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SMALLVILLE(スモール・ビル)
邦題:ヤング・スーパーマン

 

#203 Duplicity

プロローグ
夜。ルーサー家の屋敷の廊下をスティーブン・ハミルトン博士が歩いている。
ハミルトンの左手は激しく痙攣していて、自分でも抑えられない。
ハミルトンはレックスの書斎に入る。

ハミルトン:レックス、約束したはずだぞ。なぜ急に呼び出すんだ?

レックスはハミルトンの左手が痙攣しているのを見る。

レックス:具合が悪そうだな。

ハミルトン:なぜ研究の邪魔をする?
       いちいち報告するのは嫌いだと知ってるくせに。

レックス:カドマス・ラボで問題があったと聞いている。
      君が器材を投げて暴れたため、職員が全員辞めたとか。

ハミルトン:やつらは無能だ。なあ、俺たちの関係には何の問題もないだろう。
       お前は金を払う、俺は自由に研究をする。

レックス:俺は隕石の研究をさせるためにあんたを雇った。
      だが、あんたがもたらしたものは、結果ではなく、訴訟騒ぎだ。
      博士、はっきり言って、あんたはお荷物だ。
      どうやら、俺たちの関係もここまでのようだな。
      今の俺は自分の会社を経営している。
      実りのない計画を続けるだけの時間も資金も持ち合わせてはいない。
      メトロポリスにいる医者と会うといい。治療費は俺が払う。

ハミルトン:医者なんか必要ない!
       お前に恩を売られるなんてごめんだ! お前には俺が必要なんだ。
       (震える手でレックスを指さし) お前には…(手をひっこめ)
       …見る目がないのさ。

ハミルトンは書斎を出て行く。

場面変わって、夜の道。レイ・ウォレスという男がトラックを運転している。
レイはカントリー・ミュージックを聞きながら、ヒマワリの種を食べている。
レイは横を向いて唾を吐くが、窓が閉まっているのに気づく。
レイは窓を開け、再び唾を吐く。運転席側のドアには、「レイの錠前屋」と書いてある。

ハミルトン博士の乗った車が、対向車線を走っている。
ハミルトンは痙攣を続けている。
ダッシュボードにある錠剤の入った瓶に手を伸ばすが、あやまって床にこぼしてしまう。
ハミルトンは前方にトラックの明かりを確認するが、手を伸ばして錠剤を拾おうとする。
車が大きく揺れて、蛇行し始める。

レイは前方から来る車が蛇行運転しているのに気づき、クラクションを鳴らす。
ハミルトンは運転席に座りなおすが、回避するだけの時間はない。
レイは大きくハンドルを切り、トラックは道路からはずれてトウモロコシ畑のなかへ突っ込んでいく。
トラックは横転し、天地が逆さまになった状態で停止する。クラクションが鳴り響く。

ハミルトンは車を止め、息をあえがせる。その時、一台の車が近づいてくる。
ハミルトンは急いで車を発車させて、その場から逃げ去っていく。
近づいてきた車は路肩で停止する。車を運転していたのは、ピートである。

ピートは車からおり、トウモロコシ畑のほうを見る。
トウモロコシの列の間に、トラックの赤いテールライトが見える。
クラクションが間断なく鳴り響いている。
ピートは畑に向かって走り出し、トラックの横にひざまずく。

ピート:(窓を叩いて)ちょっと、おじさん、大丈夫?

運転席のレイは逆さまになったまま、呆然として何かを見つめている。
ピートはそちらに目を向ける。
トラックのそばのトウモロコシ畑のなかに、クラークの宇宙船が横たわっている。
ピートの顔に衝撃が走る。

[オープニング・タイトル]

第1幕 第1場

ケント家の納屋の外。
クラークが一人でバスケットをしている。
クラークはボールをドリブルして、ゴールからかなり離れたところに立つ。
クラークは常人離れしたシュートを放ち、見事に決める。
そして、ボールが地上に落下する前に、超スピードで移動して、ボールを受け止める。
クラークは元の場所に戻り、もう一度シュートを放とうとする。
その時、車に乗ったピートがやって来て、クラクションを鳴らす。

ピート:おいおい、クラーク。そんなとこからシュートできるわけないだろ。
クラーク:いや、その、ボールがここまで転がってきたんだよ。ゲームでもする?
ピート:(車からおりて)バスケなんかどうでもいい。お前の親父さんのトラックを借りよう。
クラーク:どうして?
ピート:途中で説明する。さあ、時間がないんだ。
クラーク:何があったのさ?
ピート:話しても、信じやしないさ。自分の目で見ないとな。

場面変わって、トウモロコシ畑。
クラークとピートが横転したトラックのところにやって来る。
ピートは宇宙船に近づきながら、トランペットのような音を出す。

ピート:衝撃の光景だろ、ええ?
クラーク:(ショックを受けて)これ何だと思う?
ピート:クラーク、宇宙船に決まってるだろ! それ以外に何があるっていうんだ?
クラーク:いや、その、よくわからないけど、墜落した特殊飛行機とか、ロシアの衛星とかさ。
ピート:いやいや。どっからどう見ても、地球外の物だって。
クラーク:そうだな。きっとトウモロコシ畑には緑の小人も走り回ってるんだろうな。
ピート:クラーク、俺はマジで言ってるんだ。今までにこんなものを見たことがあるか?
クラーク:もしエイリアンが地球に来るとしたら、スモールヴィルみたいな田舎町に来ると思う?
ピート:いやいや、考えてもみろよ。
    ミステリー・サークル、ウシの集団虐殺。
    こいつはそんなもの目じゃないぜ。さあ、これをトラックに乗せようぜ?

ピートは宇宙船に手をかける。

クラーク:おい、これを持ち去る気か?
ピート:クラーク、俺は保安官に質問された時、
    パニくっててどこにトラックがあったのか覚えてませんって言ったんだ。
    けど、保安官がここにやって来るのは時間の問題だ。さあ早く。ほら?
クラーク:わかった。僕の家に持っていこう。
ピート:ダメだ。お前の父さんのことだ、警察に引き渡せって言うに決まってる。
クラーク:父さんには言わないよ。絶対気がつかないさ。
ピート:クラーク、こいつは俺の家に運ぶ。裏庭の物置小屋に隠すんだ。
     あそこには誰も近寄らないからな。
クラーク:ピート、僕の家のほうがいい。そこなら安全だ。
ピート:クラーク、言っとくが、これを見つけたのは俺だぞ。
    まるで自分の物みたいな言い方だな。さあ、俺の家に運ぼう。

クラークはしぶしぶピートを手伝って、宇宙船を運んでいく。

第1幕 第2場

レックスが書斎で飲み物を作っている。
ライオネルが召使いとともに入ってくる。
ライオネルはサングラスをかけ、杖を使って歩いている。

召使い:こちらです。
ライオネル:レックス? そこにいるのか?
レックス:ああ、親父さん、ここにいるよ。すまない。来るとは思ってなかった。

召使いはライオネルの上着を脱がそうとするが、ライオネルはその手を振り払う。

ライオネル:いい。出て行け。

召使いは出て行く。

レックス:何か問題でも? 
     (ライオネルを椅子に座らせて)
      順調に回復してると医者から聞いたけど。
ライオネル:その通りだ。
       実際、つらい理学療法をやめて、
       少し休息したほうがいいとローランド博士も言っておった。
       メトロポリスで仕事に追われるような、
       ストレスの多い生活から遠ざかったほうが健康にはいいそうだ。
レックス:他に行く場所はいくらでもあっただろうに、わざわざここに?
ライオネル:父と子の触れ合いができると思ってな。
       お前はいつも、わたしにはその点が欠けていると言っておったしな。
レックス:いつまでここにいるつもり?
ライオネル:2、3日。1週間ほどかも。
レックス:ビーチハウスのほうが気楽に過ごせるんじゃないかな。
      海辺の空気のほうが元気がでると思うけど。
ライオネル:レックス、それはわたしにここにいてほしくないということかな?
レックス:そうじゃない。父さんにとって一番いいことを望んでいるだけだ。好きなだけここにいてくれ。

レックスはしぶしぶといった表情を浮かべる。

第1幕 第3場

タロンにて。ネルと新しい恋人のディーンが座っている。

ディーン:(ネルの肩にキスしながら)だめだよ。

ネルは笑う。ラナが気まずそうな様子で、伝票を持って近づいてくる。

ディーン:(咳払いして)やあ、ラナ。
      ちょっと考えてたんだが、あのテーブルをカウンターからどければ、
      もっとスツールを置く場所ができるんじゃないか。客が増えれば、収入も増える。
ネル:いいアイデアだわ。
ディーン:(腕時計を見て)行かなきゃ。
      (ネルとディーンはキスをする。ラナは目をそらす)
      今夜会おう。じゃあな、ラナ。
ラナ:さよなら。
ネル:彼って素敵でしょ?
ラナ:ええ、そうね。

ラナは店から出て行くディーンの後ろ姿を見送る。入れ違いに、クロエが入ってくる。

クロエ:ハイ。
ラナ:ハイ。
ネル:こんにちは、クロエ。
クロエ:どうも。
ネル:外泊はどうだった? 二人ともちゃんと勉強した?
クロエ:(何のことかわからずに)ええと、その、正直に言うと…
     (ラナがクロエに目で合図をする)…あたしたち、勉強はしなかったんです。
     キアヌ・リーヴスのDVDパーティーをしてたんですよ。
     あの茶色の目を見てたら、数学なんてどうでも良くなっちゃって。
ネル:まあ、二人とも楽しんだのならいいわ。成績を落とさないようにね。

ネルは立ち上がって出て行く。

クロエ:はい。
ラナ:それじゃ。
ネル:じゃあね。
ラナ:(クロエに向かって)ありがとう、クロエ!
クロエ:ええ、前もって教えてくれてたら、
    キアヌのDVDパーティーよりはマシな言い訳も思いついたんだけどね。
ラナ:ごめんなさい。間に合わなくて。
   どうしても家を出たくなって、友達の家に泊まるってネルおばさんに言っちゃったの。
   一番最初にあなたのことが頭に浮かんだから。
クロエ:本当に?
ラナ:本当よ。
クロエ:じゃあ、昨夜はどこにいたわけ? 新しい男でもできたの?
ラナ:まあね。ディーンっていう人。さっきすれ違ったでしょ。
クロエ:年上とつきあってるの?
ラナ:違うわ。彼はネルおばさんの新しい恋人よ。
    保険の査定人で、竜巻の後で出会ったの。
    いつも近くにいて、いつでもイチャイチャしてるのよ。
クロエ:別の場所でやってくれって言いたいけど、おばさんの家だしね。
ラナ:そうなのよ。居間でスローダンスなんか踊ってたもんだから、タロンにいることにしたの。
クロエ:ねえ、今度また家に居づらくなったら、嘘なんかつかなくてもいいわよ。
     本当にあたしの家に来ていいから。いつでもね。
ラナ:ありがと。

第1幕 第4場

ジョナサンのトラックに乗ったクラークたちが、ピートの家にやって来る。
荷台の上の宇宙船には、防水シートがかけられている。
クラークとピートは宇宙船を物置小屋に押し込む。

ピート:ふう、なんて重さだ。
クラーク:そうだね。
ピート:クロエに電話してくる。
クラーク:待って、ダメだよ。
ピート:なんでだよ? クロエにとっちゃ、こいつは聖杯みたいなもんだぜ。
クラーク:宇宙船の記事を書くじゃないか。
ピート:だからだよ。そうすりゃ、俺たちは有名人だ!
    本を書いて、トークショーに出演して、映画の契約書にサインするのさ?
クラーク:もう少しはっきりした事がわかるまで、二人だけの秘密にしておいたほうがよくないか?
ピート:クラーク、なにをためらってんだよ。
     トラックの運転手が誰かにもらす前に、俺たちがこれを公表しないと。
クラーク:クロエにこの事を話して、
      その後でこれが最新型の農薬散布機か何かだとわかったら、どうなると思う?
ピート:一生恨まれるだろうな。
クラーク:その通り。謝罪記事のネタにされるのがオチだよ。
      君はいいかもしれないけど、僕はそんなリスクを冒すつもりはないね。
ピート:どうやって開けると思う?

クラーク:わからない。 (バールを手渡して) ほら。これで試して。
     僕は町に行って、誰かが宇宙船に関することを言ってないかどうかチェックしてくる。
ピート:わかった。
クラーク:明日の朝、またここに来るよ。
ピート:わかった。じゃな。

ピートはバールで宇宙船をこじ開けようとし始める。

第1幕 第5場

ケント家の居間。クラークがジョナサンとマーサに話している。

ジョナサン:で、今はどこにあるんだ?
クラーク:ピートの物置小屋。
マーサ:ピートは誰にも話してないのね?
クラーク:明日の朝まで記者会見は開くなって言っておいたけど。
ジョナサン:冗談を言ってる場合じゃない。宇宙船を取り戻さないと。
クラーク:どうするのさ? 盗むのかい? 
      (ジョナサンはじっとクラークを見つめる) ちょっと待ってよ。
      宇宙船がなくなったことをピートに聞かれたら、何て答えればいいのさ?
ジョナサン:とぼけるしかないだろう。
クラーク:嘘をつくのは嫌だ。
ジョナサン:クラーク、他に選択の余地はないんだ。
クラーク:ピートに真実を話したっていい。
ジョナサン:クラーク…。
クラーク:ピートなら誰にも言わないよ。
マーサ:どんなに信頼のおける友人でも、口をすべらせる時はあるわ。
ジョナサン:これはピートにとって危険すぎる。
マーサ:この秘密が重荷になることはわかってる。
     でも、もしあなたがピートに秘密を話せば、ピートにも重大な責任を負わせることになるのよ。

第1幕 第6場

スモールヴィル医療センター。ハミルトンがグレン医師と話している。

グレン:これは、いつもみたいな細胞の突然変異の件とは違うんだ。
     けど、興味を持つかなと思ってさ。
ハミルトン:(痙攣する手を抑えながら)部屋番号は?
グレン:その、医大で借りた借金の返済に困っててね。 
     (ハミルトンはポケットから札を出して、グレンのコートのポケットに押し込む。
      グレンはハミルトンの手に気づく) 診てもらったほうがいい。
ハミルトン:(グレンを壁に押しつけ)部屋番号を言え?

場面変わって、レイの病室。ハミルトンが入ってくる。

レイ:誰だ?
ハミルトン:(カルテを見ながら)ハミルトン医師だ。気分はどうかね?
レイ:頭をブルドーザーでつぶされたみたいだ。
ハミルトン:グレン先生から聞いたが、昨夜、トウモロコシ畑で宇宙船を見たそうだな。
レイ:たわ言をほざいてたのかな。たくさんモルヒネを注射されたから。
ハミルトン:この事を誰にしゃべった?
レイ:別にあんたには関係ないだろ。
ハミルトン:学者として興味があるんだよ。
       畑を調べたが、茎の倒れた跡が残っているだけだった。
       茎を倒した何かは、なくなっていた。
レイ:ちっ。やっぱり黙ってるべきだったな。誰かが盗んだんだ。
ハミルトン:では、昨夜、たしかに宇宙船を見たんだな。 
       (ハミルトンは瓶から錠剤を飲む) 他にこの事を知っている者は?
レイ:誰もいねえよ。
ハミルトン:ふん。
レイ:ああ、あの子がいる。俺をトラックから出してくれた少年だ。ピート・ロス。 
    (レイはハミルトンの顔を見て) どこかで会ったことがあったか?
ハミルトン:いいや。
レイ:あんた、昨夜、車を運転してた男じゃないか。お前のせいで、俺は事故をおこしたんだ! 
   (レイは呼び出しボタンに手を伸ばすが、ハミルトンはそれを奪い去る) 誰か来てくれ?

ハミルトンはレイの体につながっているモルヒネ入りの注射器をつかむ。

レイ:誰か?

ハミルトンは注射器のシリンダーを押し、一気にモルヒネを流し込む。
レイは意識を失い、やがて心臓が停止する。

第1幕 第7場

夜。クラークとジョナサンがピートの物置小屋へと向かう。
小屋の扉を開ける。だが、そこに宇宙船はない。

クラーク:そんな。僕らよりも先に誰かが来たんだ。
ジョナサン:今夜、犯人を見つけるのは無理だろう。

場面変わって、家の外。立ち去る二人の姿をピートが目撃する。
二人はピートの存在に気がついていない。

第1幕 第8場

翌日。クラークが家の外に出てくる。
車道のところで、ピートが自分の車の上に腰かけている。

クラーク:ピート。話をしにいこうと思ってたんだ。
ピート:へえ、そうか?
クラーク:ああ、宇宙船のことで…。
ピート:昨夜、誰かが小屋に侵入して、盗んでいった。
クラーク:本当に?
ピート:ああ。
クラーク:宇宙船のことを誰かにしゃべった?
ピート:いや。お前は?
クラーク:(少し間をおいて)いいや。一言もしゃべってないよ。
ピート:とんでもない嘘つき野郎だな。
クラーク:どういう意味?

ピート:昨夜、お前と親父さんが物置小屋から立ち去るところを見たんだよ。
    俺は一晩中、これには何か理由があるに違いないって考えてた。
    クラーク・ケントがそんなことをするはずがないってね。
クラーク:ピート、宇宙船を盗んだのは僕らじゃない。
ピート:俺は今までずっと、お前のことを親友だと思ってたよ。

ピートは身をひるがえして、車に乗ろうとする。

クラーク:ピート、待ってくれ。君は知らないんだ。
ピート:何を知らないってんだ? なら、説明してくれよ、クラーク。
     (クラークはどう言っていいのかわからない) ああ、そうかい。よくわかったよ。
     クロエが聞いたら何て言うかな。
     (ピートは車に乗り込む) 見出しが目に浮かぶよ。『クラーク・ケント 正体を現す』ってな。

ピートはエンジンを始動させ、車道から出て行く。バックミラーでクラークの姿を確認する。
クラークはその場に立ち尽くしている。ピートはもう一度バックミラーを見る。
いつのまにかクラークの姿が消えている。
突然、クラークが車の前に現れ、ボンネットを押さえて、車を停止させる。
後輪が激しく回転するが、車は前に進まない。

クラーク:ピート、話がある。

ピートは驚き、後ろを振り返ってから、目の前にいるクラークを見つめる。

暗転

 

第2幕 第1場

宇宙船が隠してあったケント家の地下室。クラークとピートが話している。

ピート:つまり、お前はその…人間じゃないってことか?
クラーク:自分が何者なのかはわからない。あの宇宙船がどこから来たのかもわからない。
      僕にわかっているのは、このスモールヴィルで育ったということ、
      そして、僕にとって大事な物や大切な人は全部ここにあるということだよ。
ピート:そんなに俺が大切だというなら、どうして今まで話してくれなかったんだ?
クラーク:ピート、信じてほしい。君に話したいと思わない日はなかった。
      でも、父さんも母さんもそれは危険すぎるって思ってる。
      僕にとってだけじゃなく、真実を知る全ての人にとって危険なんだ。
ピート:俺は真実に耐えられないとでも?
クラーク:じゃあ、耐えられるのかい?

ピートはクラークをためつすがめつしながら周りを回る。

クラーク:ピート、僕が話さなかったもう一つの理由は、
      みんなが今の君みたいな目つきで僕のことを見るからさ。
ピート:目つき?
クラーク:フリークを見るような目さ。
      僕は今までずっと目立たずに、他のみんなと同じになるように努力してきた。
      何とか言ってくれよ。 
      (ピートは答えない) エイリアンと呼んでもいい、怪物でもかまわない。
      何かしゃべってくれよ。
ピート:俺はお前のことを何も知らなかった。
クラーク:知ってるとも。君の家の裏庭で一緒にキャンプをした。
      森のなかで一緒に自転車に乗った。君のお兄さんたちとバスケもした。
      何も変わってないよ。
ピート:ああ、そうかよ。
クラーク:(一歩近づいて)ピート…。
ピート:(はっと後ずさり)触るな!
クラーク:ピート、僕は君を傷つけたりしない。
ピート:もう手遅れだよ。

ピートは地下室から出て行く。

第2幕 第2場

ハミルトン博士が研究所として使っている納屋のなか。ハミルトンは宇宙船を分解しようとしている。
手を伸ばしたハミルトンは、八角形の溝の部分に触れる。

ハミルトン:(その場所を確認して)ああ、ここか!
       (宇宙船を叩いて) ここだったのか。

第2幕 第3場

レックスの書斎にて。レックスとハミルトンが話している。

レックス:ハミルトン博士、俺たちのビジネス関係は終わったと言ったはずだが。
ハミルトン:退職金をもらいに来たんだよ、レックス。俺が発見した八角形のディスクだ。
レックス:なぜだ?
ハミルトン:俺の研究なんかどうでもいいんだろう? お前には関係あるまい。
レックス:ここにはない。竜巻の時に失ってしまった。
ハミルトン:(机の上の物を押し倒し)嘘だ! あれはキーなんだ!
       お前が持ってるのはわかってる! おぼえてろ!

ハミルトンは書斎を出て行く。廊下でハミルトンはライオネルとすれ違う。
ライオネルは壁を伝いながら、杖を使って歩いている。
ハミルトンは立ち止まって、ライオネルのほうを向く。

ハミルトン:ミスター・ルーサー。
ライオネル:何かね?
ハミルトン:俺はスティーブン・ハミルトン博士だ。
       息子さんのために、カドマス・ラボで隕石に関する極秘研究をしていた。
ライオネル:ふむ。おもしろい話だ。
ハミルトン:残念なことに、レックスは…短気で先見の明がない。
       俺たちの関係は破綻した。でも、あんたがいる。
       あんたは…ビジョンのある男だという評判だ。
ライオネル:博士、今のわたしは目が見えないんだがね。
ハミルトン:あんたのような人間には目なんかなくても、未来を見通せるし、
       チャンスを見逃すはずはないさ。
ライオネル:お世辞は結構だ。要点を言いたまえ。
ハミルトン:天地がひっくりかえるような物を発見したんだ。それをあんたに見てほしい。

第2幕 第4場

高校にて。ピートがロッカーのところにいる。クラークが近づく。

クラーク:ヘイ、ピート。ねえ、君がパニくってるのはわかる。
      僕だって時々パクくるくらいなんだからさ。 
      (ピートは黙っている) わかったよ。君が僕を憎むのも仕方がない。
      でも、どうしても宇宙船を見つけなきゃダメなんだ。 
      (ピートのそばにいた女子学生が、クラークをおかしな目で見て立ち去っていく) 
      君がトラックから助けた男、彼が誰かにしゃべったんだ。だから…。
ピート:この前、宇宙船を運んでた時、お前は重いって言ってたよな。
    あれ、嘘だったんだな。お前は毎日バスに乗り遅れ、それでも俺より早く学校に着いてた。
    車に乗せてもらったって言ってたけど、あれも嘘だったんだな。
    今まで俺が何でも話せるのはお前だけだった。俺は自分の秘密を全部お前に話した。
    けど、お前はどうだ? 今まで話したことは全部嘘じゃないか?
クラーク:そんな言い方をするなんて、やっぱり話したのは間違いだったかな。
ピート:クラーク、何もわかってないんだな。俺は別にお前が月から来ようとかまわない。
    お前は俺のことを信頼してなかったんだ。それが友情だって言えるのか?

クロエが近づいてくる。

クロエ:ハイ。どうしてスーパーヒーロー事件について教えてくれなかったわけ?
    (二人は驚いてクロエを見る) ピートがトラックの運転手を助けて病院に運んだんでしょ?
     トーチの独占記事になるわ。ねえ、インタビューはどう?
ピート:また今度な。
クロエ:そんなふうに嫌がるところを見ると、
     宇宙船を隠蔽しようとする陰謀に関わってるんじゃないでしょうね?
クラーク:な…何の話だい?
クロエ:医療センターの情報筋から連絡があったの。
    ピートが運んできた男は、トウモロコシ畑にエイリアンの宇宙船が墜落したとか
    何とかブツブツ言ってるらしわ。
クラーク:そんなことを本気で信じてるのかい?
クロエ:さあねえ。ピートが裏づけをしてくれればね。
ピート:いいとも、クロエ。俺は宇宙船を見た。エイリアンにも会ったぜ。
クロエ:ほんと? どんな姿だった?
ピート:クラークにそっくりだったよ。
クロエ:(クラークを見て)エイリアンって緑の小人じゃなかったっけ。
ピート:事実は小説より奇なりさ。

ピートは立ち去る。

クロエ:ねえ、彼、どうしたの?
クラーク:男の問題さ。ねえ、そのUFO事件を本気で調べるのかい?
      まるで『インクイジター』のゴシップ記事みたいだけど。
クロエ:かもね。でも、少しでも真実があれば、一面の記事になるわ。デイリー・プラネットのね。

クロエは歩き去る。

第2幕 第5場

ケント家の台所にて。卵の入ったボウルを抱えて、クラークが入ってくる。カウンターのところにレックスが
座っている。

クラーク:レックス?
レックス:やあ。君のお母さんにここで待っていてもいいと言われたんだ。
クラーク:どうかしたの?
レックス:ちょっと屋敷を出たかったのさ。人が多くてな。
クラーク:75部屋くらいあるのに?
レックス:ああ、親父が部屋を占領しててな。
クラーク:(うなずいて)いつメトロポリスに帰るの?
レックス:しばらく先の話だな。
クラーク:お父さんって、そんなに難しい人なの?
レックス:その反対だ。やさしさの代名詞みたいにな。俺たちの親子関係を修復したいとさ。
クラーク:それって悪いこと?
レックス:親父は数多くの嘘をついてきた。裏の意図がないとは信じられん。
クラーク:少しは信じてあげてもいいんじゃない?
レックス:いや。一度嘘をついた人間を、俺は二度と信用しない。 
      (クラークは目をふせる)
     ところで、俺のデスクの上にあったペーパーウエイトを覚えてるか? 八角形の?
クラーク:うん。なんとなく。どうして?
レックス:ふと思ったんだ。あれはどうなったのかなって。
クラーク:いつなくしたの?
レックス:竜巻の時だ。
クラーク:他の残骸と一緒に、屋敷から吹き飛ばされたんだよ、きっと。
レックス:ああ、きっとそうなんだろうな。

レックスはドアへ向かう

クラーク:がんばって。

第2幕 第6場

ハミルトン博士の納屋。ハミルトンとライオネルがいる。ライオネルは宇宙船に触っている。

ライオネル:懐疑的なことを言わせてもらうが、
       わたしには、これは前衛芸術のコーヒーテーブルだとしか思えないんだがね。
ハミルトン:ふん?
ライオネル:これが宇宙船だと、どうして信じなきゃならない?
ハミルトン:今あんたが触っている金属は、元素周期表には載っていない物質でできているんだ。
ライオネル:ふむ。
ハミルトン:その金属のなかにある物質は、隕石のなかにも存在している。
ライオネル:証拠を出したまえ。
ハミルトン:(ライオネルの手をとって、八角形の溝を触らせる)ほら。わかるか?
ライオネル:ああ…。
ハミルトン:一つ…部品が足りないんだ。
       俺とレックスは隕石の墜落現場を調査していて、
       八角形の形のディスクを発見したんだ。この穴にぴったりはまるディスクさ。
ライオネル:それで、君は…。
ハミルトン:それが宇宙船を開けるキーなんだ。あんたが探してる証拠も手に入る。
       だが、レックスは俺にディスクを渡そうとしないんだ。
ライオネル:ディスクが手元にないのかもしれんぞ。
ハミルトン:ならどこにあるんだ?
ライオネル:博士、その質問に答えられたら、わたしが資金を提供してもいいぞ。

ハミルトンは微笑む。

第2幕 第7場

夜。クラークが納屋に入る。ラナが望遠鏡をのぞいている。

クラーク:ラナ? 何してるの?
ラナ:ああ、あの、もう家に帰っても大丈夫かなって、望遠鏡で見てたの。
クラーク:ネルおばさんから隠れてるの?
ラナ:おばさんの恋人のディーンから。
クラーク:ふうん、その人のことが好きじゃないんだ。
ラナ:手っ取りばやく言うと、そうなるかな。
   でも、あたしは嘘をつくのが下手だから、顔を合わせないようにしてるの。
クラーク:僕も同じようなものかな。
ラナ:どうかしたの?
クラーク:誰かに本当のことを話して嫌われたことってある?
ラナ:ええ。ホイットニーよ。あたしの気持ちを話したの。別れようって。
クラーク:本当に言ったんだ。君がはっきりと別れを決意するなんて思ってなかったよ。
      また友達になれると思う?
ラナ:いつかね。そう願うわ。もっと早く本当のことを告げてれば良かった。
クラーク:僕はピートと、その、大喧嘩をしたんだ。このまま絶交になるかもしれない。
ラナ:喧嘩の原因はなに?
クラーク:それはちょっと言えない。
ラナ:いつものことね。
クラーク:え?
ラナ:クラーク・ケントが真実を話すことについて会話を切り出す。
   それなのに、彼が真実を話す番になると、突然口ごもって、全ては暗い闇のなか。
クラーク:ラナ、ピートのことは個人的なことなんだよ。
ラナ:あたしがホイットニーについて話したことは個人的なことじゃないの?
クラーク:全てを打ち明けたほうが楽になるって思う人もいるんじゃないかな。
ラナ:楽になることなんてないと思う。
   でも、もし誰かのことを大切に思っているのなら、打ち明けるべきね。
クラーク:なら、君はネルおばさんに話をするべきだよ。君の本当の気持ちについて。
ラナ:あなたの言う通りね。真実を隠せば、人を遠ざけるだけ。

ラナは出て行く。

第2幕 第8場

夜。ピートの物置小屋のなか。
ハミルトンが必死になって何かを探している。物音を聞きつけたピートが入ってくる。

ピート:おい、あんた、そこで何をしてるんだ?
ハミルトン:(ピートの目に懐中電灯の光を当て)宇宙船の部品が足りない。
ピート:あんたが宇宙船を盗んだのか?
ハミルトン:八角形の形で、手のひらサイズ。どこにあるのか言え?
ピート:あんたの顔、知ってるぞ。ハミルトン博士だろう。 
    (ハミルトンはピートを壁に押しつける) あんた、相手が誰だかわかってるのか? 
    あの宇宙船は、あんたよりずっとタフなやつのものなんだぞ?
ハミルトン:持ち主が誰か知ってるのか。
ピート:な、何も知らないよ。
ハミルトン:言え! 誰だ、誰なんだ?

ピートはハミルトンを押しのける。
だが、ハミルトンはピートを床に押し倒し、ピートは気絶してしまう。

暗転

第3幕 第1場

夜。クラークとマーサが台所にいる。ジョナサンが入ってくる。

ジョナサン:新聞を調べてみた。警察無線も、UFOのウェブサイトもね。
       宇宙船に関することは何一つ見つからなかった。
マーサ:安心していいのか心配していいのかわからないわ。
ジョナサン:レイ・ウォレスのことを考えていたんだ。
       彼が亡くなる前にピートが見舞いに行ってたとしたら、
       ひょっとすると…宇宙船の手がかりについて、ピートに何か話してたかもしれない。
クラーク:可能性はあるね。
ジョナサン:クラーク、もう一度ピートと話をしてくれ。
クラーク:無理だよ。
ジョナサン:どうして?
クラーク:ピートが口をきいてくれないんだ。
マーサ:何かあったの?
クラーク:あの、二人とも怒らないでほしいんだ。いいね? 
      ピートに話したんだ…何もかも。仕方がなかったんだ。ピートに見られて…。
ジョナサン:仕方がなかったとはどういう意味だ? まず私たちに相談することだってできたはずだ。
クラーク:それでどうなるのさ? また別の嘘を考えるわけ?
マーサ:クラーク、ピートは他の人にしゃべったりしないでしょうね。
クラーク:ピートがどうするか、僕にはよくわからない。すごく怒ってるんだ。

電話が鳴る。

マーサ:もしもし? いえ、ここにはいないけど。わかったわ。
     できることがあれば何でもする。それじゃ。
     (電話を切る) ピートのお母さんからよ。ピートが行方不明だって。

第3幕 第2場

タロンにて。ラナとネルがコーヒーを飲んでいる。

ネル:すてきだわ、ラナ。
    わたしがディーンとつきあいだしてから、二人でゆっくり話したことなんてなかったものね。
ラナ:実は、そのことで話がしたいと思ってたの。ディーンは本当にいい人だと思うわ。ただ…。
ネル:言わなくてもわかるわ。テーブルの位置は今のままにしておきたいんでしょう?
ラナ:そんなにあからさまだった?
ネル:そのことなら、もうディーンとじっくり話しあったわ。
    ラナは立派な大人なんだから、余計なアドバイスをする前に、
    もっとよく…その、ラナのことを知りなさいって。
ラナ:ありがとう、ネルおばさん。本当にありがとう。
ネル:ラナ、わたしはあなたの気持ちを大事にしたいの。
    ディーンにとっても大事なことだと思うわ。
    だからもっと一緒に時間を過ごしたいの。三人で、家族として。
ラナ:家族。
ネル:もっと仲良くなるまで黙ってるように言われたんだけど、
    でも、その、わたしは秘密を黙っていられないたちだから。
    あのね、ラナ、わたしディーンに結婚してくれって言われたの。
ラナ:ええっ! それで、何て答えたの?
ネル:『はい』って?

ネルはうれしそうに笑う。

第3幕 第3場

ハミルトン博士の納屋。ピートが梁に縛りつけられている。

ハミルトン:(痙攣しながら)宇宙船だ。答えるんだ! あれは誰のものなんだ?
ピート:な、なあ…ちょっとカマかけただけだよ。あんたがビビると思ってさ。
    宇宙船の持ち主なんか知らないよ。
ハミルトン:嘘をつくな?
ピート:(ハミルトンの手を見て):なあ、あんた病気だろう。
    ほどいてくれよ。医者を呼んでくるからさ。
ハミルトン:ああ、これか。医者に治せるとでも思うのか?
       やつらは何が原因で俺が死にかけてるのかもわかっちゃいねえ?
ピート:死にかけてる?
ハミルトン:ああ。だが、その前にやることがある。
       俺は三流サーカスの変人なんかじゃねえ。
       道端で隕石のかけらを売ってるインチキ博士なんかじゃねえってことを証明してやる。
       お前が俺の知りたいことをしゃべらないなら、お前も道連れにするまでさ?

ハミルトンは額の汗をふく。

第3幕 第4場

レックスの書斎にて。ライオネルがペン型の装置を使って、本を読んでいる。
ライオネルがペンをページに走らせると、機械の声が文章を読み上げる。
そんなライオネルの様子をレックスが戸口のところから眺めている。

声:ハミルトンは、隕石の破片が郡道17号線の南部に集中していると報告しています。
これらの破片のサイズは周囲の長さが24ミクロンから562ミリのものまで多岐にわたっています。

レックス:おもしろい内容だな。
ライオネル:レックス。足音が聞こえなかったよ。
レックス:驚いたな。視力を失って以来、他の感覚が鋭くなったってローランド先生も言っていたがね。
ライオネル:彼と話したのか?
レックス:驚いたよ。父さんが治療を無断で放棄したので心配しているそうだ。
      このところ理学療法を受けていないとか。
      今の父さんにとっては、専門の治療を受けないことが一番良くないと言っていたよ。
ライオネル:(サングラスをはずし)セラピストの医者どもには四六時中いじくり回され、
       点字の教師からは『そのうち慣れますよ』などと言われることが、
       どれほど不愉快か考えたことがあるか?
       本当のことを言おうか、レックス。
       わたしは病人のように、モノ扱いされるのがたまらないんだよ。あの治療には耐えられん。
レックス:だから、エディプスのように父子の葛藤を演じて、気分を紛らわそうとしたわけか?
ライオネル:その例えはおもしろいが、適切ではないな。盲目になったエディプスは息子だ。
       父親ではない。わたしはメトロポリスへ戻ろう。
レックス:その…突然ハミルトン博士に興味をもったのは、ただの偶然か?
ライオネル:彼の仕事には興味をもっているよ。
レックス:彼は病気だ。妄想にとりつかれてる。
ライオネル:レックス、変人や狂人を甘く見ないことだな。
        アーサー王には魔法使いマーリンがいる。
        ハミルトンは、お前が何かの…ディスクを発見して持っていると言っていたが。
レックス:彼の誤解だ。
ライオネル:だとしても、彼を解雇したのは、少し性急だったな。
レックス:どうしてそう言える?
ライオネル:最近、博士の納屋のなかを見たかね?

第3幕 第5場

高校の外。クロエが紙を見ながら歩いている。クラークが近づく。

クラーク:クロエ、ピートを見なかった?
クロエ:いいえ。でも、超常現象アンテナに反応があったわ。

クロエはクラークに紙を手渡す。

クラーク:病院の訪問者リストじゃないか。
クロエ:ええ。レイ・ウォレスの死亡事件を調べてたら、死亡する直前に、
    訪問者がいたことがわかったの。あのスティーブン・ハミルトン博士よ。
クラーク:隕石狂の?
クロエ:そう。
クラーク:スモールヴィルから出て行ったんだと思ってた。
クロエ:あたしも。ピートは怪我人を助け、ハミルトンは怪我人を訪問した。
クラーク:怪我人は死んで、ピートが行方不明になった。
クロエ:犯人だという確証はないけど、でも…。
クラーク:十分だ。僕はハミルトンを調べてみる。

クラークはクロエに紙を返し、超スピードで走り去る。

クロエ:そうね。昔はアレンタウン通りにいたそうよ。もしかしたら、今でもそこに…。

クラークがいないことに気づく。

クロエ:クラーク? クラーク?

第3幕 第6場

ハミルトンの納屋。ハミルトンはピートのそばに椅子を置く。
テーブルから注射器を取って椅子に座る。

ピート:何をする気だ?
ハミルトン:腕が痙攣してるのがわかるだろ? 隕石に長時間さらされた結果さ。
       (ハミルトンは注射器に緑色の液体を入れる) 
       この液体を注射すれば、俺の痙攣なんかとは比べものにならないほどの
       ショックを味わうことになるぞ。
ピート:待ってくれよ。何も知らないって言ったじゃないか。
ハミルトン:そいつは嘘だ。誰かをかばってるな。死んでも守りたいほどの誰かをな?

ハミルトンはピートの首に注射器の針を向ける。

ピート:わかった、わかった! 話せばいいんだろう。話すよ…
    いいか、その針をどこでも好きなところに刺しやがれ。
    お前になんか一言もしゃべるもんか?

ハミルトンは注射器のシリンダーを押す。注射針の先端から緑の雫がしたたり落ちる。
注射針がピートの首に近づく。

暗転

第4幕 第1場

注射針がピートの首に近づく。ピートはぎゅっと目を閉じる。
針がささる直前、クラークが壁を突き破って納屋に飛び込んでくる。

クラーク:ピート! (ハミルトンに) 注射器をおろせ?
ハミルトン:いいや。こいつが知ってることを吐くまではな。

クラークは注射器に向かってヒートビジョンを放つ。
注射器は破裂する。クラークはピートのもとに駆け寄る。
ハミルトンはクラークを止めようとするが、クラークに突き飛ばされて、ドラム缶にぶち当たる。
クラークはピートをしばっていたロープを引き裂く。
しかし、ロープに残っていた液体が、クラークの肌に触れる。
クラークの手の血管が脈打ち、緑色に染まる。
クラークはその場から離れようとするが、力を失い、床に倒れこんでしまう。

ピート:クラーク、どうした?
クラーク:隕石に弱いんだ…。

ハミルトンが立ち上がり、緑色の液体の入ったビーカーを手にとる。
ハミルトンはクラークを見下ろすように立つ。

ハミルトン:(ビーカーをクラークの頭の上にかざして)この宇宙船はお前のものだな?
       開けろ! 開けろ! 開けるんだ?

ピートは足をしばっていたロープをほどき、大きな金属容器をつかむと、
それでハミルトンの背中を殴りつける。ハミルトンは別のテーブルにぶつかって倒れる。
テーブルの上にあった別のガラス瓶から、緑色の液体がこぼれ、ハミルトンの額に落ちる。
液体はハミルトンの皮膚のなかへと吸収されていく。

ピート:(クラークの肩をつかみ)クラーク、立つんだ?

ハミルトンは恐るべきスピードで痙攣をはじめる。

クラーク:ピート、彼を病院に連れていかないと。
ピート:お前を助けるほうが先だ?
クラーク:ピート、彼を助けなきゃ?

ピートはハミルトンのそばに近寄るが、痙攣が激しすぎて手を出すことができない。
やがて、ハミルトンの痙攣が止まる。
ピートはクラークのもとに戻り、クラークをドアへと引っ張っていく。

ピート:手遅れだ。死んだよ。さあ、宇宙船を運び出さないと。

第4幕 第2場

ケント家の地下室にて。宇宙船が元の場所に戻されている。
クラーク、ピート、ジョナサン、マーサがやって来る。

ピート:で、これは何をするわけ?
マーサ:このなかに、クラークに関することや、
     どこから来たのかを知る手がかりがあるんじゃないかと思ってたんだけど、
     開けることができなかったのよ。
ピート:なあ、クラーク…最初俺はこのことを公表しようって思ってた。
    けど、ハミルトンのことを考えると、どうしてお前が今まで俺に黙ってたのか理解できたよ。
    すまなかった。
クラーク:君が怒るのも当然だよ。
マーサ:あなたに怪我がなくて良かったわ。
ピート:もう一つ聞きたいことがある。ハミルトンは俺を殺そうとした。
     お前のことも暴露していたかもしれない。それでも、あいつを救おうとしたのはなぜだ?
クラーク:ピート、僕の秘密を守るために、君を死なせるわけにはいかない。
      他の人たちだって同じことさ。それがどんな人間だろうとね。
ピート:ふっ。お前の人生って苦労の連続だな。
クラーク:だけど、親友が支えてくれるからね。

クラークはピートの体に腕を回す。

ジョナサン:ピート…君はよくやった。
       だが、この秘密を知ることには、大きな責任があることを理解してほしい。
       決して楽な道ではないぞ。
クラーク:要するに、父さんは歓迎するぞって言ってるんだよ。

ピートはほほえみ、マーサは小さく笑う。

第4幕 第3場

ハミルトンの納屋にて。レックスが周囲を見回している。レックスの背後にはライオネルもいる。

ライオネル:ハミルトンが言った通りの形をしているか?
レックス:親父、ここには何もないよ。
ライオネル:ふむ。彼が移動させたか。誰かが奪い去ったか。
レックス:行こう。ヘリコプターが待ってる。
ライオネル:いやいや、わたしはメトロポリスへは戻らん。今はまだな。
レックス:治療はどうする気?
ライオネル:心やさしいセラピストの先生方に、ここまでご足労してもらうさ。
レックス:突然、エイリアンの宇宙船に興味を持ったから、滞在を延ばしたなんて言うんじゃないだろうな。
ライオネル:もちろん、そうではないよ。一人息子とゆっくり時間を過ごしたいからさ。

ライオネルはレックスの顔に触れる。レックスはライオネルの手を取って、出口へと導く。

レックス:そりゃ良かった。これは全部イカサマかもしれないからな。
ライオネル:イカサマかどうかは知らんが、わたし以外にも興味を持った人間がいるようだな。

第4幕 第4場

ケント農場の外。クラークとピートがバスケをしている。
クラークがシュートを決め、ピートがボールをとる。

ピート:(クラークにボールをパスして)そのスーパースピードって、どれくらいだ?
     時速20〜30マイルか?
クラーク:うん。そんなとこかな。

クラークはシュートするが、はずれる。

ピート:(ボールをとって)透視能力のほうは? 女の子を透視したことはあるのか…?

ピートはクラークにボールを渡す。

クラーク:透視できるのは集中した時だけ。それに、僕は人のプライバシーを侵害したりしないよ。
ピート:ホントか?
クラーク:本当だって。

クラークはシュートを放ち、ピートがボールをとる。

ピート:じゃあ、今まで一度も女子更衣室をのぞいたことはないって言うんだな。

クラークにボールを渡す。

クラーク:まあ…一度だけ。
ピート:やるねえ。 
     (クラークはシュートをはずし、ピートがボールをとる) 
     じゃあ、今まで、試合の時は力をセーブしてたってことか?
クラーク:少しね。
ピート:じゃあ、遠慮すんなよ。本当の力を見せてくれよ。

クラークにボールを渡す。

クラーク:やめたほうがいいと思うけど。
ピート:やってみろよ。
クラーク:わかった。

クラークはピートにボールをパスする。

ピート:俺がここでお前をブロックしてみせる。ゴールには近寄らせない。
    お前がどんなパワーを持っていてもな。

ピートはクラークにボールを投げ、クラークはドリブルを始める。

クラーク:行くぞ。

ピートはクラークの動きをブロックしようとする。
しかし、クラークは大きくジャンプしてピートの頭上を軽々と飛び越え、ダンクシュートを決める。
ボールは大きくバウンドして、ピートの手元に戻ってくる。
ピートは驚きの表情を浮かべ、クラークは笑顔を浮かべる。

ピート:(笑)こいつはおもしろくなりそう。

二人はボールを投げあいながら、バスケを続ける。

暗転