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SMALLVILLE(スモール・ビル)
邦題:ヤング・スーパーマン
シーズン5.14Tomb(墓)
夜空は曇り稲妻が走っています。
タロン。
ロイスの部屋では下着が床に散乱してします。
クロエがシャワーに入っていました。
ロイス:お湯が沸いたわよ、クロエ。
カモミールと熱いシャワーしか用意でいきないけど。
クロエ:ありがとう、ロイス、とっても気持ちいいわ。
バスルームのシャワー・カーテンにはクロエの影が映っています。
ライトが突然消えクロエは困惑して見上げます。
稲妻がタロンの近くに落ちバスルームの中を一瞬照らし出します。
全ての電気が止まります。
クロエは蛇口を止めます。
クロエ:もう!
真っ暗闇じゃない。
シャワー・カーテンの隅に女性のぼんやりした影があります。
クロエ:メトロポリスは停電じゃないでしょうね。
彼女はバスローブを急いで着てシャワーから出ます。
クロエ:ロイス、ロウソクはどこ?
ロイス:(外から)小さいキャビネットの一番下の引き出しを見て。
クロエは引き出しを開けてロウソクを取り出し火をつけます。
人影が通り過ぎます。
クロエは混乱して見上げます。
彼女はロウソクを鏡のところに持って行ってクモリを拭い去ります。
ブラシを取り出すためにキャビネットを開いて閉じると鏡に映った彼女の隣に顔が現れました。
クロエは息が止まり怖がりながら振り返ります。
そこには女の幽霊が立っていて茶色の髪をなびかせていました。
幽霊は腕は伸ばしその腕から血がしたたり落ちています。
幽霊:助けて。
クロエは悲鳴を上げます。
ロイス:(外から)クロエ!
ロイスは懐中電灯を持ってバスルームの中に走ります。
ロイス:クロエ?
ロイスが床を懐中電灯で照らすとクロエを見つけます。
クロエ:助けて。
稲光の光でクロエの伸ばしている手首がパックリと割れ幽霊と同じように血まみれになっていました。
スモールビル医療センター。
クラーク:ロイス、クロエはどこだい?
彼女は大丈夫なのか?
彼はロイスと男が立っている廊下を歩いてきます。
男:それをちょうど話し合っていたところだ。
君は?
クラーク:クラーク・ケントです。
男:私は医師のセイデルだ。
ロイス:この人は、そのー、クロエの精神科の担当医よ。
クラーク、彼女がバスルームで倒れているのを見つけたの。
手首を切っていたのよ。
クラーク:(驚いて)何だって?
ロイス:気づかなくて罪を感じるわ。
気づくべきだった。
学校とデイリープラネットで彼女はあんまり寝ていなかったのよ。
セイデル:精神的な病歴は?
ロイス:いいえ。
彼女は私の従妹ですけど、そんな事があれば知っています。
セイデル:分りました。
それなら初めてという事で処置します。
(看護師に)看護師、サリバンさんをE.Rから258号室へ連れて行って彼女の状態を確認して。
看護師:承知しました。
彼は彼らを超えて歩きます。
クラーク:先生、僕には分りません。
どうしてクロエがこんな事を?
セイデル:原因のことかね?
家系だったり、ストレス、愛する者を失った事などだ。
人というのは他の人間に話せない事も沢山持っている。
クラークは罪々しく見えます。
セイデル:だがそれが何であるとしても、私はそれを見極め何とかしましょう。
クロエの病室。
クラークが入ります。
クラーク:やあ。
クロエ:やあ!
クラーク:一体どうしたんだ?
クロエ:もう大丈夫よ…鎮静剤のおかげで。
クラークは座ります。
クラーク:それで何があったんだ?
クロエ:分からないの。
クラーク:(間があり)なあ、クロエ、もし何か話したいんだったら…
クロエ:クラーク、本当に分からないのよ。
あのね、シャワーを浴びていたら停電になった…それで気がついたら。
床に血だらけで倒れてたのよ。
クラークは心配そうにしています。
クロエ:クラーク、あたしはライターよ。
もし自殺するなら、それなりの遺書を残すわ。
クラークは微笑します。
クロエ:でも、誰かがバスルームにいた気がするんだ。
クラーク:ロイスは誰もいなかって言ってたよ。
クロエは目をそらします。
クラーク:あのさ、クロエ、さっき医者が君の家族に精神病の経歴を持った人がいないかどうか聞いてきたんだけど。
君のお母さんの事を話すべきたっだかな?
クロエ:だめよ。
クラーク:クロエ…
クロエ:クラーク、何が起きたのか分かってないんだよ、でもママと同じだとは認めたくない。
だから何も言わないで、お願い?
クラーク:(うなずき)ああ。
ケント農場。
外は雨が降っています。
マーサはキッチンで書類を読んでいます。
キッチンの勝手口のドアがノックされると、ライオネルがドアを開けました。
ライオネル:メトロポリスに帰る途中なんだが。
邪魔をするつもりはなかった。
君がどうしているか心配でね。
マーサ:ここには玄関があるのよ。
ライオネルはキッチンに入ってドアを閉じます。
ライオネル:次からはそうしよう…玄関から入るよ。
マーサは頷いて立ち上がります。
マーサ:それに先に電話をしてくれないと。
彼女が持っている書類が床に四散します。
ライオネル:手伝おう。
彼は書類を拾い上げるために屈みます。
マーサ:ありがとう。
ライオネル:これは…予算書。
財政予算の。
(彼女へ手渡し)州事業の。
上院議員なら必要な。
君はご主人の代わりに上院議員になるつもりかい?
マーサとライオネルは立ち上がります。
マーサ:分からないわ。
まだ考え中よ。
ライオネル:分るよ、それがどれだけ難しいか…愛する者を失ったんだ。
マーサは涙ぐんでいます。
ライオネル:段々良くなってくるさ、マーサ。
私には分かる。
君にはもう少し時間が必要だ。
マーサは頷いて微笑みます。
ライオネルはドアを開けて去ります。
マーサは座り書類に戻ります。
スモールビル医療センター、夜。
クロエの病室。
クロエは眠っています。
ささやき声:助けて…
クロエはかすかに動いて目を開けます。
ささやき声:助けて…お願い…
クロエは起き上がるとバスルームの光が揺らめいているのを見ます。
彼女は起き上がってバスルームに向かって歩きます。
ささやき声はうめき声になります。
うめき声:助けて…お願い…クロエ…
クロエは暗いバスルームに入ります。
光が揺らめきます。
クロエ:誰?
光が再び突然揺らめき、幽霊が現われます。
クロエは悲鳴を上げます。
彼女の後ろから手が伸び軽く叩きます。
クロエは息が止まって驚いて振り返ります。
それはラナでした。
ラナ:クロエ!
クロエ、あなたの悲鳴が聞こえたから駆けつけてきたのよ。
大丈夫?
クロエ:彼女は何者なの?
ラナ:誰?
クロエ:その女の子よ。
その子がちょうどここにいたの。
クロエはバスルームからベッドまで続く血まみれの足跡を見ます。
クロエ:何なの。
こんなに血が。
ラナはクロエの足元を見ますが、そこには血など何もありません。
ラナ:クロエ?
ねえ、ベッドに戻った方がいいわ、ねっ?
クロエ:いやよ、彼女を見つけださないと。
あたしはその子を見たのよ。
クロエは廊下へと走りだします。
クロエ:どこにいるの?
彼女はセイデル医師にぶつかります。
クロエ:先生!
大変なんです、たった今あたしの部屋に女の子がいたんです。
彼女は本当にあなたの助けを必要としています。
セイデル:落ち着いて…いいね…看護師?
クロエ:床の上が血だらけなんです、見えないんですか?
看護師とセイデルでクロエの腕をつかみ病室のベッドに彼女を戻します。
クロエ:(ヒステリックに)彼女はバスルームにいたのよ!
あたしの話を聞いて!
血よ!
そこいら中血だらけよ!
この部屋にいたの、そして彼女はあたしに助けを求めてきた!
セイデル:看護婦!
看護婦、彼女の腕を押さえて。
クロエ:(ラナに)彼に聞かせて。
やめて!
看護婦が注射器を取り出します。
クロエ:お願い、やめて!
お願いよ…話を聞いて!
彼女はあたし達に助けを求めてるのよ!
ラナは気が動転しているように見えます。
他の医者が好奇心で中を見ています。
クロエ:やめて!
ラナ、言ってやってよ!
ラナ!
クロエは悲鳴を上げます。
レックスの屋敷。
レックス:(電話で)エセ大学教授一人探すのがそんなに難しいのか?
草の根を分けてでも探し出すんだ。
レックスは書斎の外にラナを見ます。
彼は受話器を置きます。
レックス:ラナ。
ラナは気が動転しているように見えます。
レックス:どうかしたのか?
彼は彼女に向かって歩きます。
ラナ:クロエが、入院したの。
自殺しようとして。
レックス:大丈夫なのか?
ラナ:私?
分からないわ。
彼女と話をしようとしたんだけど支離滅裂で。
医者が鎮静剤を打ったわ。
レックス:彼女の主治医は?
ラナ:メディカルセンターの精神科医の先生よ。
その事であなたに会いに来たの。
…あなたがベル・リーブにいたとき、あなたを担当してくれたお医者様に助けてもらったでしょ?
レックスは頷きます。
レックス:俺から電話をしておこう。
一時間以内にウィーンから一番腕のいい医者を呼ぼう。
ラナ:レックス、ありがとう。
他に頼れるところがなくて。
レックスはラナに微笑みます。
スモールビル医療センター、356号室。
クロエは拘束され眠っています。
クラークは彼女を見舞います。
レックスが近づいてきました。
クラーク:(よそよそしく)レックス、ここで何をしてるんだ?
レックス:ラナが俺に会いに来た。
彼女に何が起きたのか教えにな。
クラーク:来てくれてありがとう、でももう何とかなったよ。
レックス:クラーク、ここは田舎の病院だ。
クロエが怪我をしたのならここでも十分だが、
今回のケースではもっと慎重にいかないとな。
もっといい病院を世話する。
クラーク:彼女を移すつもりか?
レックス:ヘリコプターがもうじき来る。
彼女が目を覚ます前に、ベル・リーブに移れる。
レックスはドアの窓越しにクロエを見ます。
クラーク:クロエはベル・リーブには移さない!
レックス:ラナも同じことを言ったよ。
(クラークに振り返り)お前がどれだけクロエのことを心配してるか分かる。
誰でも最も信頼する親友が…こんな事になればな。
俺が彼女の世話をする、約束しよう。
彼らはお互いを睨みつけます。
レックスは去ります。
クラークはもう一度眠っているクロエを見ます。
タロン、ロイスの部屋。
クラークはロイスのベッドに昏睡状態のクロエを下します。
ロイス:あなたは何をしてるの?
彼女は入院してるべきよ!
クラーク:レックスが彼女をベル・リーブに移そうとしたんだ。
ロイス:クラーク、でもそれは彼女にとって必要な事なんじゃないの。
クラーク:ロイス、君はあそこで何が起きるのか分かってない。
君は本当にレックスとあそこの医者にクロエの頭の中をかき回されてもいいって思ってるのか?
ロイス:もしそれで彼女が元に戻るんなら、多少の事は仕方がないんじゃない。
クロエ:(ベッドから)ねえ、薬のせいで動けないけど、耳は聞こえてるのよ。
彼女は起き上がります。
ロイスはクラークをいら立った顔で見ます。
ロイス:あら。気分はどう?
クロエ:のどが渇いたわ。
クラーク:水を持ってくるよ。
クロエ:それよりカプチーノを持ってきてくれない?
そっちの方が気分が良くなりそう。
ロイス:下に行って作ってくるわ。
(クラークに)5分間で戻ってくるからバカなまねはしないでね?
ロイスは去ります。
クロエ:脱走してきた事にイラついてるみたいね?
クラーク:ああ。
彼女は君の事を心配してるんだ。
僕らもだけど。
クロエ:クラーク、あたしが見たものはわかってるわ。
想像上の産物じゃない。
それに自殺なんかしようとしてない。
そんな事するわけないじゃない。
あたしはママとは違うわ。
クラーク:分かってるよ。
クロエは突然ささやき声を聞きます。
クロエ:今の聞こえた?
クラーク:何を?
幽霊がクラークの隣りに突然現われます。
幽霊:助けて……
クロエは息が止まって後ずさりします。
クロエ:彼女はここにいるわ。
クロエはベッドから出て行って、バスルームに急いで行きます。
幽霊は腕を伸ばしています。
彼女の白いドレスには血が飛び散っていました。
幽霊は後ろ向きに鏡のある壁に向かってその中へ姿を消します。
クロエは鏡を見ます。
クラーク:クロエ、大丈夫か?
クロエ:彼女はこの壁の中よ!
クラーク:誰?
クロエ:あたしが見続けてる女の子よ。
彼女を助けないと!
彼女は鏡を凝視します。
クラーク:クロエ、なあ、落ち着いて、いいか?
僕らで壁から彼女を救い出そう。
彼は彼女の腕をとります。
クロエ:違う、クラーク。
違うんだって、クラーク!
クラーク、あたしはおかしくなんかない!
彼女は壁の中にいるの。
お願い、ちゃんと見て!
クラークはためらいます。
クロエ:お願いよ。
クラークは向きを変えて壁にX線ビジョンを使います。
彼は壁の後ろに骸骨を見つけます。
クラーク:なんて事だ。
クラークは拳で鏡を打ち壊します。
壁に穴が開くとホコリまみれの骸骨が出てきました。
骸骨の腕にはクリプトナイトのブレスレットがあります。
クラークは気分が悪くなり身を引きます。
クロエ:クラーク!
彼はクロエの助けで隣りの部屋へ移ります。
クロエは骸骨を見るために引き返します。
彼女はブレスレットの脇にある1枚の紙に気付きます。
クロエはそれをとるために手を伸ばしますが、
クリプトナイトに触るとすぐに緑色の光が部屋を満たしクロエの腕に注ぎ込まれます。
クラーク:(外から、電話で)はい、寝室の壁の中にありました。
いいえ、どれだけ長い間そこにあったのかは知りません。
違います、悪戯じゃありません!
すぐに保安官をお願いします。
ロイスが入って来ると最後の言葉を聞きます。
ロイス:(疑い深く)保安官?
クラーク、何をしたの?
彼女は調べるためにバスルームに入ります。
ロイス:信じられない。何な…
彼女はバスルームを見るや否や言葉を止めます。
ロイス:大変だわ。
彼女は壁の脇に立ってクロエと骸骨を見ます。
ロイス:何…(クロエに)大丈夫?
クロエ:ええ。
クロエが鏡を覗き込むとそこには幽霊である彼女の顔が映ります。
幽霊はクロエに取り付きました。
幽霊/クロエ:気分がいいわ。
彼女は微笑します。
ケント農場、夜。
雨が降っています。
クラークとクロエは部屋でコンピュータの前にいます。
クラーク:多分君の見たものは君の頭にいたんじゃないか。
君に話しかけようとしたその子の魂が。
クロエ:稲光がタロンを打ったときに彼女の遺体を刺激したのね。
クラーク:ブレスレットのクリプトナイトの事は言わないんだな。
クロエは緊張しているように見えます。
クロエ:ええ、クリプトね。
クラークは部屋を行ったり来たりするのをやめて座ります。
クロエ:壁の中にたった一人閉じ込められたかわいそうな子よ。
クラーク:僕としては彼女が苦しまなかった事を望むよ。
クロエ:あたしは苦しんだと思うわ。
(爪をかみ)大いにね。
彼女は飲み物のひと口飲みます。
クロエ:おいしいわ。
クラークは疑っているように見えます。
クラーク:もう少し休んだ方がいいんじゃないか。
クロエ:もう十分眠ったわ。
(爪をかみ)彼を見つけだす必要があるわ。
クラーク:誰を?
クロエ:こんな事をした男よ。
彼女が苦しんだように、その男も苦しませないと。
クラークは疑うようにクロエを見ます。
クラーク:もう少し休んだ方がいいよ?
朝になったらこの話の続きをしよう。
クラークが部屋を出るとすぐにクロエはバッグの中身を全部出して、その中のスタンガン使用許可書を見ます。
クロエはそれをつかんで出ていきます。
ケント農場、台所。
ロイス:彼女の名前はグレッチェン・ウィンターだったわ。
クラーク:誰が彼女を壁の後ろに閉じ込めたのか、警察は手がかりを掴んでなかったか?
ロイスとクラークは廊下を歩いて入ります。
ロイス:新しい保安官は、文字通り新米だったわ。
でもグレッチェンだけじゃなかった、壁の裏に塗り込められた子は。
クラークは階段の一番下でひと呼吸おきます。
クラーク:クロエに話さないと。
彼らは階段を上ってクラークの部屋のドアを開けます。
クラーク:クロエ。
クロエは部屋からいなくなっています。
ロイス:彼女はどこに行ったの?
ラナの寮の部屋、夜。
ラナは眠っています。
影が彼女の上をよぎります。
それはクロエで引き出しを開けて何かを捜しています。
クロエはやっとテイザー銃を見つけ出します。
彼女はそれをテストするために電源を入れました。
ラナが目を覚まします。
ラナ:クロエ。
クロエは不安そうにしています。
クロエ:やあ、起しちゃった。
ラナ:ねえ、あなた、今までどこにいたの?
レックスと私で一晩中あなたを探していたのよ。
クロエ:ああ、実は、うーん…必要な物を取りに色々とね。
うーん、これ、借りてっていい?
彼女はテイザーを上に上げます。
ラナ:それはあなたのよ。
クロエ:そうか!
(不安そうに笑い)あたしのだったけ。
ラナは困惑しているように見えます。
クロエ:また後でね。
クロエは急いで出ていきます。
ラナ:クロエ、待って。
どこに行くの?
クロエはジャケットを着てテイザー銃を持って廊下の角を曲がりました。
彼女はレックスにぶつかります。
レックス:おっと!
クロエ:ごめんなさい。
レックス:君はどこに行くつもりなんだ?
クロエ:どうして皆がそれを聞くの?
ラナはクロエの後ろの視界に入って来ます。
ラナ:それは皆あなたの事が心配だからよ、クロエ。
クロエ:心配いらないわ、平気だから。
レックス:クロエ、今は気持も落ち着いていると思うが、まだ完全ではないはずだ。
君には助けが必要なんだ。
クロエ:違うわ。
あたしが必要なのはあたしの邪魔をして欲しくないって事よ。
レックス:申し訳ないが、君をベル・リーブに連れて行くぞ。
クロエはレックスをテイザー銃で撃ちます。
レックス:あっ!
クロエは逃げ去ります。
ラナはレックスを助け上げるために屈みます。
その時クラークが角を曲がってやってきて二人に出くわします。
彼は口を固く閉じます。
クラーク:何があったんだ?
レックスはラナの助けで起き上がります。
レックス:教えてくれ。
どうやってクロエを病院から連れ出したんだ?
クラーク:クロエがここにいたのか?
彼女はどこに行ったんだ?
ラナ:分からない、でも彼女は完全に別人みたいに振る舞ってたわ。
レックス:彼女は助けを必要とする今、武器を手にして出て行ったんだ。
どうするつもりだ。
クラークは答えません。
タロン、ロイスの部屋、夜。
テーブルの上には「悪魔払いと洗礼の儀式」というタイトルの本とすり鉢、すりこぎ、数本のロウソクがあります。
ロイス:(電話で)言ったはずよ、彼女は病院にいるべきだって、クラーク。
彼女は香料の枝を振り回しています。
ドアは開いています。
クラーク:クロエがデイリー・プラネットに行ったかどうか見てくる。
ロイス:オーケー、分かったわ!
もし彼女がこっちに来たら、あなたに電話するから。
彼女が振り返ると病院から看護師が来ていました。
看護師:すみません、ノックしようとしたんですが。
ロイス:あなたは誰でしたっけ?
看護師:あ、はい…私はあなたの従妹さんを病院に連れ戻しにきた者です。
マイケルといいます。
ロイス:ああ!看護婦さん。
看護師:まあ、そうです。
看護師が正しい言い方ですが。
彼は顔にかかる香料の煙を追い払います。
ロイス:ごめんなさい。
少し雰囲気を変えようと思って。
マイケルという看護師は部屋に入って見回します。
マイケル:クロエに会いましたか?
ロイス:あー、いいえ、看護師が家に来るとは思わなかった。
マイケル:(まだロイスに背を向けて)彼女は本当に優しい女の子のようですね。
何か悪いことが起きる前に彼女を助けて…(向きを変え)連れて帰りたいと思ってます。
ロイス:もし私が彼女から連絡がきたら、セイデル先生に連絡をします。
マイケルは答えません、しかし彼は何かを探しているようにみえます。
ロイス:何を見てるんですか?
マイケル:えっ?ああ、何でもないです。
(ロイスを見て)ここが映画館だったころ、父親がこの場所で働いていたので。
あれ以来今まで来たことがないんですよ、10年ぐらいは。
ロイス微笑とうなずき、少し幻覚症状を起こしました。
ロイス:10年?
マイケル:何かこう、いい匂いがしますね。
ロイス:薬草のセージを焚いているから。
あの、話を元に戻してくれません?
マイケル:ああ、そうでした。
もし彼女に会ったら、私が訪ねて来た事を伝えておいてくれませんか?
彼はドアに向かって歩きます。
ロイス:分かりました。
マイケル:宜しくお願い致します。
ロイス:どういたしまして。
彼女はドアを閉じると寄りかかって溜息をつきます。
彼女はカードを取り出し携帯電話を手にすると番号を押します。
ロイス:早く、早く…
突然、後ろからマイケルが彼女を掴むと布で彼女の鼻と口を押さえます。
ロイスはもがきます。
マイケル:よせよせ、もがいても無駄だ…
ロイスは電話を落とします。
マイケル:よし…
携帯電話:(床の上から)スモールビル保安官です。
ロイスは気を失って床に倒れます。
携帯電話:もしもし?もしもし?
街灯に照らされる夜の道路。
激しい雨が降っています。
クロエはウォール街を歩き、古い家につながる道に入ります。
彼女は門を押し開きます。
そして玄関のポーチを上ると玄関をノックします。
彼女は爪を噛んで不安そうに後ろを振り返ります。
マイケルの顔がドアの後ろから現われます。
彼はドアを開きます。
クロエ:マイケル。
マイケル:サリバンさん。
クロエ:すみません、ほかに当てがなくて。
あなたの助けが必要なんです。
マイケル:もちろん、手を貸しましょう。
どうぞ、中に。
クロエは入ります。
彼はドアを閉じます。
クロエは爪を噛みながら見回します。
マイケル:今すぐはちょっと都合が悪いけど、でも大丈夫。
あなたに手を貸しますよ。
クロエ:グレッチェンの時みたいに?
マイケルの表情は一瞬にして変化します。
マイケル:誰だって?
クロエ:(取り乱して)グレッチェン・ウィンターズよ?
覚えてるでしょ?
あなたは最初彼女に対してかなり親切だったわ。
あなたは彼女にかわいい緑色のブレスレットをプレゼントした、
そして泣く彼女を抱きよせ彼女の悩みを聞いた…
それは彼女の心の問題全部だったわ。
そしてあなたは自分の悩みを話した…それが彼女を病気にした。
マイケルの表情は凍りついています。
クロエ:彼女は帰ろうとしたけど、あなたは彼女に行かせなかった、そしてあなたはナイフを掴んだ。
マイケル:どうしてその事を知ってるんだ?
クロエは震えながら涙を浮かべます。
マイケル:誰も分かる訳がない。
クロエ:あなたとグレッチェン以外はね。
彼女は死ぬ事はなかったのに、クソ野郎!
マイケル:君は病気なんだ、サリバンさん。
だからそんな妄想話をしているんだ。
彼は近づきます。
マイケル:でも配しなくていい。
君を助けられる。
マイケルは突然クロエの喉をつかんで壁に押し付けます。
クロエはバッグの中からテイザー銃を不器用に掴みます。
マイケル:そんなもんじゃ無駄だぜ。
クロエ:これならどう!
彼女が彼の首にテイザーを撃つと彼は彼女を放します。
彼女は壁に彼を押します。
彼は床に崩れ落ちます。
彼女はコート掛けのノブを折ってマイケルを殴ります。
クロエがもう一度殴りつけようとした時ロイスの声が聞こえてきました。
ロイス:助けて!
お願い、助けて!
誰かそこにいるんでしょ?
クロエは中腰になって見回します。
彼女は武器を落として、更に家の中に入り地下室への階段を下りて行きます。
地下室は暗く、古い家具が散乱しクモの巣がかかっていました。
クロエは見回します。
するとロイスがイスに縛り付けられているのを発見しました。
ロイス:クロエ!
クロエ:ここから逃げないと。
ロイス:病院の看護師が、あなたが壁から見つけた女の子を殺したのよ。
クロエ:知ってる。
もういいの。
二度と誰も殺さないはずだから。
クロエはロイスのロープを解き始めます。
ロイス:クロエ!
クロエの後ろに額を血まみれにしたマイケルが現れます。
クロエが振り向いた途端マイケルは彼女の顔を殴りつけます。
クロエは床に倒れます。
マイケルはロイスに近づきます。
マイケル:君の番だ、お嬢さん。
マイケルの家、外。
まだ雨が降っています。
地下室ではクロエとロイス、二人とも向かい合わせに椅子に縛りつけられています。
マイケルは二人の間に立っています。
マイケル:(クロエに)痛いか?
彼はクロエに近づきます。
マイケル:君は何か悪い事をしたとは思ってないだろう、自分のした事に対して?
クロエ:(ゆっくりと顔を上げ)あの事は忘れないわ。
マイケル:あの事?
クロエは怖がっています。
マイケル:今起きている事とは別の事か?
君は本当に病気なんだな。
ロイス:何の話をしてるの。
マイケルはクロエに向いて屈みます。
マイケル:皮膚のすぐ下に何かうごめいているぞ…
だが俺なら…
ロイス:ねえ!
彼女から離れなさい!
マイケル:(ロイスに)彼女をお袋と同じように精神病院で死ぬのを助けようとしているだけだ。
ロイス:あなたの母親?
マイケル:これはお袋も同じだった。
お袋は主治医にさえ話さなかった。
マイケルはロイスを通り過ぎ道具箱の方へと歩きます。
彼はクリプトナイトのブレスレットを取り出します。
マイケル:俺はこれを見つけたんだ。
クロエは怖がって、戒めから抜け出そうとします。
マイケルはまだブレスレットを見ています。
マイケル:親父がこれを作ったんだ。
親父は器用だったからな。
俺は何時間も座って親父を見ていたよ。
そしたら親父はお袋の事を俺に話しだした。
お袋はいい女性ではなかった。
でも親父はお袋を愛していた。
親父はお袋を安らかに眠らせたかったんだ。
マイケルはクロエを見ます。
マイケル:だから俺も女の子たちにそうするんだ。
彼はクロエに近づき手を彼女の手の上に置きます。
マイケル:この不思議な力で…
彼はブレスレットを彼女の手首の上に置きます。
マイケル:そして俺の心に残る…永遠に。
クロエは彼の顔につばを吐きます。
マイケル:君は愛するものを傷つけた。
クロエはすすり泣いています。
マイケルは道具箱に行きナイフを取り出します。
マイケル:もうブレスレットは必要ない。
君は学ばなければならないな。
彼はクロエに向かって歩いてからロイスに振り返ります。
ロイスは息を荒げます。
クロエ:止めて、待って!
待って!待って、あたしが悪かったわ!
マイケル:少し遅かったな、だがもっと分からせないとならない。
ロイスは悲鳴を上げ始めます。
彼はロイスのロープを切ります。
クロエ:やめて。やめて!
彼はロイスに向かってナイフを差し出します。
マイケル:受け取れ!
ロイスは頭を振ります。
マイケル:受け取るんだ!
震えながら彼女はナイフを受け取ります。
マイケル:自分の手首を切れ。
ロイス:うそでしょ。
マイケル:手首を切って全てをさらけ出すんだ。
そうすればみんなと同じように幸せになれる。
それとも…
彼は銃を取り出してクロエに向けます。
ロイス:彼女の死ぬところを見せる気?
マイケル:やるんだ!
ロイスとクロエは怖がって顔を見合せます。
夜空、満月。
デイリー・プラネット。
モニタを見ているクラーク。
そこには「スモールビルの悲劇、行方不明の10代の若者」と表示されています。
クラークはじっと写真を見つめ、その中のマイケルに注目します。
クラークは「経歴」「プロフィール」をクリックします。
マイケル・ウェストモアの写真とスモールビル医療センター看護師を見つけます。
クラークは住所を見ます:ローレン通り7530番。
スモールビル、カンザス。
クラークは超スピードで走っています。
マイケルの家、地下室。
マイケル:やるんだ!
それとも彼女のきれいな顔を傷つけたいのか。
ロイスは手首を切るふりをしながら、ナイフをマイケルに投げつけました。
ナイフはマイケルの胸に刺さります。
彼は倒れますが起き上がりました。
彼はナイフを引き抜こうとします。
彼はロイスの椅子を蹴るとロイスは気を失って倒れます。
彼は痛みでうめきながらナイフを引き抜きます。
マイケル:お前ら一族の女はみんな狂ってるのか?!
彼はロイスの上にナイフを上げます。
クロエ:(絶叫)やめて!やめて!
クラークがどこからともなく現われてヒートビジョンでナイフを打ちます。
マイケルはナイフを放します。
クラークがマイケルの肩をつかんで投げようとしたとき、
クロエのブレスレットのクリプトナイトが彼に影響を与えました。
マイケルはクラークの顔を殴るとクラークは倒れます。
マイケルがナイフを拾い上げてクラークを刺そうと時クロエが叫びます。
クロエ:やめて、マイキー!
マイキー、マイキー!
彼はひと呼吸おいて向きを変えます。
マイケル:俺の事をなんて呼んだ?
クロエ:マイキーよ!
あなたのお父さんがあなたを呼ぶ時に使っていたわ。
リトル・マイキー、思い出した?
あなたはそう言われるのがいやだったわ。
マイケル:どうしてそんなに俺の事を知ってるんだ?
クロエ:(喘ぎ)あたしはあなたの全ての秘密を知ってるわ、マイキー。
私よ、グレッチェンよ。
マイケル:グレッチェン?
クロエは微笑しようとして頷きます。
クロエ:私はあなたが必要なの、マイキー。
お願い。
私の全ての秘密を取り除くにはあなたが必要なの。
傷つけるのはやめて、前にみたいに。
お願い。
マイケル:(微笑)俺の女。
彼は屈みます。
マイケル:俺の女。
クロエは腕からクリプトナイトのブレスレットを外しマイケルの首にぶつけます。
部屋中が緑色に光るとグレッチェンの魂がマイケルに入ります。
彼は自分にナイフを上げます。
マイケル:やめろ。やめるんだ。
彼の意志に反してかのように、彼は自分にナイフを向けます。
マイケル:何をする?
どうする気だ?
クロエは自分自身に戻りおそるおそる見守ります。
マイケル:グレッチェン、やめろ!
ナイフが彼の体に刺さると彼は悲鳴を上げます。
白い光に包まれるとマイケルの姿は消え、幽霊のグレッチェンが彼のいた場所に再び現われます。
彼女はクロエに微笑んでから姿を消します。
クロエは涙ぐんで微笑します。
床の上のロイスが意識を取り戻します。
ロイス:クロエ!
彼女はクロエに急いで行きます。
ロイス:大丈夫?
クロエ:ええ。
クラークは起き上がって二人に向かって歩きます。
クラーク:何が起きたんだ?
クロエは椅子から立ち上がります。
クロエ:グレッチェンが復讐を果たしに来たのよ。
ケント納屋、夕闇。
クラークが納屋でトラクターを修理しているとラナがやってきます。
ラナ:はい。
クラークは明らかに何かを心に手に入れたように見えます。
クラーク:やあ。
ラナ:クロエから聞いたわ。
クラーク:ああ、グレッチェンはどうだった?
ラナ:グレッチェンは精神科の看護師に拉致されて殺されたようね。
クラーク:どうしてレックスのところに行ったのを僕に言わなかったんだ?
ラナ:どうして私にクロエを病棟から連れ出すのを言わなかったの?
クラークは返事しません。
ラナ:話し合うべきだったわ、クラーク。
だからこんな事になったのよ。
お互いさまね。
クラーク:どうしてなんだろ?
ラナ:私はあなたを愛してるから。
私は心の底からあなたを愛してるわ。
でも…どうやってそれを伝えるべきか分からない。
クラークは取り乱しているように見えます、しかし何も言いません。
ラナ:皆誰でも秘密を持っているわ。
クラークはまだ何も言いません。
するとラナは向きを変えて去ります。
ケント農場、台所。
クラークが入ります。
マーサはキッチンで何かを読んでいます。
マーサ:トラクターはどうだった?
クラーク:直ったと思うよ。
父さんと比べると道具の扱いがまだまだだけどね。
マーサ:あら、大丈夫よ。
あなたはお父さんによく似ているもの。
クラーク:(間があり、微笑)僕もそう思うよ。
マーサは微笑します。
クラークは彼女が読んでいる書類に気付きます。
クラーク:母さんは本当にこの内容を理解してるのかい?
マーサ:大体はね。
私だって昔は企業で働いていたのよ、信じられないかもしれないけど。
クラーク:そうじゃないけど。
僕はいつも母さんが思ったようにした方がいいと思ってるんだ。
だから父さんだって。
クラークはマーサの隣りに座ります。
クラーク:やるべきだよ、母さん。
父さんの後を引き継いで上院議員になるべきだ。
マーサ:私にはできないわ。
クラーク:どうして?
マーサ:上院議員はパートタイムの仕事じゃないのよ。
ここにいられなくなる。
農場の経営があるのに。
クラーク:母さん、農場は僕が引き受けるよ。
母さんは本当に望んでいることをして欲しい。
それが父さんの願いでもあると思う。
マーサ:まあ…いつの間にか子供じゃなくなったのね。
彼らはお互いにほほ笑みます。
メトロポリススカイライン、夜。
デイリー・プラネット。
クロエは歩きながら新聞記事の見出しを読んでいます。
「スモールビル連続殺人犯が自殺」
クロエ:「逮捕されたスモールビル連続殺人犯」BY テッド・ Bittleman。
あたしが記事の主役のなのに執筆者名入りの記事を担当できないなんて。
クロエは机に座ります。
クラーク:まあ、君の死亡記事じゃなかったのが幸いだ。
クロエ:ええ、それかベル・リーブで拘束服を着てるよりはね。
クラーク:それはないよ。
彼らは知っているような顔を見合せます。
クロエ:あのさ、実際あたしは心を乗っ取られたわけだけど。
グレッチェンの魂があたしに乗り移ったのは分かったわ…でもどうしてあたしだったんだろ?
どうしてあたしを選んだのか?
クラーク:君は僕が知っている誰よりも他の人に気を使うからじゃないかな。
クロエ:それとも、ママと同じようにあたしにも何か悪い事があるとか。
クラーク:君のお母さんは何が原因だったんだ?
クロエ:分からないわ。
あたしが12歳のときママはいなくなったから、それ以前の事は…知らないの。
クラーク:でも君はお母さんがどこにいるか知ってるだろ。
クロエ:ええ。
クラーク:どうして会いにいかないんだ?
クロエ:まあ…(間があり)それは…あたしが怖がってるせい。
もしあたしがママの目を見て、その中に自分を見たらと思うと?
クラーク:もし君が長い間待ち過ぎて、お母さんの目を二度と見る事が出来なくなるとしたら?
クロエは気乗りしなく見えます。
クラーク:君の母親だろ。
どんな時でも。
それは変わる事はない。
クロエは頷いてコンピュータに顔を向けます、しかし明らかにクラークの言葉に影響を与えられます。
ベル・リーブ、日中。
クロエは階段を登っています。
彼女は近づくにつれ不安そうにします。
彼女は部屋の壁の向こう側から女性が窓を見ているのを見ます。
クロエはゆっくりと女性のところへ歩み寄って、途中ため息をついて、そして歩き続けます。
彼女は母親の前に立っています。
クロエ:ママ?
女性は彼女の顔に触れようと手を伸ばします。
クロエは泣き始めて彼女を抱きしめます。
フェイドアウト。
おしまい。