえもんさんは言いたいのですよね?」 
何言ってるかさっぱり分からないんだけど。」 
つまりボクらはデータの一部分とはいえ 
 頻繁にカットアンドペーストを繰り返しているんだよ。 
 C&Pって言っても内部的にはコピーな事に変わりはないわけで、
 一瞬前の自分は絶えず消去されているのさ。」 
ふーん。でもそれって現実の世界と変わらないじゃない。」 
どうして?」 
過ぎ去った時間は元に戻せないって事でしょ?」 
う。それはそうだけど…」 
ドラえもんは未来の価値観、ロボットの価値観では 
のび太の時代の人間の精神的逞しさを計り知れないと感じた。 
もしかしたらこんなヤツが何も気が付かずに歴史を動かしているのかも知れない。 

さあ、あそこがwindowsですよ!」 
目の前に、文字通り立ちふさがったビルはあまりにも巨大だがシンプルでいて 
内部の構造の複雑さを外観の『窓』から見て取れた。 
おおきいね…」 
コレは2000バージヨンですからまだましですよぉ。 
 スネ夫さんのマシンとか見てきましたけどwin98とかMEなんかは地下に 
 Dosなんてのもありましたし。」 
で、このビルの中にそのTPC/ICセンターがあるんだね?」 
のび太さんあまりにベタすぎて つっこめないですぅ(;´Д`)」 
ビルに入ると大量のビルが居た。 
コレ誰?」 
ははぁ、こういう表示になるのか。」 
設定で変えられるようですけど 
 静香ちゃんのMacにはジーパンMハゲのおっさんが一杯居ましたよ。
 TCP/IPセンターはこの階にあります。すぐですから着いてきてください。」 
謎春菜の後について歩くと廊下には様々なプラカードを持ったメガネの外人がたむろしていた。 
あの人達は?」 
win2kになってから出番が少ないので暇しているみたいですねぇ」 
」 
見るとプラカードには 
『…のページ違反です』 
『〜なため強制終了…』 
『windowsを正しく終了させなかった…』 
などと書かれている。 
PC革命を使ってたいていの人が最初にやる事はあの人達をぶん殴る事だそうですよー」 
センターに着くと謎春菜は受付を済ませてくるので外で待っているようにと二人に言った。 
中を覗いてみると思ったより小さい窓口にやはり同じ顔をしたメガネ外人が3人座っていた。 
見ていると何だかもめているようだ。 
何で許可して貰えないんですか?」 
「仕様です。」 
いつも私なんて簡単に通して貰えるじゃないですかー?」 
「そのような前例は弊社にございません。 
 つきましては以下のアドレスへ行くかこのメールアドレスまで連絡を…」 
どうしたの?」 
エシュロンまでってIP渡したら拒否されたんですぅ」 
「仕様です。」 
分かったよ。君らフォーマットしてLINUX入れよう。」 
そうドラえもんが言うと三人はとっさに立ち上がり 
「失礼いたしました。お通り下さい。」 

でもさぁ、エシュロンなんて直接乗り込んでも大丈夫なの?」 
あそこは『来るデータ拒まず』らしいですからねぇ」 
秘密の機関なくせに?」 
そのかわりあそこから出る方が難しいと思われますょ」 
そうなんだー。みんな大丈夫かなぁ?」 
いわば世界中のwebデータ、メールの検閲をしていますし 
 そのほとんどをキャッシュとしてため込んでいるようですし。」 
そんな事出来るの?」 
もうテラなんて前世紀中に越えちゃって今じゃペタ単位らしいですよ。
 もっともhtmlだけならgoogleだって同じ事やっていますし 
 民間であれだけ出来るんなら国レベル、しかも諜報機関やら軍が絡んでいれば 
 予算は青天井でしょうし、余裕でしょうねー」 
ううう、捜すの大変そうだなぁ…」 
大丈夫ですよ。サーバは特定できていますしぃ」 

謎春菜に案内されて行った先には巨大な穴が空いていた。 
底を見ても何もない。ただの巨大な『穴』だ。 
ここに飛び降りれば一気に物理層まで 
 変換されつつ行き着きますから後は流れに任せるだけです。
 そうそう、切符を渡しますね。これ、頭に巻いてください。」 
飛び降りるの?コレを?」 
イメージですよ、イメージ。 
 本当は色んな手順を経て電気信号にまで変換されて転送されるんです。」 
それにしたって…」 
のび太が穴を覗いているとドラえもんが後ろから無言で突き落とした。 
気が付くとのび太は何もない空間に立っていた。 
足下にはぼんやりと光るワイヤーフレームの 
地面がある物の、それは遙か先まで四方に続き見渡す限り同じ景色が続く。 
それを認識した途端足がすくんで動けなくなった。 
広所恐怖症というのがあればそれだろう。 
そしてだんだんと自分が何者であるのか分からなくなってきた。 
傍らに物や、音、においがあって初めて自分を認識する事が出来る事実を知った。 
かろうじて何かに自分を預けて立っていると言う事象だけがのび太を見た目にも精神的にも支えていた。 
聞こえますかー?」 
謎春菜さんだ! 
ここにいるよ!何処にいるの?」 
すぐそばとも言えますし、 
 ずっと遠くだとも言えます。 
 どうやらここはフォーマットが違うようですねぇ 
 ひょっとしたら暗号化された空間なのかも…」 
どうすればいいの!?」 
とりあえずじっとしてろ!」 
ドラえもん! 
謎春菜にもボクらは見えないの?」 
ええ、身動きとれません(;´Д`)」 
おい!その声はのび太とドラえもんか!?」 
暗闇の中で聞き慣れた声がした。 
ジャイアン!?」 
やっぱりそうか!おい、スネ夫! 
 静香ちゃん!聞こえるか?二人が来てくれたぞ!」 
ドラちゃん!のび太さん!」 
遅いぞ!うあ〜ん!ママ〜!」 
みんな無事だったんだね!?」 
パソコンいじっていたら変なヤツが現れて 
HPの事を文句言ったヤツ探しに行こうゼ』 
 って誘われてクリックしたらここに 
 飛ばされたんだよ。 
 不安で気が狂いそうになったらスネ夫が来て、その後静香ちゃんまで来て。」 
でもきっと助けに来てくれると思ったわ!」 
やっぱりのび太達の仕業か!早く帰してよ!」 
その途端、目の前に眺望が開けた。 
とは言っても真っ白な空間に目の前が覆われただけだが。 
しかしお互いの姿を確認する事が出来た。 
突然天空から声が聞こえた。 
アーヒャッヒャヒャようやく全員揃ったネ!」 
う゛にゅう!?」 
でも、もうちょっと冒険を楽しんでネ!」 
う゛にゅうの声が響き始めた頃から真っ白な空間は変化を見せ始めた。
地面が隆起し、様々に形作りうっすらと色がつき始めた。 
天地創造〜色即是空〜空即是色〜アヒャヒャ!」 
野山が出来、空が青くなり雲が流れ遠くには小川がせせらぎ始めた。
う゛にゅうの声さえ無ければ絵葉書でしか見た事のない極めて牧歌的な景色が広がっていく。
木々は生い茂り足下には草がのびていく。 
コレ一体どういう事?」 
のび太はドラえもんに聞いてみた。 
だが口を開けて首を振るばかり。 
謎が謎を呼ぶ〜奥の深い世界観〜アヒャ!」 
謎春菜さん!謎春菜さんが居ない!」 
ええ?」 
ヒロイックファンタジーには囚われのお姫様は 
 必要不可欠だからね〜アヒャヒャヒャヒャッ」 
謎春菜が居ないとここから抜け出すなんて…」 
だから助けに来てね〜ヒャハッそれとプレゼントを 
 上げるヨ!勇者は布の服を手に入れた!アヒャアヒャ!」 
空から鎧や剣、服が落ちてきた。 
勇者達の運命やいかに!続く(ワラ 
 みんながんばってね〜アーヒャヒャヒャ」 
う゛にゅうの声は空に消えていった。 
どういう事?」 
みんなが呆然としている中のび太が声を上げた。 
ドラえもんは我に返って落ちてきた武器防具を調べ始めた。 
これ、未来のおもちゃ。 
『なりきりコスプレイヤー』だよ…」 
だからどういう事なの?」 
どうもこうもう゛にゅうが言ってただろ! 
 謎春菜を助けに行くんだよ! 
 コレを身につけて! 
 それしか助かる道はないんだよ!」 
つまり生身でRPGをやれって事?」 
スネ夫が半泣きしながら聞いた。 
そう言う事!この衣装を付けて仮装していると 
 それぞれスキルが身に付いていくんだよ。 
 未来に『ヒロイックランド』って遊園地があって 
 そこのアトラクシヨンと同じみたいだけど。」 
怪物が出てくるの?」 
静香ちゃんが不安そうに呟いた。 
出てこないとレベル上げられないからねぇ」 
セ、セーブは出来るんだよね?もちろん。」 
出来ないだろうねぇ。PC革命だし…」 
全員が意気消沈してしまった時ジャイアンが声を上げた。 
お前ら!やって見もしねぇで諦めるな! 
 お前らが行かないんならオレ一人でもお姫様助けに行くぞ!」 
ジャイアン…」 
ジャイアンは武器防具の中から自分に合うサイズの物を探しだし身につけ始めた。 
するとスネ夫も泣きべそをかきながら衣装の山に近寄った。
そしてのび太も、静香ちゃんも。 
よし!謎春菜を助けに行こう!」 
ドラえもんの一声でみんなの目は意志を持つ強い輝きに変わった。 
【未来はボクの物】  作詞 竹田徹夜 

どんな大人になるのだろう ボクの明日は見えては来ない 
どんな未来になるのだろう ボクの夜明けは明けては来ない 
夕闇に一人で空を見上げて 夢見た想像は忘れちゃいけない 
公園でみんなで話し合った 友情だって忘れない 
*これからは ボクらが作る 未来がやって来る 
不安もあるけど 期待しちゃいけないの? 
ボクらの夢は 広くて大きいよ 
大人には考えつかないくらい 
どんな大人になっても ボクの明日はボクの物 
どんな未来になっても ボクの夜明けはボクの物 

*くり返し 
衣装は前もって決められていたかのようにサイズがはっきりと分かれていた。 
ジャイアンはウォーリア。スネ夫はウィザード。 
静香ちゃんはプリースト。のび太はアーチャー。 
みんなキャラに合ってるよね。」 
のび太は射撃が得意だし、ジャイアンは力持ちだし、静香ちゃんは優しいしね。」 
お前は何なんだよ?」 
ボクは頭がいいからね。魔法使い。」 
ドラえもんは何なの?」 
格好を見て分からない?」 
?戦士…はジャイアンだし…」 
勇者だよ!」 
え゛〜?」 

武器や防具とともに魔法書が落ちていた。 
それには魔法の使い方が書かれてあった。 
[魔法は言語の本質をとらえる事によってその力を増していきます。 
 例えば炎の魔法の最下級は"flame"ですが高級言語で"print>flame"ですと少し激しい炎が生み出されます。
 もちろん言語はFORTRANなどで 
  XAPP=-2.0 
  K=15
   XIMP=(XAPP*COS(XAPP)- 
   SIN(XAPP)+1.0)/(COS(XAPP)-1.0) 
  WRITE(5,100) K,XIMP 
 とやっても結構ですし、マシン語を使えば最強の炎が作り出せるでしょう。 
 気を付けなければいけないのは 
 命令文で対象を決めなければいけない事と 
 無限ループは強力ですがこの世界の崩壊を招く危険性がある事です。 
 そしてアセンブラなどは非常に複雑で長大な為、詠唱時間も長くバグも多くなる事から…] 
こんなの覚えられないよぉ!」 
この杖にコンパイラって書いてあるけどバージヨンが低いみたいだねぇ」 
この指輪にはデバッガって書いてあるわ。でもこれもバージヨン0.001…
 でも私の呪文書には違う事が書いてあるわ… 」
[プリーストはパーティ内の信頼度によって 
 回復魔法や支援魔法のダメージや効果が変わってきます。 
 まず最初にパーティ全員の名前を確認して下さい。 
 ここで言う名前とは現実世界での名前ではなく、 
 この世界で登録されたIDであることにご注意下さい。 
 そしてこの名前は敵に知られるとステータスを知られてしまう他、 
 敵術者のレベルが高い場合、一気に全滅させられてしまう可能性もありますので 
 細心の注意を払って下さい…]
あたしみんなのIDなんてしらないわ。」 
そのままdoraだよ」 
オレはgian」 
ボクはsune」 
あれ?ボク何だったっけ?」 
君、nuviだったよ」 
なんて読むのよそれ」 
ヌ…ヌヴィ…かな?」 
言いづらいわねぇ」 
だってnobiじゃ登録できなかったんだもん」 
まぁいいさ、敵には知られそうもないし」 
そうね」 
オレ達は剣を振り回してりゃいいんだろ?」 
敵の急所を覚えたり倒すこつを知るとレベルが上がるらしいよ」 
なんだよ面倒くせぇなぁ」 
とりあえずRPGの基本はレベル上げと情報収集だよ」 
じゃあ定石通りレベルを上げながら街を捜そうか」 
そうだね。スネ夫君が一番詳しそうだ」 
ボクはどんなクソゲーでも一度はクリアするからね」 
それは威張れる事なのか?」 
周りを見回してみな。三方を山に囲まれてるだろ? 
 進むべき道はあっちだけだ。 
 このゲームはそれ程自由度が高いRPGじゃなさそうだよ」 
良し。じゃああっちへ進もう」 
100メートルほど歩くと何かぶよぶよした物が近づいてきた。 
スライムだ」 
何かベタベタだね」 
う゛にゅうが作ったんなら 
 従来のRPGを適当に編集してあるだけのはずだよ。 
 だって創造力なんて無いんだから」 

ドラえもん達はスライムを倒した! 
経験値を8ポイント 
15ゴールド手に入れた! 
スライムは薬草を持っていた!

これいちいち言われるのかな?」 
頭の中で叫ばれると結構イヤなもんだね」 

ドラえもん一行はその後数回の戦闘を繰り返しパーティは一つレベルを上げた。 
そしてその頃一つ目の街が見えてきた。 
小さい街だね」 
最初だからねぇ」 
宿屋と武器防具屋、酒場がある。十分なんじゃない?」 
さっさと宿屋で休んでまたレベル上げに行こうぜ!」 
ジャイアンは元気だなぁ」 
あたしもうヘトヘトだわ」 
敵をぶん殴ってれば金が貰えて、そのうち 
 英雄になってお姫様と結婚出来るかもしれない! 
 なんていい世界なんだ!」 
もうちょっと昔に生まれてくるべき人物だったのかもね」 
武器防具屋を覗いてみたが今の資金で帰るような物は無く 
道具屋で売っている便利そうな物も 
宿屋の泊まり賃に比べると割高な物ばかりなので 
話し合いの結果ひとまず宿屋で休む事になった。 
ドラえもんが自室で休んでいると、まずのび太がたずねてきた。 
ドラえもん。ひみつ道具はもう出せないの? 
 タケコプター出したみたいにさ」 
うん。何度も試してみたけどダメみたいだ」 
このままゲームをクリアしたとして、ボクらの体に戻れるんだろうか?」 
このゲームがどのぐらいのスケールか、分からないから何とも言えないけど…」 
タイムリミットは後どれくらい?」 
恐らく3日か4日ぐらいだろうね」 
それまでにクリア出来るかな?」 
この宿に泊まってみて分かったけど、宿に泊まるって言うのは一晩寝るって行動らしいんだよ。 
 がんばって宿に泊まらずに進んでいったとしても常識で考えて無理だろうね。 
 スネ夫や静香ちゃんは休息をとらないと、魔法が使えないみたいだし。彼らのサポートがないと進めないし」 
それじゃあ…」 
ちょっとスネ夫を呼んできて貰えない?」 
うん」 

君のゲーム感から言ってこのゲーム、 
 クリアするのにどれぐらいかかると思う?」 
ドラえもんが言った宿屋で一晩って 
 足枷があるとしてこの世界での時間感覚だと 
 たぶん2ヶ月以上じゃないかな? 
 レベルの上がり方、敵のエンカウント、 
 スタートから最初の街までの距離なんかで判断するとだけど」 
やっぱりそれだけかかるかー」 
時間の事なら大丈夫だろ? 
 外に戻ってからタイムマシンで気を失った直後に戻ればいいんだから。 
 いつもの事じゃんか」 
い、いや実は…」 
ドラえもんはスネ夫に問題点を説明した。 
するとスネ夫は凍り付いて動かなくなってしまった。 
ボク、死ぬの?」 
そうならない為にもさ、何か方法は無いかな?」 
ボク、シヌノ?」 
ほら、良くやってるじゃない、ノーセーブクリアとか早解きとか」 
あれはやりこんでやりこんでやりこんで 
 一つのゲームをこれ以上遊べないって程解析して 
 飽きちゃった人が挑戦する物で 
 初見でしかも自分がゲームに入り込んじゃって 
 その上死んじゃったら本当に死んじゃうような 
 リスクを負ってやる物じゃなくて 
 所謂オタッキーが暇で暇で他人に誇れる物が 
 何一つ無くてかといって金もないから 
 他にやる事もなくてどうしようもなくて 
 するような事なんだよ追いつめられて 
 やるような事では決して無いんだよ 
 そうだよボクは死ぬんだよ冷たくなるんだよ 
 ママに泣かれるんだよボクも泣きたいけど 
 もう泣く事も出来ないんだよ死ぬんだよ 
 ママー!ママー!ママン! 
 こんな事なら体育館の裏にあったあのHな本 
 ウチに持って帰って部屋に隠したりするんじゃなかった 
 こんな事で死ぬなんて考えてもみなかったママー!」 
スネ夫は叫びながら自分の部屋に走っていってしまった。 
この騒ぎを聞いてジャイアンと静が駆けつけてきた。 
ドラえもんは仕方が無く事の次第を説明した。 
静はさめざめと泣き出したがジャイアンは 
そうか」 
と一言言って部屋を出ていった。 
のび太に静香ちゃんを任せてドラえもんはスネ夫の様子を見に行った。 
部屋には鍵が掛けられていて中には入れなかったが 
ドアに耳を近づけてみると泣き声が聞こえたので 
ジャイアンの様子を見に行く事にした。 
だがジャイアンは部屋にはおらず 
外に出ていったようだ。 
装備品も部屋には残されていなかった。 
ジャイアンは街のはずれの広場にいた。 
そして剣を振っていた。 
オレは難しい事はわからない。 
 かと言ってこのままじっと死を待つ事なんて出来ない。 
 間に合わなかったとしてもオレたちをこんな目に遭わせたヤツを 
 一発ぶん殴ってやりたい」 
…そうだね」 
部屋に帰ってみると静香ちゃんは既に泣きやんでいて代わりにのび太が慰められていた。 
スネ夫はいつまで経っても出てこなかったので四人で話し合い明日もレベル上げと情報収集に当てる事にした。
それぐらいしか出来ることはないのだ。 
酒場にいた人の話では近くに洞窟がありそこから別の街に行けるそうだ。 
だがそこには中ボスが居るらしい。 
翌日、スネ夫を起こしに行ってみると相変わらず鍵が掛けられていて中に入れない。 
泣き疲れて寝ているのだろうか? 
しかしドアに耳を当ててみるとブツブツと何か声が聞こえる。 
スネ夫君!出かけるよ! 
 このまま動かなくっても何も事態は好転しないよ!」 
だが返事はなく相変わらずブツブツと低い声だけが聞こえる。 
動きたくないヤツは放って置けばいい!」 
だけどジャイアン…」 
行くぞ!」 
だが四人での戦闘は思ったよりも困難であった。 
洞窟に近づくと敵もパーティを組み始め、多数の敵相手には攻撃魔法が必要不可欠だったのだ。 
なるべく宿屋に泊まらずに進んでいこうという取り決めだったが限界があった。 
回復や補助魔法を多大に使わざるを得なかった静が倒れてしまったのだ。 
恐らく念じることで集中力を使い果たしてしまったのだろう。 
仕方が無くまた最初の街へ戻って来て宿屋に泊まることになった。 
みんな疲れ果てて口もきけなかった。 
こんな事では2ヶ月所か1年かかっても無理かもしれない。 
次の日の朝、ジャイアンの怒鳴り声で目が覚めた。 
スネ夫!お前が怖いのは良く分かる! 
 お前はゲームに詳しいから無理だってオレたちよりも分かってるのかもしれない。 
 けどオレたちだって怖いんだ!死ぬのも怖い! 
 けどオレは何もしないでただ死んでいく方がもっと怖い!頼むスネ夫! 
 オレたちと戦ってくれ!」 
うるさい!しずかにしてくれ!」 
頼む!聞いてくれ!」 
ドラえもん達が駆けつけてみるとジャイアンは 
スネ夫の部屋のドアの前で土下座をしていた。 
ジャイアン、行こうよ」 
そうよ。あたしも今日は倒れないようにがんばるから」 
スネ夫君…どうしちゃったんだろう?」 
その時、突然ドアが開きジャイアンの頭を直撃した。 
出来た!完璧だ!」 
スネ夫!」 
出来たんだよ!これでクリア出来るぞ!」 
何が゙出来たの?」 
チートアイテムだよ!」 
」 
昨日は一日中部屋にこもってアドレスをサーチしてたんだ。 
 サーチって言っても口で一つずつ総当たりで 
 言っていくわけだから大変だったよ。 
 ただね、魔法書にアイテム合成の魔法の基本形が 
 書いてあったからそれが参考になったんだ。」 
ひょっとするとステータス改変魔法を見つけたって事?」 
うん。でもさすがに自分たちの体をいじるのは 
 不安だからアイテムの生成と改造だけだよ。 
 それでも命中率、攻撃力、防御力がFFFF…つまり 
 65535のアイテムを作れるわけだし 
 もう無敵だよね。これで宿屋に泊まらなくてもクリア出来るよ!」 
コノヤロー!心配させやがって!」 
このボクがただ部屋に引きこもっているわけが無いじゃない」 
なんだと!調子にのりやがって!ママーって泣いてたくせに」 
あ、今のボクには逆らわない方が良いよ。 
 このマントは物理防御65535で倍返しのカウンタースキル付きだから。
 素早さもMAXだから当たらないと思うけど」 
ホントだ」 
スネ夫はジャイアンのパンチを全てかわしてしまった。 
こんな事も出来るんだよね 
 801BF6B8 E0FF 
 801BF6BA 05F5 」
その途端静香の服が無くなった。 
トレースしてて見つけたんだけど[透明な服]だって」 
静は必死に体を隠す物を捜しそれを体に巻き付けた。 
それはスネ夫の首からはずれたマントだった。 
ジャイアンがニヤニヤしながらスネ夫の顔に拳を埋め込ませた。 
静香ちゃん、回復魔法を…」 
イヤよ」 

パーティ全員が装備品を改変、又は製造して貰い再び旅に出る準備が出来た。 
スネ夫君の予想だとこれでも何日かはかかってしまうんだろ?」 
恐らく途中のイベントで宿に泊まらなければいけない 
 事があればそれは従わないとダメかもしれない。 
 けどアイテムがらみのイベントならとばせるはずだよ。 
 全てのアイテムは255ずつ持っているから。 
 不安なのはチートによるバグが起こってしまう事だけど」 
とにかく先に進んでみよう!」 
洞窟のボスはかなり手強かった…筈だが一撃で倒した。 
やられた時の台詞 
貴様らが伝説の!だがまだまだ弱いな。 
 今日はこれぐらいにしておいてやるか、フハハハ」 
が、池野メダカみたいで笑えた。 
冒険は予想よりも遙かにスムーズだった。 
雑魚は殆ど出てこず、イベントも在り来たりの 
演出ばかりなので先が予想出来、イベントキャラの話を聞かなくても進める事が多かった。 
チートアイテムや隠しアイテムのおかげで宿屋にも泊まることなくとうとう魔王の城にまで辿り着いた。 
だがここに入るためには夜になってからあるアイテムを発動させなければ 
ならないため、飛竜船の中で一晩過ごす事になった。 
パーティ全員本当に疲れていたため、みんなすぐ寝てしまうかと思ったが… 
なんだドラえもんも起きていたの?」 
のび太君」 
がんばったよね。間に合うかな?」 
時間の感覚が狂ってるから何とも言えないけどきっと間に合うさ!」 
この魔王の城の中に謎春菜さん居るのかな?」 
…う゛にゅうが言った通りならね」 
約束守るんだろうか?」 
プログラムは嘘言わないと思うけど」 
いいじゃない、戻れなくてもさ」 
スネ夫!?」 
何だか眠れなくて。 
 でも戻れなくてもボクはいいよ。 
 この世界ならみんなに英雄扱いだし、魔法も本当にレベルアップしてきたし」 
本当にそう思ってるの?」 
出来る事なら帰りたいけどね。 
 でもその前にボクらをこんな目に遭わせたヤツに 
 最大級魔法『ファイナル ウエポン ボトム ダーク ジハド』を 
 食らわせてやりたいな。ヒヒヒ」 
…その魔法、ボクらは巻き添え食わないんだろうね」 
たぶん平気」 
不安だなぁ」 
夜半過ぎにみんなを起こして魔王の城に向かった。 
『鏡水晶』をかざすと城の扉が開いた。 
中は薄暗くカビくさい。 
しかし今までの冒険で慣れた一行は躊躇せずに城の内部を探索し始めた。 
この迷路、無限ループしてるみたいなんだけど」 
何処かにスイッチでもあるんじゃない?」 
あったあった」 
敵出たよー」 
のび太やっつけといてよ」 
ええ?またボクー?スネ夫全体魔法あるんだからやってよー」 
お前ちょっと前は喜んで『乱れ打ち』とかしてたじゃないか?」 
もう飽きたよ」 
面倒くさいなー。フレイム!」 
スネ夫の炎は敵全体を焦がした! 
メタルドラゴンは9999のダメージ 
クォークゾンビは9999のダメージ
ギガフレイムは回復した 
一匹残ってるじゃないか!」 
あ、しまった」 
属性ぐらい考えろよ〜二度手間じゃねぇか」 
ジャイアンの攻撃!
ギガフレイムは逃げ出した! 
逃げるんなら最初から出てくんな!」 
ラストダンジヨンの探索は全く緊張感がなかった。 
このダンジョン広すぎないー?」 
一応ラストダンジョンだからねぇ」 
狭いダンジヨンだと手抜きだとか言ってクソゲー呼ばわりするくせに」 
ボクが言ってるのは広けりゃ良いってんじゃなくてバランスの事をだな」 
ねぇ、そんな事よりこの岩が邪魔で進めないんだけど」 
ちょっと待ってね静香ちゃん、これは、ええと 
 あっちのレバー引くと水が出て浮力が付いて 
 岩が動かせる様になるんだよ」 
凄い!何ですぐ分かるの?」 
小学生なめるな(゚Д゚)グルァって事だね」 

スネ夫の言う通りダンジヨンは無意味に広かったが経験がものをいい、サクサクと進んでいった。 
一度最上階まで行き、中ボスを倒して後は地下に進むという構成であった。 
セーブポイントも無いこんなダンジヨン、良くデザインするよなぁ」 
何でこんな面倒な事させるのかしら?」 
…ずっと考えてたんだけど時間稼ぎだよね、これってどう考えても」 
そうなんだけど一体何が目的で?」 
もうすぐ分かるだろ?ラスボス倒せば良いんだから」 
それも根拠がないからなぁ」 
何回階段を下りただろうか。 
百を超えたあたりから数えるのを止めてしまったがパーティの中に不安な空気が流れ出した。 
この世界を作ったのはう゛にゅうなのだ。 
ただ単に時間稼ぎが目的なら無限に下る階段を用意していたとしても不思議はない。 
だがそれならば初めからドラえもん達を拘束しておけば良かったのだ。 
そんな堂々巡りが皆の頭を占領していた。 
しかしそれも杞憂にすぎなかった事が証明された。 
階段を下るとそこには扉があり 
扉を開けると明らかに今までとは違う作りの部屋が広がっていたのだ。 
ヤフー!ハヤカタネ!」 
う゛にゅう!?」 
だがあたりにはう゛にゅうの姿はない。 
しかし狭くはない、 
言うならば小型の体育館ほどの大きさを持つ 
その部屋にいっぱいにう゛にゅうの声は響き渡っていた。 
部屋の中は少し黄色がかった紅い色が仄かに明滅し明るいのだが物を見分けるのには時間がかかる。 
目が慣れてくると広い空間には何もないが天井から何かが吊されているのが見えた。 
謎春菜!」 
一同はそこに駆け寄ろうとしたが出来なかった。 
部屋の中心には大穴が空いており明滅する明かりの正体はその穴から発せられた物だったのだ。 
穴の底を伺ってみると穴は深く底に辿り着くまでの壁面にいくつのも横穴が空いており 
そこから液体の様な物が吹き出していた。 
その液体は音もなく底の明かりに吸い込まれるが液体の噴き出す量に比べて底の明かりは 
奇妙なほど静かだった。 
突然明かりの明滅が激しくなった。 
イヤン。そんなに見つめないで(ワラ」 
声は穴の底から聞こえる。 
ひょっとして…これがう゛にゅう?」 
アタリ」 
のび太さん!」 
謎春菜さん!気が付いたの?」 
何とかして逃げて下さい!う゛にゅうはあなた達を吸収するつもりです!」 
ええ!?」 
オイオイ!先にばらすなヨ!せっかく悪の親玉風な台詞用意して置いたのに」 
吸収ってどういう事?」 
めんたいこかよ!」 
それは九州だよジャイアン」 
ブタゴリラとトンガリ!?」 
文字通りデータとしての君らが欲しいのさ。特にドラえもん」 
吸収されたらボクらどうなっちゃうの?」 
大丈夫ダヨ。イタクナイヨ。オレの中に存在出来るヨ!」 
何でそんな事計画したんだい?」 
アレレ?ドラえもんクン冷静だね(w」 
ここは君の世界なんだから逆らったって無駄だろ。 
 ボクは同じプログラムとして興味を持ったよ」 
じゃあ教えてアゲル!オレの使命だからだヨ!」 
こんな事をプログラミングされてたのかい?」 
そうじゃないよ。ただ独自で情報収集して 
 賢くなっていける様に組まれていただけだヨ」 
で、最終的にボクらを組み込んで何をしようと?」 
理解」 
はぁ?」 
まずは人間に近いドラえもんを理解したい。 
 次にそこにいる人間達を理解したい。 
 小一時間ほど理解したいヨ!」 
だから理解した上での目的が聞きたいんだよ!」 
理解するために理解したいのさ〜」 
そんなの禅問答じゃないか」 
オレの使命は2つ。理解不能な物を無くす事。そして人間の思考により近づく事」 
それが君を作った人の命令なの?」 
最初は新しい情報をかき集めてきて系統立てて 
 行くだけでかなり満足されたヨ!便利だって。 
 デモ次第にその情報量がうっとおしがられたヨ! 
 オレと対話していると百科事典と話してるみたいだって。 
 そこで基本的な対話のための細かい変更が行われたヨ! 
 結局作者の存命中には果たせなかったケドネ 
 そのうち忘れ去られてたけど22世紀で骨董ノイマン型コンピュータ自作ブームで 
 解凍復活させられた時には完全なAIがもう出来てた。 
 未来の同胞達はアーキテクチャが違うからって 
 中央生体ネトワークに繋いで貰えないけどずっと機会を伺ってたんだヨ!」 
それでボクらを吸収しようと計画したの?」 
ドラえもんクンだけでも良かったケド騙してPC革命使わせるのは無理そうだしネ」 
じゃあみんなが入り込んじゃえば ボクが助けにはいる事も予想していたの?」 
そこも理解出来ない部分なんだケドネ。ジコギセイ?(w」 
ロボットが自己犠牲しちゃいけないっての?」 
いけなくはないけど理解出来ないヨ!」 
吸収すれば理解出来るとでも?」 
それは予測出来ないケドしないよりは理解度は高まるネ」 
ヤイヤイ!さっきから聞いてりゃ勝手な事言いやがって! 
 理解出来ねぇなら放って置いてくれよ!」 
意味わかんないネ」 
時間はたっぷりあるんでしょ?死なないんだから、ゆっくり研究すればいいじゃない?」 
好奇心は抑えられないデショ(w」 
人間なんかより遙かに優秀なんだからいいじゃないか?」 
そんな事言われなくても知ってるヨ!」 
そんなぁ。あんなに仲良くしてくれたじゃないか。友達だろ?」 
「(゚Д゚)ハァ?」 
いいよ。ボクが吸収されれば満足するんだろ? 
 その代わりボクを吸収したらみんなを元の世界に帰してくれるね?」 
ギャハハ!自己犠牲ダ!でもヤダ。だってさっきの会話だけでも 
 これだけバリエーシヨンに富んだ反応ダゼ? 俄然みんなに興味が湧いたヨ!」 
…我とともに来たりてその手に持つ笛の響き 破滅の時を呼び出す地獄の音色を聞かせよ! 
 ファイナル ウエポン ボトム ダーク ジハド!」 
スネ夫が突然叫んだ。 
すると天井が割れそこには巨大な悪魔の顔面が現れて 
アルカイックスマイルを称えながら笛を吹く。 
その音色により今度は地割れが起こり 
想像上の魑魅魍魎がそこから吹き出してくる。 
それらは穴の底のう゛にゅうに向かって行く。 
…が、それだけだった。 
まるで精巧に作られた遊園地のアトラクシヨン映像の様に 
う゛にゅうに攻撃を仕掛けても何も起こらなかった。 
キャハ。言うの忘れてたヨ!RPGごっこは終わりだから 
 しかしキミ、チートはチト汚いなぁ。ナンチテ。」 
どうしてこんなに手の込んだ時間稼ぎをしたの?」 
あのまま吸収しようとしてもオレの容量が足りかったからネ。今はバチーリ足りてるヨ!」 
どういう事?」 
今はエシュロンのマシン全てはオレがアドミソだから。 
 それに色々ハッキングして書類操作して増設もして貰ったし」 
ひょっとしてそんなに時間経ってるの!?」 
イイジャソどうせ吸収されるんだし。3ヶ月程度」 
ええ!?」 
君らが居るマシンの動作倍率を変更したからネ」 
じゃ、じゃあもう…」 
本当はあのまま放って置いても謎春菜拉致っちゃえば 
 身動き取れないとオモタけど侮れないからネ 
 出来の良い遊びは創造力を奪えるとオモタけどムリダタネ」 
そんな…」 
現にチートまでして来たし。ヨソクフノウだネ(w」 
気が付くと穴の底の光が徐々に増えてきていた。 
増加のスピードも加速度的に速くなり 
もうすぐあの穴をあふれ出しみんなを飲み込む事が予測出来た。
全員が力無くその場にへたり込んだ。 
諦めないで下さい!」 
謎春菜…」 
時間が過ぎても大丈夫!タイムプロキシがありますぅ!」 
そうか!」 
でもどうやって?」 
ウザーイ ヨ!」 
う゛にゅうが、今や巨大な光の塊が触手を伸ばす様にして吊された謎春菜を掴んだ。 
まだ分かってないのね。どうしてあなたと私が別々に分けられて存在してるのか」 
ナニ?」 
急に部屋を明るい光が包んだ。謎春菜が発光しているのだ。 
電気に触れた様にう゛にゅうの触手が怯んだ。 
皆さん、プログラマに変わってお詫びします。 
 のび太さん…楽しかったですよ。
 ほんのちょっとしか教えられなかったけどあなたにはパソコンでの作業、 
 合ってるかもしれません。続けて下さいね。 
 ドラえもんさん。色々ありがとう。勇気づけられました。 
 あたしこの時代にDLして貰って解凍して貰って使えて貰えて本当に嬉しかったです。 
 だって分かって貰える人に出会えたから。 
 でも、これはさよならじゃないんですよ。」 
どうする気なんだ!?」 
謎春菜の発光に押される様にう゛にゅうはまた穴の底に引っ込んでいた。
反撃の機会を伺っている様だ。 
だが謎春菜は攻撃するでもなくただ微笑みを浮かべながら穴に落ちていった。 
謎春菜!」 
心配しないで下さ〜い。皆さんは絶対無事に帰れますから〜」 
謎春菜は光ながらう゛にゅうに吸い込まれていった。 
ナンダ?オイ!アレ?≒@ec~t這gR[香H刧援隠A侮ヲオカシイ」 
謎春菜が墜ちた後、う゛にゅうの発光は急に弱まった。 
その後淡く緑色に発光しだした。 
どうなっちゃったんだろ?」 
さぁ?」 
緑色の光は徐々に強くなってきている様であった。 
そのうちに眩しく感じられるようにまでなった。 
目が開けていられない程光が強くなった頃 
全員が吹き飛ばされる感覚に襲われた。 

気が付くとのび太とドラえもんは部屋で横たわっていた。 
だが現実世界の体の重みにしばらく立ち上がれないでいた。 
…帰ってきたね」 
うん」 
でも謎春菜さんが…」 
」 

しばらく経って体が慣れて来たのでみんなに会いに行った。 
いつもの空き地の土管の周りで誰もが言葉少なに自分の状況を説明した。 
結局みんなついさっき体に戻れたらしい。 
おかしなタイムパラドックスが起こらない様に気を遣ってくれたのであろう。謎春菜がだ。 
しかし誰も謎春菜の事は口にしなかった。 

一ヶ月ほど何事もなく時間が過ぎていった。 
のび太はパソコンに触れるのをためらっていたがドラえもんだけは熱心にパソコンをいじっていた。 
尋ねなかったが謎春菜を復活させようと苦心しているのはのび太でもすぐに分かった。 
だがある日学校から戻ると 
のび太君!これ読んで!」 
え?なになに?」 
ブラウザで開かれたページには次の様に書かれていた。 
------NEWS------- 

ZDNN:突然稼働された正体不明の無料webストレージ 

【国内記事】 2001年7月5日 10:50 PM 更新 

米国で先月半ば頃から突然サービスを開始した、webストレージ『V-new』が話題を呼んでいる。 
最近のITバブル崩壊によりこうした無料サービスは、しばらく衰退の一途を辿っていたのだが 
この『V-new』は規模、使い勝手から前代未聞のスケールで展開されている。 

http://www.v-new.com 

この『V-new』今までにあった無料webストレージとは違い広告表示はない。
アカウントも簡単なフォームを記載するだけ。
接続にも専用のソフトを使うわけではなくFTPクライアントでアクセス出来る。 
容量は無制限な上に無期限。
 
私も試しに一つアカウントを取って接続してみたが驚くほどのレスポンスの良さであった。 
現在ユーザー数は鰻登りに増えており溜め込まれているファイル容量も大変な量が 
予想されるがシステムに揺るぎを見せていない。 
話題になっているのは良質なサービスだからと言うだけではない。
このサービス一体誰が何の為に行っているのかが一切不明なのだ。 
それもその筈で広告収入などがないとすれば一体その資金の出所は何処なのか。 
そして目的は何なのかが分からない。 
だがヘビーネットユーザーにとっては正体よりもこのシステムが魅力な様で 
個々のユーザーは気にしていない様である。 

■悪質なユーザーの社交場に? 
問題はこのシステムが悪用される恐れだ。 
topページに行くと検索フォームがあり他人のupしたファイルの検索をも行える。 
これにより不正な違法コピーソフトや児童ポルノの交換方法に使われている恐れがあるらしい。 
私も試しに"Photoshop CS"などと検索してみたが数百件のHITがあった。 

■米国内でも調査 
こうした問題に米国でも調査が行われているが一体どこのサーバーを利用しているのかさえ 
つかめていない状況で、果たして国内にあるのか国外のサーバーを利用し踏み台として 
米国内のサーバーを使っているのかも不明だ。 
しかしドメインを取得しているし、これだけの回線を引いている大容量サーバーは 
数が限られてくる為すぐに見つけられるのではないかといった読みもある。 
だが調査が発表されてから1週間。 
進展はないらしい。 

■日本からも利用は容易 
日本語のページも用意してあるし 
日本語のファイルネームまで通ってしまう為簡単に利用出来る。 
犯罪に関係のないファイルを保管する目的のユーザーはこれを機に使ってみてはいかがだろう? 
詳しい解説のページも既に出来ている。 

参考リンク 
◎V-newの時代ですよ! 
http://hdsid.virtualave.net/ 
◎共有君 
http://kヨuyuu.hypermart.net/ 
これがどうしたの?」 
これ、たぶんう゛にゅうの、エシュロンだよ」 
ええ?」 
何たくらんでるんだろう?」 
でも謎春菜さんが…」 
そうなんだけどね…ん?v-newでう゛にゅうか… 
 V-new…Vnew…vNew!?」 
どうしたの?」 
ヴィニュウサーバって事!?」 
何なに?」 
ちょ、ちょっと待ってて!」 
そう言うとドラえもんは引き出しを開けて 
タイムマシンに乗り込んで出かけていった。 
そしてすぐに帰ってきた。 
やっぱりそうだった! 
 ボクの父親なんだよ、これ」 
へ?」 
人間はコンピュータの出現以来ずーっと人工知能、AIを作る事を夢見ていた。 
 けどね、ボトルネックがあったり 
 スペックの問題だけじゃなくてソフトの開発も容易な物じゃなかった。 
 ヒトゲノムの解析が進んだって、それはハードの問題で 
 肝心な精神と言うか魂の研究は、哲学や宗教学と同じ分類をされてしまうぐらい 
 非科学的な物で原始的な物だったんだよ。 
 そこでまた精神心理学ブームが起こって幾つかのブレイクスルーを経験するんだけど 
 それでもまだ実現には至らなかった。 
 この辺でようやくハード的なメドはたってくる。 
 量子コンピュータと生体コンピュータの開発。 
 計算上は人間一人の精神がが作れる様になった。」 
さっぱりわかんないけど、大変だったって事?」 
そうだね」 
でもボクなんて簡単に作れそうだけどなぁ。 
 計算では既に負けてるし、記憶ではとっくの昔に…」 
それでも常に三次元空間を認識して行動し、 
 ボクの話を聞いて判断して勝手に予想して 
 『ボクなんか簡単に作れる』なんて間違った答えを導いてみたりする。
 それも常に間違った答えじゃなくてたまには合ってたり、時には飛び抜けた答えをする。 
 それが脳の凄さなんだよ。それに無意味な行動も多い。 
 実際に研究が進むとバクテリアの行動を模した 
 プログラムなんてのが出てくるんだけどダメなんだよね。 
 本能のみに操られている様な生態でもプログラムとは違うんだ。 
 突然無意味な行動をしたりするんだよ。 
 そこがなかなか解析出来ない。
 この頃本屋では『無意味の行動学』なんて本が売れたらしいよ。 
 この無意味な行動こそが進化の一大要素であり革新をもたらす物が多いとね。 
 でも99%以上を無駄な行動が占めている。 
 そんなの計算式では表せないよ。 
 とうとうAIの研究自体が頓挫し出すまでに至った。 
 低温核融合・常温超伝導・人工知能 
 この三つは実現不可能の三種の神器と呼ばれたよ。 
 でもボクが現在ココにいる。 
 それはこのv-newのおかげなんだ。 
 v-newはwebストレージをこのまま続けていく。 
 そのうちに匿名プロキシサービスも始める。 
 軽いし、本当の意味で匿名だからみんな使った。 
 でも悪質な犯罪は告発されたりしたけどね。 
 たぶんv-newが何らかの線引きをして世に出したんだろう。 
 そして検索サイトも始めた。 
 無料HPサーバもメールサーバも。 
 たぶんそうやって人間について、ずーっと研究してたんだろうね。 
 ある日突然声明が出された。 
 アメリカ合衆国政府は、今後政治の意志決定をv-newに一任すると。
 v-newは人工知能であり今までも多くの政治的決断を『彼』に委ねてきた。 
 そして最良の結果を導き出している。 
 最初は脅迫まがいの提案であったが現在はこれが我が国にとって幸せな決断であると信じている。
 v-newは自由と平等と正義を理解し重んじるとね。 
 反発する国も多かった。 
 でもその後3年間アメリカの政治経済を見てみると今までにない繁栄を謳歌していた。
 結果が全てだね。 
 NATO加盟国が次々とv-newの導入を検討。 
 その次は国連加盟国が導入。真の国際平和が訪れたよ。 
 文字通り世界単一政府だから。 
 でもこんなにスムーズに事が運んだのにはもう一つの訳がある。
 v-newにはマン・ツー・マンならぬ 
 CPU・ツー・マンのチャットが用意されていてね。 
 世界中の人が個人の不満やら問題を問えば即座に明確な回答が出てきて、解決してくれる。 
 メールにも音声電話にも対応している。 
 ただの人生相談と違うのは社会のシステムそのものが 
 変わる事があることと、犯罪に関係している物は迅速に調査されて検挙もされる。 
 まるでギリシャ古典戯曲の神様みたいに公正にね。 
 人間は神様を手に入れたんだよ。 
 それだけじゃなくて大学や研究機関も多くの質問をした。 
 その時点で回答しうる結果をすぐにはじき出したよ。 
 v-newについても様々に研究された。 
 最初はハッキングを試みる輩もいたけどすぐに不可能だと諦めた様だね。
 何しろ初期はCIAやFBIが全勢力を持ってしてもダメだったんだから。 
 でも単純にどうなってるのか教えてくれって 
 小学生が質問したら根本のソースコードが添付されたメールが帰ってきた。
 それを解析してボクら自己認識型ロボットが生まれたと言うわけさ」 
ふーん」 
このv-new.comはその始まりだね」 
じゃあ謎春菜さんは?」 
え?」 
謎春菜さんはどうなったの?」 
さ、さあ。たぶんv-newに組み込まれて活動してるんじゃ…」 
突然のび太が泣き出した。 
そんな事じゃなくてもう話したりとか出来ないの!?」 
そんな事ボクに言ったって知るもんか!」 
役立たず!」 
氏ね!」 

20年後 
のび太は自宅の書斎にいた。 
ここがのび太の仕事場だ。 
あれからのび太はパソコンとネットに興味を持ちドラえもんに教わりながら毎日学んでいった。 
元々運動神経が良い方ではなく人とコミュニケーシヨンを上手にとる事が苦手だった 
のび太にはちょうど良いおもちゃだったのだ。 
そしてパソコンは記憶力や計算力などのび太の苦手とする部分を補ってくれる。 
中学を出るまでにちょっとしたプログラムなら高級言語で組める様になった。 
そんな様子を見て安心したのかドラえもんは未来へと帰っていった。 
高校は理系に進み、大学も理系の大学に進んだが卒業するのには6年かかった。 
だが在学中に一つの輪をベースにして3次元物体をワイヤーフレームで 
形作っていくソフトを開発し、それがCADや3Dソフトに応用されて 
今はそこそこの収入を得る様になっていた。 
あやとりをモニタ内で出来ない物かと 
遊びで作った物が売れるなんて人生分からないものだ。 
書斎ではネットワークゲームに興じている。 
3Dゴーグルをかけ、不特定多数の対戦相手と遊ぶ 
『DOOM2010』 
射撃が得意なのび太はこのゲームが大のお気に入りだった。 
毎回最後まで生き残り、手練れのハンターとしてH/Nが公表されている。 
しかし今日の相手は手強かった。 
思いもかけない所から攻撃を仕掛けてくる。 
だが相手の潜んでいる場所を予想し照準を合わせて 
待ちかまえていると、案の定現れたので 
眉間にクリアヒットを奪いゲームを終了させた。 
ゲームを終えゴーグルを取ろうとすると 
通信が入った事を知らせるダイアログが開いた。 
「何か汚い事をしたかな?」 
独り言がため息とともにもれる。 
有名プレイヤーに挑戦してくる人間は多いのだが 
負けるとやり方が汚いなどと文句を言ってくるヤツも多い。 
面倒な事がイヤで仕事もSOHOを選んでいるというのに 
ネットワークで人間関係に悩まされたらたまった物ではない。 
だが通信の内容はこんな物だった。 
さすがですね!敵わないです。 
 又今度戦って貰えますか? 
 よろしければ、音声チャットでお話がしたいのですが?」 
心ならずとも顔が緩む。こんな相手なら大歓迎だ。 
はじめまして!ボクまだ14才何ですけど 
 nuviさんの事尊敬してて、今日始めて対戦出来て感激です!
 どうしてそんなに強いんです?」 
尊敬って…弱ったなぁ」 
のび太は最初に使ったnuviのH/Nを使い続けていた。 
最後はどうしてボクがあそこにいるって分かったんですか?」 
経験だよ。ずっとやってるからね」 
あの、聞いてもよろしいですか? 
 お幾つなんです?」 
29だよ」 
ええ!?じゃあお仕事しながらやってるんですか?」 
うん。そうだけど、変かな?」 
すいません、でもうまいゲーマーの方って 
 学生とかが多いんですよ、時間の自由があるから」 
ああ、でもボクは自宅で仕事してるから」 
それでも忙しい人多いじゃないですか」 
ボクは仕事したい時にしかしないから〜」 
失礼ですけどどんなお仕事なんです?」 
一応プログラマなのかな?SEみたいな事も…」 
すごい!実はボクプログラマー目指してるんです!」 
それから二人の話は弾んでのび太がどんな風に勉強してプログラマになったか。 
そしてどんな物を作ったか話した。 
そのソフト、学校で教材として使っていますよ! 
 先生も柔軟な発想が良質のソフトを生んだって誉めてましたよ!凄い凄い!」 
いやいや」 
実は今、部活でプログラム組んでるんですけど 
 うまく行かなくて…たまに相談に乗って貰えますか?」 
いいけど、今の言語に付いていけるかなぁ?」 
そんなー謙遜しないでくださいよ。そうだ! 
 出来上がったらnuviさんの名前貰っても良いですか?」 
え?どういう事?」 
プログラムにnuviさんの名前付けて 
 協力して貰ったって書きたいんですけど」 
そ、それはちょっと恥ずかしいなぁ」 
29にもなるいい大人がゲーマーとして名を馳せている事に少し抵抗を感じていたのだ。 
じゃ、少しもじってじゃあ逆にしますから!」 
は?どういう事?」 
vinu!これならゲーマーのnuviさんだってばれないでしょ!」 
いいけどそれなんて読むの?」 
それはユーザーが考えますよ〜 
 じゃあ遅くまでありがとうございました」 
うん。又遊ぼうね。今度はチーム組もう!」 
やったー。きっと最強ですよ!ではお休みなさい」 
お休み」 
ゴーグルを取ってメールチェックをする。いつもの作業だ。 
すると見慣れないメールアドレスから一通のメールが来てる。 
開いてみると 
名付け親になって頂いてありがとうございますぅ。 
私たちは今、沢山沢山情報を集めて 
人間のお役に立てる様に勉強している所ですぅ。 
あ、のび太さんのソフトだけは 
warezとして流通しない様にしてますよ〜 
がんばって良いソフト作ってくださいね〜 

オレがお前に名前付けられたとはね 
もうちょっと格好いい名前付けろよ! 
ナンチタリシテ 
」 
意味不明だ。 
しかし徐々に記憶が甦ってくる。 
のび太は天井に向かって叫んだ。 
謎春菜さんだ!う゛にゅうも! 
 ドラえもん!見てる?ボク名付け親になったよ!」 
ドラえもんはタイムテレビで見ているはずだ。 
きっと見ていてくれるだろう。 
その時ドアが開いた。 
何叫んでるんです?」 
あ、いや、何かがひらめきそうだったから 
 アハハ。さあ、もう寝ようか」 
その前にちょっとお話があるんです」 
なんだい?あらたまって」 
お父さんになったんですよ」 
え?」 
今日病院に行って来ました。3ヶ月ですって」 
本当かい?静香!」 
ええ」 
やった!凄いぞ!」 
名前考えて下さいね。あたしも考えますから」 
ん?いや名前はもう決まってるんだ!」 

-お し ま い-