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SMALLVILLE(スモール・ビル)
邦題:ヤング・スーパーマン


このエピソードはプロローグ部分までです.


#203 Red

プロローグ

女性の手のアップ。中指には、銀色の指輪が輝いている。

クロエ「やっぱり愛校心を示すのは、こういう安っぽい指輪が一番よね」

クロエが高校の廊下に立っている。クロエの肩越しに「クラス・リング(学生向けの指輪)販売中」という広告が見える。クロエは無感動に自分の指輪を見ている。そんなクロエの様子をクラークとピートが見ている。

クラーク「僕はいいと思うよ、クロエ」

クロエ「そうね。卒業するまで宝石がはがれ落ちないといいんだけど。このルビー、本物かしら?」

クロエは疑わしそうな表情で去っていく。クラークとピートはクラス・リングを販売しているテーブルに近づく。

ピート「本当に買う気か?」

クラーク「だからここにいるんじゃないか」

ピートはクラークを横目で見る。

クラーク「何?」

ピート「お前の親父さんはたしかこう言ったんじゃなかったか。『必要のないものに350ドルも払うことはない』って」

クラーク「自分で稼いだお金だよ。それに、父さんは自分で決めろって言ってたし」

ピート「それはつまり、買うなってことだよ」

ピートはテーブルに近づいて、受付の女性に申し込み用紙を渡す。

場面変わって、金髪の女性のアップ。転校生のジェシーである。ジェシーはへそ出しファッションに身をつつみ、濃い化粧をした派手な女子生徒である。ジェシーはラナに学校内を案内されているところである。ジェシーは周囲の生徒を軽蔑したように見ている。

ラナ「転校初日ってのは大変だと思うけど、質問があったら、なんでも訊いてね」

ジェシー「あんたたちの楽しみって何? 畑仕事? それとも、草むしりとか?」

ラナはジェシーの態度にとまどうが、やさしく答える。

ラナ「ええと…タロンがあるわ」

ジェシー「何それ?」

ラナ「コーヒーショップよ。みんなのたまり場になってるの。でも、あたしの意見は片寄ってるかも。あたしがオーナーだから」

ジェシー「ふうん、後で行ってみるわ」

ジェシーはテーブルのところで指輪を受け取っているクラークとピートに目をとめ、立ち止まる。

ジェシー「わお。あの青いシャツを着たハンサムは誰?」

ラナ「あれは…クラーク・ケントよ」

ジェシー「ラナ、悪いんだけど、彼に学校を案内してもらえないかしら」

クラークは指輪の入った箱を受け取り、なかの指輪を見ている。ジェシーはそんなクラークをじっと見つめている。ラナは落ち着かない様子である。

クラークは指輪を取り出す。それは男性用の指輪で、中央には赤い宝石がついている。クラークは右手の薬指に指輪をはめる。すると、隕石にさらされた時のように、手の甲の血管が脈打ちはじめる。ただし、その色は緑色ではなく、赤である。その赤い波はクラークの腕を駆け上がっていく。

クラークは目を閉じて、深く息を吸い込む。クラークが目をあけると、一瞬、瞳が赤い色に輝く。クラークはゆっくりと息を吐き出す。ピートがクラークの様子に気づく。

ピート「大丈夫か?」

クラーク「ああ、いい気分だよ」

男性の声が聞こえてくる。

ギボンズ「失礼」

クラークは声のした方向を見る。中年のギボンズ校長がラナとジェシーに歩み寄っている。

ギボンズ「ジェシーだね?」

ジェシーはうなづく。

ギボンズ「ラング君から聞いてないかもしれんが、このスモールヴィル高校には服装規定があるんだよ」

ジェシー「ダサい服と超ダサい服?」

その台詞を聞いたクラークが大声で笑い出す。ジェシー、ラナ、ギボンズ校長がクラークのほうを見る。

ギボンズ「何がおかしいのかね、ケント君?」

クラークはにやりと笑ったまま答えない。ジェシーは校長に向き直る。

ジェシー「あたし、自分の服を変えるつもりはありませんから」

ギボンズ「それなら、ちょっと校長室まで来てもらおうか」

校長は歩き出す。ジェシーがその後に続こうとする。すると、クラークが呼び止める。

クラーク「すみません、ギボンズ校長…」

ギボンズとジェシーは立ち止まって、クラークを見る。

クラーク「彼女はイケてると思いますよ。それに、服装規定なんて…最低だし」

ギボンズ「何だと?」

ラナとピートは驚きの表情を浮かべ、ジェシーはにやりと笑う。

クラーク「彼女は転校初日なんでしょ。大目に見てやってくださいよ。 (ギボンズ校長をじろじろと見て) それに、あなたのような人にファッションについてとやかく言う資格はないと思いますけどね」

クラークの大胆不敵な態度に、ラナたちは驚きを隠せない。その時、授業開始のベルが鳴る。

ギボンズ(ジェシーに向かって)「明日、ちゃんとした服装をしてこなかったら…家に帰ってもらうからな」

ギボンズ校長は立ち去る。ジェシーはクラークをじっと見つめ、クラークもジェシーを見つめ返す。ラナが声をかける。

ラナ「じゃあ、学校の案内はここまでにするわ」

ジェシーはもう一度クラークを見てから、廊下を歩き出す。ラナがその後を追いかける。クラークは二人の後ろ姿を見送る。ピートが近づいてくる。

ピート「おいおい。一体どうしたんだよ?」

クラーク「さあ…」

クラークはラナとジェシーのお尻のあたりを見つめている。

クラーク「でも、いい感じだ」

場面変わって、夜。メトロポリスの夜景。続いて、1枚の写真のアップ。それは高校のダンスパーティーの時の写真で、青いドレスを着たジェシーと、タキシードを着た男子学生(カイル)が写っている。とあるロッカー室のなかで、一人の中年男性がその写真をカイルに突きつけている。カイルはジャグジーバスに入っている最中である。

カイル「本当だって。ジェシーの居場所なんて知らないよ」

中年男性(連邦裁判所の執行官)は写真を下ろす。

執行官「なあ、カイル、君が正しいことをしたいというのはわかる。だが、ジェシーと彼女の父親は逃亡中なんだ。二人を連れ戻すのが、わたしの仕事なんだよ」

カイル「あんた、どういう執行官なんだよ?」

執行官「結果を手に入れる執行官さ」

執行官は腰に手を伸ばし、すばやく銃を抜き、撃鉄をおこして、カイルに狙いを定める。

カイル(怯えて)「わかったよ!」

執行官「何がわかったんだね?」

カイル「一度か二度電話があった。カンザスのどこかから、コレクトコールをかけてきたんだ」

執行官「カンザスのどこだ? 広い州だぞ」

カイル「いろいろだよ。公衆電話からかけてきたんだ。俺の通話記録を調べてくれ。それしか知らない。信じてくれよ」

執行官は銃の引き金をひく。だが、弾は発射されない。弾倉は空だったのだ。

執行官「落ち着け。信じてやる」

執行官は背を向け、近くにあった移動式棚に近づく。

カイル「じゃあ…もう行ってもいいかな?」

執行官は棚に置いてあったラジカセのスイッチを入れる。大音量のロック・ミュージックが流れ出す。

執行官「ああ、いいとも。ただ、ジェシーが電話をかけてくるかもしれん…」

執行官は棚を移動させて、ジャグジーバスのほうに近づける。

執行官「…すると、君が彼女に警告を与えるかもしれん」

執行官はラジカセをジャグジーバスのなかに落とす。電流が走り、感電したカイルは手足をばたつかせてもがく。やがて、感電死したカイルは浴槽の底に沈んでいく。執行官は写真をジャグジーバスの中に投げ捨てる。

[オープニング・タイトル]