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SMALLVILLE(スモール・ビル)
邦題:ヤング・スーパーマン

シーズン4.14Krypto[クリプト]

第1幕 プロローグ
二人の青年、ジョシュとザックが大きなトラックでスモールビルのスーパーに乗りつけます。
夜。
駐車するとジョシュはザックに振り向きます。

ジョシュ:さあ行こうぜ。

彼らはトラックから降ります。

コンビニの男性オーナーがカウンターの後で金庫を開けて入金バッグを仕舞っています。
ドアが開き入店を知らせるルが鳴ります。

オーナー:[振り向かず]いらっしゃいませ。

彼は金庫を閉じて立ち上がります。
しかし彼が振り向いたとき店内には誰にもいません。

オーナー:どなたですか?

彼はカウンターの脇から音が聞こえてきたのを確かめようと歩きだします。
カウンターに目を移すと2匹の犬、一匹は金毛、もう一匹は黒毛がこちらを見ていました。

オーナー:おい、誰か?

黒毛の犬が突然吠え立てながらカウンターに飛び乗ります。
オーナーは怖がって後ずさりします。
黒毛の犬がオーナーを抑えている間、金毛の犬はカウンターの後に走って口で金庫のハンドルを咥えます。
金庫の扉を口で引っ張り扉を壊して床に投げ捨てます。
それから犬は口で入金バッグを咥えると出口の方へ走ります。
オーナーはカウンターの後ろからショットガンを取り出し金毛の犬に向けます。
しかし黒毛の犬がオーナーを攻撃し、まるで彼の手から奪い取るように銃を噛みます。
オーナーはびっくりして叫んで床に倒れますが銃は放しません。
犬はついに彼から銃を奪い離れます。
オーナーは立ち上がって店の奥の部屋へと駆け出します。
彼は重い鉄製のスライドドアを閉め犬から逃げました。
しかし犬は前足でドアを連打します。
そしてドアに大きなへこみを入れます。
犬が連打し続けるとオーナーはゆっくり壁の方へ後退します。
ついに犬はドアに穴を開け鼻先を出し怒って唸ります。
穴からクビを引っ込めた犬はオーナーが逃げる音を聞きます。
オーナーはドアの方からの音を聞き走ります。
ついにドアがぶち破られると犬はオーナーに唸りながら走り出します。
そしてオーナーに襲いかかるとオーナーは叫びながら床に倒れます。

外ではザックが犬笛を吹きます。

オーナーを襲っていた犬は音を聞きます。
後の箱は血だらけでオーナーは呻いていました。
犬がトラックに走って戻ってくるとザックは犬を呼びます。

ザック:ヘラクレス!

ザックはヘラクレスの毛にさわって血が付いているのを見つけます。
彼はジョシュにそれを示します。

ザック:何があったんだ?
ジョシュ:分からない。中に入れておけ。

ザックがトラックの後ろの両開きのドアを開くと二つのオリが並んでいました。

ザック:[ヘラクレスに]乗れ!

ヘラクレスは開いたオリの一つに飛びこみます。
ザックはオリのドアを閉めるボタンを押します。

ザック:アインシュタインはどこだ?
ジョシュ:[ザックに別の犬笛を手渡し]呼び戻せ。

ザックは犬笛を吹きます。

ロイスは運転しながら携帯電話でクロエの留守電の声を聞いています。

クロエの声:ハイ、クロエよ。
         今は電話に出ることができないから、メッセージをどうぞ。
        後で連絡します。
ロイス:ハイ、クロエ、ロイスよ。
     寮を追い出されちゃってケント家に世話になる事になったの。
     でもまだあなたのところに手紙が届いてるはずだから、
     朝、持ってきてくれる?
     じゃあね。

ロイスは電話を切ります。
そして隣の座席に携帯を置こうと道路から目を逸らします。
再び目を戻すと金色の犬、アインシュタインが車の前を横切りました。

ロイス:きゃ!

彼女は急ブレーキを踏みます。
車が止まるとロイスは振り向いて犬が倒れているのを見ます。

ロイス:ああ、やっちゃったみたい?

彼女は車から降りて動かない犬へ走ります。
そして脇にひざを付くと犬は弱弱しく鳴きます。

ロイス:あーあ、ちゃんと見てなかったでしょ?
    このままここには放っておけないわね。

ロイスはアインシュタインを車の後部座席に乗せます。

ロイス:OK。大丈夫だからね。
    あなたが元気になるのは分かってるんだから。
    今までにぶつけた事があるけど皆平気だったし。

彼女はくしゃみをします。

第1幕 場面1
ケント農場。
夜。
クラークはリビングルームのソファーの上で赤い毛布に包まってジーンズとセーターを着たまま眠っています。
音がキッチンの方から聞こえてきてクラークは目を覚まします。
ジョナサンが階段からリビングルームに入った時彼は体を起こしました。

ジョナサン:シッ。

クラークは立ち上がってジョナサンの後に従います。
キッチンに入ると二人は床にこぼした食べ物をなめているアインシュタインを見つけます。
犬の首には壊れたチェーンがあります。
ロイスが入ります。

ロイス:あら。こんな時間に二人して何してるんです?
ジョナサン:どうやら腹をすかせた客が来てるみたいだ。
ロイス:[アインシュタインを見て]
    あれ、中に縛っておいたはずよ…納屋の方に。
    チェーンでつないでおいたの、そして、あー…
    [彼女は咳払いをします]ええ。

アインシュタインは口の周りをなめます。

納屋で。
ロイス、クラーク、ジョナサンはアインシュタインと入ります。
彼らは階段の脇の支柱が壊れているのを見ます。

ロイス:[混乱し]
    そこの柱に繋いでおいたのに。
    木が腐ってたのかしら。
    そんな事はなかったわ、どうやって壊したの?

ロイスはアインシュタインの脇に膝をつきくしゃみをします。

ロイス:ああ、アレルギーが…
ジョナサン:どこでこの犬を見つけたんだ?
ロイス:実は、ちょっと…ぶつけちゃって。
クラーク:ぶつけた?車で?
ロイス:[皮肉ぽく]違うわよ、手でよ。
    動物病院に連絡しようと思ったんだけど、さっき見たら元気になったから。
ジョナサン:明日の朝一で見せた方がいいな。
      そうすれば飼い主が誰か分かるかもしれない。
      首輪をつけているからな。
      いなくて寂しがってるはずだ。

アインシュタインは鳴きます。

ロイス:そうね。[彼女はくしゃみをします。]
クラーク:実は、犬を飼いたいと思ってたんだ。

ロイスはクラークを睨みます。
彼はからかうように彼女に微笑み返しアインシュタインの脇に座って犬の顔を掻きます。

クラーク:飼い主が見つからなかったら飼ってもいいでしょ?
ジョナサン:その話しは明日の朝になってからだ、クラーク?
ロイス:そうね、もう遅いから。おやすみなさい。

ロイスは去ります。

ジョナサン:さあ、もう少し寝ておかないとな。
クラーク:あー、ちょっと用事があるんだ。
ジョナサン:午前三時だぞ。
クラーク:父さん、ロイスがここに来ている間、僕が超スピードで仕事をするのは彼女が見ていないときじゃないと。
ジョナサン:[彼は頷きます]分かった、それじゃそこを直しておいてくれないか?
      [彼は柱を指さします]さあ。

ジョナサンは微笑んで納屋を出ます。
クラークは柱に行って残骸を天井から引き抜きます。
彼は超スピードで残りの残骸を片付け新しい木材を持ってくると巻き尺で天井から床の長さを測ります。
のこぎりで裁断すると天井の元の場所に柱を立てます。
アインシュタインはその過程を全て見ています。
クラークは作業を終えると唇をなめているアインシュタインに振り向きます。

クラーク:まあ、少なくともお前には隠しておく必要はないからな。

アインシュタインはわずかに混乱したように軽く吠えます。

第1幕 場面2
ケント農場。
日中。
車がやってくると納屋の外に駐車されます。
クロエが車から降りてくるとクラークは彼女の車に近寄ります。

クラーク:やあ、クロエ。
クロエ:ハイ。ロイスは、えーと、彼女の転送された郵便物を持ってきたんだけど。
    彼女はどこ?
クラーク:ああ、おそらくまだ…

アインシュタインはちぎれたチェーンをつけたまま納屋からクロエの方へと走ります。
クロエは喜んで犬を触ろうとひざまずきます。

クロエ:[アインシュタインに、にこやかに]やあ!
クラーク:…シャワーだ。
クロエ:この子の名前は?
クラーク:名前が分からないんだ。
     ロイスが拾ってきたから。
クロエ:自分が居候のくせにね?
    [立ち上がり]
    新しい居候はどう?
クラーク:ロイスかい?
     彼女は、えーと、留守電に入ってたよ、シャワーを浴びたいってね。
     その上僕のベッドを占拠した。
     彼女はえらいよ。
クロエ:OK。元気にしてる?
クラーク:分からないよ。
     彼女と一緒にいるのは僕にはちょっとね。

アインシュタインが鳴くとクロエは犬の頭をかきます。

クロエ:で、あなたのところにこの子が来たわけね。
    飼うつもりなんでしょ?

クラークは微笑みます。

クロエ:それに私もいつも傍にいるから。
    [クラークは応えません。クロエは震えます。]
    ああ、寒いわ。
    彼女を探しに行くわね。
クラーク:分かった。中にいるはずだよ。
クロエ:OK。

クロエは家に向かいます。
クラークはアインシュタインのチェーンを取ります。

クラーク:さあ。

クラークはアインシュタインをクロエの車の近くに停まっているトラクターに連れていって、
トラクターのグリルにチェーンを結びます。

クラーク:後でな、これで大丈夫のはずだ。

クラークはアインシュタインの背中を軽く叩いて離れます。

クラーク:いい子だ。

クラークが家の方へ向かうとアインシュタインはしつこく吠えます。

クラーク:止めるんだ。

アインシュタインは吠え続けます。
クラークが家に入っても吠え声は外から聞こえます。
外へ戻るとトラクターが芝生の真ん中に来ているのを見ます。
フェンスがまだ跳ね回っていました。
アインシュタインはまだグリルにチェーンでつながれたまま無邪気にクラークをじっと見つめてトラクターの前に座っています。

クラーク:大変だ…

クラークはアインシュタインに駆け寄り脇にひざまずきます。

クラーク:おい。お前も秘密を持ってたんだな。
     [彼は笑います]
     お前はどこの出身だ?
     [アインシュタインは鳴きます]
     いい子だ。

クラークはふざけてアインシュタインの首のところを掻きます。
そして皮膚の下に何かを感じるとアインシュタインにX線ビジョンを使って調べます。
小さなマイクロチップが埋め込まれていました。
ロイスとクロエが家から出てきてトラクターを見て立ち止まります。

ロイス:何をしたの?
クラーク:何?ああ、うーん…動いてきたんだ。
ロイス:フェンスを壊して?

ロイスとクロエは階段の下に来ます。

クラーク:ああ、魔法みたいだろ?
ロイス:ええ。
クロエ:ああ、魔法ね。
    [クラークに助け舟をだします]
    でもそれはこういう事でしょ?
    サイドブレーキが効かなかったか何かで動いたんだよ。
    古いからでしょ?古いトラクターだから。
クラーク:[助け舟に気付き]そうなんだ。

ロイスは不思議そうにクラークとクロエを見ます。

クロエ:とにかく、もう行くから。後で会いましょ。
ロイス:バイ。

クロエは去ります。
ロイスは怪訝そうな顔でクラークを見ます。

クラーク:スキッピーとここで遊んでたんだ。
ロイス:スキッピーなんて呼ばないで。
クラーク:OK、ロイス、じゃあ何って名前をつける?
ロイス:えーと。その子には腹が立つのよ。
    10フィートも飛ばされておいて怪我一つしないなんて…
    クラーキーなんてどう。
    [アインシュタインに]おいで、クラーキー!
    おいで!
    張り紙したら?アレルギーの持ち主のね。
クラーク:あのね?
     その名前は誰も使わないよ。
     その子の皮膚の下にマイクロチップIDタグのようなものがあるんだ。
     動物救護センターで調べれば分かるかも。
ロイス:朝からそのつもりよ。

ロイスは張り紙を作ります。
二人してアインシュタインのカラー写真の入った「犬を見つけました」書かれた張り紙を持ちます。

クラーク:すぐに帰るって親に言っておかないと。

クラークは中に行きます。
アインシュタインは悲しげにロイスを見上げます。

ロイス:そんな目で見ないでよ。
    [アインシュタインは鳴きます]
    クラーキー。

ロイスは名前に笑います。
アインシュタインはいら立ったように前足を顔のところまで上げます。

第1幕 場面3
ロイスとクラークはアインシュタインと一緒に動物保護センターに入ります。
日中。
ロイスがアインシュタインのチェーンを持ってます。

ロイス:私達がいなくなっても飼い主が見つかるからね。
    座って待ってて、クラーキー。

犬は座ります。

ロイス:いい子ね。

クラークはフロントデスクのベルを鳴らします。
ザックが奥の部屋から出てきてアインシュタインを見ます。
犬は彼を見て頭を降ろして弱弱しく唸ります。
ザックはアインシュタインだと分かり、アインシュタインは彼に吠え始めます。

ロイス:[アインシュタインに]ねえ、シーッ。
ザック:やあ。いらっしゃい?
クラーク:僕らがこの犬を見つけたんだけど。
ロイス:実は、あー、私が見つけたの。
    でも実はぶつけちゃったのよね。
    [ザックは心配そうにアインシュタインを見ます]
    大したことはないわ。
    私達、クラーキーって呼んでるんだけど。
クラーク:[苛立って]クラーキーじゃないだろ。
ロイス:それって「キー」の部分がいやなわけ?
    クラークの名前をもじったから?
    でも混乱するわよね、ねえ、自分の名前を変えたら。
    あなたがスパーキーっていうのはどう?
クラーク:[ザックに]
     とにかく、この犬にはIDチップが埋め込まれてるみたいなんだ。
     それを調べられるかどうか分かりますか。
     そんなに大げさじゃなくていいんです。
ザック:うーん、じゃあ、やってみるか。

ザックはスキャナを机から出してアインシュタインのチップを調べるためにかがみます。
アインシュタインがザックに吠えるとザックは後ずさりします。

ザック:おいおい!大丈夫だ。
ロイス:ふーん。
    この犬、あなたの事があまり好きじゃないみたいね。
クラーク:僕がやってみるよ。

クラークはザックからスキャナーを受け取ってアインシュタインのチップを調べます。
ロイスはくしゃみをします。

ザック:お大事に。
ロイス:ありがとう。

クラークがチップを調べると、ルーサー・コープと机のコンピュータのモニタに現れます。

クラーク:ルーサー・コープ?
ロイス:冗談でしょ。
ザック:ほう。それじゃその犬は実験動物か何かだな。
クラーク:実験動物?
ザック:それじゃ僕から返せば丸く収まるだろ。
クラーク:実は、うーん、いいよ、僕らがやるから。ありがとう。

クラークとロイスは去り始めます。
ザックは二人を引き止めたいがどうしていいのか分かりません。

クラーク:さあ、行くぞ。
ザック:ルーサー・コープから連絡があった場合に備えて、
    君の名前と住所を教えてくれないか。それが方針だから。
クラーク:[ロイスに]
     家に連れ帰ってくれないか?
     僕からレックスに頼んでみるよ。
ロイス:[そっけなく]いいわよ。
    [アインシュタインのチェーンを取り]
    さあ。くしゃみの元さん行くわよ。
    来て、クラーキー。

ロイスは微笑みながらセンターを去ります。
クラークが机に戻ると一瞬、不快感そうな表情を見せます。
ザックは住所を書かせるためにクリップボードとペンを手渡します。

クラーク:ありがとう。

クラークは書き始めます。

バックルームではジョシュがテーブルの前に立っていました。
机の上には緑色の液体の入ったいくつかの小ビンがあります。
ザックが戻って来るとジョシュはいくつかの書類を見ています。

ザック:おい、兄貴!
    誰が来たと思う?アインシュタインだ。
    [ジョシュは驚いてザックを見ます]
    本当だ。
    クラーク・ケントという名前の奴が農場で犬を預かってる。
ジョシュ:[笑い]
     それはいい知らせだな。
     [彼は木の棒を拾ってオリの方へ歩きます]
     明日このバカ犬とトラックを盗みに行かなきゃならないところだったからな。

ヘラクレスがオリにいます。
そしてジョシュは棒でオリをカラカラとなぞります。
ヘラクレスは死にもの狂いで吠え立てます。

ザック:[怒って]どうしてそんな事をするんだ?
ジョシュ:何を心配してるんだ?こいつは犬だろ。

ジョシュはザックを通り越してテーブルへ歩き棒を置きます。
彼は注射器銃を取り緑色の液体の小ビンを充填します。

ザック:ところで犬はどうなんだ?
ジョシュ:あと二時間だ、アインシュタインを取り戻すには十分な時間だ。
     それから二匹に注射すれば、明日いっぱい強さは元に戻る。
ザック:どうしてもっと長続きさせるようにできなかったんだ?
ジョシュ:[威嚇するように]分かるもんか、ザック。俺はただのトレーナーだったんだ。

ザックは頷き、ジョシュは笑います。

ジョシュ:計画は後戻りできないぞ。
     店を閉店しろよ?
ザック:ああ、もちろん。

ザックは机の上の書類を片付け始めます。
彼が開いていたバインダーを閉じると、表紙にはルーサー・コープ・セキュリティ・マニュアルと書かれていました。

フェイドアウト。

第2幕 場面1
ジェヌビエーブ・ティーグが使用人に案内されてレックスの書斎に行きます。
日中。
使用人が去るとジェヌビエーブは机の前に立っているレックスへ歩いて行きます。

レックス:ジェヌビエーブ。
     驚いたよ。
     ジェイソンなら俺の仕事の使いでメトロポリスに行っている。
ジェヌビエーブ:実は、あなたに会うために来たの、レックス。
レックス:ほう、仕事以外のことで話すことがあるとは思わなかった。飲みますか?

ジェヌビエーブはうなずきます。
レックスはバーに行って二杯飲物を注ぎます。
ジェヌビエーブはコートを脱いでソファーに置きます。

ジェヌビエーブ:私の息子がいい仕事をできると分かっていたわ。
レックス:そりゃいい。
     彼は俺が与えたプロジェクトに相当な情熱を持っている。
ジェヌビエーブ:私としては息子をスモールビルから出して欲しくないの。
レックス:それはどうかな。

彼はジェヌビエーブに飲物を手渡します。

ジェヌビエーブ:あなたをあなどっていたようね、レックス。[彼女は飲みます。]
レックス:それは見解の相違だな。[彼は飲みます。]
ジェヌビエーブ:[ゆっくりレックスの周りを回り]
        でもいつもは私がやってるわけじゃないわ。
        頑固な若者が私の盲点になったようね。
        ジェイソンに聞いてみて。そしてあなたにも。
レックス:あなたは俺にルーサー・コープにジェイソンのポストを与えるよう依頼した。
     あなたの言う問題点が分かりかねます。
ジェヌビエーブ:私があなたにジェイソンを雇って欲しい理由は知っているはずよ。
        ラナ・ラングから離して欲しいの。
        でもその代わりに、あなたは自分の目的のために息子を引き入れたわ。
レックス:ジェヌビエーブ、狂った女性はあまり魅力的じゃありませんよ。
ジェヌビエーブ:私は息子を守ろうとしているの。
レックス:それじゃ、親父の所に行って絵本でも書いていればいい。
     ベストセラーは間違いないでしょう。

レックスは机に行って座ります。

ジェヌビエーブ:それじゃあなたはお父様が釈放された理由に興味がなくなったわけね?
レックス:俺は親父が本当に更生する方をとった。
     したがって、親父の罪の意識や無実かはもうどうでもよくなった。
     だが再びあなたにお会いできて光栄だ、ジェヌビエーブ。

彼女は机へ歩いて行って飲物を置きます。

ジェヌビエーブ:あなたもね、レックス。
        ジェイソンによろしく言っといて。
        [彼女はコートを着ます]
        息子があなたの探しているものを見つける手伝いができないことは残念ね。

ジェヌビエーブはしばらく意地悪そうにレックスを見てから振り返ります。
レックスはポカンとした顔で振り返ります。
彼女は去ります。
彼女が去るとレックスはノートパソコンのボタンを押してモニタに古代の地図を表示させます。

第2幕 場面2
ケント農場。
夜。
ジョナサンとマーサはキッチンで夕食の準備をしています。
アインシュタインは見ています。

マーサ:信じられないわ、クラークと同じぐらいの力があるなんて。
    確かにきれいな犬だけど。

アインシュタインは振り向いてダイニングテーブルの上の肉に気がつきます。
犬はそおっとキッチンを出ます。

ジョナサン:ちょっと待って、待つんだ。
      お前が何を考えているか分かってるぞ。
マーサ:クラークには犬を飼うことはいい事かもしれないわ。
    あの子今年は一人ぼっちだったし。
ジョナサン:まあ、待て。
      来年、クラークが大学に行ったらどうするんだ?
      誰が犬の世話をするんだ?私か?
マーサ:[階段の上に呼びかけ]ロイス、夕食の時間よ!

キッチンから大きな音が聞こえてくると、
二人はキッチンに行ってアインシュタインがテーブルを壊して肉を食べているのを見ます。
マーサはハッとします。

ジョナサン:おい、おい、おい、おい!
      [マーサに]分かっただろ?
マーサ:ええ、クラークがよくこんな事をしてたの覚えてる?
    三歳のときよ。
ジョナサン:そういう事じゃないだろ。
      [アインシュタインに。]おい!

ジョナサンはアインシュタインのところに行きます。
ジョナサンが犬を追い払おうとしたとき、ロイスが階段から降りてきてマーサの隣に立ちます。

ジョナサン:ほら…ほら…おい!
ロイス:[マーサに]何かあったんですか?
ジョナサン:それは私のTボーンだろ!

マーサは肩をすくめ笑いをこらえます。
ジョナサンはアインシュタインの口からついにステーキを取りますが骨以外何も残っていません。

ジョナサン:あーあ、悪い犬だ。

第2幕 場面3
レックスが書斎でビリヤードをしようとするとクラークが入ってきます。
夜。

レックス:クラーク。スティックを取れよ。
     ちょうどブレイクしようとしていたところだ。
クラーク:レックス、ルーサー・コープじゃ犬で実験をしてるのか?
レックス:何の実験の事だ、よく分からないが。
クラーク:ロイスが犬を見つけたんだ。
     それにはルーサー・コープのIDタグがあったんだ。
     君のところだろ?
レックス:クラーク、俺が会社を受け継いだとき相当な数の不正な実験が親父の要請で行われているのを見つけた。
     その中には動物実験もあった。

レックスはボールを撃ちます。

クラーク:何の実験をしていたんだ?
レックス:俺の記憶が確かなら、犬の強さを強化するために隕石とステロイドを混ぜ合わせていた。
クラーク:どうして君のお父さんはスーパーパワーを持った犬を作ろうとしたんだろう?
レックス:[再び撃ち]
     もし俺が親父の狂気を理解できればな、クラーク。
     もっと俺は幸せになれるよ。
     だがその場合こうじゃないかと思う。
     軍の依頼があった。
     はっきりした事は俺には分からないがな。
     結果は思わしくなかったようだ。
     動物愛護団体が屋敷の前にテントを張って抗議した。
     だから俺はそれを止めさせたんだ。
     犬を処分すると言ってな。
クラーク:話を摩り替えないでくれ。
レックス:それはどういうことだ?
クラーク:[疑い深く]
     僕が尋ねているのはスーパー・パワーを持つ犬の話しだ。
レックス:いや、そうじゃない、俺は仮定の話をしている。
     俺の知る範囲内でのな、もし親父ならということだ。
クラーク:[それについて考えます]犬は全く健康だ。
レックス:じゃあ、それならケント農場がその犬にとっていい場所という事じゃないか。

クラークは頷きます。

第2幕 場面4
ケント家。
夜。
マーサとロイスがキッチンで割れたガラスを片付けています。
アインシュタインは近くで横になってます。

マーサ:夕食が台無しね。
    今夜はサンドイッチになるわ。

まるで聞いていたかのようにアインシュタインは体を起こします。

外ではジョナサンが缶の入ったゴミ袋をもって家の方へ歩きます。
近くで小枝の折れる音が聞こえると彼は立ち止まって辺りを見まわしますが音の原因はつかめません。
するとヘラクレスが突然走ってきてジョナサンを地面に倒し腕に食いつきます。
ジョナサンは叫びます。

家の中ではアインシュタインがすぐに立ち上がってドアの方へ走り始めます。
その直後マーサとロイスはジョナサンの叫び声を聞きます。

マーサ:ジョナサン?

アインシュタインはキッチンのドアの窓をぶち破って外に飛び出します。
アインシュタインはジョナサンが倒れている場所に駆け寄ってヘラクレスに怒って歯を剥きます。
ヘラクレスはジョナサンから離れると唸ります。
ロイスとマーサが外に出て来ます。

マーサ:ジョナサン!
ジョナサン:後ろにさがっていろ!
マーサ:ジョナサン!
    [彼の方に走り]ああ、なんてことなの、ジョナサン!
ジョナサン:後ろにさがっているんだ!

マーサはフェンスの壊れた木を拾います。

ジョナサン:マーサ!
マーサ:[ヘラクレスに棒を振り]逃げて!
ジョナサン:[マーサに]止めろ!
マーサ:逃げて!早く逃げて。
ジョナサン:下がっているんだ。

マーサはヘラクレスを棒で威嚇します。

ロイス:マーサさん、止めて!

ヘラクレスは怒ってマーサに吠え掛かります。
アインシュタインは再びヘラクレスに唸ります。
ヘラクレスとアインシュタインはお互い睨み合うように唸り続けていましたが、
犬笛が遠くで吹かれているのを聞いてヘラクレスはそちらの方に駆け出します。
アインシュタインは追いかけます。
マーサはジョナサンを助け起こしに行きます。

マーサ:[息を切らし]あなた。
ロイス:大丈夫ですか?

ジョナサンは頷きますが腕を抑えて呻きます。
アインシュタインは戻って来て三人を見ます。

マーサ:ロイス、車のキーを持ってきて。
    病院に連れて行かないと。

ロイスは家に走って戻ります。
アインシュタインは別の犬笛を聞いて走り出します。

フェイドアウト。

第3幕 場面1
スモールビル医療センターの病室にはジョナサンがいます。
夜。
ジョナサンの腕を三角巾で吊っていました。
そして彼は医者と話をしています。
話が終わるとクラーク、マーサ、ロイスが待っている廊下に出ます。

クラーク:父さん、何だって?
ジョナサン:ああ、医者は骨を貫くほど噛み付く犬は見たことがないとさ。
マーサ:[ジョナサンに新聞を手渡し]これを見て。

見出しには「奇妙な強盗殺人」と書かれています。

クラーク:店のオーナーは昏睡状態だって。
     鉄の扉を粉々にすることができた何者かによって襲われたんだ。
     警察はクマじゃないかって言ってる、でも…
ジョナサン:犬だと思っているのか。
クラーク:明らかに誰かが犬をコントロールして利用してるんだ。
ロイス:ねえ、家に犬がいるのを知っているのはレックスと動物保護センターの人だけよ。
    それに億万長者がコンビニを襲うなんてしないでしょ…
クラーク:調べないと。
ジョナサン:よし、朝一番にそうしよう、いいだろ?
      そうだ、クラーク、ちょっとサインするから手を貸しくれないか?

ジョナサンとクラークはマーサとロイスから離れます。

ジョナサン:なあ、クラーク、あの犬はお前に大分懐いているのは分かる。
      だがな、お前でさえあの犬は危険じゃないのか。
クラーク:分かってるよ、だから誰がこんな事をしてるのか探し出して止めないと。
ジョナサン:そうじゃない、クラーク、そういう事じゃない。
      犬たちが店のオーナーを昏睡状態にした事と関係があるなら、
      犬を放っておくわけにはいかない。
クラーク:父さん、母さんと二人で超怪力を持った男の子をトウモロコシ畑で見つけたとき、
     僕の事を危険だからといって見捨てなかったじゃないか。
     僕を引き取って、僕にチャンスをくれた。
     あの犬はいい犬だよ、父さん。
     誰かが悪いことをするために利用されてるだけだ。
     あの犬にもチャンスを与えないと。

第3幕 場面2
タロン。
夜。
閉店後の店内ではジェイソンとジェヌビエーブが座って話していました。

ジェヌビエーブ:あなたに今夜、私と一緒にここから出って欲しいのよ。
ジェイソン:どうして?マルガリット・イソブル・セロー伯爵夫人のせいか?

ジェヌビエーブは目をそらします。

ジェイソン:この名前を知っているんだね?
ジェヌビエーブ:レックスが吹き込んだのね?
           十七世紀の魔女を調べるのを?
ジェイソン:正直に答える事ができないじゃないか?
      分かったのは、イソブルが死ぬ間際に子孫の一人を使って再び蘇ると誓っていた。
      それがラナだという事を知っていたんだな?
      だからお袋はシンボルが彼女のものだと知っていたから、
      俺にパリのイソブルの墓に彼女を連れてこさせたんだ。
      それが事実なら…彼女に起こっていることは俺のせいだという事だ。

ジェヌビエーブは手をジェイソンの手に重ねます。

ジェヌビエーブ:自分を非難しないで。

ジェイソンは立ち上がって離れます。

ジェイソン:どうして俺をそんな風に利用したんだ?

彼は背を向けます。
ジェヌビエーブは彼の方へ歩きます。

ジェヌビエーブ:ねえ、あなたがここにいることは安全じゃないの。
ジェイソン:俺はラナから離れないぞ。
ジェヌビエーブ:じゃあ、多分残りの話を聞けばきっと考えを変えるわ。
          イソブルはガートルードという名前の女性に非難されたわ。
          イソブルは蘇った後、ガートルードの子孫を皆殺しにすると誓ったの。
          私達のご先祖様は、ガートルードなのよ、ジェイソン。
ジェイソン:だからお袋はラナが俺たちを殺すっていうのか?
ジェヌビエーブ:違うわ、でもイソブルならそうするの、
          誰にも彼女がいつ蘇るか分からないのよ。
ジェイソン:お袋、俺は前に一度、ラナを見捨てたんだ。
       二度とそんな事はしたくないんだ。
ジェヌビエーブ:それじゃあ、あなたは私達一族を殺すかもしれない娘に恋をしているのね。

ジェイソンはイライラして頭を降ろします。
二人とも気づきませんが階段の上でラナが二人を見ていました。
彼女はアパートに戻ります。

第3幕 場面3
ロイスとクラークは閉まっている動物保護センターの外を歩いています。
日中。
「私有地につき立ち入り禁止、侵入した者は警察へ通報します」と書かれてた札がかかっています。
クラークはチェーンのフェンスを乗り越え、ロイスがあとに続きます。

ロイス:これって障害物競走?

ロイスがフェンスを登る間、クラークは南京錠のかかっている門に近寄ります。
彼が素手で鍵を壊して門を開けるのをロイスは見ていません。
ロイスが地上に着地すると足元を見ます。

ロイス:あっ、ウンチだ!

クラークは微笑んで中に行きます。
ロイスは地面に足をこすりあとに続きます。
中には何匹かの犬がオリにいます。

ロイス:どこに行っちゃったの?
    こっちに来てよ、クラーク!ねぇってば!

反応がありません、そしてロイスはくしゃみをします。

ロイス:わあ。ここに来たらもっとひどくなったみたい?
    あのね、私、考えたんだけどさ。
    クラーキーはコンビニとの関係があったかもしれないけど、
    あの子が人を傷つけたとは思えないの。
    私があの子を見つけたときには血なんか一滴もついてなかったから。
クラーク:言っただろ、クラーキーって名前はつけないって?
     ベアーかバンデッドってつけるつもりだよ。
ロイス:えーっ、そんなのダメよ。

クラークは壁の脇にある二つの従業員ロッカーに気がついてその一つをX線ビジョンを使って覗きます。
ルーサー・コープのセキュリティマニュアルを見ます。
またロイスがどこか別の場所を見ている間にクラークはロッカーのダイヤル錠を引きちぎって開けます。
そしてセキュリティマニュアルを取り出して中を見ます。
ロイスは彼に近づきます。

ロイス:これは何?
クラーク:これはルーサー・コープの従業員名簿だ。
     現金輸送車を襲うつもりだ。
     [壁の時計を見て]
     もうその時間になってる。
     ロイス、警察を呼んで。
     僕はこいつらに追いつけるかどうかやってみる。

クラークはバインダーから地図をとって去り始めます。

ロイス:そこで待っててよ。
    どうやって行くつもり、走るの?
    私の車で行ったら?
クラーク:ロイス、あのさ…
ロイス:ううん。途中で警官に電話すればいいじゃない。
    あなたって時々とっても怪しいんだよね。

ロイスは地図をとってクラークを車に連れていきます。
クラークは不安そうにあとに続きます。

ロイスの車で走る二人。
クラークはスピードメーターの時速36マイルを見てため息をつきます。

クラーク:あのさ、もう少し早く走れないかな?
ロイス:ねえ、十分前にも同じ事を言ったわよ。
    それに事故を起こしたくないし。

クラークは地図を見てから窓の外を見ます。

クラーク:この辺じゃないのか。
ロイス:そんなはずないわ。

クラークはスーパーヒヤリングを使って犬が吠えているのを聞きます。
それからジョシュの声を聞きます。

ジョシュ:行くぞ、ほら!金を持ってこい。金をもって来るんだ、さあ!
ザック:俺に怒鳴るのを止めろよ。バッグを落とすだろ?
クラーク:待って、左へ曲がって、左へ曲がってくれ。
ロイス:どうして?
クラーク:いいから!

ロイスは小さな未舗装の道路へと左へ曲がります。

ロイス:これがあなたの有名な予感ってやつ、それとも観光ルートかしら?
クラーク:OK、ここで止まって。
ロイス:ど、どこで?
クラーク:ここだ!ここで止まって!
ロイス:OK!

ロイスが車を止めるとクラークは外に出ます。
ロイスも外に出てあたりを見まわします。
二人はジョシュとザックが近くの丘の上で叫びながら丘を通り過ぎていくのを聞きます。
ジョシュとザックは輸送車から入金バッグを取って自分たちのトラックに入れています。
二人ともマスクをつけています。
そして彼らはクラークとロイスに気がつきません。

ジョシュ:バッグをよこせ、おい!
ザック:やってるよ。
ジョシュ:もっと早く!
ザック:人が来たらどうするんだ?
ジョシュ:積み終わったぞ。行こう!

クラークとロイスは積み重ねられた木の影に隠れて見ています。
二人は輸送車を運転していた二人の男が地面に倒れているのに気づきます。
ザックとジョシュは金を積み終わってトラックの後部を閉じます。

クラーク:そういう事か。

ザックとジョシュがトラックに乗り込むとクラークとロイスは丘を走ってトラックの後に立ちます。

ジョシュ:ベルトを締めろ。行くぞ。

クラーク:[ロイスに]倒れている人を見に行ってくれないか?

ロイスは二人の倒れいている男に駆けつけます。
彼女が去るとクラークはトラックの後部を開けます。
中にはアインシュタインとヘラクレスがオリに入っていました。
二匹の犬は彼に吠えます。
運転席と荷台の間にある壁のせいジョシュとザックはクラークが入ったのに気づきません。

クラーク:[アインシュタインに]大丈夫だ。ここから出してやる。

クラークはボタンを押しアインシュタインのオリを開きます。
しかしオリの上に緑の液体の入った小ビンはが何本かありました。
オリが開くと小ビンは下に落ちて粉々になります。
そしてクラークは力を失います。
アインシュタインがトラックから降りるとクラークは苦しそうに倒れます。
アインシュタインは動くことができないクラークに吠えます。
トラックはクラークを乗せたまま走り出します。
アインシュタインはトラックを追いかけます。

ロイスは二人の男の脇にひざまずいていたロイスは、トラックが走り去る音を聞くと立ち上がってクラークを捜します。

ロイス:クラーク?

緑色の液体の輝きがトラックを満たしてクラークはうつ伏せに倒れます。
アインシュタインはトラックを追い続けます。
そして開いたバックドアの方へ走ります。
しかしトラックは急カーブをとりドアは閉じられてしまいます。

フェイドアウト。

第4幕 場面1
ザックとジョシュはまだトラックで走っています。
日中。
トラックは彼らの家の前の道に車を乗り入れます。
クラークは後ろでまだ弱わっていてヘラクレスは彼に吠えています。
ジョシュとザックはトラックから降りてヘラクレスの声を聞きます。

ザック:何に吠えてるんだ?
ジョシュ:分からないな、だが後五分だ、どうでもいいだろ。
     トラックごと犬も燃やしてやる。証拠を全てな。
ザック:[信じられず]何だって…
ジョシュ:俺たちが消える前に誰にも分からないようにするんだ。

彼らはトラックの後部に歩き回ります、そしてジョシュが右のドアを開けます。
彼らはアインシュタインのオリが空なのを見ます。

ザック:アインシュタインはどこだ?
ジョシュ:何だって?

ジョシュが左のドアを開けるとそこにはクラークがヘラクレスのオリの脇で座っていてかろうじて意識があるとわかります。

ザック:こいつはセンターに来た奴だ。
ジョシュ:さて、さて、さて。
     誰が説明するんだ。

ジョシュとザックの家の方に向かって森を走り抜けるアインシュタイン。
犬はザックがトラックから小型車に入金バッグを移動しているのを見ます。
アインシュタインは家の方へ走ります。
ザックがバッグを移していてジョシュはガソリンをトラックに撒いています。
アインシュタインは家の後ろから見ています。
ジョシュはガソリン缶をトラックの後部に置いてアインシュタインのオリに監禁されるクラークを見ます。

ジョシュ:さて、お前はヒーローになりたかったようだが?
     ヒーローには火がつき物だ。

ザックが歩いて来るとジョシュはトラックの中に缶を倒しガソリンの残り撒きます。
ジョシュが離れるとヘラクレスはザックに鳴きます。
クラークはただ彼を見つめているだけで、息を荒げています。
ザックはいくつかのバッグを手に持ってジョシュに追いつきます。

ザック:本当にこんな事をしていいのか?
ジョシュ:奴は俺たちの顔を見たんだ。
     奴を野放しにはできない。
ザック:こんな事計画にはなかっただろ。
ジョシュ:計画通りだろ?
     金は手に入ったし俺たちはここから離れる。
     [手をザックの肩に置き]
     今更怖気づいたわけじゃないだろうな?

ザックはしばらく黙ったままです。

ザック:いや。
ジョシュ:[ニヤッとして]
     そうだろうとも。さあ。

彼らが車の方へ歩きだすとアインシュタインは隠れていた場所から出てきてトラックの方へ近づきます。
犬はザックとジョシュが背中を向けるのを待ってからトラックに駆け寄って中に飛び込みます。
クラークがいるオリに行ってクラークに吠えます。
それから振り向いてオリを開けるボタンを見ると鼻でボタンを押します。
クラークのオリのドアは開きクラークは床に倒れます。
アインシュタインはクラークの上着を口で咥えクラークをオリの外に引き摺りだします。
クラークは弱々しく立ち上がってトラックの壁に寄りかかり再び倒れます。
アインシュタインは彼の顔をなめます。

トラックの向こう側でジョシュが発炎筒をトランクから取り出して火をつけます。
ザックは彼の側にいて発炎筒のオレンジの炎を険しい顔で見ます。

ジョシュ:祈ってろ。

ジョシュはトラックに発炎筒を投げつけトラックのすぐ傍に火をつけます。
火は瞬く間に広がって、ヘラクレスが中で喚いているのが聞こえてきます。
アインシュタインは吠えながらトラックの外に座わっています。
ジョシュとザックが行こうと振り返ると目の前にクラークが立っていました。

クラーク:どこに行くんだ?

クラークは二人の上着を掴むと家の方に放り投げます。
クラークは見ていませんでしたが、アインシュタインが炎の中、荷台へと飛びこみます。
そしてヘラクレスのオリを開くボタンを押します。
ヘラクレスはトラックから飛び出ます。
アインシュタインが飛び出そうとしたちょうどその時、炎が上がります。
そしてアインシュタインは中で窮地に陥ります。
ヘラクレスはクラークの方に向いて吠え立てます。
クラークは振り向いてトラックの後部に超スピードで行きます。
彼はアインシュタインを炎の中で見つけると抱きかかえてトラックから飛び出しました。
トラックから離れて地面に伏せます。
トラックが爆発すると彼はアインシュタインの上に覆いかぶさります。
炎は彼らをのみ込みます。
炎が静まると彼らは無傷でした。
クラークはアインシュタインの隣に座り、アインシュタインは彼の顔をなめます。
クラークは笑います。

フェイドアウト。

第5幕 場面1
納屋でクラークとアインシュタインは、獣医のクラインと一緒にいます。
日中。
クラインは聴診器でアインシュタインの心臓の音を聞いています。

クライン:この子は私が知ってる中でもかなりいい子だな。
クラーク:そうですか、父さんに飼いたいって言いたいんですけど。
     先生、検査で何か変わった事はありましたか?
クライン:たとえば?
クラーク:あー、時々物凄い力を出したり、物に八つ当たりするのが好きみたいで。
クライン:まあ、何かあるとすれば、この子は平均以下の強さかな。
     それ以外は全く普通の健康な犬だよ。
     名前を考えたのかい?
クラーク:クリプトって名前を考えていました。

レックスがドアを入ってきます。

レックス:面白い名前だ。
クライン:じゃあ、お大事に。
クラーク:ありがとうございます、クライン先生。
クライン:どういたしまして。

クラインは去ります、そしてレックスが納屋に入ります。

レックス:クリプト。それはどういう意味だ?

アインシュタインはレックスに唸ります。

レックス:優しくしてくれよ。
クラーク:それは彼の生き様からかな…不思議なね。
レックス:生き様とは、強盗の現場へ行って輸送車を見た。
     バックドアの様子から判断すると何匹かの物凄い強さの犬の仕業だと仮定できるんだが。
クラーク:レックス、実験が失敗したんだから、この犬は僕が引き取るって言っただろ。
レックス:だがなクラーク、実験が失敗していなければ、この犬は危険だ。
クラーク:でも今は危険じゃない。
     僕の命を救ってくれた。
     もう一度彼にチャンスをやりたいんだ。

レックスは疑わしそうにクラークを見ます。
アインシュタインはクラークの顔をなめます。

第5幕 場面2
ラナはアパートでクロエと自分の分のコーヒーを入れています。
日中。

クロエ:それじゃ話してくれない、私に朝の二時までジェイソンの家系を調べさせたわけを?
    つまり、途中で興味をもってきたの。
    あなたが変だなと思って家系図を調べさせたのは当然だと思ったわ。

二人はリビングルームの方へ歩きます。

ラナ:私、えーと、彼がお母さんと話をしているのを階段の上で聞いちゃったの。
   どうみても言い争っていたわ。
   でも…彼がアパートに来てもその事を話してくれなかった。
クロエ:じゃあさ、二人の話の内容を聞いた?
ラナ:ううん、でも彼は慌ててたわ。
   クロエ、あの人たちは何かを隠してる。
   もう誰を信用していいか分からないわ。

二人はソファーに座ります。

ラナ:何か見つかった?
クロエ:何にも。
    [クロエはファイルフォルダを開けます]
    彼のお母さんの祖母までしか戻れなかったわ。
    その前の家系図はちょうどその部分で誰かに切られたみたい。
    何もなかったわ。
    彼女がCastelnois de Montmiralの出身だった事だけよ。
    [彼女はファイルからラナに紙を手渡します]
    それしか分からなかったわ。それ以外は…

クロエはメモをじっと見つめているラナの表情を見て言葉を止めます。

クロエ:ラナ、大丈夫?
ラナ:[怖がって]
   クロエ、この場所は私の祖先の町よ。
   それに、イソブル・セローの。
クロエ:気味が悪いわね…ジェヌビエーブのおばあさんがパリの教会にイソブルのお墓を移したのよ。
ラナ:どうして魔女の墓なんかを教会に?
クロエ:それはあなたがジェイソンに聞く必要があると思うわ。

ラナは考え込んでクロエから目をそらします。

第5幕 場面3
ジェイソンはレックスの書斎に入ります。
日中。
ライオネルが新聞を読んでソファーに座っていました。

ライオネル:息子を探しているなら、ここにいないぞ。

ジェイソンはフォルダをレックスの机に置きます。

ジェイソン:これを返しに来たんです。
ライオネル:ほう、そうかね。どんなリサーチをしたんだね?
ジェイソン:何を言っているのか意味が分かりませんが。
ライオネル:そうかね。イソブルの事だが。

ジェイソンは声を出さずに驚きます。
ライオネルは新聞から顔を上げるとニヤッとします。

ライオネル:君の驚きは分かるよ。
       君が倅に雇われたと分かったとき、コネを使って調べたんだ。
       君は、うーん、ジェヌビエーブ・ティーグの息子だな。

ライオネルは立ち上がってジェイソンの方へ歩きます。
そして彼の頭の先からつま先まで見ます。

ライオネル:ああ。間違いない。

ライオネルは再びニヤリとします。
ジェイソンは不安そうに見つめ返します。

ライオネル:君は彼女を信用する事ができないんだろ、ジェイソン。
       [ジェイソンは頷きます]
       もちろん、私の息子も信用することができない。
       だが君には分かっているはずだ。
ジェイソン:それはあなたを信用しろという事ですか。

ライオネルはマニラ封筒を取ってジェイソンに手渡します。

ジェイソン:これは何ですか?
ライオネル:開けてみたまえ。

ジェイソンが封筒を開けて紙を引き抜くとライオネルはソファーに戻って座ります。
その紙はレックスが持つ古代の地図と同じものでした。

ライオネル:[ジェイソンを見ることなく]
      それが君の助けになるかもしれないな。

第5幕 場面4
納屋でクラークは柱にシャワーを取り付けている間、ロイスは鉄のタライでアインシュタインを洗っています。
日中。
クラークは取り付け終わります。

クラーク:終わったよ。

ロイスはバケツの水をアインシュタインの上からかけます。

ロイス:もう、随分時間がかかったわね。
    この後テーブルや窓、フェンスも直さないといけないんでしょ、それに…
    [彼女はくしゃみをします]

クラークは微笑みます。
アインシュタインはタライから飛び出て身震いして水を撥ねます。
そして水はロイスに撥ねかけます。
クラークの笑顔は大きくなります。

ロイス:あの子を洗うとアレルギーがひどくなるわ。
クラーク:[からかって]多分、石鹸アレルギーじゃないのか。
ロイス:あなたに対するアレルギーだわ。
    ねえ、タオルをちょうだいよ?

クラークがロイスに明るい赤のタオルを投げると彼女はそれを捕えます。

ロイス:ありがとう。

彼女はアインシュタインの背中にタオルを放り投げて拭き始めます。

ロイス:それで、この子の名前は決まったの?
    スキッパーなんて言わないでよ。
クラーク:クリプトって名前はどうだい。
ロイス:どうして変な名前を付けるの?
    そんなのじゃなくてさ。
クラーク:いいじゃないか。
ロイス:そんなの変じゃない。
    犬の名前にクリプトなんてさ。
    ねえ、もっと簡単にさ。
    マックス、ラッキー、ロッキー、ベイリー、スキャンプ、モンティ、バド?

クラークはどの名前もいやそうにしています。
ジョナサンとマーサが入ります。

ジョナサン:おい、その犬を飼いたいんならどれかを選ばないとな。

マーサはクラークに微笑みます。
ロイスはジョナサンとマーサからクラークまで見ます。

クラーク:本当に?

マーサはひざまずいてアインシュタインに腕を差し出します。

マーサ:さあ!ああ、こんにちは!

アインシュタインはまだケープのように赤いタオルを背負ったままマーサへ歩いて行きます。
ジョナサンとマーサは彼をかわいがります。

マーサ:あのね、私が子供の頃飼ってた犬とそっくりなのよ。
    多分それでこの子がすぐに好きになったんだわ。
    その犬の名前はシェルビーよ。
ロイス:[それについて考えます]それなら許せるわ。
クラーク:じゃあクラーキーはボツだな。

アインシュタインは再び身震いします。
そしてジョナサンとマーサに水を撥ね返します。
ジョナサンは笑い、マーサは喜んで悲鳴をあげます。
クラークはテーブルからフリスビーをつかみます。

クラーク:さあ、シェルビー!外に行こう。

シェルビーはクラークを追ってフリスビーに食いつきます。
クラークはシェルビーの口から取って農場の向こうに投げます。
シェルビーはフリスビーに夢中になって口でそれを捕えます。
クラークは手をたたきます。

クラーク:ナイスキャッチ![彼はひざまずきます]さあ、来い!

シェルビーはフリスビーを咥えて喜んでクラークに走って戻ります。
途中で落とすと拾うために走って戻ってからクラークのところにやってきます。
クラークは彼を抱きしめフリスビーをとります。
そして再びそれを投げようとします。

フェイドアウト。
 

おしまい