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SMALLVILLE(スモール・ビル)
邦題:ヤング・スーパーマン

シーズン4.16Lucy[ルーシー]

第1幕 プロローグ
雪山。
日中。

スクリーンテキスト:サンモリッツ、スイス。

若い女性、ルーシーが山頂のスキーリフトから降りて建物から出てきます。
彼女は斜面に続く階段の一番上に立っています。
スキー板に足を置きブーツをビンディングに止めると深呼吸をします。
ゴーグルを下げて階段の下へと下り斜面へと滑り出します。
もう一人の男のスキーヤーが彼女の後から滑ってきます。
ストックを巧みに使いルーシーに追いつこうとします。
彼女は振り返って男が追いかけて来るのを見ます。
彼女はスピードを上げるため頭を下げます。
ついに男は彼女に追いついて後ろから彼女を捕まえようとします。
彼女は男の顔を押しのけ後に倒します。
しかし男はなんとか転ばずにすみ再び真直ぐに立ちます。
そして斜面の下の彼女を追います。
ルーシーは小さなジャンプをします、そして男は彼女の後を追います。
双方共とても速いスピードて滑降しています。
彼女は再び男がどれくらい間近かにいるかと振り返ります。
すると別の男が側から彼女に襲いかかって彼女を捕まえようとします。
しかし男は彼女の所に着く前に彼女は男を通り過ぎます。
第二の男がルーシーを追ていると最初の男に合流します。
彼女はもう一度ジャンプをすると男達は彼女の後で同じようにジャンプをします。
青い空には薄っすらと満月が彼らを見下していました。
ルーシーは二つの大きな岩の幅の狭い間を通り抜けます。
二人の男は岩に乗り上げ一人はジャンプを成功させますがもう一人はバランスを失って倒れます。
ルーシーはもう一度大きなジャンプをして再び斜面に着陸します。
男は追いつき同じようにジャンプをして彼女の後に着陸します。
二人は木の生い茂っている中を通り抜けます。
二人が拓けた場所に出ようとした時、ルーシーはストックで倒れている木を男の前に引っ張ります。
男は木につまずいて倒れ、ルーシーが逃げるのを見て怒りながらヘルメットをむしり取って目を見張ります。
男は悔しそうに地面を殴ります。
ルーシーは丘の下に到着すると横滑りして停まりジャケットのポケットに手を入れます。

ケント農場。
クラークのベッドルームにはロイスが寝ています。
時計は午前3時02分です。
ロイスの携帯電話がベッドのサイドテーブルで鳴り出します。
ロイスは目に「起こさないで」と書かれた安眠マスクをつけています。
そして彼女は目覚まし時計の音と勘違いして時計を叩きます。
それから彼女はマスクを取り時計の方を見ます。

ロイス:[ふらふらしながら]
    朝の3時に電話をしてくるのは誰よ?
    [彼女は電話に出ます]
    いい加減にしてよ。
ルーシー:[斜面にとどまって]ロイス、私よ!
ロイス:[驚き]ルーシー?どこにいるの?
ルーシー:[興奮して]いいニュースよ、姉さん。
     明後日会いに行くわ。
     空港からはシャトルバスを使うから心配しないで。
ロイス:ルーシー、待っ…
ルーシー:会うのが待ちきれないわ。じゃあね!

ルーシーは電話を切ります。
ロイスは電話を切って不安そうなため息をついてベッドに背をもたれます。
それから彼女は目の上にマスクを引きます。

第1幕 場面1
ケント農場。
日中。
キッチンでは犬のシェルビーが床に座り、クラーク、ジョナサン、マーサはテーブルの席に着きます。
そしてロイスがエプロンを着けてパンケーキの皿をテーブルに運んできました。

ロイス:お腹が空いてるといいんだけど、沢山作っちゃったから。
ジョナサン:ロイス、君は本当にそのー…
      [彼はロイスが作った、見るも無残な崩れたパンケーキに気がつきます]
      …こういう事をした事があるのかい。
マーサ:ちょっと手伝うわね。
    えーと、卵が必要ね。

マーサは立ち上がります。

ロイス:そんな、いいんです、ケントさん。
    [彼女はマーサを座らせます]
    座って黙って見てて下さい。
    ここに居候になってる身ですから、このぐらいの事はお手伝いさせて下さい。

クラークはパンケーキの切れ端の一つを摘み上げそれを見ます。

クラーク:あー、僕はそんなにお腹が減ってないから一仕事してくるよ。

クラークは立ち上がろうとしますがロイスは強引に彼を席に押し戻します。

ロイス:ねえ。朝食は一日の中で最も重要な食事よ。ベーコンは?

彼女はフライパンからフタを持ち上げます。
そして焼けたベーコンの山が見えます。

ロイス:オーケー、確かに料理はうまくないけど、農場を手伝ったらもっと迷惑をかけそうだから。

ジョナサンは疑わしそうに微笑みます。

ロイス:次はアイロンがけね。
クラーク:ロイス、どういう魂胆なんだ?
ロイス:どういう意味?
クラーク:朝食の準備をしたり、家事を手伝おうとしたり。
     何か目的があるのか?
ロイス:いいえ、いい事をしようとしてるだけよ。
クラーク:じゃあ、もし君がもっといい事をしようとすると、僕らは餓死しちゃうよ。
マーサ:クラーク…

マーサはクラークにわずかに頭を振ります。

ロイス:その通りね、ケントさん。あの、えーと…
    [彼女は座ります]
    皆さんにとても親切にしてもらって何なんですが、お願いし辛い事がありまして…
    でも…そのー、私…

彼らはドアが開く音を聞きます。
するとルーシーが隣の部屋から声をかけます。

ルーシー:ロイス?誰かいませんか?

シェルビーは吠えながらキッチンから出て行きます。
ルーシーは大きなスーツケースを引っぱっていて、彼女は愛情をこめてシェルビーの頭を撫で回します。

ルーシー:[シェルビーに]あら、かわいい子ね。名前は何ていうの?

テーブルにいた皆は立ち上がり、ロイスはルーシーに走ります。

ロイス:やあ。

彼らは抱き合います。

ルーシー:会えて嬉しいわ。
ロイス:えーと…妹のルーシーです。
    彼女をここに二日ほど泊めさせてもらえないかしら。
ルーシー:あつかましいお願いだと分かってますが、学校が休みの間だけ。
     納屋に寝ても構いませんから。
クラーク:いや、それはいいよ。ロイスが納屋で寝ればいんだから。

ロイスはクラークを睨みます。

ジョナサン:誰も向こうに寝る必要はないさ。
マーサ:ようこそ、ルーシー。ロイスと同じ部屋に泊まればいいわ。
ジョナサン:そうだな、あー、先に君の準備をしておこう。

ジョナサンとマーサは優しくルーシーに微笑んで二階に行きます。
クラークは前に進み出ます。

クラーク:それで、ルーシー、ロイスは君の事を全然話てくれなかったけど。
ルーシー:だったら、あんまり話したくないな。

ルーシーとクラークは黙ったままお互いの目を軽薄そうに見つめます。

ロイス:ねえ、そんなこと言わないでよ。
    妹はヨーロッパでも名門の私立の学校で首席だったのよ。
    三ヶ国語も話せるし、フェイシングでもアイビーリーグで活躍してるわ。
クラーク:[ルーシーに]わあ、それはすごいね。
     ロイスとは大違いだ。

ルーシーは笑います。

ロイス:[ルーシーに]クラークの魅力は後になればなるほど分かってくるから。
ルーシー:泊まらせてくれてありがとう。
     どうやってお礼をしたらいいのか分からないわ。
クラーク:じゃあ、ロイスの人には言えないような話をしてよ。
ロイス:[笑い]おかしな人。

ロイスはドンとクラークの胸を叩きます。

ルーシー:じゃあ、空港から4時間もかけてきたからシャワーでも浴びたいわ。

ルーシーが階段の方へ行こうとするとロイスが声をかけ立ち止まります。

ロイス:ルーシー?本気なの?
ルーシー:あなたと一緒にここにいるじゃない、本気よ。

ルーシーが階段を登るとクラークは彼女の後を追います。
ロイスは落ち着かない様子でため息をつきます。

第1幕 場面2
タロン。
日中。
ジェイソンとラナはツナギを着てタロンに入ります。
彼らはアパートへの階段に行きます。

ジェイソン:知ってるかい、最後にウソをついたあの子を。
      君が間違って叩いた。

ラナは腕をジェイソンに組みます。

ラナ:だって、あなたにキスをしようとしたんだもん。
   あなたが本当にひっかかるとは思わなかったわ。

ラナはジェイソンから離れてアパートに駈け寄ります。
二人は中に入ると急に立ち止まります。
部屋の中は荒らされていました。

ラナ:どうして。

室内は荒らされ、椅子はひっくり返され、棚の中身は床に散らばっていました。

ジェイソン:ここにいて。

ジェイソンは開いたバスルームのドアに行って中を見ます。
それから彼はドアを閉めてラナに戻って来ます。

ジェイソン:何か無くなった物は?
ラナ:分からないわ。

ラナはドレッサーに駆け寄って宝石箱を見ます。

ラナ:宝石はここにあるわ。
   [ハンドバッグをベッドから取り]
   ハンドバッグはそのままだし。
ジェイソン:オーケー、じゃあ泥棒じゃないとすれば…

彼らは同じ事を思いつきます。

ラナ:石よ。

ラナとジェイソンは暖炉に駆け寄ります。
ジェイソンは暖炉のベースからレンガを外し小さな箱を取り出します。
箱を開けると中は空でした。
ラナは恐怖に手を頭に置き暖炉から離れます。

ジェイソン:他にここにある事を知っている人は?
ラナ:いないわ。
ジェイソン:じゃあ、誰も俺が中国から持ってきたのを知らないはずだ。
ラナ:多分、あー、多分、レックスかライオネルが見つけたんだわ。
ジェイソン:クラークかも。君はいつも彼には君の知らない一面があるって言ってただろ。
ラナ:[興奮し]もう誰でもいいわよ、ジェイソン。
   こんな石はもういいわ。
   石があったのさえ忘れたいわ。
ジェイソン:ラナ、これは現実だ、夢じゃない。
      石を見つけないと。
ラナ:いえ、もういいの、ジェイソン。
   あなたはあんな物追いかける事の方が大事なの、私よりも。
   あんな物もう関係ないわ。
   思い出して、私達の最大の問題はどこでキスをするか場所を探す事だったじゃない?
ジェイソン:[考え]ああ、いつも君は屋外の観覧席の下が好きだったな。
ラナ:じゃあ、あの日に戻れないわけは、心配してるからよ、侵入者やルーサーや…クラークのせい。

ジェイソンはしばらくラナの目を見つめて頷きます。

ジェイソン:そうだな。誰が石を盗んだとしても、そいつ等は石を保管するだろう。
      だから、えーと、俺達にとって一番大切な事に集中すべきだな。

ラナは頷きます。

第1幕 場面3
ケント農場。
日中。
屋根裏で、ルーシーはオーバーオールを着てミルクのバケツを運んで納屋に入って来ると、クラークは階段の下に来ます。

ルーシー:[微笑み]喉でも渇いてる。
クラーク:[驚き]何をしてるんだ?
ルーシー:ああ、朝のミルク絞りを手伝ってるの。
     友達のスイスの田舎の農場で春休みにやってたわ。
クラーク:[感心し]そんな事する必要はないよ。
ルーシー:お世話になるんだから、このぐらいしないと。

ルーシーはゆっくり彼の方へ歩きながら話し微笑みます。
彼ははにかんで彼女に振り返ります。
明らかに彼女を意識していました。
ロイスが入ります。

クラーク:やあ、ロイス。聞いたかい?
ロイス:えっ、何か言った?
    [ルーシーに]
    終わりにして、私と働くんだから。
クラーク:いつから働いてるんだ?
ロイス:今日からよ。
    タロンであなたのママの手伝いをするの。
    [ルーシーに]
    それでクロエがスモールビルを案内してくれるって、見る場所はあまりないけどね。
ルーシー:そんなの知らないわよ。
     [彼女はクラークを見回します]
     こっちの方がよさそうだし。

ルーシーは納屋を出るとクラークは微笑みます。
ロイスは皮肉っぽく笑います。

ロイス:あの子を弄ばないでよね。
    あの子は女子高に行ってるの。
    多分、この二ヵ月で話したのはあなたが最初の男だと思うわ。
クラーク:ロイス、変な勘ぐりはやめろよな。
     でもルーシーが来てからずっと、いつもと態度が違うじゃないか。
     妹に会って嬉しくないのか?
ロイス:もちろん、嬉しいわよ。
    ねえ、妹の事だけど、あなたはずっと会ってなかった兄弟を好きになれる?
クラーク:君は妹が嫌いなのか?
ロイス:むしろあの子の方が私を毛嫌ってるんじゃないかな。
クラーク:へえ、君の方が男勝りだと思ってたけど、ルーシーの方がもっと悪そうだな。
ロイス:うーん、盛大なご支持、ありがとう。
    ママが死んだとき、パパにはどう育てていいのか分からない二人の女の子がいたの。
    パパは軍の上官がやるように指揮系統を作ったの。
    そして、私がパパに報告して…
クラーク:ルーシーが君に報告をしたんだ。
ロイス:ええ。それは姉妹にとって全く新しい競争になったわ。
    私は、妹が三食ちゃんと食べたか、学校に行ったか、宿題なんかを確認しなきゃいけなかった。
クラーク:母親代わりか。
ロイス:ええ、私ができない事を除いてね。
    あの子に、男の子とキスしちゃダメだとか、妊娠ちゃうとか。
    それに、他の子達より家事の手伝いが多かったから。
クラーク:それが彼女を全寮制の学校に入れた理由か?
ロイス:ええ、あなたの家族とは違って話し合いなんてなかったわ。
    将軍が命令を出したら、それを実行するまでよ。
クラーク:へえ、かなりすごそうだな。
ロイス:本当よ。
    ルーシーはもっとましだったわ。
    誤解しないで。彼女の方がって事よ。
    でも思うの、私はいつもあの子に嫉妬していた自分がいたって。

クラークは同情してロイスを見ます。
ロイスは自分の事を話した事に驚いてほんの少しきまりが悪るそうに見えます。

ロイス:[話題を変え]仕事に行かないと。
    あなたのママはかなり厳しいって聞いてるから。

彼女は早足で納屋から出て行きます。


第1幕 場面4
タロンでロイスは女性客の注文を受けています。
日中。
女性はテーブル席に着き、ロイスはエプロンを着けてトレイとメモを持っています。

女性:えーとね、ハーフ&ハーフのソイラッテ、泡なし、ホイップなしでね。
   それから、えーと、ブルーベリーマフィントップ、ブルーベリーはたっぷりにして。
ロイス:[テーブルから離れながら]
    普通のブラックコーヒーって言えばいいのに?

ロイスはバーの後へ行く途中、バーに立っているレックスとクラークを通り越します。

レックス:[クラークに]一つ屋根の下に二人のレインか。それは面白そうだな。

別のウェイトレスがクラークとレックスにコーヒーを出します。

クラーク:でも、二日も熱いシャワーを浴びられなかったんだ。
     それに洗濯機はずっと動き続けてるし。
     電話もずっと話中だ。

レックスは微笑みます。

クラーク:いや、二人がいるのはいい事だよ。
     少しは家が賑やかになるから。
レックス:ああ、俺も昔、静かな家はいやだったな。

クロエとルーシーが入ります。
クロエはバーの後のロイスを見ます。

クロエ:あれ!ロイスが働いてる?ねえ!

ロイスは客の注文を持ってバーから出ます。

クラーク:ああ、そうなんだ。
     ちょっとしたフロアショーだろ。
     二人してどうしたの?
クロエ:うーん、ルーシーは隠れた才能を持ってたわ。
     彼女、チューリッヒのYouth Orchestraでバイオリン奏者だったんだって。
ルーシー:それは別に大したことじゃないわ。
     ちょっとした趣味よ。
レックス:[感心し]ヨーロッパでの評価があるんだ、そんな事はないだろ。
クラーク:[レックスに紹介し]ああ、ごめん、ルーシー、こちらは…
ルーシー:レックス・ルーサーでしょ。
     [彼らは握手します]
     二ヵ月前、あなたのプロフィールをフォーチュンで読んだわ。
     アメリカのビジネスの将来に対するあなたの理論にはとっても興味があるわ。

レックスはルーシーの知識に驚きしばらく黙ったまま彼女を見ます。

レックス:じゃあ、君が俺のピアノのスキルをどう思うか知りたいな。
     屋敷に来て一緒にやってみないか。

彼らはロイスがトレイを落としてグラスを割ってしまい会話を止められました。

ロイス:あちゃー!
クロエ:[微笑み]手伝ってくるわ。

クロエはロイスの手伝いに行きます。
スキーでルーシーを追っていた男がタロンに入ってきます。
彼はルーシーとクラークをじっと見つめます。

クラーク:[小さな声で]ルーシー、あの人が君の後ろでじろじろ見てるけど?

ルーシーが振り向くと男は行ってしまいます。
彼女はクラークに顔を戻し不安そうに彼を見ます。
不安そうに彼もあたりを見まわします。

フェイドアウト。

第2幕 場面1
レックスの屋敷。
夜。
ジェイソンが部屋に押し入るとライオネルがいます。
ジェイソンはライオネルに近づきながら低い、脅すような口調で話します。

ジェイソン:ルーサー、どこにあるんだ?
ライオネル:何の事か言ってくれれば話しようがあるが。
ジェイソン:俺の言いたい事は分かってるはずだ。
      俺が中国に行くことを知ってあの地図を渡したんだろ。
      ならあの石を見つけたことも知っていただずだ。

ジェイソンは本棚まで歩いて床の上へ本をぶちまけ石を探します。

ジェイソン:手の込んだ事をしたな?
ライオネル:もし君が私の事をよく知っていたなら、私がもうあんな物を欲しがっていない事が分かったはずだがな。
ジェイソン:もしあんたが俺の事をよく知ってるんなら、あの石がどこにあるか言うんだな。
      さもなきゃ、大変な事になるぞ。
ライオネル:ほう、言いがかりの上に、私を脅すのかね?
ジェイソン:彼女のアパートに押し入って、部屋を荒らした…
ライオネル:誓って言うが、家宅侵入は私のスタイルじゃない。

ジェイソンは部屋中を捜し続けます。
そして手当たりしだいに物を投げ出します。

ライオネル:君の求めている物はここにはないぞ、ティーグ君。
      他を探してみたまえ。では。

怒ったジェイソンはソファーのライオネルに掴みかかり本棚に押しつけます。

ジェイソン:あんたが石を出すか、俺に本当の事を話すまで俺はどこにも行かないぞ、ルーサー。
ライオネル:ここに来てがなり立てた上に、私を脅し…

ジェイソンは再び彼を棚に投げつけます。

ライオネル:どうしてこんな事をする?
      ふりをしてるのか、それとも手の込んだ芝居か?
ジェイソン:話をそらすんじゃない!
ライオネル:私は母子の愛より強いものは何もないと思うが。
      それに、ラング君も同じ意見だと思ってるよ。

ライオネルはジェイソンの肩越しに目を向けます。
ジェイソンは振り返ってラナが戸口に立っているのを見ます。
彼女の目は怯え涙を潤ませ見つめていました。

第2幕 場面2
ケント農場。
夜。
ルーシーがそおっと階段を下りてきます。
彼女はキッチンを通ってクラークがソファーの上で眠っているリビングルームに入ります。
彼女は静かにドアを開けて出て行きます。
クラークは目を覚まし彼女が出て行ったドアを体を起こして見ます。

ルーシーが鍵を使ってタロンのドアを開け中に入ります。
彼女はバーの後に歩いてレジの脇にひざまずきます。
誰かが後に近づいてくるのが分かるようにと化粧用のコンパクトを開きカウンターの上に設置します。
引き出しの錠を開けて沢山のドル紙幣を取り出します。
彼女が鏡でクラークの顔を見ると素早くお金を戻して彼と向き合うように立ち上がります。

クラーク:君には色んな才能があるのは知ってたけど、盗みもそのうちの一つだとは思わなかったよ。
ルーシー:必ず返すつもりだったの。借りるだけで泥棒じゃないわ。
クラーク:言い訳がうまいね。ねえ、ルーシー、分からないよ。どうしてこんな事を?
ルーシー:あなたは、他の人と違う目で見られた事がある?全く違う部外者を見るような目で?
クラーク:あるさ。
ルーシー:私の学校は、世界で最も裕福な子供達が行くところなの。
     だから学校でのけ者にされたくなければそれらしく振舞わなきゃならなかったのよ。
クラーク:それはとてもお金がかかりそうだね。
     でも、そのためにどうして泥棒みたいな真似する必要があったんだい?
ルーシー:私、クレジットカードを使ったの。
     でも限度額を超えちゃって。
     それで私、ブラックリストに載った者にもお金を貸してくれるっていうクラブのオーナーのところへ行ったの。
クラーク:闇金に行ったのか?
ルーシー:えーと、その場所、ドイツ語で何て言ったかしら?
クラーク:待ってくれ、それじゃこの前君をじっと見つめてた男か?

ルーシーは応えません。

クラーク:分かったよ、どれだけ借金があるの?
ルーシー:五万ドル。
     [クラークはショックを受けます]
     でも金利がふくらんで雪ダルマ式にそこまで増えたの。
クラーク:ねえ、ルーシー、君のお父さんにこの事を話さないと。
ルーシー:いや、そんな事できないわ。
     将軍は私が完璧な娘だと思ってるのに。
クラーク:じゃあ、少なくてもロイスには話さないと。
ルーシー:姉さんをガッカリさせたくないわ。
クラーク:彼女は姉妹だろ。分かってくれるさ。
ルーシー:誰もが、あなた達みたいな家族じゃないのよ、クラーク。
     姉さんには言わないで。
     一番いい方法は…しばらくの間私がいなくなればいいのよ。

彼女は去り始めます。

クラーク:ルーシー、待って。
     [彼女は立ち止まります]
     君がもしトラブルに巻き込まれてるなら、一番いいのはここにいて目立たない事だ。
     多分、君を助けることができるかもしれない。

ルーシーは期待を持ってクラークを見ます。

フェイドアウト。

第3幕 場面1
スモールビル高校。
日中。
トーチオフィスで、クロエとクラークはコンピュータで闇金を調べています。
モニタにはルーシーを追いかけていた男の写真といくつかの詳細データが書いてあります。

クロエ:名前はマーカス・ベッカーね。
    重要犯罪の前科が沢山あるわ、チューリッヒのクロノスと呼ばれてるクラブの用心棒ね。
    どうみてもこのクラブは闇金業者の偽装よ。
クラーク:ロイスに言った方がいいな。

ロイスがトーチに入ります。

ロイス:あの子はそんなんじゃないわ。
    あの子は私がいなくて寂しかったからあちこち飛び回っていただけよ。
    この男がルーシーを付け狙ってるなら探し出して、話をしてみるわ。

クロエは立ち上がってロイスの腕を掴み彼女が出て行くのを抑えます。

クロエ:ロイス、あなたが勇ましいのは結構だけど、
    これは学校の弱い者いじめじゃないのよ。
クラーク:まじめな話、彼女は困ってるんだ。
     でも彼女を助けられる人物を知ってるよ。

第3幕 場面2
レックスとルーシーがレックスの書斎にいます。
日中。
レックスはクラッシクをピアノで演奏しています。
そしてルーシーはバイオリンで合わせます。
ロイスとクラークが入ります。
まるでパフォーマンスに拍手するようにロイスは手を叩きます。
レックスとルーシーは演奏を止めます。

ロイス:[意味ありげに]いいわね、ルーシー。素敵よ。
レックス:ああ、俺より若いのにこんな素晴らしい腕を持っているなんて思わなかった。
ロイス:ええ、でもあなたの知らない事がこの子にはあるの。
ルーシー:[いやみっぽく]ありがとう、クラーク。
     秘密を守ってくれるなんて嬉しいわ。
クラーク:ルーシー、君を助けたいんだ。
     だからここに来た。
     レックス、君にお金の相談に来たんだ。
     でも彼女は断ったんだ。
レックス:[立ち上がり]それはどんな金だ?
ルーシー:私は施しを受けるためにここに来たんじゃないわ。
     自分でなんとかする。

ルーシーは怒ってバイオリンをケースに戻します。

ロイス:[怒って]闇金に手を出しておいて、どうやって返済するつもりなの?
    街角でバイオリン弾きでもやって小銭でも溜める?
ルーシー:話さなかったのにはわけがあるのよ。
ロイス:ねえ、この事をパパに話したくはないわ、でも…
ルーシー:ママでもないくせに!
     そんな事を言うのは止めてよ。
ロイス:あなたこそここにママを持ち出さないで。
レックス:[静めようと]まあ、まあ。
クラーク:[レックスに。]ルーシーはスイスで五万ドルを借りてるんだ。
     男が取り立てにスモールビルに来てる。

レックスは驚いてルーシーに振り向きます。

レックス:なあ、ルーシー、君みたいな子がどうして闇金なんかに手を出したんだ?
ルーシー:話せば長くなるわ。
     私は皆の助けなんか求めてないわ。
     クラークでも、ロイスでも、あなたでもない。
     私はもう大人よ。一人で何とかできるわ。
レックス:たとえ大人ですら、五万ドルは大変な金額だ。
ルーシー:ええ、でもそれは私の問題よ。

ルーシーは去り始めます。

レックス:ルーシー、ドアを出て行く前に、何があったのか話してくれないか?
     こういう人種にはコネがあるからな。

第3幕 場面3
レックスの屋敷。
夜。
レックスとクラークは一緒に廊下を歩いて来ます。

レックス:奴ら、追跡できないように無記名の小切手を欲しがってきた。
     これはアマチュアの出る幕じゃないな。
クラーク:そんな奴らを使わない方法があると思っていたよ。
レックス:これはいつもと違う、クラーク。
     そいつらとやりあったのは初めてじゃないんだ。
クラーク:待ってくれ、マーカス・ベッカーを知ってるのか?
レックス:奴の下で動いてる男を知ってる。
     奴らはドイツの犯罪組織だ。
     俺がチューリッヒホテルを買収しようとした際、脅迫、恐喝を繰り返し妨害してきた。
     奴らを捕まえる事ができるんなら、手段はえらばないぞ。
クラーク:それじゃ、ルーシーは捨て駒か?
レックス:いや、彼女に手を貸すには別の理由がある。

ルーシーとロイスがレックスとクラークに近寄ります。

ルーシー:ベッカーはマーケットと菩提樹の角にある廃墟になった倉庫で会うって。

レックスは頷きます。

クラーク:レックス、危険だ。
レックス:誰にも怪我はさせないさ、クラーク。
     俺がやるのはブリーフケースを届けるだけだ。
     中にGPS装置を仕掛けてな、俺のセキュリティチームが後をつける。
ルーシー:あいつは私だけ来いって言ってきたわ。
レックス:いや、そんな事はさせられない。
     俺が一人で行く。

レックスが車に乗り込むと助手席にはルーシーが座っています。
そしてロイスが彼らの間で落ち着かずに身を縮めています。

ロイス:十万ドルと、クロムホイール、十三のスピーカー、それに後の座席には…
    いいわ、行って。
ルーシー:私達もそこに行くの?
ロイス:車に乗ってからずっとその事ばっかり繰り返してない?
ルーシー:私が言いたいのは、時間通りに行かないとうまくないんじゃないかってことよ。
     姉さんが考えてるほどあいつは甘くないわ。
レックス:リラックスして。もう直だ。

突然のサイレンの音にパトカーが車の後ろに近づいてきているのに気づきます。
パトカーは青と赤ランプを回していました。

レックス:くそっ。
ルーシー:大丈夫?
レックス:心配するな。うまくやるさ。

レックスは止まります。

レックス:ここでじっとしていろ。

彼が車から降りてパトカーの方へ行くと警官が降りてきます。
警官の顔は影で見えません。

レックス:申し訳ありません、お巡りさん。
     スピード違反の取り締まりには協力します、
     ですが、早くしてもらえませんか?
警官:手を頭の上に乗せろ。
レックス:[混乱し]何だって?
警官:すぐに手を上げるんだ。

警官は銃をレックスに向けます。
レックスは手を上げます。

レックス:おい、何かの間違いだろ。スピード違反はしたかもしれないが…
警官:黙れ!

警官は光の中に進みます。
警官はマーカス・ベッカーでした。
彼はスイス訛りで話します。

マーカス:小切手は持ってきたのか、ルーサーさんよ。

車の中ではルーシーとロイスがリアウインドウから見ていました。

ルーシー:ああ、なんてこと!
ロイス:だめ、だめよ、じっとしてるの、いい?

レックスはゆっくり車のトランクへ歩いて行って開けます。
そして銀のブリーフケースを取り出しマーカスに渡します。

マーカス:いい心がけだ。

マーカスはビニール袋をポケットから引き抜きます。

マーカス:バッグの中身をこれに入れろ。

レックスは地面にカバンを置いて開けます。
そして小切手をカバンから袋へと移します。
終わるとマーカスはうなずきます。

マーカス:ありがとうよ。

マーカスは銃でレックスの顔を殴ります。

マーカス:[意地悪く]おやすみ。

突然ロイスがマーカスの胸を蹴ります。
彼は痛みでしかめっ面をしますがバランスを保ってロイスの首を捕まえます。
そして銃を彼女の頭に向けます。

マーカス:ルーシーは一人っ子になりたくはないだろうな?

ルーシーがマーカスに会う予定の倉庫に超スピードで向かうクラーク。
大きな引き戸は閉じられて鍵がかかっています。
彼は素手で鍵を壊しドアを開けます。
中は花屋で数人の客と女性従業員がいます。
皆驚きます。

従業員:信じてちょうだい。お金はここにはないわ。
クラーク:待って下さい、マーカス・ベッカーはどこですか?
従業員:そんな人知らないわ。

クラークは不安そうに辺りを見まわし嵌められたと理解します。

マーカスが乗り捨てたパトカーに向かうクラーク。
レックスが道に倒れ額から出血しているのを発見します。

クラーク:レックス!
レックス:クラークか、彼女達が捕まった。

レックスは痛みで呻きます。

フェイドアウト。

第4幕 場面1
大きなセミトラックが道に止まります。
日中。
男が運転席から下りてきます。
顔は見えず黒い靴とスラックスだけです。
トラックの貨物室の中でロイスとルーシーは窮地に陥ります。
ロイスはドアを連打します。
レックスの車がトラックの後ろに停められています。

ロイス:ねえ!誰か!
ルーシー:無駄よ。完全に嵌められたわ。
ロイス:もう、結論を急がないでよ。
    こんな場合でも助かった経験があるんだから。
    何か考えないと。
ルーシー:ロイス、これはお仕置きで倉庫に閉じ込められたとか
     バンコクで道に迷ってるわけじゃないのよ。

ドアが開きマーカスが銃と茶色い紙袋を持ってトラックの後部に入ります。

ロイス:そんな物いらないわ。
    お金は手にしたんでしょ。
    どうして帰してくれないの、家に帰ってスイスチーズを食べれば、後はもういいでしょ?
    私達は必要ないじゃない。
マーカス:必要なんだよ。ルーサーには痛い目を見せられた。
     大儲けするためにここにいる事にした。
ルーシー:なんて人なの。身代金目当てに誘拐したの?
ロイス:ルーシー、黙って。

ロイスはマーカスににじり寄ります、すると彼はすぐに銃を彼女に向けます。

ロイス:妹は放してやって。二人は必要ないでしょ。
マーカス:いや、そうじゃないね。
     二人もレインがいれば、金額は跳ね上がるさ。
ロイス:私はどうなってもいいけど、この子は世の中を知らないの。
    この子には将来があるわ。
    ちゃんとマナーを学べばだけど。
マーカス:食べておけ。

マーカスがルーシーに紙袋を投げると彼女はそれを受け取ります。

ルーシー:気前がいいのね。私達を食べ物なんてくれないと思ってたわ。
マーカス:一つはトマトなしステッカーが貼ってある。

マーカスは車から出てドアを閉めます。

ロイス:[力強く]ルーシー?
ルーシー:[驚き]えっ?
ロイス:どうして、あいつがあんたのトマト嫌いを知ってるの?

ルーシーは黙ったまま応えることができません。

第4幕 場面2
クラークはが書斎に入るとレックスが飲物を持って暖炉の前に立っていました。
日中。

クラーク:ルーシー・レインは僕らを騙していたんだ。
レックス:それは、かなり大胆な発言だな、クラーク。
クラーク:引渡し場所はフェイクだった。
     倉庫なんかじゃなかったんだ。
     それにルーシーしかGPSの事は知らないはずだ。
     ベッカーがブリーフケースに仕掛けのある事を知ったのはどうしてか?
レックス:ベッカーはプロだ。
     単に金について慎重なだけさ。
クラーク:それはもっと大きな計画の一部だ。
     彼女がタロンに盗みに行こうとした時、偶然を装い僕を起こした。
     僕が彼女のやる事をわざと分かるようにしたんだ。
     学校で皆と合わせないといけないっていう話だって、
     それは、僕がお金の事で君に相談させるよう同情を誘うための演技だ。
レックス:彼女はストラディバリウスのよう演奏家だ。
クラーク:理解できないのは、どうしてロイスを誘拐したかだ?
     それが詐欺なのは分かるけど、どうして自分の姉まで誘拐するのか?
レックス:それは姉妹同士の嫉妬じゃないか。

使用人が入ります。

女性:お電話が入ってます、ルーサー様。ベッカーと申しております。

レックスは机の電話へ行って受話器を取り上げます。

レックス:レックス・ルーサーだ。

クラークは会話を聞くためにスーパーヒヤリングを使います。

ベッカー:少し北のチェリーヒルのハイウェー54号においてあるトラクタートレーラーの中に、
     無記名小切手で五十万ドルを置いておけ。
レックス:そんな事はできない。

ベッカーは電話を切ります。
レックスがこちらを見ていないとき、クラークは部屋から超スピードで出て行きます。
レックスは電話を切って辺りを見まわします。

レックス:クラーク?クラーク?

第4幕 場面3
セミトラックが走っています。
日中。
後ろにはロイスがルーシーの後ろで立っています。

ルーシー:誓って言うけど、ロイス、こんな事になると思わなかったの。
ロイス:[激怒して振り向き]
    マイケル・フーバーがあなたに泥を投げつけたとき、誰があいつの尻を蹴ったと思ってるの?
    ママが死んだ後、毎晩あなたとベッドにいて泣き言を聞かされたのは誰よ?
ルーシー:[泣きながら]ロイス、ごめんなさい。
ロイス:謝ったって許さないから!
    理由は何なの。
    あなたは世界中でも指折りの腕を持っているっていうのに、
    どうして犯罪者の片棒を担ぐの。
    完璧に切れる寸前だわ!
ルーシー:それが将軍が常に私に望んだものだから。
     一人でやってみろっていうのが。
     学校に行った日からずっと家に帰りたかったのよ。
ロイス:どうして将軍にそれを言わなかったの?
ルーシー:どうして?そんな事言えるわけないじゃない?
     パパは私じゃなくて姉さんが必要だったのよ。
ロイス:何の話?
ルーシー:どうしてママが死んだ後、パパが私を学校に追い払ったと思ってるの?
ロイス:あなたが素晴らしかったから学校に行かせたんじゃないの。
    だからあなたは最高の教育を受けてきたわ。
ルーシー:何とでも思えるわね。
     でも、実際、私はいつも姉さんが羨ましかった。
ロイス:私?私は荷物みたいに世界中に引っ張り回されたわ。
ルーシー:ええ、でも姉さんは私が絶対に持てないものを持っていたわ。
ロイス:なに?
ルーシー:パパよ。
ロイス:ルーシー。あんな人私達のパパだと思ってないわ。

ハイウェー54号に超スピードで来るクラーク。
彼は止まってあたりを見まわします。
しかし車は見える場所にはありません。
それからセミトラックが彼の立っている陸橋の下に接近するのを見ます。

ルーシーとロイスはトラックの中で話します。
クラークはスーパーヒヤリングで彼女達の話を聞きます。

ルーシー:ごめんなさい、こんな事になって、ロイス。
ロイス:それは心配しなくていいわ。
    もっとひどい目に会った事もあるから。

トラックが陸橋を通り過ぎるとクラークは超スピードで陸橋から飛び降ります。
まるでトラックの方に手を伸ばすように腕と脚を広げかなりの距離を飛んでトラックの上部に着陸します。
ルーシーとロイスは音を聞いて怯えて一瞥を交わします。
クラークはトラックの正面に駆け寄って運転席の屋根に飛び乗ります。
マーカスは天井を見上げ音にビビります。
それから彼は銃を掴んで天井に向けます。
何発か天井めがけて打ちますがクラークには当りません。
ロイスとルーシーは発砲音を聞きしゃがみ込みます。
弾丸が尽きるとマーカスはダッシュボードの方へ手を伸ばします。
それからクラークは屋根をつたわり運転席側の窓ガラス越にパンチでマーカスの顔を殴ります。
マーカスは呻いて気を失います。
トラックが道をそれ始めてクラークは運転席に飛び乗ります。
ルーシーとロイスは後ろで投げ飛ばされ壁にぶつかり床に倒れます。
ロイスはルーシーをギュッと抱きしめます。
運転席に座ったクラークはトラックの制御を回復しようとします。
ついにトラックは停まります。
二台の黒いトラックがセミトラックの後ろからやってきます。
その内の一台の助手席にはレックスが乗って携帯電話で話をしています。

レックス:脇に寄れ。すぐにだ!

二台のトラックは止まります。
そしてレックスは銃を携帯して出ます。
セミトラックの運転席側に駆け出すと他の警備員達も後を追ってきます。
レックスがドアを開けるとマーカス一人しかいなくて気を失っていました。
彼は途方に暮れて部下に振り返ります。

セミトラックの後ろから降ろされるレックスの車。
レックスとロイスは黒いトラックのうちの一台の方へ歩きます。

レックス:大丈夫か?
ロイス:新しいシートベルトの開発が必要ね。話してあげようか。
    [間があり]
    妹はどうするの?
レックス:申し訳ないが、当局に通報するしかないな。

ロイスはうなずきます。
突然レックスの車のエンジンが大きく回転速度を上げて走り去り始めます。
レックスの部下は叫びます。

男:おい、おい!

車はロイスとレックスの脇に近づき停止します。
ルーシーが運転していました。
窓を開けずに彼女は「ごめんなさい」と口だけ動かし、スピードを上げて行ってしまいました。

ロイス:ルーシー!

ロイスは車が去るのを見て目に涙を浮かべ背を向けます。

フェイドアウト。

第5幕 場面1
ケント農場。
日中。
納屋でクラークはサドルを作業台から取り二つの干し草の束の上に載せてある箱の上に置きます。
レックスが入ります。

クラーク:レックス。ルーシーは見つかったかい?
レックス:いや、見つかったのは俺の車と五万ドルだけだ。
クラーク:なあ、レックス、
     ロイスは本当にガッカリしてる。
     でも彼女には…
レックス:クラーク、俺は別に請求しに来たわけじゃない。
     それにベッカーを捕まえたのは五万ドル以上の価値がある。
クラーク:チューリッヒの件か。
     [クラークは頷き]
     じゃあ、丸く収まったってわけか。
レックス:ロイスはどうだ?
クラーク:うーん、分からない。
     彼女とは一日中何も話してないから。
     でも、ルーシーがどうして逃げたのか分からないよ。
     ルーシーは彼女の家族だろ。
レックス:だた同じ血が繋がっているからといって、お前のような家族にはなれない。
     俺達を見てみろ、クラーク。
     俺は親父のために育てられた、跡を継ぐためにな。
     だがお前の両親は愛のためにお前を選んだ。
     俺はお前の家族の方が羨ましいよ。

クラークは頷いてわずかに微笑みます。

クラーク:ただロイスとルーシーはもっと近づけたはずだと思うんだ。
レックス:まあ、期待するんだな、ある日そうなるかもしれない、
     だがそれは彼女達次第だ。
     こんな事で自分を非難するのは止めろ。

レックスは去り始めます。

クラーク:レックス。
     [レックスは背を向けたまま立ち止まります]
     君は兄弟がいないのが寂しくないか?
レックス:寂しかったさ…
     [振り向き]
     お前と出会うまではな、クラーク。
     お前は何より俺と親しい…血を分けた兄弟よりもな。

彼らはしばらく互いを見ます、そしてレックスは去ります。
クラークはボロを取り出してゆっくりサドルに歩いて戻ってそれを磨きだします。

第5幕 場面2
スモールビル高校。
日中。
クラークが混雑した廊下を歩きます。
クロエが彼に近づきます。

クロエ:やあ。
クラーク:やあ。

クロエ:もうハリケーンルーシーから立ち直った?
クラーク:彼女は自分を傷つける前にやり方を変える必要があるよ。
クロエ:あのね、あきらめないんだね。
     秘密を守る事はトラブルの元だよ。
     どれだけ大変なのか分からないよ、秘密にしたり、騙したりさ。

クロエはあてつけにクラークを見ます。
彼は話題を変えます。

クラーク:あのさ、えーと、ロイスと話をした?
     彼女、一日中部屋の天井を穴の開くほど見ていたから。
     かなり悩んでそうだったよ。

彼らは歩くのを止めます。

クロエ:ええ、まあ、私が物心付いた時には、ロイスはいつも妹を守ろうとしていたわ。
クラーク:どんなに必要でも、誰でも救えるわけじゃないよ。
クロエ:でもあなたはそれを止めないでしょ。違う、クラーク?

彼女はイタズラっぽく彼に微笑んで歩き去ります。

第5幕 場面3
レックスが書斎に入るとライオネルが机に着いていました。
日中。

レックス:親父、プライベーという言葉はどうやら通じないらしいな。
ライオネル:レックス、お前の部下の一人が最近私のところに来たぞ。
      それが公用なのかどうなのかは分からなかったがな。

ライオネルは机から立って机を離れるとレックスに背中を向けます。

レックス:俺もさっぱりだな、話しはそれだけか?
ライオネル:なんていったかな…ジェイソン・ティーグ、こんな事を言っていたぞ。
      私が盗んだ物を返せとな。

不安そうな表情がレックスの顔に一瞬浮かびます。

レックス:そんなの初めてじゃないだろう。
ライオネル:ともあれ、それは間違っていた。

レックスは机に座ります。

ライオネル:[考え込み]だがもし無くした物があるなら、それは私のせいだ。
レックス:それは何だ?
ライオネル:その質問に対する答えは知っているはずだぞ、レックス。
      お前が彼から盗んだんだからな。
レックス:親父、ゲームをしたいならカードがパーラーにある。
ライオネル:ゲームの話をしよう。
      お前は古代の遺物を捜すために中国へ誰かを行かせた。
      彼はそれを見つけ、盗んだ。
      だが彼は自分のためにそれを隠した。
      だからお前が彼から盗まなければならなかった。
      [くすくす笑い]
      お前はとんだ事に首を突っ込んでしまったな。

レックスは驚いてライオネルを見ます。

レックス:ジェイソン・ティーグが石を見つけた?
ライオネル:お前は世界でも最高の詐欺師だ、それとも信じられないくらい単純なのか。

レックスは目を落とし反芻します。

ライオネル:さようなら、レックス。

ライオネルは書斎を去ります。
レックスは机で動けなまま呆然としていました。

第5幕 場面4
ラナはタロンのアパートに入ります。
夜。
彼女は電気をつけてドアを閉めます。
それから彼女は窓まで歩いて開けます。
そして外の避難場所に出て建物の端のパイプのネジを抜きます。
中に手を伸ばして何かを包んでいるハンカチを引き抜きます。
彼女がハンカチをあけると石が出てきます。
彼女が石をそこに隠した本人であり、不安そうに、しかし驚きもせずに石を見ます。

第5幕 場面5
夜空の星。
ロイスは屋根裏でクラークの望遠鏡で星を見ています。
クラークが階段の上に来ます。
ロイスはそっけない態度です。

クラーク:望遠鏡はおたくかストーカーのためであると言うと思ってたよ。
ロイス:ええ、まあね、この数日間で人の事を見誤る事が証明されたわ。
    [クラークは頷きます]
    農場から私を追い出しに来たなら、分かってるつもりよ。
クラーク:いや、うーん、実はお腹が減ってるんじゃないかと思ってさ。
     オーブンに食物を入れてあるって言いにきたんだ。
ロイス:[速く]ありがとう。

クラークは微笑みます。
そしてロイスが感情を隠しているのを見ます。

クラーク:どうしたんだい?
ロイス:さっき将軍に電話をしたの。
クラーク:ああ、さっき聞こえたのはその叫び声か。
ロイス:ええ。まあね、パパはこんな事が起きて私に失望してたわ。
    うちの家族の指揮系統が続く限り、私は一番弱い立場だから。
クラーク:[心から]ごめん。
ロイス:気にしないで。
    三つ星の将軍に文句を言ったらなんかすっきりしたわ。

ロイスの呼吸は乱れクラークから遠ざかります。

ロイス:あー、これから妹が逮捕されると思うわ。
    でも、あんな子はもう赤の他人よ。
    [彼女はクラークに戻ります。]
クラーク:たとえそう思ってても、彼女が明日、君に電話をすれば、
     君は彼女を助けるためにすぐにそこに飛んでいくだろ。
ロイス:ええ、そうよ。だって妹だもの。
クラーク:僕はルーシーが全て悪いとは思ってないよ。
ロイス:ありがとう。皆があなたを非難しても、あなたはいつでもベストを尽くそうとするのね。
クラーク:それは僕らは友達だからだよ。
ロイス:えっ?私達は友達?
クラーク:まあ、君がそう思わないなら、僕は誰にも言わないけどね。

ロイスはクラークに頷きます。
すると彼は微笑みながらロイスを小突きます。
ロイスはクラークの肩を叩いて屋根裏を出ます。
クラークは望遠鏡を覗いて二つの彗星が向かい合って飛んでいるのを見ます。
彗星が重なり合うと明るい閃光を放ちます。
そしてそのまま彗星はそれぞれの方向へと通り過ぎていきます。

フェイドアウト。

おしまい