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SMALLVILLE(スモール・ビル)
邦題:ヤング・スーパーマン

シーズン3.19Memoria[メモリア]

第1幕プロローグ。
エクセルシアアカデミー、まるで城のように見える巨大なそして非常に不気味な感じの私立学校。
夜。
時折雷鳴が轟、 雨が降っています。
学校内では、ライオネルは教師のウッドラフと共に暗い教室に懐中電灯を持って入ります。

ライオネル:どこにいるんだ?
ウッドラフ:(窓の外のテラスを示し)
       あそこです。
       人が近づくとヒステリックになりますよ。
       弟のジュリアンを守るんだと言い張って。
ライオネル:(懐中電灯をとります)
        ありがとう。
       私がやってみます、ウッドラフ先生。
ウッドラフ:(言い訳をするように)ルーサーさん…
ライオネル:(立ち止まり)あの子は私の息子だ。

ウッドラフは仕方がないという様子で教室を去ります。
ライオネルは懐中電灯を点け、稲光が差し込む窓に向かってゆっくりと歩きます。
彼は少年が子守り歌を歌っているテラスの窓越しに光をあてます。
11歳か12歳ぐらいの頭のハゲた少年が丸めた毛布をまるで赤ん坊でもあやしているかのように抱きかかえ、
テラスの壁に寄りかかっていました。少年時代のレックスです。

レックス:(歌)…かわいい赤ちゃん、何も言わないで。
      モノマネドリを買ってやろう。
      モノマネドリが歌わなければ、ダイヤモンドの指輪を買ってやろう。

ライオネルは窓を開けて外に出ます。

ライオネル:レックス?
       (レックスは子守り歌をハミングで歌い続けます)
        レックス。
       もしここから出て行くための芝居なら無駄だぞ。
レックス:(ついにライオネルを見ます)
     シーッ。
     赤ちゃんが起きるじゃないか。
ライオネル:レックス、ジュリアンは行ってしまったんだ。
レックス:(頭を振り)ここにいるさ。
      寮の中で泣いているのを見つけたんだ。
      二度と誰にも傷つけさせないって誓ったんだ。
ライオネル:ジュリアンは死んだんだ、レックス。
       分かっているだろう。
       事実を受け入れるんだ。
       おい!

ライオネルはレックスに向かって近づきます。
レックスは毛布を抱えたままテラスの手すりに走って登り越えようとします。
テラスはかなり高所にあり危険です。

レックス:いやだ、一人にさせてよ!
ライオネル:ダメだ、ダメだぞ!
        レックス、何をする気だ?!
レックス:家に帰ってよ!
ライオネル:レックス!
       手すりから降りてくるんだ!
レックス:僕らを放っておいてよ!
ライオネル:止めろ、レックス。
       降りてくるんだ。
レックス:ジュリアンは僕が必要なんだ!
ライオネル:レックス、ダメだ!

ライオネルがレックスに向かって踏み出し腕を掴むと、
レックスは毛布を手放し物凄い絶叫を上げ、毛布はゆっくりと地面へと落ちていきました。

レックス:うわぁー!
ライオネル:レックス! レックス!
レックス:(気が動転し) ジュリアン! ジュリアン! ジュリアン!!!。

ライオネル:(レックスを手すりから遠ざけようとし) レックス!
レックス:ジュリアン!
ライオネル:止めるんだ、レックス!
レックス:ジュリアン!ジュ…

現在の レックスは目に涙を浮かべ悲鳴を上げながらスモールビルの屋敷のテラスの手すりの上に立っていました。
稲光が差し込みます。

レックス:…リアン! ジュリアン! ジュリアン! ジュリアン!

ラナがテラスに来てレックスの後ろから彼の腕をつかみます。

ラナ:レックス!
レックス:ジュリアン! ジュリアン!

レックスはテラスに降りると夢から覚めたようです。
息を切らしゆっくりと座ると、ラナは彼の脇に膝をつきます。

ラナ:レックス、どうしたの?
レックス:(ぼう然とし、ラナの腕にさわり)
     ここはどこだ?

稲光が差し込みます。

第1幕 場面 1
ケント農場。
日中。
納屋の中でクラークは荷車からフォークシャベルで干草を降ろしていました。
ラナが入ります。

ラナ:ちょっといいかな?
    (クラークが手を止めます)
   クロエに聞いたら一週間も農場で働いてるって言ってたわ。
クラーク:ああ、父さんの主治医が精密検査をした方がいいってメトロポリスに行ったから、僕が代わりをしてるんだ。
ラナ:もう良くなってきたと思ってたわ。
クラーク:大夫いいんだけど。
     心臓の手術をしたんだ、魔法みたいに治らないさ。
ラナ:(クラークの言葉に)
   ううん、そんな事ないわ。 
クラーク:君が来たのは何の用だい?僕の仕事振りを見に来たわけじゃないだろ。

クラークはラナから離れ壁に行くとフォークシャベルを掛けました。

ラナ:レックスの様子がおかしいのよ。
   タロンの帳簿を置きに行った時に、レックスが手すりの上に立って、ジュリアンって叫んでたの。

クラークはひと呼吸おきます。

ラナ:どうしたの、クラーク?

クラーク:(ラナに振り返り)
       ジュリアンはレックスの弟の名前なんだ。
       レックスが子供のときSIDS(乳幼児突然死症候群)で死んだんだ。
      何か他に言っていた?
ラナ:(気が動転して)
   いいえ、悪夢を見たって言ってたわ。
クラーク:この前レックスがおかしくなった時、
      毛布をジュリアンだと思い込んで子守り歌を歌いながら(納屋の壁を指し)あそこにいたんだ。
ラナ:じゃあ、また再発をしたの。
クラーク:そうとばかりは言えないけど、しばらくの間は近づかないほうがいいかも。
ラナ:でも、クラーク、彼は友達よ。
クラーク:ラナ、レックスがおかしくなった時、君は馬に踏まれて大怪我をしただろ。
ラナ:レックスは私を傷つけるつもりじゃなかったわ。
クラーク:でも結果はそうなった。
      だから僕は二度とそんな事が起きないようにするって誓ったんだ。
       (ラナは返事をせずに心配そうにクラークの目を見つめます)
      僕が彼と話すよ。

第1幕 場面 2
書斎で レックスは電話をしていました。
日中。
レックス:(怒って)
     じゃあ、俺のところに来るように言っておけ、
     午後のスケジュールをキャンセルしてでもな。

レックスは電話を切ると心配そうに立っているクラークに振り向きます。

レックス:(微笑しながら)
      ラナが俺の夢遊病の事をお前に話したんだな?
      彼女に言っておいたんだが、
      普通ならお前のところにいくはずだな。

レックスは出て行こうとジャケットを着ます。

クラーク:大丈夫なのか?

レックス:まあ、その事なら心配ない、クラーク。
     ちょっとした悪夢を見ただけだ。

クラーク:レックス、ジュリアンの名前を叫んで手すりに立っていたって。
     死んでしまう可能性だってあった。
レックス:いいか、去年お前が国道8号線の真ん中眠っているのを見つけたとき、
     お前の事についてあれこれ言った覚えはないぞ。

レックスは去り始めます。

クラーク:僕はベル・リーブに7週間入った事がないからな。

レックスはクラークに振り返ります。

レックス:医者の治療で俺は治った。
     だがクラークに言わせれば俺はまだ不健康だという事か?

クラークが返答しません。

レックス:(親しげに)自分の事は自分でできる。

レックスは去ります。

第1幕 場面 3
レックスはサマーホルト研究所に車を走らせます。
夜。
車から出ると玄関へと向かいます。
彼が入って行くと、超スピードで後をつけてきたクラークが来ました。

中ではレックスがガーナー博士に話をしています。
二人はモニタ上にレックスの脳をアニメ化した映像を見ています。

レックス:最近悪夢が頻繁に起きるようになった。
ガーナー博士:それは悪夢じゃない、レックス。
         自然発生的な記憶だ。
レックス:なあ、ガーナー博士。
     なんと呼んでも構わないが、起きている時にも影響が出はじめている。
ガーナー博士:(モニタを示し)
          電気ショック療法は君の脳のこの部分を衰退させた。
          これらの記憶は筋肉の痙攣と同じようなものだ。
         まだ機能しているということだ。
レックス:(近づき、真剣に)
      博士、俺は抑圧された子供時代のトラウマを体験するためにここに来たわけじゃない。
ガーナー博士:もし心配なら、いつでも止めるが。
         選択は自由だ。

ガーナー博士はレックスが何を選択するか知っていてニヤケて話をします。

大きい倉庫のような部屋。
白衣を着た機械を操作する数人の研究員がいます。
部屋の真ん中には大きな長方形のタンクに満タンの緑色の水があります。
そしてレックスはタンクの上に吊られたタンカの上に仰向け横たわっていました。
彼はショートパンツだけを履いています。
ゆっくりと下降するとレックスの体は顔以外水の中に沈んでいきます。
額と胸には2本のコードが取り付けてあり、コードはガーナー博士のいるコントロールパネルに接続していました。
レックスは少し不安そうです。

ガーナー博士:リラックスするんだ、レックス。
         目を閉じて、心を開くんだ。
         君の父親の事を考えるんだ。

レックスは目を閉じます。


レックスが子供時代に戻っています。
涙が彼の顔を流れ落ち、すすり泣いています。
彼はスーツとネクタイを身につけていました。

ガーナー博士の声:今君はどこにいるんだね?

レックスの成人の声:十二歳の誕生日パーティーだ。

少年のレックスは大きなパーティーテーブルの上座に座り、テーブルの上には色々なご馳走が並んでいました。
日中。
部屋は風船で飾られ、テーブルの各席には食器とパーティーハットが置いてありましたが
そこにいるのはレックス一人でした。
ライオネルが入ります。

ライオネル:レックス?
        (ライオネルは誰もレックスのパーティーに来なかったのを見ます。)。
       うーん、何と言えばいいのか、友達が来なかったな、母さんがお前のために準備をしてくれたのに。
レックス:(悲しげに)。
      僕は誰も来ないって言ったじゃないか。
       皆、僕を憎んでいるから。
ライオネル:それは違うぞ。

レックスは手でテーブルを叩き立ち上がると窓側の席に歩いて包装されたプレゼントの山の脇に座りました。
ライオネルは彼の後に着いて行きます。

ライオネル:レックス。 レックス…
       皆、羨ましがっているだけだ、レックス。
       お前はルーサーだぞ、それに…

ライオネルは父親とし優しい言葉をかけようと努力します。
彼はレックスの肩に手を伸ばして、それから彼の手をとります。

ライオネル:お前は特別なんだ、それを普通の人たちが受け入れる事は難しい。
       私は、うーん…

ライオネルはプレゼントを山の一番上から取るとレックスにそれを渡します。

ライオネル:レックス。
       母さん自分の手でこれをお前に渡したがっていた、だが母さんは寝ている、だから…
レックス:お母さんは大丈夫なの?辛くないの。
ライオネル:(レックスの脇に座り)
       いや、母さんは少し疲れただけだ、何でもない。
        (レックスの涙を拭い)
       母さんは赤ん坊がお腹にいて大変なんだ、
       だが赤ん坊が生まれれば、母さんは元気になるさ。
        ほら。

ライオネルはプレゼントをレックスの手に置きます。
レックスが包装を取ると、鉛の箱が出てきました。

レックス:(感動せず)
     ただの古い箱じゃないか。
ライオネル:いや、いや、それはかなりいいものなんだぞ。
       箱はセント・ジョージの甲冑から作られているんだ。
レックス:(驚いて)ドラゴン・スレイヤーの?
ライオネル:そうだ。
       伝説によれば、セント・ジョージは凶暴なドラゴンと戦っていた。
       その戦いは何日も続き、彼は強さと…自信を失いかけた。
       そこで彼は壊れた甲冑からこの箱を作り上げた。
       この中に彼は全ての疑いと恐怖を閉じ込め、再びドラゴンと戦うために表に出たんだ。
レックス:(驚き)何の装備もなしに?
ライオネル:そうだ。
       だがセント・ジョージが再び戦いに現れると、ドラゴンはためらい後ずさりした。
       その瞬間セント・ジョージはドラゴンの心臓めがけて剣を刺しドラゴンは死んだ。

レックスは微笑します。

ライオネル:だから他の人たちがお前を残酷だというのなら、お前は全ての疑いと恐怖を(箱を開き)この箱に閉じ込めるんだ。
        (ボックスを閉じると レックスはうなずきます)
       そうすればお前の前に皆がひれ伏す、自分が思っているよりお前は強いんだ。

ライオネルは腕をレックスの肩に回し愛情を込めてレックスの鼻をつまみます。
そしてレックスの涙を拭うとレックスのあごを触ります。
レックスは空のボックスを見ます。

現在、モニタにはレックスの脳の映像が映っています。
タンクで横たわるレックスの目が開きます。

ガーナー博士:(ラボの係員に)彼を起こして。
         (レックスに)いい結果だ、レックス。
         なかなかいいぞ。

タンカがタンクから上昇し始めます。

クラークは屋根の上からX線ビジョンでこの全てを見ていました。
彼は心配しているように見えます。

サマーホルト出て車に向かうレックス。
クラークが彼のところへ歩み寄ります。

クラーク:ガーナー博士と何をしていたんだ、レックス?
レックス:ここには近づくなと言ったはずだぞ。
クラーク:レックス、あいつがモーリーに何をしたか知っているだろう。
      それにライアンもだ。
      レックス、あいつは危険だ。
レックス:俺に説明しなくてもいい、クラーク。
クラーク:いや、君は分かってない、レックス。
      僕の親友だというならどうして僕に嘘をつくんだ。
レックス:(苛立ち)もしお前が7週間もの記憶を失ったらどうだ?
クラーク:(間があり。突然理解し)
      そういう事か。
レックス:クラーク、もし俺が記憶を取り戻せれば、俺を悩ませていた問題への答えが分かるんだ。
クラーク:でもガーナー博士は限度を知らないんだぞ、レックス。
      もしあいつの実験に巻き込まれたら死ぬかもしれない。
レックス:俺は気しないな。
       俺は全てを思い出すつもりだ。

クラークが怯えているように見えます。

レックスは車に乗り込むとクラークを残し去っていきました。

フェイドアウト。

第2幕 場面 1
メトロポリス。
夜。
ルーサー・コープの書斎で ライオネルは机の前に立つクラークに話をしています。

ライオネル:君からアポイトメントがあったのは、正直驚いたよ。
       どうして私に会いたいと思ったのか想像がつかないがね。
クラーク:レックスがサマーホルトの研究所で大変な実験をしているんです。
      失った記憶を取り戻そうとして。
      (ライオネルは驚き、クラークは更に机に近づきます)
       ルーサーさん、サマーホルトを閉鎖させる事ができるのはあなたしかいません。
ライオネル:(笑い)
       私のビジネスマンとしての能力を高く評価してくれたのはありがたいが、
       どうして私が犯罪者のように振舞わなければならないんだね?

ライオネルは立ちあがると机の向こう側のクラークに歩きます。

クラーク:それは、あなたはレックスが記憶を取り戻すのを望んでいるとは思えないからです。
ライオネル:もうレックスの精神面については気にしてしないんだ、クラーク、
       それにレックスが記憶を取り戻すのを防ぐ事は私の仕事ではない。
クラーク:(間があり)
     それがお爺さん達の死の真相を暴露する事になっても?
ライオネル:いいか、クラーク、私はいつも君の親が作るトウモロコシに入っている成分が君を弱くしたと思っていた。
       だが、あー、君を過小評価していたようだな。
クラーク:僕は友達を助けようとしているだけです。
ライオネル:いや、そうじゃないだろう。
       レックスを心配するふりをして私を脅しにきたんだ、
       それにレックスが記憶を取り戻すことを望まないのは君のほうだ。
クラーク:そんなことありません。

ライオネルはテレビにリモコンを向けます、画面にはベル・リーブの監視ビデオでレックスとクラークが映っていました。
同じ場面が繰り返し映し出されます。

レックス:俺はお前の秘密を知っている、クラーク。

巻き戻しの音が入り。

レックス:俺はあなたの秘密を知っている、クラーク。
レックス:俺はあなたの秘密を知っている、クラーク。

クラークは驚いて画面を見つめます。

レックス:俺はあなたの秘密を知っている、クラーク。

ライオネル:どうしてレックスが危険な治療を止める事を望んでるんだ?
       本当の事を話してみたまえ。

クラークは呆然として声がでません。

画像は繰り返し続きます。

第2幕 場面 2
ライオネルがレックスの書斎に入ります。
日中。
レックスは手にブランデーグラスを持って中二階の手すりから見降ろしていました。

レックス:スモールビルに何の用だ、親父?
      カワチの洞窟で宇宙人の証拠でも探しに来たのか?
ライオネル:(笑い)お前の外での活動が気になってな。
       (レックスは階段を降りて来ます)
       サマーホルトの研究所へ行ったんだってな。
レックス:だらから聞いたんだ?
ライオネル:お前の親友のクラークだ。
レックス:サマーホルトは一流の機関だ。

レックスはブランデーを継ぎ足すためにバーに歩きます。

ライオネル:(あざけり)
       一流か?
       レックス、ガーナーという人物はアカデミー外の科学を追及している。
レックス:まあな、少し落ち着いたらどうだ。

彼はブランデーを啜ります。

ライオネル:レックス、お前の心はまだ不安定だ。
       どうしてわずかばかり無くした記憶を取り戻すために危険を犯すんだ?

レックス:それがどうした、親父?
      ふーん?
     親父が気になるのは、俺が思い出そうとしている記憶か?
     それなら今のところ非常にうまくいっている。
ライオネル:レックス、この処置を続けるのは馬鹿げている。
       別の精神障害を引き起こすかもしれん。
レックス:なあ、それは…

レックスの声は小さくなり目を閉じて間があきます。

彼の周りは突然暗くなり持っていたブランデーをこぼしグラスを手から落としました。
床に落ちたグラスは粉々になりますが、それは同じグラスではありませんでした。

粉々になったのはティーカップです。
黒い 長い髪をした女性が床の上に散らばった破片を拾い始めます。
別の女性が泣いている赤ん坊をあやしながらその脇に立っていました。
ライオネルが部屋に入ります。
少年レックスは隣りの部屋から覗いていました。
日中。

ライオネル:(赤ん坊を抱いている女性に)
       上の部屋を掃除してくれないか、メアリー?
メアリー:分かりました、ルーサー様。

メアリーは赤ん坊を抱いて部屋を去り始めます。

ライオネル:あー、ジュリアンは私が抱っこしよう。

メアリーは戻って来てライオネルに赤ん坊を渡します。

ライオネル:(ジュリアンを揺すりながら)
       よしよし。
       おお、目を開けたぞ。
       ん?何を見ているのかな?
       おお、私か…私を見ているのか。
       リリアン まるでプリンスのようだ。

ジュリアンは泣くのをやめます。
ティーカップを落とした女性、リリアン・ルーサーは気が動転したままライオネルに背中を見せていました。
ライオネルは彼女にジュリアンを渡そうとします。

リリアン:(泣き)その子を抱きたくないの。
ライオネル:リリアン、母親が子供を嫌ってどうする。
       さあ…

ライオネルは再びリリアンにジュリアンを渡そうとしますが彼女は窓に向かって歩き去ります。

ライオネル:(少し腹を立て)私の子供たちにトラウマを背負わせる気か。
リリアン:(冷めた声で)あなただけの子供なの、ライオネル。
ライオネル:いや、そういう意味じゃない、リリアン。
リリアン:(感情を抑えようとして)
      言った筈よ、もう子供は欲しくなかったって。
      見たのよ、あなたがどうやってアレキサンダーを扱ったのか、あの子の心をもてあそんだのか。

レックスは父親の言葉に傷ついています。

ライオネル:それはあの子が弱かったから。
リリアン:この子達をお互いと戦わせようとしているわ。
ライオネル:そうじゃない。
リリアン:あなたの愛情のために戦わせるなんて。
     あなたみたいにさせたくないわ。
     離婚して、ライオネル。
ライオネル:リリアン、いつもの口癖か…いつもいつもその言葉は聞き飽きたぞ。
       お前のためにレックスを家に帰る許可をだした。
       もう一度やり直そうとしているじゃないか。
        (リリアンの前にジュリアンを抱き)
       リリアン、ほら。
        (リリアンは赤ん坊を抱きます)
       ほら、そうだろ。

ジュリアンは再び泣き始めます。

ライオネル:我々は4人の家族なんだ。
       そうだろ?
       メアリーに夜勤をしなくていいように言おう。
       お前には子供と一緒に過ごす時間が必要だ。

リリアンは返事をしません。
彼女はまだ泣いているジュリアンを抱え窓に歩きます。
ライオネルはドアを見てレックスが中を覗いているのを見ます。

ライオネル:レックス?

レックスはドアを閉じます。

ライオネルはドアに行き開くとレックスを見つけます。

ライオネル:レックス、何だ…何か…

レックスはジュリアンを抱き椅子に座っているリリアンのところに走ります。

ライオネル:レックス!
       (レックスに歩きます)
       レックス、何をしているんだ、ん?

現在のレクスの書斎に戻り。
レックスはまだ記憶の狭間にいます。

レックス:(涙を浮かべ)
     父さん、あれは事故だったんだ。
ライオネル:(正直困惑して) レックス?
       一体何の話だ?

ルームは再び暗くなり、赤、黄色、青のライトがレックスの顔の向こう側に輝きます。
別の記憶にが再現されます。
少年レックスはジュリアンの部屋でベビーベッドの脇に立っていました。
色んな色のライトはジュリアンの部屋の常夜燈でした。
レックスは静かなベビーベッドを見つめ、竦んでいました。
ライオネルが後ろから部屋に入ります。
夜。

ライオネル:おや、レックス。
       二人で何の相談をしてるんだ?

レックスは向きを変えません。
彼は恐る恐る目をぎゅっとつぶります。

ライオネル:レックス?

レックスはライオネルに振り返ります。

レックス:(小さな、防御的な)
      泣くのを止めなかったから。
      あやそうとしたんだ、そしたら…
       (いっそう気が動転し)
      僕…信じて。

ライオネル:レックス、一体何をしたんだ?

ライオネルがベビーベッドに向かいジュリアンを見たときレックスは脇に避けました。

ライオネル:何…(彼の目には涙が溢れ、ベビーベッドにかがみ込みます)
       (ささやき)
       何をしたんだ?
       な…(呼吸は荒くなり、怒りに目を吊り上げレックスを見て)
       何をしたんだ?
       一体何を?!

ライオネルはレックスの顔を手の甲で殴りレックスは床に倒れます。

現在に戻り、 レックスは床に倒れています。
ライオネルは彼の脇にひざまずきます。

ライオネル:レックス?レックス?
レックス:何があったんだ?
ライオネル:分からない。私達は話をしていたんだ。
       お前が突然硬直したかと思ったら…
       医者に電話をしよう。
レックス:(立ち上がり)大丈夫だ。
      もう何ともない。

レックスはバーに行って水を一気に飲み干しました。

ライオネル:これは副作用だな?
       (レックスの顔に触れ)
       危険な火遊びだ。
レックス:(ライオネルの手を払いのけ)
     止めろ!
     俺の七週間の記憶を取り戻す邪魔をしたいだけだろ。
ライオネル:違う。
       お前に隠している事は何もない、レックス。
       お前は今まで過去の事を考え過ぎていたんだ。
       これからは未来の事を考えなければならんのだ。
レックス:出てってくれ。
ライオネル:それがお前の弱いところだ。
レックス:出てけ!

ライオネルはチラッとレックスを見て書斎を去ります。

レックスは深呼吸をします。

第2幕 場面 3
マーサが台所で電話をしていると クラークが入って来ました。
日中。

マーサ:私もよ、あなた。分かったわ、じゃあ。
      (電話を切り)
     お父さんからよ。
     順調だって、でももう一日長引くかもって。
クラーク:レックスのこと話した?
マーサ:内緒にしておいたほうがいいと思って、何か悪い事が起きるんじゃないかと。

ライオネルが入って来ます。

ライオネル:申し訳ないが、ちょうどよかった。
       ドアが開いてたものでね。
マーサ:(驚き)何しにきたんですか?
ライオネル:クラークから聞いていないのかね?
        彼は私に会いに来たんだ。

マーサが驚いてクラークを見るとクラークは疚しげに顔を背けました。

ライオネル:君の息子は常に秘密を抱えていたようだな。
クラーク:母さん、少し待っててくれる?
マーサ:(うなずき)いいわ。

階段を上り始めているマーサーにライオネルが声をかけると立ち止まります。

ライオネル:マーサ、私は…君に、そのー、よろしくと言っておいてくれないか、ジョナサンに?
       今彼は大変だろう、そのー、病気で農場の経営をするのは。
マーサ:(冷たく) ジョナサンの心配はしないで。
     あの人は大丈夫だから。
     あの人の強さは私達が支えているの。

彼女は階段を上がって行こうとします。

ライオネル:言い忘れたよ、マーサ。
        (マーサは振り返ります)
       君がルーサー・コープに戻りたいならいつでも仕事はある。

マーサは何と返事をしてよいのか分かりません。
心配顔のクラークとライオネルを見ると踵を返し2階に上がっていきました。

ライオネル:うーん、ありがとう、クラーク、レックスが何をしようとしていたか知らせてくれて。
       残念だが、我々の介入は彼の行動を後押ししてしまったようだ。
クラーク:(心配顔で)自分を傷つけることになる。
ライオネル:分かっているさ、だが彼は大人だ、クラーク、
       大人とは時々間違った行動をとるものだ、気づくまでな。
クラーク:もし彼が気づかなかったら?
      もしそれで植物人間になってしまったらどうするんです?
ライオネル:まあ、その時は選択肢はないが…もう一度ベル・リーブに入れるしかないな。
       今度は死ぬまで。
クラーク:(ショックを受け) 彼はどこにいるんですか?

第2幕 場面 4
サマーホルト研究所で ガーナー博士は記憶のラボにいます。
日中。
クラークが入ります。

クラーク:レックスはどこだ?
ガーナー博士:一体どうやってここに入った?
         警備員を呼ぶぞ。

ガーナー博士は水タンクに向かって歩きます。
クラークは彼の後を追います。

クラーク:もしこの実験を続けるなら、彼の父親はもう一度収容所に入れると言ってる。

緑色の水タンクの脇に立ったクラークは突然苦しみだしました。

ガーナー博士:レックスは危険を承知の上だ。
         (クラークの状態を見ます)
         どうした、 ケント君?
         元気がないな。
クラーク:(体を折り曲げ始めます)
      実験を止めてください。

ガーナー博士はクラークの後ろに立つ男にうなずきます。
男はクラークの後頭部を殴りクラークは床に倒れます。
残酷な目で見下ろすガーナー博士を クラークは弱弱しく見上げました。

ガーナー博士:君はずっと私の研究に興味をもっていたな。
         よろしい、君を実験に参加させようじゃないか。

金属製の手術台にクラークを持ち上げる三人の研究員。

ガーナー博士:裸にしろ。

彼らはクラークのジャケットを脱がせます。
一人の男はクラークのシャツを鋏で切り裂き、もう一人はベルトを外しジーンズを脱がせます。
それを見ながらガーナー博士は携帯電話をかけていました。

ガーナー博士:ネズミがワナにかかったぞ。

ライオネルはルーサー・コープのオフィスで電話を受けていました。

ライオネル:分かった。
       よし、取引は成立した、もう手を出さない約束だったな。
ガーナー博士:レックスはもうサマーホルトで治療はさせない。
ライオネル:いいか、はるかに興味をそそるプロジェクトにあなたの才能を発揮するんだ。
       クラーク・ケントを研究するんだ。
       直ぐに。

ガーナー博士はサディスティックに微笑します。

フェイドアウト。

第3幕 場面 1
クラークはパンツ一丁で手術台に縛られています。
日中。
胸と頭に二本づつケーブルが取り付けられていました。
彼は力を失い動く事ができません。
宙吊りにされたタンカをライオネルとガーナー博士が下から見守ります。

ガーナー博士:(ライオネルに)準備はできました。

ライオネル:こう質問をしてもらいたい、いいかね?
       私はクラーク・ケントの真実を知りたいんだ。
        (物憂げにタンカを見上げ)
       どこから来たのか?

サマーホルト研究所に入るレックス。
フロントまで来ると受付係に話をします。

レックス:ガーナー博士に会いにきた。

受付係:ルーサーさん、ガーナー博士はあなたのアシスタントにお知らせしたはずですが。
      あなたへの研究は中止になりました。
レックス:メッセージは受け取った。
      個人的に話しに来たんだ。
受付係:セミナーで出かけておりますが。
レックス:(信じません)そうか。

レックスは受付から離れると携帯電話を開きました。

記憶研修室で、ライオネルの携帯電話が鳴ります。
表示された番号を確認してから電話に出ました。
クラークはまだタンクの上に宙吊りの状態でいます。

ライオネル:レックス、ミーティング中だ。
レックス:サマーホルトでか?
      それがガーナー博士が俺の研究を中止した理由か?
ライオネル:今時間がないんだ、レックス。
レックス:それなら時間を作ってくれ。
     俺の治療は終わった。
     全て思い出したよ。
ライオネル:(間があり、明らかに動揺して)
       どこにいるんだ?
レックス:俺がどこにいるか知ってるだろ、親父。
      (レックスは自信を持って電話を切ります)

ライオネル:(ガーナー博士に)問題が起きた。
       戻るまでまっていろ。

ライオネルは去ります。

ガーナー博士:(ラボの研究員に)タンクに降ろせ。
         待つ必要はない。

研究員は水の中にタンカを降ろします。
クラークは水に近づくにつれ体が急速に震え始め、顔を残し水の中に沈んでいきました。

ガーナー博士:クラーク、リラックスした方がいいぞ。
         まず最初の質問だ。
         君はどこから来たんだ?

クラークの震えはいくぶん落ち着き目は閉じています。

クラークの記憶が蘇ります。

黄色の毛布に包まれた赤ん坊が宇宙船の中に置かれます。
ジョー・エルの声が聞こえてきます。

ジョー・エル:そこにその子を置くんだ、ララ。
        もう時間はない。

ララはキーを船に入れます。

ララ:もしあの子を愛してくれなかったらどうしましょう?

船の内側はクリプトンのシンボルが並んでいます。
ジョー・エルとララは赤ん坊の手を握ります。

ジョー・エル:ララ、この子の運命は託されたんだ。
       我々から。
ララ:(悲しげに) さようなら、愛しいカル・エル。

八角形のキーは船内の溝の前で停止します。
ララがキーを押し込むと溝の中に入り船と一体化しました。
船内のシンボルが回転をはじめ、船の扉が閉まり船は発進します、ララとジョー・エルは互いの手を握り見つめていました。

現在のサマーホルト研究所。
クラークは悲鳴を上げていました。

クラーク:ララ! ララ! ララ!

ガーナー博士:ララとは誰の事だ、クラーク?
          (返事はありません)
         どうして返事をしないんだ?
研究員:分かりません、博士。
     しかし溶液に何かの反応しているようです。

クラークが再び震え始めます、そして部屋のライトが電圧の上昇で点滅をします。

クラーク:ララ!
技術者:彼を出さないと!
ガーナー博士:ダメだ。
         まだ何も聞いていない。
クラーク:ララ!

タンク内のライトが強く光るとクラークが震え続けます。

ライオネルは レックスが待つ受付の前に来ました。

ライオネル:レックス?
        レックス、ミーティング中に呼び出すほどの急用とは何だ?
       何が問題だ?
レックスは:俺は知らないよ、親父。
       親父がガーナー博士を引き込んだという事は。
       俺が記憶を取り戻す事に怯えているんじゃないのか。
       一体博士とどんな取引をしたんだ?

タンクのクラーク。
震えは更に激しさを増し、周りの機械はスパークを上げショートしていました。

クラーク:ララ! ララ!

ガーナー博士:止めろ!

受付前で、大きな振動と音と共に緊急警報が鳴り響きました。

ライオネル:何が起きた?
受付係:記憶ラボの機械がアラームを発してます。
レックス:(ライオネルに)火遊びをしていたのは俺だけじゃなかったようだな。

レックスは記憶ラボに向かってライオネルを超えて歩きます。

ライオネル:レックス。 レックス?
        (レックスは歩き続けます) レックス!

レックスは大部分の設備が崩壊したラボに入ります。
彼は床の上に倒れている研究員の首に手を当てて脈を調べました。
レックスは事故現場を歩き、倒れ掛かるネオンランプを避けてクラークの入ったタンクに到着します。
水平であったタンカは水中に落ち、クラークは気を失ったまま水中に没していました。
直ぐに床にあったパイプを拾い上げるとタンクのガラスを粉々に割りました。

緑色の水は床にこぼれ出し、レックスはタンクの中にクラークを見つけました。

レックス:クラーク。

クラークは意識を取り戻して頭をレックスに向けます。

クラーク:(弱く) レックス、助けてくれ。
レックス:ここから直ぐにだしてやるぞ。

あたりの機械がスパークし続けるなか二人は目を見つめ合っていました。

フェイドアウト。

第4幕 場面 1
クラークの屋根裏。
夜。
階段の上で座るクラークはボーっとしていました。
レックスが入ります。
クラークは彼を見ると立ち上がって何も言わずに階段を昇ります。
レックスは彼の後に従います。

レックス:お前がどう感じたのか知りたかったな。
     かなり混乱してたようだったな。
クラーク:(ぶっきらぼうに)
      ああ、なんとかね。
レックス:サマーホルトデ何をしていたんだ、クラーク?
クラーク:(レックスに背を向けて)
      大きな間違いをしている友達を助けようとしていたんだ。
レックス:それはお前の意見だろ。
     俺は止めろと言ったはずだ、なのに追い続けた。
     その上、親父まで巻き込んで。
クラーク:(向きを変え)ああ、でも聞いてくれ、レックス。
      君の父親が僕にとって最後の手段だったんだ、他にどうしようもなかった。
レックス:親父はお前を裏切ったじゃないか、クラーク。
      お前をモルモットとして提供する代わりに、ガーナーは俺の治療を打ち切った。
      俺はお前を親父から遠ざけようとしたんだぞ。
       もし俺が七週間の記憶を取り戻していたなら、止めることができたはずだ。
クラーク:多分ね、レックス。
     もしかするともっと悪い事になるかも。
     いつも僕に関わるなって言っていたし、それは分かってた。
     でも君達二人が関われば関わるほど、君はお父さんに似てくるんだ。
     そしてもっと多くの人たちが傷つくことになるんだ。
レックス:(ショックを受け、クラークに近づき)
      俺は絶対に親父の様にはならない。
      それに親父を貶めるためにお前や他の者を犠牲にはしない。

レックスは向きを変え階段を降ります。

クラーク:レックス。
      どうして父親をそんなに憎むんだ?

レックスは振り向かず長い間をあけます。

レックス:体を大事にな、クラーク。

レックスが階段を降り下階に降りた途端、納屋の中が暗くなり、少年時代の記憶をよみがえらせます。

少年レックスはパジャマのまま食器を載せたトレーを持って屋敷の階段を昇っています。
夜。
別の部屋から火がついたように泣き叫ぶジュリアンの声が聞こえてきます。
廊下にまで響いていた泣き声が突然止まりレックスは驚きます。
レックスは急いで階段を昇ります。
部屋に入ると青、赤、黄色の常夜燈が光っていました。

レックス:お母さん?

リリアンはナイトガウンを着てレックスに背を向けてジュリアンのベビーベッドにかがみ込んでいます。
彼女は返事をしません。

レックス:(しつこく) ママ?

リリアンは振り向きました。
彼女の顔は涙で濡れています、そして彼女はたった今ままでベビーベッドにあったはずの枕を手にしています。
枕を床に落とすとレックスは理解して母親を見ます。
彼は彼女に近づきます。

レックス:何をしたの?

ぼう然とした微笑でリリアンはレックスに近づきます。

リリアン:しーっ。赤ちゃんを起こさないで。寝てるんだから。

レックスはベビーベッドに走り寄り中を見ます。

レックス:(ショックを受け、小さな声で)ウソだ。そんな。
      (リリアンの方を向き)お父さんは?

リリアン:しーっ。お父さんは何も心配はないわ。
      (リリアンはレックスの額にキスをします)
      ジュリアンは今とっても幸せなの。

リリアンはレックスに頷くと部屋から出て行きます。
レックスはベビーベッドの中で動かない赤ん坊に振り返ります。

レックス:そんな…

現在に戻って、レックスは屋根裏の階段の踊り場に立っています。
クラークが彼の後から下ります。

クラーク:レックス?どうしたんだ?
レックス:ああ。大丈夫だ。

レックスは屋根裏を去ります、そしてクラークは困惑した表情で彼を見送ります。

第4幕 場面 2
ルーサー・コープ。
日中。
ライオネルがオフィスに入ると机に腰掛けて待つレックスがいました。

レックス:なるほどな、また親父は大失態を無事免れたんだな。

レックスはガーナー博士の写真入新聞を掲げます。
記事は「医療事故の後、昏睡状態のサマーホルト創設者」と書いてあります。

ライオネル:(クスクス笑い)
       私がサマーホルトに行ったのはな、レックス、お前が心配だったからだ。
レックス:それにクラークもな。
ライオネル:私も驚いたよ、お前を見つけようとしたら、ガーナー博士がクラークを捕まえていたなんてな。
レックス:(ライオネルの嘘にほほ笑みます)
      昨日のゴタゴタで、俺の抑圧されていた記憶について話すチャンスがなかった。
ライオネル:(いら立ち) おお、レックス…
レックス:心配しなくていい、親父。
     この事は例の七週間の事じゃない。

レックスは机を離れるとライオネルの背後へと歩いていきます。
ライオネルは机に行ってガーナー博士についての新聞を手に取ります。
レックスは振り返ります。

レックス:ジュリアンの事だ。
ライオネル:(机に新聞を落とします)
       ああ、そうか、だが何年も前の悲劇はお互い忘れるはずだろ?
レックス:俺が殺したんじゃなかった。

ライオネルは驚いてレックスの目を覗き込みます。
彼は深く息をします。

ライオネル:レックス、お前がそう言うのは分かる、あー、お前の行動は、しかしだな、そのー、
       (煮え切らない態度で)
       私はお前を見たんだ、レックス。
       お前がジュリアンのベッドの脇に立っているのを。
        (前向きになろうと努力をします)
       昔の事だ。古いな。

ライオネルは机を見下ろして背中をレックスに向けます。
レックスはゆっくりとライオネルの背中に向かって歩きます。

レックス:(間があり、優しく)
      母さんがやったんだ。

ライオネルは振り返りレックスを見ます。

レックス:俺が入ったとき母さんがいた。
       (小さな声で、感情的に)
       それが俺の障害になっていたんだ。
ライオネル:(小さな声で、危険な感じ)
       そんな事を言うのか。
       そんなふうに母親を冒涜した記憶に摩り替えて。
レックス:(腹を立て)
      母さんに責任はない。
      責任があるのは親父の方だ。
ライオネル:何の話だ?
       母さんはジュリアンを愛していたんだぞ。
       そんな事は決してない…自分の子供を殺すなんてな!
       愛していたんだから!
レックス:母さんは親父に言われた育て方をさせたくないほどにジュリアンを愛していたさ。

ライオネルは 嫌悪の念を抱いて、そして傷ついて、ライオネルはレックスから離れコートをつかんでドアに向かって行きます。
それから彼は背後のレックスをちらっと見て、そして椅子にコートを置くとケンカ越しに。

ライオネル:いいだろう、レックス。
       どうしてお前は弟の死を責め立てるんだ?
レックス:(振り返り)
      それは俺が唯一残った相続人だからだ、親父。
      親父が何もしていない事は分かってるさ。
      だが母さんは…犠牲者だ。

ライオネルはレックスの言葉が本当であることを悟り始め顔が蒼ざめます。
ライオネルの口は開きかかり目には恐れのため涙がこみ上げ下唇が震え始めます。

ライオネル:(震え) おお…

レックスはうなずきます。

ライオネル:私は…もし知っていたら、もし…
       (彼は絶望的にレックスの上着をつかみ)
        もし私が見ていたら…
レックス:それで?
ライオネル:(非常に後悔して)
       事は違っていたかもしれない。
レックス:そうだよ、親父。
     俺を愛してくれたかもしれないな。

ライオネルは死に物狂いで話し続けようとします。

レックス:いいさ。もういい。
ライオネル:私は…

レックスはライオネルを通り越しオフィスを去ります。
ライオネルは脚を震わせ一人たたずんでいました。

第4幕 場面 3
クラークが屋根裏でソファーに座っています。
日中。
太陽系の惑星をモチーフにした飾りがテーブルの上に釣られています
惑星はワイヤーに繋がっていてゆっくりと太陽の周りを回ります。
クラークは憂うつそうに静かに見つめていました。
マーサが階段を昇り屋根裏に入ってクラークに向かってきました。
クラークは彼女が入ってきた事に気づき携帯電話を閉じ、惑星の動きを止めます。

マーサ:(穏やかに、心配して)
     サマーホルトでの事を何でも話してちょうだい。
クラーク:(悲しげに)心配ないよ、母さん。
      秘密はまだ守られてる。
マーサ:(ため息)。
     じゃあ、家の方にいるから、もし話したくなったら来なさい。

マーサは去り始めます。
クラークはしばらく静かに彼女を見つめます。

クラーク:ララ…
      (マーサは振り返り)
     …僕の実の母親の名前だよ。

クラークは立ち上がりマーサに向かって歩きます。

マーサ:どうやってそれを知ったの?
クラーク:僕がタンクに入ったとき、一番最初の記憶を見たんだ。
       彼女が宇宙船に僕を入れていたんだ。
      一番気にしていたのは誰も僕の事を愛さないかもしれないって。
マーサ:(驚き)
     自分の子供を宇宙船に入れて他の星に行かせるなんて、
     そんな苦しみは想像できないわ。
クラーク:ジョー・エルは、僕はいつも生みの親は化け物だって思ってた、でも彼女は違ってた。
     信じられなかった、彼女の事を忘れていたなんて。
マーサ:そうじゃないわ、クラーク。
     あなたが初めて言った言葉は「ララ」よ。
      (マーサは微笑します)
     最初私もお父さんもその意味が分からなかったわ。
     でも今分かったわ。

クラークが返事の代わりに微笑します。

クラーク:母さんとあの人が会えたらって思うよ。
      僕が素敵な母さんに出会えた事を。
マーサ:彼女は分かってるわ、クラーク。
     母親の愛は決してなくならないわ。

マーサとクラークは抱き合います。
消えかけた輝きを取り戻したかのようにクラークは少し微笑みました。

フェイドアウト。

おしまい。