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SMALLVILLE(スモール・ビル)
邦題:ヤング・スーパーマン

シーズン5.17Void(喪失感)

クロエとラナの寮。
夜。
部屋にはラナが一人でベッドに横たわりながら
足をベッドの下に出しイライラと踵で床をトントンと叩いていました。
彼女の顔は目の周りがクマになっていてひどく疲れているようです。
突然立ち上がりクロゼットを開けるとかなりの大金を取り出し部屋を出て行きます。

大学。
夜。
真っ暗な大学の廊下をラナは歩いて行きます。
蛍光灯は切れかかっていて、時々点きはするもののすぐに暗闇に戻ります。

どこかの部屋でテーブルの上に緑の液体の入った小瓶がいくつか置いてあります。
部屋の中は薄暗く男(ランス)がそのテーブルの前に立ち緑の液体を調合していました。
そこへラナが入ってきます。

ランス:(ドアの音に気づき)
    遅かったな。
    (ラナはランスの脇に来ます)
    金は用意で来たのか?
ラナ:お金の問題じゃない。 ルームメイトを裏切れないわ。
   (ランスは持っていた瓶を置きます)
   ルームメイトは知らないわ。
   (お金を渡し)
   はい、二千ドル、預金の残りよ。

ランスがお金を数えていると女(アリー)が点滴の台を持ってやってきます。
アリーの顔もラナと同じように目の周りをクマにしていました。

アリー:心配ないわよ、ラナ、いずれ麻薬中毒になるから。

アリーはフラフラとしていて点滴台をワゴンにぶつけます。

ランス:(小瓶から注射器に取りながら)これは麻薬じゃない。
アリー:いいじゃない、ランス、少し注射を比喩しただけなんだから。
    幻覚だなんて言ってないわ。
ランス:(注射器を瓶から外し)
    そうとも。
    この小さなカクテルはノーベル賞間違いない。
アリー:そして製薬会社と取引して大もうけね。
ラナ:(ランスに)今回はもう少し長くして、2分ぐらい。
ランス:それはよせ。
    あまりにも危険だ。
ラナ:ねえ、ランス。 この前はたった20秒よ、もう少しで見つけられたのに。
アリー:何がいけないの?
    私はもっと長くやってたじゃない。
    (オレンジ色の薬の入った小瓶を手にして)
    連れ戻すことはできるでしょ。

ラナは手術台のような場所に横たわり心電図計などに繋がれていました。
ランスはラナに緑の液体を注射します。
ラナは恐る恐る注射を見てから頭の上にある無影灯を見つめます。

しばらくするとラナの視界はフラッシュバックを起こしたようになります。
はっきりと見えてくるとそこにはラナの両親がほほ笑んで立っていました。
ラナは二人を見て笑顔になります。

ラナ:ママ…
   パパ、本当なのね。
   二度と会えないと思ってた。
   二人がいなかったのが淋しかった。

ラナは泣き顔で一歩近づきます。
両親も一歩近づきますがその距離はまだ届いていません。

母親:ええ、私達もよ、ラナ。
ラナ:私、迷っていたの。どうすればいいのか。
父親:知っているよ、辛いだろうね。
ラナ:本当に彼を愛してたの。
   なんとかできるって思ってた。
母親:あなたの力になるわ、ラナ。

その言葉にラナは笑顔になり母親に抱きつこうとします。
その途端、ラナは後へと引き戻されフラッシュバックします。

ラナ:イヤーっ !
   やめてーっ !

ラナは手術台の上で激しく痙攣を起こし身を持ちあげます。

ランス:(ラナを抑えつけ)
    戻って来たぞ!
アリー:冷静に、ラナ、冷静になるのよ。
    (ラナは少し落ち着きます)
    生きて戻ってきたわ。
ランス:長い時間いたんだ。君を戻すことができなかった。

ラナは身を起こしランスに掴みかかります。

ラナ:待って。
   まだ十分じゃないわ。戻らないと。

ランスはラナの眼を見つめたまま返事をしません。

クロエとラナの寮。
日中。
クロエは部屋でノートPCで調べ物をしていました。
モニタにはS5E17で伝染病の調査をしに行った男二人が写真に掲載されていました。
彼女はその写真を不審な顔で拡大します。
背景のジャングルの中に人の顔が写っています。
更に拡大するとそこに写っていたのはファイン・ミルトンでした。
彼女は携帯電話を取り出しクラークに電話します。

クロエ:クラーク、大変な事が分かったわ。

するとクラークは超スピードで部屋までやってきてドアをノックします。
彼女は電話を切ってドアを開けます。

クロエ:(あきれ顔で)速いわね、でも変な感じ。
    いつもなら私が緊急事態だって言うと、
    私を無視してここから飛び出て行くのに。

クロエはクラークを部屋に入れます。

クラーク:邪魔はしたくない。
クロエ:(ドアを閉め)心配しないで、ラナはここにはいないから。
    実際、彼女は昨夜から帰って来てないんだ。
    別に他の人のところって意味じゃないわよ。
    彼女はおかしな学生のところに行ってる、
    そして何時間も戻ってこない。
    (机に戻り)でもね、クラーク、いずれそうなるわ。
    結局は、他の人を見つけるわ。
クラーク:彼女が幸せになるんならそれでいいさ。
     で、大変な事って?
クロエ:中央アメリカでの死亡事件にファインが関係している可能性があるわ。
クラーク:死んだはずだ。
クロエ:確かに死ぬのは見たわ、
    でも本当に確かな事は彼が姿を消した事と、
    船も消えたって事。

クロエはモニタに写ってファインの拡大画像を印刷します。
クラークは印刷されるまでの間モニタを見ます。
印刷されるとクロエはクラークに手渡します。

クラーク:どこでこれを?
クロエ:情報提供者が教えてくれたんだ。

ドアの開く音が聞こえ二人は振り返ります。
ラナがアリーに付き添われ入ってきました。
ラナの顔色も悪いですが、アリーはもっと悪そうに見えます。
クラークは驚いた顔でラナを見ます。
ラナも険しい顔で見つめます。
クロエは心配そうな顔でラナとクラークを見ます。

アリー:じゃあまたね、ラナ。
ラナ:ええ。

アリーは帰ります。
気まずい雰囲気の中ラナが部屋に入るとクラークは部屋を出ようとします。

クロエ:後で電話するから。

ラナは自分の机に行って教科書などを鞄に詰め込んでいます。
クラークはその姿を心配そうに見つめます。
彼が踵を返すとクロエはドアを閉めラナに向きます。

クロエ:ごめんね。
ラナ:(気にしてない振りをして)
   あなた達は友達だもの。
   いつかそうなるのは分かってたわ、でしょ?
クロエ:うーん、戻って来るとは思ってなかったから。
    (ラナに近づき机の角に腰かけ)
    それで、昨夜何をしてたのか聞いてもいい?
ラナ:(努めて笑顔で)
   ただぶらぶらしてただけよ、クロエ。大した事はしてない。
クロエ:(心配そうに)違うでしょ。
    徹夜してた理由になってないわ。
    (顔を上げたラナを見て)
    大丈夫なの?
ラナ:(肩にカバンをかけて)平気よ。
クロエ:そうは見えないよ。
    ラナ、クラークとの事がショックだったのは分かるけど…
ラナ:(努めて笑顔で)
   クロエ、そう言う事じゃないの、いい?
   毎日誰かが別れてる。
   それは大したことじゃない。
   乗り越えられるわ。

ラナは部屋を出て行きます。
クロエは心配そうな顔で後ろ姿を見送ります。

クラークは帰り道クロエにもらったプリントを見ています。
突然超スピードを出すと、中央アメリカのホンジュラスへとやって来ました。
クラークは村の中を歩きながらプリントを村人達に見せます。
しかしほとんどの人は横に顔をふるだけでした。

タロン。
日中。
外にはアメリカ国旗が飾ってあります。
店内ではマーサが記者会見をしていました。

マーサ:要するに、このマイナーな増税は
    私達の公立学校における主要な相違を作ることができます。

女性記者の一人が質問をします。

女性記者:上院議員、クレイトンの主張をどう思われますか?
     あなたの提案だと選挙民から税金を搾り取るという事では?
マーサ:下院議員が関心を持った事は非常にうれしいわ。
    クレイトン下院議員自らが私に尋ねるべきでは?
    ご静聴ありがとうこざいます。

若干の拍手が記者たちの中から起こり、記者たちは解散しだします。
記者が出て行くと後ろの方にライオネルがいました。
ライオネルはマーサに近づきます。

ライオネル:いいスピーチだった、上院議員。
      攻撃されると、ためらって戦う事ができなくなる。
マーサ:思った事を言ったまでよ。 公開討論は私が望んだの。
    でも毎回こうだと嫌になるわね。

マーサは歩き出します。

ライオネル:(追いかけながら)
      君なら大丈夫さ。
      かつて君はそれを証明している。
      (マーサの前に回り、手に持っていたコートをまさぐります)
      君にいいものを持ってきた。
      何かしらのためになると思って。
      明日の晩 一緒に州知事の邸宅でディナーに行こう。
      (四つ折りにした数枚の書類を渡し)
      コピーだ、リサーチのね。 ディナーに来る者達全員の。
マーサ:信じなくてもいいけど、ライオネル、家で宿題をしないと。
    色んな人達の見解や投稿なんかをね。
    どうしてこんな事をするの?
ライオネル:(間があり)君を利用しようなどとは思ってないさ、マーサ。
      (書類に目をやり)見てくれたまえ。

マーサは書類を広げ目を通します。

マーサ:(驚いて)下院議員のクレイトンがポロを?
ライオネル:ああ、なかなか彼は熱情的だぞ。
マーサ:娘は体操選手で、
ライオネル:オリンピック級だ。
      政治的な職務もあるかもしれない、しかし私の経験上
      最終的には皆と食事をしながら話す事も必要だ。
      それが君と仲間達を繋ぐべきもう1つの方法だ。
      明日の晩、一緒に行こうじゃないか?
      私が君をサポートする。
マーサ:ありがとう。
    (ライオネルはクスリと笑います)
    (真剣な顔で)
    でも、ライオネル…
    あなたが個人的な何かを期待していないと思いたいんだけど。
    私達は決して友達以上の関係にはならないわよ。
ライオネル:(真剣な顔で)分かってるさ。

ホンジュラス。
日中。
クラークはまだファインを探していました。

近くにいた女の子二人にプリントを見せ。

クラーク:すみません、見たことある?

女の子達は頭を振ります。
クラークは別を当たろうと振り返った時、少年がナイフで木彫りをしていました。
その形は宇宙船そっくりです。
クラークは少年に近づきます。

クラーク:見せてくれる?

少年は頷くと木彫りの宇宙船をクラークに渡します。
クラークはそれを見て間違いないと確信します。

ラナが大学の医学部、解剖実習を行っている教室にやってきます。
学生証をドアのスキャナに滑らせると鍵が開きます。
ラナはドアを開け中に入ります。
中では遺体を目の前にした生徒達の間を歩きながら講師(教授?)が講義をしています。

講師:最初に三角筋とその周辺を切開。 それから上腕骨に沿って切開する。
   (ランスのいる場所で)
   君、もう少し関節の下、2インチぐらいのところだ。

ラナはランスを見つけ声をかけます。

ラナ:ランス。
ランス:何しに来た?

ランスはちらりとアリーを見てからラナを教室の端へと連れて行きます。

ラナ:もう一度お願いよ。
ランス:(小さな声で)声を小さく、俺達が追い出されちまうだろ。出てってくれ。
ラナ:(行こうとするランスの腕を掴み)
   待って!
   もう一度やってちょうだい。
   両親に会いたいの。
ランス:(しばらく悩んだ顔で)分かった。
    だが金は用意できるのか。
    今回は五千だぞ。
ラナ:なんとかする。

そうは言ったもののラナの顔は不安そうです。

レックスの屋敷。
夜。
レックスが書斎へと廊下を通って来ます。
物音が書斎の方から聞こえると、レックスは廊下の壁の一角をスライドさせ
隠し戸から拳銃を取り出します。
そして書斎に入り家探ししてる人影に銃を向けます。

レックス:動くな!

人影は急いで書斎を出ようとします。
レックスは前に回りその人物を捕まえ顔を見ます。

レックス:(拳銃を下し)ラナ?

ラナは青ざめた顔をして震えています。

レックスは拳銃を机の上の箱にしまいます。
そしてその脇に車のキーを放りだします。

レックス:おい、ラナ、君だとは思わなかった。撃ってしまうところだったぞ。

ラナは暖炉の前のソファーに膝を抱え震えて座っています
レックスは向かい側の椅子に座ります。

レックス:金が必要なら、どうして俺に相談しなかったんだ?

ラナ:そうね。
   レックス、本当にごめんなさい。
   ウソは付きたくなかったの。
レックス:一体どうしたんだ?
ラナ:何でもないのよ。
レックス:(間があり)嘘はつきたくないといっただろ、
     不法侵入した上、盗みをしようとした。
     君を見ていると、まるで麻薬中毒の患者だ。
ラナ:学校にある人がいるの。
   その人が薬を作った。
レックス:それが麻薬か?
ラナ:いえ。
   あなたが考えるようなものじゃないわ。
   死なせてから生き返らせるの。
   レックス、私は死んだの、死んで生き返ったの。
   (レックスはあきれた顔になります)
   本当の事よ。
   (泣いたような笑ったような顔で)天国に行って来た。
   そして両親に出会ったの。
   美しかったわ。

レックスは立ち上がってラナの隣に座り彼女の肩に手をかけます。

レックス:親を失うというのは大変な事だ。
     それでも君は…
     両親がいなくてもちゃんと生きてきた。
     もう一度会えるなら何でもしたいという気持ちも分からないでもない、だが
     まずは自分自身を見つめ直す事だ。
     何をすべきか。
     両親だってこんな事は望んではいないだろう。
ラナ:(泣き顔で)レックス、ごめんなさい。
   私…両親に会いたかったのよ。
   一人ぼっちだったから。
レックス:お互い失った者を追いかけるのはやめるべきだ。
     そして生きている者へ思いを向けた方がいい。
ラナ:(頷いて)ええ、そうね。
レックス:体が冷え切ってるじゃないか?
ラナ:いえ、平気よ。
レックス:毛布を持ってこよう。

レックスは立ち上がって隣の部屋へと姿を消します。
その途端ラナの表情は変わり机に置いてあるキーを掴み出て行きます。

ホンジュラス。
日中。
クラークと先ほどの少年がジャングルの中を歩いています。
少年が途中で立ち止まり先を指さします。

クラーク:あそこかい?
少年:うん。

指差した方向にクラークが行くとそこの地面は黒く
宇宙船の形で焦げていました。

ラナとクロエの寮。
日中。
部屋ではクロエがノートPCをタイプしていました。
電話が鳴ると手を止め出ます。

クロエ:もしもし。
    (しかめっ面をして)
    レックス?
    ううん、どこにいるか知らないわ、でも見つけられると思う。
    分かったらすぐに電話する。

彼女は上着を取って出ようとします。
しかしラナのベッドの上にある本を見つけ立ち止まります。
本の題名は「死の狭間で」と書かれていました。
そして挟んであるメモを取り出し、読むと部屋を出て行きます。

アリーの部屋。
クロエがドアをノックするとアリーがドアを開けます。
アリーは益々生気のない顔になっています。

クロエ:ちょっと話したいんだけど。

クロエは部屋に入ります。

アリー:(ドアを閉めながら)ラナが言ってたわ、ルームメイトは詮索好きだって。

アリーはベッドの方へ歩きます。

クロエ:ラナより具合悪そうに見えるわね。

アリーはベッドに腰掛けます。

アリー:それで?
    私のためにチキンスープでも持ってきてくれたの?

クロエは近くの椅子を引き寄せ座ります。

クロエ:いいえ。友達の事が心配でここに来たの。
    ラナは彼氏と別れたばかりで、今傷付きやすく落ち込んでる。
    最終的には退学になっちゃう、一晩中パーティーなんかやってたら。
アリー:(咳きこみ)それはあなたの仕事?
クロエ:ええ、そうよ。
    もし一晩中何してるのか教えないんなら、大学側に話す必要がわるわ。
アリー:落ち着いて。
    ラナはパーティーなんかしてない、
    それに彼氏を失って嘆いて歩き回ってもない。
クロエ:じゃあ、どうして普通じゃないの?
    それに2人ともベティー・フォードクリニックのポスターの子供みたいよ。
アリー:もう帰って、話しは終わったでしょ。

アリーが立ち上がろうとするのをクロエは押しとどめます。

クロエ:まだよ。何をしてるの? 麻薬?
アリー:(鼻で笑って)心が狭いわね。 ラナが私達のところに来たのが分かったわ。
クロエ:どうしてあなた達のところへ?
アリー:ラナの愛する家族のためよ。

そう言うとアリーは激しく咳きこみます。

クロエ:(心配して)アリー、何なの? どうしたの?
アリー:(息を詰まらせ)ニア・デス体験よ。

クロエがベッドの脇を見るとそこにはラナの持っていた本と同じような本が置いてありました。

アリー:そういった薬…
    隕石の。

アリーは咳きこみ血を吐きだします。

クロエ:(アリーの脇に座り)
    大変!

クロエは携帯をかけます。

クロエ:救急車を至急お願いします!
    クロスハウスの1170号です。

アリーの鼻も口も血で汚れています。

アリー:死にたくない。

アリーは息を詰まらせベッドに仰向けに倒れます。

クロエはベッドから立ち上がります。

クロエ:そんな。

大学。
夜。
ラナが暗い廊下を歩いています。
部屋に入るとラナは呼びかけます。

ラナ:ランス?

ランスは緑の薬の入った小瓶をケースにしまいこんでいます。

ラナ:何してるの?
ランス:証拠を隠してるんだ。
ラナ:証拠?
ランス:アリーが死んだ。
ラナ:(驚いて)どうして?
   彼女に何があったの?
ランス:俺は警告したんだ、長時間は無理だって、君が来る前にな。
ラナ:薬のせいで死んだの?
ランス:(怒って)薬のせいじゃない。 自業自得だ。
ラナ:それでも私は構わない。
   私をあそこへ連れてって。

ラナは手術台に座ります。

ランス:本気か? 警察がもうすぐここに来る。俺は逃げるぞ。

ラナはバッグから車のキーを取り出しランスに渡します。

ラナ:それなら急いでやって。
ランス:これは何だ?
ラナ:外に置いてあるポルシェのキーよ。
   それなら天国へのお金の代わりになるでしょ?
ランス:ポルシェを盗んだのか?
ラナ:いえ、友達から借りてきた。

ランスの後ろから声が聞こえてきます。

レックス:そしてそいつは取り戻したいと思ってる。

ランスは振り向きます。

ラナ:(驚いて)レックス。

彼女はベッドから降ります。

レックス:かっこいい高価な車には、GPSがついている。
ラナ:レックス、説明させて。
ランス:(驚いて)レックス?
    レックス・ルーサーか?
    バカな女だ。

ランスはバッグを持って出て行こうとします。

ランス:お前になんか教えるんじゃなかった。
ラナ:いやよ、ランス、お願い、待って。
ランス:俺は逃げるぞ。

レックスは脇を通って行くランスを捕まえます。

レックス:警察が来るまでお前はここにいろ。

レックスはランスを殴り倒します。
ランスの持っていたカバンが落ち中から小瓶が転がります。
一本がラナの足元に転がり、ラナはそれを取り部屋を出て行きます。
レックスはランスは殴り合いを続け、再びランスを倒します。
レックスはラナを追いかけます。

レックス:ラナ!

ランスは転がっていた薬の入った注射器を拾い上げレックスの背中に刺します。
レックスはその場に倒れこみます。
ランスは鞄に薬を詰め込み、レックスのところに戻ってきます。

ランス:じゃあな、ハイエナ野郎。 俺は逃げるからな。

ランスは出て行きます。

レックスは薬のせいで近死体験を起こします。
彼が気がついて場所は屋敷の書斎の床の上、暖炉の前でした。
息を荒げ立ち上がると、ピアノ曲が聞こえてきます。
音のする方向に目をやると誰かがピアノを弾いていました。
近づくとピアノを弾いていたのは既に亡くなったはずの母親でした。

レックス:母さん?
母親:(弾き続けながら)
   あなたが子供のころ何時間も練習したわね。
   ジュリアンが生まれる前。
   あなたはハツカネズミみたいに静かに私の隣りに座ってた。
   優しい子供だった。
   (突然演奏を止め)
   そして右手の演奏ができなかった。
レックス:俺は何かの薬を注射された。
     幻覚を見てるんだ。
母親:違うわ、あなたは死んだの。
レックス:これはただの妄想だ。

母親は立ち上がりレックスに近づきます。

母親:最後に会った時?
   私に何を見せてくれたっけ?
   ああ。そうだわ。
   あなたはジョナサン・ケントを殺そうと雇った男とのミーティングをしてたわ…
   そうすれば上院議員になる事ができたわね
   どのような結末になるのかしら?
レックス:本当に死んだ母さんなら、何か知ってるのか?
母親:それは愚問よ、アレキサンダー。 もちろん知ってるわ。
   あなたに示した事を全てを無視した…
   まだまだ変えられたはずなのに。
   もし異なった選択をしていれば。
レックス:どんな選択があるって言うんだ?
母親:あなた選んだ道は正しいって言える?
   もう少し考え直せるはずよ。
   あなただけが苦しむのではないわ。
   美しい花で満たされる事が決してない不毛な場所よ…
   (泣きながらレックスの顔を触り)
   …それならあなたをここに引き留めたい。
   私のところにいなさい、アレクサンダー。
   血であなたの心を汚さないで。
レックス:何の話です?
     血とは何です?
母親:(悲しげな顔でレックスの耳下で)
   全ての人達をあなたが殺すの。

そして母親はレックスの手を掴み持ちあげます。
彼の手は黒の革手袋をしていました。
レックスは驚いた顔になります。
その瞬間フラッシュバックが起きレックスは母親の元から去ります。

レックス:うぉー!

生き返ったレックスは息を荒げています。
クロエがそばにいました。

クロエ:よかった、これが効いたのね。

彼女は注射器を見せます。

レックス:何が起きたんだ?
クロエ:ラナを探してたらあなたの遺体を見つけたの。
    もし緑の薬が死をもたらすなら、
    他の薬で生き返らせる事が出来るかもって。
    (レックスは驚いた顔で彼女を見ます)
    何よ? あなたは死んでたのよ。私がチャンスをあげたのに。
レックス:(クロエの肩を掴み)
     ラナを助け出さないと。
クロエ:(驚いて)ラナがいたの?
    (レックスは頷きます)
    どこにいるのよ、レックス?

大学の外。
夜。
レックスが救急車に運ばれます。
そこへクラークがやってきます。

クラーク:クロエ。 メールを見たよ。 何があったんだ?
クロエ:レックスが死んだの。
クラーク:何だって?
クロエ:心配しないで。 生き返らせたから。
    でもレックスが、もしラナを見つけださないと三途の川を渡ってしまうって。
クラーク:クロエ、何が起きたんだ?
クロエ:分かった、手短に話すわ。
    ラナの新しい友達は今まで毎日のようにあの世に行ってたの。
    彼らはニア・デス体験を長く持続させるために隕石で薬を作ったのよ。
    でももし彼女を見つけだすのが間に合わないと、あの世から戻ってこれなくなる。
クラーク:自分を殺して、生き返る??
クロエ:ええ。
クラーク:どうしてラナはそんな危険な事を?
クロエ:傷ついてるからよ、クラーク。
    彼女はあなたにも私にも話をしないわ。
    だから彼女は一番彼女のことを気にかけてくれる
    2人の元に行きたがってたんだと思う。
    無条件に彼女を愛してくれる2人って分かるでしょ?
クラーク:両親か。
クロエ:そう。
クラーク:どうやって見つけるんだ?
クロエ:国土安全保障に感謝ね。

彼女はノートPCを開きタイプし始めます。

クロエ:大学キャンパスにいれば電子アンクル・ブレスレットをつける事と同じ。
    学生証がどこにいても捕まえてくれるわ。
    だから彼女を見つけだして、まだ生きている事を願うだけよ。

クラークは不安そうな顔をします。

大学、医学部の教室。
ラナは学生証でドアのロックを解除します。
教室に入ると彼女は何かを探し始めます。
医療器具の棚の前に来ると注射器を見つけます。
彼女はガラス戸を開けようとしますが鍵がかかっていて開きません。
彼女は拳でガラスを破り注射器を取り出します。
袖を捲るとバッグから緑の小瓶を取り出し注射器に薬を入れようとします。
すると後ろからランスが彼女の肩を掴み振り向かせます。

ランス:麻薬中毒者なら注射器の場所に来ると思ってたよ。
    (注射器を取り上げ、ラナを投げ飛ばします)
    俺が手伝ってやる。

彼は床に落ちた瓶を拾い上げ注射器に薬を入れます。
ラナは恐る恐るそれを見ていました。
ランスは注射器を持ってラナを掴み立たせます。
そして彼女の首に針を立てようとします。

ランス:アリーに俺が「よろしく」と伝えてくれ。

その時クラークが超スピードでやってきてランスを投げ飛ばします。

クラーク:大丈夫か?
ラナ:クラーク、手伝って。あれが必要なの。
クラーク:(心配そうに)
     ラナ。
ラナ:お願い。
   (クラークの後ろに気づき)
   クラーク!

クラークが後を振り向くとランスが注射器を持って立っていました。
クラークはランスの腕を掴み避けようとしますが、緑の薬のせいで力がでません。
ランスは徐々に注射器を下げ、ついにクラークの胸に薬を打ちます。
ラナは怖がって見ています。
クラークが倒れるとラナが駆けつけます。

ラナ:クラーク!

ランスがラナを立たせ壁に押し投げます。

ランス:いつから迷惑をかけ続けてるんだ?
    1年生から。
ラナ:彼を助けないと。
ランス:(クラークを見て)もう一つあるさ。

彼は近くのテーブルにある肋骨を切る電動のこぎりを手にしスイッチを入れます。

ランス:俺が二人とも始末してやる。

ランスがジワジワと近づくとラナは近くのテーブルに置いてあった瓶をランスに投げつけます。
ランスは電ノコを落としその上に倒れこみます。
鋸は彼の胸を切り裂き血を流し死んでしまいます。

ラナ:(クラークに駆け寄り)
   クラーク!
   クラーク!

クラークは目が覚めますがそこは納屋の中でした。
納屋の外はとても明るく木戸の隙間を通して
納屋の中まで白い光が差し込んでいます。
クラークは起き上がって納屋の戸へ歩き開きます。
外は眼もくらむような眩しさで彼は納屋の中へと後ずさりします。
するとその光の中に一人の人影が近づいてきます。
人影は段々と納屋の中に入ってきて姿を明らかにします。
それはジョナサンでした。

クラーク:(嬉しそうに)父さん。
ジョナサン:(笑顔で)やあ、クラーク。

クラークとジョナサンは抱き合います。

クラーク:信じられないよ。
ジョナサン:お前はここに来てはいけない、クラーク。戻るんだ。

二人は離れます。

クラーク:父さん。
     そんな事言わないで。
     僕がした事は身近の者達を傷つけたことだ。
ジョナサン:そうじゃない、クラーク。
クラーク:僕のために父さんは死だんだ。
     ジョー・エルが僕を生き返らせ、力を取り戻した時…
     …僕には価格があるって言って…
     愛する者の命を奪った。
     ごめん、父さん。
     本当にごめんなさい。
ジョナサン:クラーク…
      私を信じなさい、お前は謝る必要など何もない。
      私はとても素晴らしい人生を送った。
      よき夫でありよき父親をしてきた。
      まるで夢のようだった。
      それほどいい人生だった。
      お前を守って死んだ事だんだ。
クラーク:(不思議そうに)守るって、何から?
ジョナサン:ライオネル・ルーサーだ、クラーク。
      奴はお前の秘密を知っている。全てをな。
      お前はここにいてはいけない。
      母さんを守ってやってくれ。
      世界中を守るんだ。
クラーク:いやだ、父さん。
ジョナサン:クラーク。
クラーク:父さんがいないと。 僕には父さんが必要なんだ。
     父さんなしではできないよ。
ジョナサン:お前ならできる。
      これはお前の運命だ、クラーク。
      お前は多くの人たちの人生に関わるんだ。
      ただ人としてではなく…
      象徴として。
      お前は平和の象徴だ。
      正義の象徴なんだ。
      もう行きなさい。

どこからかクラークを呼ぶ声が聞こえます。

?:クラーク!

ジョナサンはクラークの胸に手を置き後ろへと突き飛ばします。
クラークは後ろへと飛びます。
フラッシュバックのように辺りの風景は歪みジョナサンとクラークの距離は離れます。

クラーク:まだいやだ!
ジョナサン:私はいつもお前と一緒だ、クラーク。
      いつまでも。

クラークが目を開けるとそこは元の教室でした。

ラナ:クラーク、しっかり。
   クラーク!

クラークは正気を取り戻し身を起こします。
ラナも安心したような顔になります。

ケント家。
夜。
クラークが家に帰ってきます。
ドアを開けると彼はマーサを探し家の中へと入ります。

クラーク:母さん?
     母さん?
階段の下まで来ると二階からマーサの声がしました。

マーサ:クラーク。
    (降りてきながら)
    ちょうど探してたのよ。

マーサの来ている服はエンジ色のドレスで今夜のパーティーに行く準備をしていたようです。
クラークは驚いたような、嬉しそうな顔をします。
彼女は手を広げて見せます。

マーサ:どう?
クラーク:驚いたよ。
マーサ:(下まで降りて)
    スープを知事の前でひざにこぼさなければね。
クラーク:母さんなら大丈夫さ。

マーサはクラークの浮かない顔を見て気になります。

マーサ:どうかしたの?
クラーク:母さん、話したい事があるんだ。

ちょうどその時玄関のドアがノックされました。

マーサ:来ちゃったわ。ごめんなさい。

彼女がドアを開けるとそこにはライオネルがいました。
ライオネルは黒のスーツにチョウネクタイをしていました。
クラークは彼を見て強い顔をします。

マーサ:随分地味な格好ね。
ライオネル:君の隣にいれば私なんて大した事はない。
      (マーサのドレスを見て)
      いつもその色の服を着てた方がいい、マーサ。
      (家の中に入り、クラークへ)
      そう思うだろ、クラーク?

クラークはなんと言っていいか分からないような顔をします。
マーサはその顔に気づきます。

マーサ:明日、話をしましょ。
ライオネル:迎えの車が待ってるよ、上院議員。
      (クラークに)
マーサ:(玄関を出ながら)おやすみなさい、クラーク。
ライオネル:おやすみ…クラーク。

ライオネルも玄関を出て行きます。

デイリープラネット。
夜。
クロエとクラークは話しながらオフィスの中を歩いています。

クロエ:それで、見たところ実際に死んだ事で
    あなたの体がクリプトナイトを中和したみたいね。
    分かってよかったじゃない。
クラーク:ああ、でも二度とごめんだ。
クロエ:賢明ね。
    (机に着いて)探してた教授は見つかったの?
    ミルトン・ファインは生き返ったの?
クラーク:ファインは確かにホンジュラスで黒い船と共にいた。
     どうしてかは分からないけど。
クロエ:情報源に連絡して、他に何か知ってるかどうか確かめてみる。
    (クラークは不安そうな顔をします)
    心配しないで。 最初の時は勝ったんだから。
    再試合でもあなたに賭けるわ。
クラーク:クロエ、ファインだけが心配の種じゃない。
     (声を落とし)僕が薬を打たれて死んだ時、父さんに会ったんだ。
クロエ:そんな、クラーク。
クラーク:本当だ、父さんは僕の秘密を知っている者が他にもいるって言ってた…
     ライオネル・ルーサーだ。
クロエ:そんなはずはないわ。あなたが見たのは幻覚よ。
    あなたの願望と恐怖が生んだのよ。
クラーク:クロエ、父さんだと感じたんだ。 本物の。
     僕の心がそう言ってる。
クロエ:実は、ファインの情報源はライオネルなの。
クラーク:(驚いて)何だって?どうして話さなかったんだ?
クロエ:クラーク、彼は約束させたの、秘密を守るって。
    レポータとして情報源を明かさないって。
    私をうまく利用して。
クラーク:僕ら全員かも。

レックスの屋敷。
夜。
レックスが書斎でピアノを弾いています。
その曲は彼が近死体験をした時母親が弾いていた曲です。
ラナが入ってきて声をかけると彼は弾くのを止めます。

ラナ:いい曲ね。
レックス:俺のお気に入りでね。

彼は立ち上がって彼女に近づきます。

ラナ:レックス…
レックス:まだ謝る事があるのか?
ラナ:あなたを死なせてしまうような目にあわせてしまって。
レックス:あれは君じゃなかった。
     分かってる、俺を信じろ。
     君が無事でよかった。
ラナ:私はアリーのようにはならなかった。
レックス:そうだな。
     あれは非常に啓発的な経験だった。
ラナ:あなたは何を見たの?
レックス:母親だ。
ラナ:何て言ってた?
レックス:母さんは…
     …俺の事を誇りに思っていると。
ラナ:お母様ならそうよね。

ラナとクロエの寮。
日中。
部屋でラナは両親と幼い時に写した写真を見ています。
彼女の顔はもう普通の顔色に戻っていました。
ノックがされ彼女が振り向くと開いたドアのところにクラークが立っていました。

ラナ:(立ちあがり)
   クラーク。
クラーク:(中に入り)
     大丈夫かなと思って?
ラナ:まあ、正直言って、もうすっきりしたわ。
   ごめんなさい。誰も傷つけたくはなかったの。
クラーク:自分以外はかい?
ラナ:ううん…
   私自身も。
クラーク:ならどうしてあんな事を?
ラナ:私達の事でじゃないわ、クラーク。
   それは…
   色んな事が積み重なって。
   ずっと孤独を感じてた。
   周りに皆がいても…
   …あなたと一緒だった時も。
   だからもう一度、両親を感じたくて。
   ぬくもりをね。
クラーク:どうだった?
ラナ:まあね。
   でももうしないわ。
   あんな体験は二度としたくない。
   何を捜しているかにかかわらずね。
クラーク:(長い間の後)そうかい。

クラークは部屋を出ようと踵を返しますが途中で振り返ります。

クラーク:ラナ…
     …僕は君に幸せになってもらいたいんだ。
ラナ:分かったわ。

クラークは部屋を出て行きます。
ラナはその後ろ姿を見送ります。
 

おしまい