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SMALLVILLE(スモール・ビル)
邦題:ヤング・スーパーマン

シーズン4.09Bound [バウンド]

第1幕 プロローグ
オペラハウスの劇場。
夜。
天井には窓があり夜空が見えています。
そして窓のまわりには下を照らすライトがあります。
下の方ではオペラの公演のあとのパーティーが開かれていました。
パーティーはいくつかの階で行われています。
男女はそれぞれタキシードやガウンを着てシャンパンを飲んでいます。
そしてボーイがオードブルのトレーを持って歩き回っています。
下の階では一人でシャンパンを飲むのを我慢しているレックスがいました。
彼は腕時計を確認しながらいくぶん退屈そうです。
それから彼は端の方に歩いて行くと一階を見下ろせる手摺りの脇に立ちます。
数メートル離れた場所にレックスと同じように手摺りの脇に立つ長い茶色の髪をし赤いドレスを着た美しい女性がいます。
彼女とレックスにアイコンタクトをすると彼女はグラスの飲物を一口飲みます。
彼女は悩ましげに彼にほほ笑みます。
レックスも微笑み返します。
もう1人のパーティーの客が彼女の前を通過すると突然彼女は姿を消してしまいました。
レックスは彼女が立っていたところに向かって歩きます、しかし彼女はどこにもいません。
それから彼は手摺りに戻って一つしたのフロアを見ると先ほどの女性を見つけます。
彼女は一瞬彼を見上げてから歩き去り始めます。
レックスは彼女の後を追って階段を降りて来ます。
下のフロアに着くと彼女をあちこちと探しまわり、別の手摺りで窓の外を見ているのを見つけます。
レックスが彼女の後ろに近づくと彼女は遠くを見るような目をしていました。
彼女の肩越しに見ると彼女の手にはMP3プレーヤーがあります。
彼女は彼の気配を感じて頭を少しレックスに向けます。
彼女の脇にやって来くると彼女の耳にはイヤホンがつけられています。
彼女はレックスと対面します。

レックス:何を聞いてるんだ?
女性:私の大好きな歌よ。

彼女は片方のイヤホンを耳から外しレックスに手渡します。
レックスはイヤホンを受け取ると自分の耳にかけます。
ゆったりとしたダンス音楽が流れています。
イヤホンはケーブルが二対繋がっているためレックスは彼女の顔に接近して聞くことになります。
彼女はそおっと彼の顔に触れます。

レックス:[ささやき]
     君の名前は?
女性:そんな事どうして?

この答えに満足したレックスはイヤホンを彼女に返します。

メトロポリス。
レックスと先ほどの女性がエレベーターの中でキスをし始めます。
そしてレックスは壁のボタンを押すために手を伸ばします。
彼は最上階の40を押します。
彼は彼女の唇から首筋へと移します。
そして彼女の腕が彼の肩を抱きしめると彼の手は彼女の腕から腰へと滑ります。
再び唇へキスをします。

エレベータのセキュリティカメラに、レックスがエレベータの壁に彼女を寄りかからせキスをしているのが映っています。
それから彼女はキスを続けて彼を別の壁に押しやります。
彼が彼女の耳から首筋にキスをすると彼女は喜びに目を閉じます。

二人はホテルの部屋へと入っていきます。
ドアが完全に閉じる前にレックスは彼女を振り向かせ更に熱烈なキスをします。
彼女はレックスのタキシードを脱がせます。

ベッドに座るレックスのひざの上に座る彼女。
彼女はドレスのチャックを外し脱ぎます。
レックスと彼女はベッドの上で愛し合います。
二人とも貪りあうようにキスをします。

テーブルの上にはシャンパンのボトルと二つのコップがありコップにはシャンパンが残っていました。
朝の光が部屋を満たしボトルとコップを浮かび上がらせます。
床にはレックスと彼女の衣服が散乱し、レックスはベッドで眠っています。

ホテルメイドが部屋の外から呼びかけます。

メイド:ハウスキーピングです。

レックスは眠ったままで、メイドは一抱えのタオルを持って入ります。
彼女はベッドを見てタオルを落とし悲鳴をあげます。
レックスはすぐに目を覚まし身を起こします。
彼は悲鳴を上げながら部屋から走り出るメイドを見ます。
それからレックスは顔を回し自分の隣を見ます。
そこには昨夜一緒にいた女性がいました。
彼女の手は頭の上で結び付けられ血だらけになって死んでいました。
恐る恐るレックスは自分の手を見ると同じように血まみれでした。

第1幕 場面1
レックスと弁護士のコリン・ハーパー(女)がメトロポリスの裁判所の前の階段を急いで降りてきます。
日中。
リポーターとカメラマンが質問を投げかけフラッシュを焚きながら二人の周りに押し寄せます。

コリン:ルーサー氏はノーコメントです。
    [静かに、レックスに]
     何も言わないでください。

レポータは叫び続けます。

コリン:皆さん、私は今、私のクライアントはノーコメントだと言ったはずですが?

レックスとコリンはレックスの書斎でニュースを見ています。
画面の下には「億万長者血まみれ殺人」と書かれています。
女性レポータの声が聞こえてきます。

レポーター:億万長者のレックス・ルーサーは本日五百万ドルの保釈金を支払、保釈されました。
      しかし若い女性の遺体はまだ誰なのか分かりませんが、彼は依然として容疑者であることに変わりはありません。
      警察の調査…

コリンはテレビを消します。
レックスは考え込み画面を見続けます。

コリン:それじゃ、教えてくれませんか、どうして裸で血まみれでいたのか、
     そして全く知らない女性の遺体の傍で寝ていたのか?
レックス:俺は彼女を殺してはいない。
コリン:そんな事は聞いてませんよ。
     レックス、あなたが私を雇っているのは無罪を証明することでしょ。
     だから私に正直に話してください。
     あなたは昨夜飲んでいましたか?
レックス:ああ。
     ホテルのパーティーでな。
     シャンペンを飲んだ。
コリン:薬を盛られた可能性は?
レックス:まあ、それはないだろう。
コリン:まあ、もしあなたが薬を飲んでいたら血液検査で分かるでしょう。
     それまでにこの女性について思い出せる限りの事を思い出してみましょう。
レックス:分かった。
    [彼は思い出そうとします]
     彼女はピンクのMP3プレーヤーを持っていた。
     一緒に聞いたんだ。
コリン:それは証拠リストにはありませんでしたね。
     あなたは彼女がホテルでそれを持っていたと断言できますか?

ドアがノックされ警備員と一緒に携帯電話を持ったコリン のアシスタント、シャノンが入ってきます。

シャノン:あー、申し訳ありません、コリン。
     DAからです。
コリン:ありがとう、シャノン。
     今行く。
    [シャノンは去ります。
     レックスに]
     あなたはここにいてください。
     報道陣が集まってます、あなたは何も言わない方がいいわ。
レックス:仕事が必要だ。

クラークがコリンの背後から入ってきます。

コリン:今はあなたの手助けは必要ありません、レックス。
     ハグして欲しいなら母親でも呼んでください。

レックスは不安そうに頭を振ります。
コリンはクラークをちらっと見ると警備員と一緒に部屋を出ます。
クラークはレックスに近づきます。

クラーク:レックス。
レックス:クラーク。
     ニュースで俺の愚行を見たのか?
クラーク:大丈夫なのか?
レックス:それほどよくはないな。
     お前が友人としてここに着てくれたと思ってるよ。
クラーク:君がやったんじゃないんだろ。

レックスはクラークの肩に手を置きます。

レックス:俺はオペラであの女に会ったんだ。
     彼女をホテルに連れて行った。
     だが彼女を殺してなんかいない。
クラーク:[信じて頷きます]
     彼女は誰なんだ?
レックス:知らないんだ。
クラーク:[驚き]
     待ってくれ、君は彼女と一夜を共にしたんだろ。
     それなのに名前も知らないのか?
レックス:こんな事は一度もなかった。
     一目ぼれってやつだ。
     その事に関しては悪いと思ってる、だが殺してはいない。
     親父がやったんだ。
     俺を嵌めたんだ。
クラーク:お父さんは刑務所に入ってるじゃないか。
レックス:そんな事があいつに関係があると思うか?
     帰ってくれ、クラーク。
     これ以上この問題に関わるな。
     俺を信じろ。

レックスはクラークを書斎に残し出て行きます。

第1幕 場面2
タロン。
夜。
ラナはアパートで眠っています。
彼女の眉間にはシワがより、頭を振りながら息を荒げています。
彼女は悪夢を見ています。

(訳注:以下はラナの見ている夢の内容ですので抽象的な表現になります)
彼女の髪は乱れ、口からは血が流れています。
彼女は火あぶりにかけられているイソブルになっていました。

一連のイメージが沸いては消えていきます。
暴徒に怒り怒鳴る彼女。
パリでイソブルの墓のシンボルを木炭でこすっているラナ。
そして再び火あぶりにかけられ奇妙な笑みを浮かべるイソブル。
彼女はフランス語で何か話しています。

イソブル:Je vais dormait seulement un peu。
    (しばらくの間眠りに着くだけよ)

火あぶりの薪の前に立っているウィルキンズ判事。

ウィルキンズ:伯爵夫人マルガリット・イソブル・セロー。
         お前たちは闇の印と魔術を使った罪だと裁決された。
         神に対する侮辱のため、私はここにお前たちを地獄に送るため火あぶりの刑に処すことを宣告する。

そして再びイソブルの墓の木炭拓本の顔。
顔はラナに非常に似ています。

静かにイソブルを見て火あぶりの周りに立っている十七世紀フランスの民衆。
民衆を見下ろすイソブル。
呪文本のシンボルに血を吐くイソブル。
火あぶりを見つめる民衆。
パリのホテルの部屋で鏡を見てシンボルに気づくラナ。
火あぶりの前に立つウィルキンズ判事。
一人の女性が民衆の中から出てきます。
警備員の一人は斧を持って怒り顔でイソブルを見つめている。
ラナの背中の刺青。
ウィルキンズ判事が「魔女、魔法」と言う。
イソブルは恨みがましい目でウィルキンズを睨む。
呪文本の表紙。
イソブルのローブに見え隠れする刺青。
ウィルキンズが「地獄の業火」と言う。
パリの教会堂で初めてラナに襲い掛かったイソブルの白いエネルギー。
怒り狂う暴徒の中から出てきた女性はフランス語でイソブルに話をします。

女性:Tu m'as trahis Isobel, maintenant tu vas mourir.
   (私を裏切った報いよ、イソブル。だからここで死ぬ事になるのよ)

イソブルの墓のシンボルに触れ苦痛に頭を仰け反らせるラナ。
薪に火を放つ警備員。
炎がイソブルを囲み始めるとイソブルは話しかけた女性にほほ笑みます。
女性は歪んだ微笑でイソブルを見つめます。
そして女性が瞬きすると彼女の目は魔法にかけられたほのかなピンクになります。
イソブルがロープを力強く引っ張る。
燃えている薪、そして次にイソブルの赤くなった目。
それら全てが炎に包みこまれます。

喘いでベッドから起き上がるラナ。
彼女は息を切らし汗まみれです。

第1幕 場面3
カンザス州刑務所。
日中。
クラークが面会室に入いるとライオネルが階段の上に立っています。
ライオネルは下の彼にほほ笑んで階段を降りて来ます。

ライオネル:クラーク、来てくれてありがとう。
      君に会えてうれしいよ。

彼はクラークに手を差し出します。
クラークは握手をしません。
ライオネルは理解して頷きます。
彼は机を示し向かい合って座ります。

ライオネル:レックスはどうだね?
      前に連絡をしようとしたが私とは話したくないようだ。
クラーク:彼はあなたが彼を嵌めたと思っています。
     そうなんですか?
ライオネル:いや、クラーク。
クラーク:どう信じればいいんですか?
ライオネル:君がそう思うのも無理はない。

ライオネルは疲れ切った顔を手で覆ってため息をつきます。

ライオネル:聞いてくれ。
         私は病気だった、クラーク。
        私の肝臓病は不治の病だった。
        だが何かが起こった。
        うまく説明でいないがな。
         私は床の上で目を覚ました。
        暴動が起きていた。
        私は…感じた…これまでに感じた事のないエネルギーが…私の中に。
        何か強くそして…いい事のように。
         私は変わった。
        [彼は静かに笑います]
        そして私の肝臓は治っていた。
クラーク:[不安そうに]
       一体?
ライオネル:分からんね。
        なんと言っていいのか…奇跡だ。
        私は今まで闇を見てきた、常に私の中にある破壊的な。
        今、レックスにそれが見えるんだ。
        あの子を助けないといけない、クラーク。
クラーク:あなたは彼がそうしたと思ってるんですか?
ライオネル:いや。
        これは過激な犯罪だ。
        あるいはよくできた罠だ。
        その女は車を持っていたのかね?
クラーク:レックスが警察に言った事では、彼女をフェラーリでホテルに連れて行ったと言っていました。
ライオネル:それならオペラの会場で彼女の車を探しただろうな。
         見つからなかっただろう。
        レックスにはパターンがある。
        あの子は朝姿を消す事ができるように、女を家に連れて行くことについて心配する必要がないように、
        彼女の車をホテルに戻した。
         パターンとは…女の髪は茶色だったか?
        [クラークが頷きます]
        その女はレックスにリリアンの事を思い出させたんだな。
         母親だ。
        あの子を助けてやってくれ、クラーク。
クラーク:[躊躇い]
      もし僕がその車を見つけたら…
ライオネル:君が見つけた事は全て私に教えて欲しい。
        君に手を貸してやれる。
クラーク:見つけてみます。
      [立ち上がり]
      でもあなたを信用したわけじゃありません。
ライオネル:分かっている。
         だが君は戻ってくるさ。
        そうだろ?

クラークは返事をせずにライオネルを見て去ります。

第1幕 場面4
マーサがタロンでカプチーノマシンを使おうとしています。
日中。
ラナが彼女の後ろのバーに歩み寄ると彼女はトラブルを抱えていました。

マーサ:おかしいわね。
ラナ:そうなんですよ、前にもそういう風になった事がありました。
マーサ:あら、ラナ。
     そのような気がするわ。
     [マーサはラナに振り返ります]
     大丈夫なの?
     顔色が悪いわよ?
ラナ:夕べ変な夢を見たんで。
   はっきりしないんですけど。
マーサ:ああ、そうだわ、ラナ。
     あなたにお客様よ。

マーサはラナに背を向けて立っている女性を示します。
女性は身なりが良くて非常に優雅です。

ラナ:[信じられないというように]
   私に?
   [マーサはうなずきます]

ラナは再び女性を見て彼女に向かって歩きます。

ラナ:すみません。

女性は向きを変えます。
彼女の顔はラナの夢でイソブルにフランス語で話しかけた女性とそっくりでした。
彼女の名前はジュヌビエーブ・ティーグです。
彼女は英国の方言で話します。

ジュヌビエーブ:ラナ。

ラナは夢で見た人物とそっくりなのを見て驚きます。

ジュヌビエーブ:やっとあなたに会えてよかったわ。
          キレイな方ね。
ラナ:申し訳ありませんが、どこかでお会いになった事が?
ジュヌビエーブ:私はジェイソンの母親よ。

ラナは不安を大きくしため息をつきます。

ジュヌビエーブ:不意をつかれたようね?
ラナ:[速く]いえ、違います。
   [間があり]
    ええ、実は、少し。
    お母様が来るとは思ってませんでしたから。
ジュヌビエーブ:まあ、あの子は知らないわ。
        座りましょうか?
ラナ:ええ。
   [ジュヌビエーブをテーブルに導きます]
   お茶はいかがです?
ジュヌビエーブ:あー、いえ、結構よ。
          [二人は座ります]
          イギリスではマグカップでお茶を飲まないから。
          [彼女は笑います]
          失礼だったかしら?
ラナ:いえ、そんな事はありません。
ジュヌビエーブ:ジェイソンとはどう?
          あの子がパリを出て行ってから一度も話をしてないのよ。
          電話にも出ないし。
          あの子が私の事に腹を立てているんじゃないかと思って。
ラナ:お母様が怒ってらっしゃるんじゃ?
ジュヌビエーブ:[頭を振り]
          あの子に会いたいだけよ。
ラナ:ティーグさん、私は…
   あなたと会いたかったんです。
   でもジェイソンがお母様が会う用意ができてなければ会っても無駄だと。
   陰口じゃなく。
ジュヌビエーブ:[頷き、がっかりして]
           私がもっともイヤな事はそういう事にあなたを巻き込むことよ。
          でも、もしあの子に連絡がつくんなら私はスモールビルのホテルに泊まってると伝えて欲しいの。
          私が会いたがっていたと伝えて。
ラナ:もちろんです。
ジュヌビエーブ:ありがとう。

ジュヌビエーブは行くために立ち上がります。
同じくラナも立ちジュヌビエーブが彼女に振り返ります。

ジュヌビエーブ:ちょっといいかしら。
           さっき私を見たとき、あなたは私に会った事があるような顔をしわたね。
          [ラナは返事をしません]
          どうしてかしら?

ラナは不安そうな微笑で頭を振ります。
ジュヌビエーブは微笑します。

ジュヌビエーブ:さようなら、ラナ。
           メトロポリスに会いに来なさい。
          [彼女はラナの頬にキスをします]
          あなたって本当にキレイだわ。
          どうしてあの子があなたを選んだのか分かったわ。

ジュヌビエーブがラナの肩に触れ立ち去るとラナは落ち着かない笑顔で頷きます。
彼女が行ってしまうとラナは笑顔を崩してため息をはきます。

第1幕 場面5
スモールビル高校。
日中。
学生たちが中に入るとベルが鳴ります。
クロエが廊下からトーチのオフィスに入るとクラークがコンピュータの前に座っていました。

クロエ:午後どこに行ってたの?
クラーク:刑務所だよ、ライオネルに会いに。
クロエ:どうして?
    社会奉仕活動の補習?
クラーク:いや。
     変に聞こえるかもしれないけど、ライオネルがレックスの事件について僕に相談があったんだ。
     ホテルであの女性の車を見つけられるって、その通りだったよ。
     これを見て。
     [クラークがクロエに一枚の紙を手渡します]
     レックスがオペラが終わって出て行ったのは午後十時頃だ。
     その夜にホテルの駐車場に停めてあった車は22台。
     3台以外はホテルの宿泊客だった。
     その内2台はホテルのバーの客だった。
クロエ:残りの1台が。
クラーク:その通り、でもその女性の名前も住所も分からなかった。
クロエ:[からかって]
    そんな事?
    私がやってみるわ。

クラークが立ち上がりクロエがコンピュータの前に着きます。

クラーク:これはおかしいと思わないか?
     警察さえも見つけることができなかったんだ。
クロエ:まあ、そうかもね、クラーク。
    警察はレックスが有罪であり既に捕まえたと思ってるんだから。
    でもでき過ぎてると思わない?
    つまりさ、ライオネルがこの猟奇的殺人事件の黒幕で、
    あなたに何かを探させてるとは思わない?
クラーク:そうは思えないんだ。
     うまく説明できないけど、刑務所の中でライオネルは何かがあったんだ。
     だからライオネルは変わったんだと思う。
クロエ:[懐疑的に]
    クラーク…
クラーク:それにもし本当に助けることができたなら?
クロエ:クラーク、ライオネルは黒幕よ。
    信用しちゃダメだよ、そうでしょ?
    それにレックスにはいい人がついてるじゃない。
    コリン・ハーパーが彼を守ってくれるわ。
    皆は彼女の事を「バラクーダ」って呼んでるわ。
    今彼が本当に必要なのは腕のいい宣伝マンよ。
    これを見た?

彼女はクラークに「ルーサーセックススキャンダルが広がる!」と言う見出しの新聞を手渡します。

クロエ:警察は去年、レックスと寝た13人以上の女性たちにインタビューしてるわ。

クラークは驚きます。

クロエ:どうかした?
クラーク:レックスは僕にこんな日は一度もなかったって言ってたんだ。
クロエ:それを信じたの?
クラーク:信じるさ、クロエ。
    [クラークがコンピュータのモニタに何かが表示されているのに気付きます]
     これか。

クロエがモニタ振り向きクラークは彼女の脇にひざまずきます。

クロエ:[読み]
    イブ・アンドリューズ、年齢28。
    メトロポリス在住。

メトロポリスの道を超スピードで走るクラーク。
彼は錠がかかっていない玄関を開けて入ります。
カウンターの上にはレックス・ルーサーの写真が沢山置いてあります。
黒い手袋をした手が写真の一つを取り上げて、既に何枚かの写真を燃やしているシンクの中にくべます。
写真を燃やしている者はレックスでした。
クラークはレックスの背後に近づきます。

クラーク:レックス。
    [レックスは振り向きます]
     何をしてるんだ?
レックス:俺はバカだったよ、クラーク。
     お前こそここに何しに来たんだ?

外から警察のサイレンが聞こえてきます。

レックス:かくまってくれ、頼む。

クラークは黙ったままです。

フェイドアウト。

第2幕 場面1
レックスの屋敷。
日中。
クラークとレックスは書斎に向かう廊下を歩きます。

クラーク:証拠を燃やすなんて、レックス。
     無罪を主張するような者のやる事じゃない。
レックス:[顔だけクラークの方に向け]
     そうだな、クラーク!
     よく考えてみろ。
     もし俺が殺したとしたら、どうして彼女の死体と一緒に寝ているんだ?
     しかもメイドに見つかるなんてな?
     そんな意味ない事をすると思うか。
クラーク:彼女の家に侵入する事もな、でも君はそうした。
     僕に正直に話してくれ、僕も共犯者になったんだから。
レックス:俺はお前に来てくれとは頼んではいないぞ。
     お前こそどうやってあそこを知った?

レックスはクラークから顔をそむけて書斎に入ります。
クラークが後に続きます。

クラーク:僕は彼女の車をつき止めたんだ。
レックス:警官に電話をしたのか?
クラーク:いや。
レックス:6時のニュースで分かる事だ。
クラーク:どうしてあそこに行ったんだ、レックス?
レックス:俺はコリンのオフィスから電話を受けた、住所が分かったとな。
     そこに行けば彼女が何者なのか分かると思った。
     どうして入っていったのかはよく分からない。
     [彼は飲み物を作り始めます。]。
クラーク:何かを見つけたのか?
レックス:彼女の名前はイブ・アンドリューズ。
     そしてお前も見たあの写真の山、彼女は俺のストーカーだったようだ。
クラーク:それじゃ君は彼女を知っていたのか。
レックス:いや。
     名前だけだ、資金集めのため俺と話そうとしていたようだ。
     だから俺が知ってるはずがないだろ?
     クラーク、俺がこんな事をしなかったのは分かってるはずだ。
     親父が俺に仕返しをしようとたくらんでるんだ。
     親父はこのストーカーの事を知っているはずだ。
     ルーサー・コープの弁護士は去年それらのデータベースを編集した。
     親父は俺が動機を持っているように見せかけイブを殺害し俺を犯人に仕立て上げたんだ。
クラーク:それは違うんじゃないか、レックス。
     お父さんに会ってきたんだ。
     君を助けたがっていた。

レックスは信じられずに言葉を失います。

レックス:親父がお前に彼女の車を探せと言ったのか?
クラーク:ああ。
レックス:親父の手の内で弄ばれやがって。
クラーク:[腹を立て]
     レックス…
レックス:[腹を立て]
     二股をかけるな、クラーク!
     親父は俺の敵だ。
     どちらを信用する気だ。

驚いたクラークは答えられずレックスを見つめます。


第2幕 場面2
クロエとクラークがトーチオフィスにいます。
夜。
クロエ:彼女が彼をストーカーしてたのに彼は彼女を知らないっていうの?
クラーク:一度も会ったことがないってさ。
     レックスは色んなウソをついてきている。
     その女性たちにもウソをついていたんだ。
     どう思う?
クロエ:そんな事言ったら放火魔は全員無罪を主張しだすわ。
    でもねちょっとおかしなところがあるんだ。
    これを見て。

クロエがクラークにコンピュータを見せるとマウスをクリックします。
レックスと女性がエレベーター内でキスをしているセキュリティカメラの映像が始まります。

クラーク:待って、レックスの弁護士俺がこんな証拠は厳重な保管をしてると思ったけど。
クロエ:ええ、まあ、彼女は一番上のお偉方を知っているかもしれないけど、
    私は一番下っ端を知ってるし助けになるわ。
    これを見て。
    分かった?

クロエはレックスが女性の首にキスしているシーンで一時停止しました。
女性の顔がカメラに向き両耳がこちらに向いています。

クロエ:[モニタを指し示し]
    彼女は両耳に一つづつダイヤモンドのイヤリングをつけてるわ。
    見える?
クラーク:ああ。
クロエ:オーケー、じゃあこのザルマン・キング監督の映像はスキップするわね。

クラークがクロエの台詞に微笑むと彼女はビデオを早送りします。

クロエ:ペントハウスに着いて直ぐに注意して。

彼女はビデオを再生にしズームアップさせます。
彼女はモニタを指し示すと、女性の耳の片方には何もないのが見えます。

クラーク:彼女はイヤリングをなくしたんだ。
クロエ:その通り。
    警察の調書では死んだ女性は二つつけていたとなってるわ。
    だけどこれでは…
クラーク:レックスは別の女性と一緒だった。

クロエがうなずきます。

第2幕 場面3
レックスとコリン弁護士はレックスの書斎にいます。
夜。
コリンは携帯電話で話をしています、そしてレックスは暖炉の脇のソファーに座ります。

コリン:ありがとう、シャノン。

彼女は電話を切るとソファーに近づきレックスに話をします。

コリン:アシスタントからよ。
     薬物検査ではなにも引っかからなかったわ、レックス。
     あなたの機能は正常だってことね。
レックス:それは違う、すり返られたんだ。
     親父ならたやすい事だ。

コリン:そうするとあなたが血まみれの遺体の脇に寝かせておいた。
     そしてIDを調べたら、犠牲者は動機を持っているわ。
レックス:どうしてだ、俺をストーキングしていたからか?
コリン:そうよ!
     どうして彼女があなたをストーキングしていたか分かってる、レックス?
     それはあなたと18ヶ月前に寝ているからよ。
     それに彼女にダイヤのイヤリングを贈ってるわ。
     どううして彼女を思い出さなかったの?

レックスはショックを受けています。

レックス:[やましげに]
     いちいち名前を聞いたり顔を覚えてるわけないだろ。
コリン:私とよく似てるわね?
     私もあなたと同じタイプの人間よ、レックス、私の事も忘れた?
レックス:[立ち上がって]
     覚えてるよ、コリン。
コリン:[皮肉ぽく]
     あら、嬉しいわ。
レックス:[腹を立て]
     あんたは楽しんでるんだろう、俺の軽率な振る舞いを見て。
コリン:ええ、もしあなたが危険な立場に立っているのを見て面白くないと言ったらウソになるわね。
レックス:いい答えだ、非常に明確な。
     いいか、イブのように俺をストーキングするような輩は俺の個人情報にアクセスする事ができる奴だと思っていた。
     [なじるように]
     それは親父だと思ってたが、どうやら違うようだ。

コリンは軽べつするように目を泳がせます。
彼は彼女に近づき書類を見せます。

レックス:このデータベースはあんたのプロジェクトだな?
コリン:あなたは何を知ってるの?
     私がこの事件を担当したときから利害の衝突があるのは分かってたわ。
     でももう終わった事だと思ってたわ。
     明らかに間違ってたようね。

コリンは開いているブリーフケースの置いてあるコーヒーテーブルに歩きます。
彼女はブリーフケースを閉めて抱えます。

コリン:自分からあなたの弁護士としての職務を解任させてもらうわ。

彼女は書斎を去ります。
レックスの動揺は増加します。

第2幕 場面4
メトロポリス。
夜。
クラークとクロエはレックスが謎の女性を連れて行ったホテルにいます。
彼らは並んだエレベータに向かって歩きます。そしてクロエがボタンを押します。

クロエ:まだ警察でも片方のイヤリングは見つけてないわ。
    それれにフロントでも何も見てないって。
    それを私達で探すの。

エレベータが到着しドアが開きます。
クラークとクロエは誰もいないエレベータの中に入りクロエがボタンを押します。

クラーク:[見回し]
     じゃあ、もし僕だったらイヤリングは…

ドアは開し上昇し始めます。

クロエ:再現してみるわね、いい?
    [エレベータの壁にジェスチャーで表現します]
    レックスはちょうどこのあたりでイブをこの壁に押し当てていたわ、そして…

クロエはイブを演じ壁を背にして立ちます。そしてクラークを待ちます。
クラークは不器用に彼女を見ます。

クロエ:オーケー、いいわよ、来て、真実の追究のためなんだから。
    さあ、私を壁に押し付けて。
クラーク:できないよ…

クロエはクラークの手を引っ張り壁に彼を引き寄せます。
彼は抱き合う形に非常に嫌そうにします。
クロエはそんな彼の気持ちを認めず事務的な話し方を続けます。

クロエ:そして彼女の手はこんな感じ…
    [クロエがクラークの肩に右の手を置きます]
    …そして彼の手はこんな感じだったと思うけど。

彼女はクラークの右手を取り彼女の顔に置きます。

クロエ:そして二人は…

クロエは左手でクラークの背中を撫で回します。
クラークは更に恥ずかしくなります。

クラーク:多分偶然イヤリングをたたき落としたんだ。
クロエ:ええ。
    そうね、そして次に彼女はこんな風にこっちの壁に彼を押した。

クロエは反対側の壁にクラークを押します。
再び二人が面と向かって立つ形になるとクロエはやっと二人の近さに気づきクラークを引き寄せます。

クロエ:
[小さな声で]
    ハイ。

二人の顔は接近しおずおずとお互いの目を見つめあいます。
するとエレベータが止まりドアが開き始めます。
外に立っていたのは双子の女の子をつれた女性でした。

女性:あら、私ったら。
クラーク:[クロエを素早く引き離し]
     大丈夫ですよ。
     乗ってください。
女性:あー、いえ、結構です。
   階段で行くから。

女性は子供たちを連れて階段に向かって大急ぎで行きます。
クロエがエレベーターから顔を出し女性に声をかけます。

クロエ:違うのよ、何もしてないの!
    何もしてないったら、本当よ!

女性はもう一度クロエを見てコーナーの方に娘たちを押します。
クロエはエレベーターの中に戻るとドアが閉じないようにドアを手で押さえます。
クロエはエレベータと階の隙間を見下ろし何か思いつきます。
彼女はひざまずきます。

クロエ:ねえ、クラーク。
    もしイヤリングがこの隙間の中に落ちたら?

クラークはX線ビジョンでエレベータの床を透視します。
一階のエレベーターの底にダイヤのイヤリングはありました。

第2幕 場面5
クラークはライオネルと刑務所で面会しています。
日中。
ライオネルはダイヤのイヤリングをつかんでしっかりとそれを見ています。

ライオネル:戻って来てくれて嬉しいよ、クラーク。
         だがどうしてこれを私に?
クラーク:レックスが真実を話すわけないと思うからです。
ライオネル:そして君は私もそうじゃないかと思っている?
クラーク:まあ、あなたは助けたいと言いましたから。
     あなたを信じます。
     それはレックスがオペラで会った女性のものです。
ライオネル:イブ・アンドリューズかね?
クラーク:ええ、そうかもしれません。
     イブは死んだときにイヤリングを両方ともしていました。
     二人の女性がいると思うんです。
     そしてエレベーターに乗った方の女性はまだ生きていると思ってます。
     ただどうやって探したらいいのか。

ライオネルは再びヤリングを調べ黙ります。
彼は何かを理解します。

ライオネル:恋人に捨てられた女ほど恐ろしいものはないな。
         私が若かった頃、女を捨てるときに宅配で送ったイヤリングだ。
        無様な別れ話はしない主義でな。
        それが私の証だ。
        息子もその伝統は受け継いだようだな。
         エレベーターの女はレックスの元恋人だ。
        [彼はクラークにイヤリングを返します]
        彼女が殺人者だ。

クラークは目を丸くしライオネルを見ます。

第2幕 場面6
コリンのオフィスの机の上でミニテープレコーダーが再生されています。
夜。
テープの声は男のもので訴訟事件を読み上げていました。
コリンは机とは反対側に回転イスを向けて座っています。
オフィスは終了時刻を回り他に誰も近くにいません。
レックスは建物に入いるとコリンのオフィスの外の小さな受付エリアに至る両開きのガラスのドアに入ります。彼はドアの脇の窓から中を見てドアをノックしながら中に入ります。

レックス:オーケー、コリン、来たぞ。
     新しい証拠とは一体なんだ?
     [彼女は向きを変えません]
     最初に言っておくが、君はまた俺に雇われている。
     ちゃんと手続きをしてな。
     何が望みだ?

レックスは机に向かって歩きますがコリンは返事をしません。

レックス:さあ。

レックスは気短かに彼女の椅子をつかんで向きをこちらに向けると、
コリンの喉はかき切られ首から下は血で染まっていました。
レックスは後ずさりしはじめます。
彼はドアに向かってオフィスから出ながらコートのポケットから携帯電話を取り出しダイアルします。
女性がでます。
レックスは死に物狂いで話し、パニックになってオフィスを見回します。

女性: 911、エマージェンシー。
レックス:ああ、あー、人が死んでる。
女性:申し訳ありません、すべての電話が塞がっています。
   このままオペレーターが出るまでお待ち下さい。

レックスが壁の脇のテーブルを見下ろすとピンクのMP3プレーヤーがそこに置いてあるのを見ます。
レックスが一緒にいた女性が聞いていた音楽と同じ曲が小さな音でイヤホンから漏れてきます。
驚いた彼は一本の指でそおっとプレーヤーに触れます。
それから彼はイヤホンを一つ拾い上げて耳に近づけます。
その瞬間女性が銃を向けて彼の前に立っていました。
それはシャノン、コリンのアシスタントです。
彼女は銃でレックスに携帯電話を切るように身振りで合図します。
彼はそうします。

レックス:何のまねだ?
シャノン:どうかしたの、レックス?
     私がわからないの?

シャノンは髪を後ろで束ねメガネをかけています。
彼女は髪を解きメガネを外すと、レックスがホテルに連れて行った女性でした。
彼女は銃の台じりでレックスの顔を打ちます、そして彼は気を失い床に倒れます。
シャノンはサディスティックな笑みで彼をじっと見下ろします。

フェイドアウト。

第3幕 場面1
レックスは気を失ったまま屋敷の書斎の真ん中でイスに縛りつけられています。
夜。
彼の口には電気のテープが貼られ、そして彼はゆっくりと意識を取り戻します。
シャノンは彼の顔に銃を向けて立っています。

シャノン:騒がないと約束できる?

レックスが頷くとシャノンは彼の口からテープをはぎ取ります。

シャノン:お帰りなさい。
レックス:どうやって俺のセキュリティを?
シャノン:私はあなたの法律事務所で働いてるのよ、レックス。
     あなたがメトロポリスで飲んでるって言ったの、そして家に送り届けるって。
     [彼女は静かに笑います]
     皆でここにあなたを運ぶのを手伝ってくれたわ。
レックス:どうしてここなんだ?
     これは何のマネだ?
シャノン:事の起こりはね。
     このイヤリングを貰ったのが…最初よ。
     この間の夜の事を思い出して、でも始めてあった時の事は思い出さなかった。
     だからよ。
     [彼女はテーブルに銃を置きます]
     私は婚約者を持っていたの、でもあなたはその事を知らなかった。
     あなたが私を愛してくれたと思ったからあなたと一緒になろうと彼を裏切ったのに。
     [彼女はレックスの脇にひざまずきます]
     彼と別れた後あなたに話そうと電話したけど出てくれなかった。
レックス:悪かった。
     もし知ってたら…
シャノン:[いっそう気が動転し]
     でもでなかったわ。
     それから三ヵ月後、コリンのオフィスの外であなたにぶつかったの、でもあなたは私を覚えてなかった。
     まるで一度も会った事がなかったみたいに。

彼女は立ち上がってレックスの肩に触れて背後に歩きます。

シャノン:それであなたのファイルを詳細調査し始めたの。
      私だけじゃなかったって分かったわ。
レックス:イブ・アンドリューズ。
シャノン:とりわけ。
     彼女は熱心だったようね。
     私はあなたに償いをさせるって彼女に言ったわ。
     そして彼女はホテルに来る事に同意した。
     それから愛し合った後あなたのシャンペンに薬を入れたの。
     血液検査で何もでなかったのが面白かったわ。
レックス:お前がテストを不正に操作したんだな。
シャノン:私はただ結果を摩り替えただけ。
レックス:俺を彼女の所に運んだのもお前か。
     警察に電話したのも。
シャノン:あなたは逮捕されるはずだった。
     でもそうはならなかった。
     だからここにいるのよ。

レックスは怒って自由になろうとして戒めを解こうともがきます。

第3幕 場面2
タロン。
夜。
ラナはアパートのソファに座り暖炉を見つめています。
ジェイソンが彼女の前でひざまずきます。

ジェイソン:おい。
      どうかしたか?
      一晩中何もしゃべらないじゃないか?
      [ラナは変死をしません]
      話してくれ。
ラナ:[小さな声で]
   あなたのお母さんに会ったわ。 
ジェイソン:どこで?
ラナ:ここよ。
   お母さんはあなたが電話に出ないって言ってたわ、だから私に会いにきたって。
   スモールビルのホテルにいるって、あなたが来るまで。
ジェイソン:どうしてもっと早く言ってくれなかったんだ?
ラナ:分からない。
    多分…あなたとお母さんの仲介役になりたくなかったんだと思う。

彼女は立ち上がって火に向かいジェイソンから離れます。

ジェイソン:俺はそんな事を君にさせるつもりはない。
      お袋がここに来るとは思ってなかった。
      悪かった。
ラナ:お母さんは本当にあなたの事を心配してたわ。
ジェイソン:[意地悪に]
      そう見せかけたのさ。
      寂しそうに心を砕くように。
      でもそんなお袋じゃない。
      お袋は操るのがうまいんだ。
      そして一生、俺をコントロールしようとしたんだ。

ラナは気が動転しているように見えます。

ジェイソン:何だ、他に何かあるのか?
ラナ:[怖がって]
   お母さんを夢で見たの。
   つまり、イソブルの夢を見てたら、
   彼女は磔で火あぶりになっていたわ。
   そしたら突然あなたのお母さんがそこにいたのよ。
ジェイソン:まあ、そんな夢ならそれほど怖いわけないだろ。
ラナ:ジェイソン…
   お母さんに会う前に夢を見たの。

ジェイソンは信じられないような顔でラナを見ます。

第3幕 場面3
クラークとクロエがトーチオフィスでマイクロスコープを使ってイヤリングを見ています。
夜。
二人はダイヤモンドに彫られた小さなシリアル番号を見ています。

クラーク:そこだ。
     ライオネルの言った通りだ。
クロエ:どうやってこんなに小さなシリアル番号を入れるの?
    小人でもあるまいし。
クラーク:レーザーさ。
     ライオネルは一流のダイヤモンドディーラならやるって言ってた。
     失くしたり盗まれた場合その番号で探し出す事ができるんだってさ。
クロエ:あるいはあなたを追いつめることもね。
    [FAXがプリントし始めます]
    あら。
    [彼女はそれに行きます]
    ライオネルが宝石商に電話してレックスのオーダーを流すなんて信じらんないわ。

クロエがファクスを取り上げて見ます。

クロエ:いいわ、番号を教えて。
クラーク:[ダイヤモンドシリアルナンバーから読み]
     7-2-2-D-J-S-3-9-7-0 。

クロエが番号を照合し見つけます。

クロエ:あったわ。
    2つのダイヤモンドイヤリング。
    うわーっ、高い。
    シャノン・ベルに宅配で送られてるわ。
クラーク:シャノン・ベル。
     どこかで聞いた名前だな?
クロエ:まあね、これによると彼女はレックスの法律事務所で働いてるわ。
クラーク:レックスに警告しないと。
クロエ:私は警察に電話するわ。

クロエが机から電話を取るためにクラークから顔をそむけるのとちょうど同時にクラークが超スピードで走り去ります。
クロエが警察に電話しながら振り向くとクラークの姿はありませんでした。
彼女は少し苛立った音を立てます、しかし驚いているようには見えません。

第3幕 場面4
屋敷のシャノンとレックス。
夜。
レックスはまだイスに縛りつけられています。
そしてシャノンは二本のお酒のビンを両手に持って近づいてきます。
レックスの口には新たにテープを貼り付けられていました。

シャノン:どうしてこんな事になったのか分かる、レックス。
     オペラで私に気づけばよかったのよ。
     [彼女がレックスのひざに酒を少しこぼすと彼は怒ってうめきます。]。
     「やあ、シャノン。君に会えて嬉しいよ」ってね。
     でもそんな事はしなかった。

彼女はレックスの体中に酒を振りまきます。

シャノン:あの時私はあなたが買ってくれたイヤリングをつけていたのよ。
     そしてまたセックスしたのに、それでもあなたは気づかなかった!

シャノンはテーブルに戻ってもう一本の酒のボトルを取ります。
彼女はコルクを引き抜いて今度はレックスの周りの床に振りまきます。

シャノン:私には自分の生活があったの、レックス。
     フィアンセ…[苦笑い]がいたのに。
     あなたが私の人生を壊したのよ、それなのにあなたは私の事さえ知らなかった。
     そしてあなたはいつもこんな事をしていたわ。

酒を床に撒き終わると彼女はテーブルに空のボトルを返します。
それから彼女は火のついたロウソクを手に取りレックスに向かって歩きます。
レックスは彼女が何をしようとしているか悟り更に怖がります。
彼は話をしようとしますが彼の言葉はテープによってくぐもっています。
彼が命乞いをしようとしているのを無視して、振り撒いた酒の外側、レックスの後ろに立ちます。
彼女はロウソクを傾け始めます。

シャノン:もう終わりにしないとね。

彼女はロウソクを手から落とします。
ロウソクの火は直ぐに酒に引火し燃え出します。
火勢は速く直ぐにレックスの顔の高さまで燃え上がってレックスを取り巻いている円に広がります。
クラークが部屋の中に超スピードでやって来て事態を把握します。
レックスとシャノンは反対方向を向いていていて彼が入って来たのに気づいていません。
彼はシャノンに向かって超スピードを出し炎から彼女を突き飛ばします。
シャノンが壁に向かってすっ飛んでいる間、レックスは炎の中に座っています。
クラークはジャケットを脱ぎ頭の上でプロペラのように振り回します。
その勢いで起きた風によって床を燃やしていた炎は消えました。
それから彼は部屋から超スピードを出し去ります。
シャノンは床に叩き付けられ衝撃で気を失いました。
レックスはまだ危機を予期して目を閉じたまま息を荒げていました。
彼はついに目を開いて見回し驚きます。
炎は消え床の上には煙と焼けた黒いリングがありました。

フェイドアウト。

第4幕 場面1
ケント農場。
日中。
ジョナサンはディリープラネットの一面を読みながらキッチンにいます。
見出しにはレックスの写真と「ルーサーはダブル殺人について無罪」と書かれています。
マーサはコーヒーを注ぎクラークもキッチンにいました。

ジョナサン:レックスが無罪になってよかったな。
      だがな、お前が関わる前に私達のところに相談して欲しかった。
クラーク:まあ、最初はね、父さん、ただ助けたかっただけなんだ。
     それに本当にレックスを信頼すべきかどうかって。
マーサ:あなたはどう決断したの?

マーサはジョナサンにコーヒーとハチミツを手渡します。

クラーク:[悲しそうに]
     分からない。
     女の人をあんな風に扱うなんて…
     僕の知らないレックスの一面を見せられたよ。
     気づかないうちに誰かを傷つけてしまうなんて。
ジョナサン:これでレックスも少しは懲りただろう。
      それだけの事さ。
クラーク:もうひとつ言わなきゃいけない事があるんだ。
     ライオネルに会いに行った。
マーサ:何ですって?
クラーク:ライオネルはレックスを助けたがってた、そして実行してくれたんだ。
     ライオネルがいなかったらこんな事できなかったかもしれない。
ジョナサン:クラーク。
      ライオネルがどれだけ危険な男か知っているはずだ。
クラーク:でもさ、父さん、こういう事なんだ。
     ライオネルは変わった。
     しかも肝臓も治っているんだ。
マーサ:もう治らないって思ってたわ。
クラーク:僕がライオネルの中に入ったのが切欠で治ったんじゃないかと思うんだ。
ジョナサン:[驚き]
      クラーク、ライオネルはその事を知っているのか?
クラーク:ううん。
     奇跡だと思ってる。
マーサ:それはそうよね。
クラーク:ねえ、変に聞こえるかもしれないけど、でも本当に変わったと思ってる。
     見る目が違ってるんだ。
ジョナサン:クラーク、私の知るライオネル・ルーサーは決して変わる男じゃない。
      そしてレックスもだ。
      今はまだそう思わないことだ。

クラークがあいまいにジョナサンとマーサを見ます。

第4幕 場面2
レックスは刑務所の面会室に入ります。
日中。
机で待つライオネルは背後に顔を向けます。
レックスはテーブルに歩きます。

レックス:俺を助けてくれたのか、親父。
     [ライオネルは向きを変えます]
     もう何を話しても何ら影響はないはずだ。
ライオネル:お前の友人のクラークをいい方向に向けただけだ。
      私がしたことはそれだけさ。
      まだ私が関係ていると思っているのか?
レックス:いや。
     だた、見返りに何を求めるのかと思っている。
ライオネル:ああ。
     [彼は微笑します]
      ああ、そうだな。
レックス:[冷淡に]
     釈放は無理だぞ。
ライオネル:いや、お前は理解していない。
      分かっているさ、こんな場所が私には似合いなんだ。
      責任は自分で取るものだ。

レックスは重いため息を着きライオネルの真向かい座ります。
レックスはライオネルの言葉を信用せずにニヤリとします。

レックス:随分とご機嫌そうじゃないか、親父。
     それでその言葉を信じよう。
     [彼は前へ寄りかかります]
     何が欲しいんだ?
ライオネル:お前の父親にさ、レックス。
      もしお前が望んでくれるならだが。
レックス:[目を伏せ]
     治ったんだってな、親父。
     もう一度奇跡を望む気か。

レックスは真直ぐにライオネルの目を針の先を見るような目つきでじっと見つめます。
それから机から立ち上がると去り始めます。
彼は立ち止まって振り返り何か言いたそうに長い間ライオネルを見ます。
ライオネルはすがるような目で彼を見上げます。
次の瞬間レックスは父親から目をそむけ刑務所を出て行きます。
ライオネルは悲しげに口の前で両手を握り締め、そして額を握り締めた拳に埋めます。
部屋の中で聞こえる音は牢屋のドアの開閉音が響き渡るだけです。

第4幕 場面3
クラークの屋根裏。
夜。
クラークは開いた窓際に立ち胸の前で腕を組んで外を見つめています。
誰かが後ろから入って来る音を聞いて階段方に振り返るとレックスがいました。
すると彼はレックスから目を逸らし星を見つめます。
レックスは階段のところで立ち止まっています。

レックス:お前に礼が言いたくてな。
     すまなかったな。
     俺を助けようとしてくれたのに。
クラーク:[レックスに戻って]
     どれだけ続けるつもりなんだ、レックス?
レックス:よく分からないな。
     何の話だ?

レックスはクラークの側に歩いて窓から外を見ます。

クラーク:[少し腹を立て傷ついたように]
     何も話すことなんてないよ。
     君が変わる事を除けばな。
レックス:どう変われというんだ?
クラーク:いいか、一番気にかけなきゃいけないのは自分自身だという事だよ。
     僕の知らない一面が君にはある、レックス。
     君についての事は他には何も知らないんだ。
レックス:俺の毎日の行動を知ってどうするんだ。
     自分の事は自分でできる。
     いいか、シャノンは頭がおかしかったかもしれないが俺については正解だ。
     俺は今まで沢山の女たちと寝たさ、クラーク。
     人も死んだ、止める事もできただろう。
     なるぼど、その通りかもな。
クラーク:まあ、それが分かれば。
レックス:あのな、この前の夜彼女が俺に火を着けようとした事があった。
     よく考えたんだが。
     もうこの世ともおさらばかと思った。
     だがどういうわけか火は消えていたんだ。
     そして彼女は床の横たわっていた。
     その瞬間俺は二度目のチャンスを与えられたと思った。
クラーク:この数日の間、レックス、僕は…
     君のお父さんの方が君よりずっと正直に話してくれてると思ったよ。
     そんな君の態度がいやなんだ。
     僕らは敵同士に思えてくる。
レックス:[嘆願するようにクラークの目を見つめ]
     俺を見限らないでくれ。

クラークが彼を見つめ返します。

第4幕 場面4
ジェイソンはタロンの裏から路地へ出てきます。
夜。
雨が降っています。
路地に駐車されている車の脇に傘を差して立って待つ運転手がいます。
ジェイソンが車に来ると男は彼のためにドアを開けます。
ジェイソンは中に入ると母親のジュヌビエーブの脇に座ります。
彼女は彼にほほ笑みます。

ジェイソン:こんなところに何をしに来たんだ、母さん?
ジュヌビエーブ:私と話したくないのは分かってるわ、ジェイソン。
        でもね母親なら自分の息子に会いたいものよ。

雷鳴と稲光があります。
一瞬の光はジュヌビエーブの赤いコートを反射させジェイソンの顔を不気味に赤く染めます。

ジェイソン:俺に会うために来たんじゃないだろ。
ジュヌビエーブ:あなたのガールフレンドに会いに来たのがいけなかった?
ジェイソン:それはこじ付けだろ。
      でも今回はそうはさせないぞ。
      もう俺は違うんだ。
      [また稲光が起きます]
      俺が会いに行くよ、用意ができたらな。
ジュヌビエーブ:それはいつになるの?
ジェイソン:分からないね。
      でももうここに来るな。
ジュヌビエーブ:これだけは分かって、ジェイソン。
        あなたが幸せなら私は本当に嬉しいのよ。
        つまり、ラナは…魅力的だわ。
        どうしてあなたが都会を離れて彼女の元に来たのか分かったわ。
        それは、彼女は…特別なのね。

3回目の稲光はジュヌビエーブの顔を青白く浮かび上がらせます。

ジュヌビエーブ:あなたがいつか彼女のような人に出会と知ってたわ。

ジェイソンはジュヌビエーブの言った事に呆気に取られ彼女を見つめます。

ジェイソン:俺は偶然彼女に出合ったんだぜ?
       [稲光]
ジュヌビエーブ:[笑い]
          一体何の事かしら?
          もちろんそうなんでしょ、ジェイソン。
          他にどうやって彼女と出合ったって言うの?

ジュヌビエーブはジェイソンの質問には答えず彼の頬にキスをします。
彼は母親の答えが真実ではないと思ったままじっとしています。

ジュヌビエーブ:あなたからの手紙を待ってるわ。

母親と息子が最後の別れで見詰め合うと稲光は断続的に光りました。
そして次にジェイソンは車から出て行きます。
彼が数フィート離れると運転手は運転席に戻りエンジンを始動させます。
車が走り去る中ジェイソンは叩きつける雨の中、路地の真ん中で立ち尽くします。

フェイドアウト。

おしまい