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SMALLVILLE(スモール・ビル)
邦題:ヤング・スーパーマン
編集後記:Oracleとは神のお告げとか巫女さんや神主さんの事を言いますが
今回は預言者(予言者ではなく)にしました。
シーズン5.22Vessel(器)
レックスの屋敷。
書斎。
朝。
レックスとラナがソファの上で抱き合って眠っています。
窓から差し込む朝日が陰ったかと思うと一陣の風が吹き暖炉の火が消えてしまいます。
レックスは目を覚まし顔をしかめながら起き上がります。
ラナも目を覚ましレックスを見ます。
ラナ:どうしたの?
レックスは米神を両手で押さえ頭痛に悩まされます。
突然彼は書斎から出て行きます。
ラナ:(後を追いながら)
レックス、どうしたの?
レックス、どこに行くの?
レックスはポルシェで未舗装の道を走っています。
彼はまだ頭痛に顔をしかめています。
ラナは自分の車で追いかけています。
彼女はレックスに携帯をかけます。
ラナ:お願い、レックス、電話に出て
レックスは携帯にも出ずに蛇行運転をしながら走り続けます。
彼は車を停め出てくると藪の中を走りだします。
ラナも車から降り追いかけます。
レックスは開けた場所に来ると頭を押さえます。
彼は目を回しています。
その様子を見たラナはレックスに近づこうとします。
ラナ:レックス !
レックス !
レックス:そこいろ!
ラナ:(立ち止まり)
何が起きてるの?
レックス:分からない
突然レックスの周りで爆発が続けて起こります。
レックスは舞い上がる土砂の真ん中でうろたえます。
爆発が収まると奇妙な風が吹いてきます。
ラナは空を見上げます。
レックスのいる場所が陰になり彼も頭上を見上げます。
しかしそこには何もありません。
ただ陰だけがレックスを取り囲みます。
レックスがラナに振り向くとラナの背後にファインが立っていました。
ラナは気配に気づき振り向きます。
レックス:(ファインに)
彼女は関係ない!
ラナ:(ファインに)
何が起きてるの?
ファイン:準備をしている。
ラナがレックスの方に振り向くとレックスの頭上から青いビームがレックスに向けて放たれます。
ビームが放たれると半透明の宇宙船の姿が現れます。
ラナ:ダメ!
ビームが消えるとレックスも宇宙船も消えてしまいます。
先ほど爆発のあった土砂が光り輝いています。
ラナはファインに確認しようと振り返りますがもういませんでした。
彼女はレックスの立っていたあたりへと走り空を見上げます。
光は消え、土砂が描いた図形が現れます。
その図形はクリプトンの文字で「ゾッド」を現しています。
ケント家。
日中。
家の中でロイスが携帯で航空会社と話をしています。
マーサはキッチンでお茶の準備をしています。
ロイス:言いたくはないんですけど航空券を買ってるんですよ
コンピュータがどうのこうの言う前に書類に書かれてないんですか?
もっと上の人を出してもらえません?
あなたじゃ話にならないわ上司をだしなさいよ
勝手口がノックされるとマーサはドアを開けます。
ライオネルが立っていました。
マーサ:(驚いて)
ライオネル
ライオネル:もうウィッシュトンに出かけたかと思っていたよ
マーサ:中に入って
ライオネル:ああ...あー…
マーサ:いえ
残念だけど航空会社のせいで
最先端のコンピュータシステムがフライトをキャンセルしたの
ライオネル:それは簡単な事だルーサーコープのジェットを使えば…
マーサ:いえ、ダメよ
あなたの行為に甘えてばかりはいられないわ
ライオネル:これは個人的な事じゃない、マーサ、ビジネスだ
緊急事態ならこれしか方法はない
その上、重要な会議に行かなくてはならないんだろ
マーサ:全国の教育サミットよ
三千人もの人達が待っているわ
私の経験不足のせいよ
マーサはお茶をカップに注ぎますが動揺しているせいかカップから外してこぼしてしまいます。
ライオネル:経験とは過大評価だな、特にウィッシュトンでは
(布巾でテーブルを拭きながら)
君は…完璧でなければならない、マーサ
それが…特別な…君の仕事だ
デイリープラネット。
日中。
オフィスにラナがやってきてクロエのところにきます。
クロエ:あら !
幽霊と一緒に住んでいると思い始めてた
初めてっていうわけじゃないけど
クロエがラナを見ると彼女の顔は青ざめていました。
クロエ:ラナ、大丈夫?
ラナ:私、怖いの、クロエ
彼があんなに深く係わっていたなんて
クロエ:誰?
ラナ:レックスよ
彼は連れて行かれてしまった
クロエ:(座らせ)何が起きたのか教えて
ラナ:私達、フィールドにいたの
そしたら…強烈な光があって
次の瞬間にはレックスがいなくなってしまった
クロエ:どこに行ったの?
ラナ:黒い宇宙船よ、流星群の時に見た
戻ってきたのよ
クロエ:ファインが関係してると?
ラナ:ファインがそこにいたわ
レックスに準備をしてるって
信じられないわ
クロエ:ラナ、自分を責めちゃダメ
ラナ:私のせいよ、彼を係わらせたのは
クロエ…
もし彼が死んだら?
ラナは不安そうな顔でクロエを見ます。
クロエも不安そうな顔をします。
ケント家、納屋。
クラークが馬の世話をしながらクロエと話をしています。
クラーク:(馬の尻を叩いて)さあ、行け
「いなくなったって」ってどういう意味?
クロエ:地表から吸い上げられて空の中に吸い込まれたのよ
誘拐した者は地面にに印を残したわ
ラナの説明だと、ゾッドを現す記号みたい
クラーク:(真剣な目になり)
ライオネルの書いたゾッドが来るって警告は
実際に起きはじめてる
クロエ:何が起きているの?
分かんないよ
だってファントムプリズンの異次元にゾッドは捕まってるんでしょ?
クラーク:それが心配なんだ
ファインは僕が快くゾッドを解放しない事を知ってる
明らかに戦略を変えてきた
クロエ:レックスがその計画の変更?
クラーク:それにラナが深く係わってきてる
クロエ:何を考えているか分かるけど
今まではトラブルに巻き込まれればあなたに助けを求めてきた
でも今は変わってしまった、分かってるでしょ?
それはあなたが選択したの
クラーク:クロエ、最近何が正しい選択なのか分からなくなってきた
ジョー・エルに腹を立てていたから、聞いてなかった
警告を無視してたんだ
クロエ:でもあなたがジョー・エルに背を向けるのはいつもじゃない
何か悪いことが起きるたび
クラーク:もし僕を守ろうとしているとしたら?
僕ら全員を守ろうとしていたなら?
洞窟、秘密の部屋。
クラークは八角形のキーを台座のスリットに差し込みます。
光と共にクラークは孤独の要塞に転送されます。
ジョー・エル:よく来た、息子よ
クラーク:ここに来る以外に他に方法はなかった
ジョー・エル:お前がジョナサン・ケントの事を怒っているのは分かっている
クラーク:僕の父親だった
ジョー・エル:私がお前の父親だ
痛みは生きている事の証だ、カル・エル
だがお前はそれを無視する事はできない
クラーク:ファインが戻ってきた
ゾッドを解放するために
僕はどうしたらいいんだ?
ジョー・エル:ファインは宇宙船の一部だ何度でも蘇る事ができる
クラーク:もしファインが船の一部なら誰がそれをコントロールしているんだ?
ジョー・エル:ただの宇宙船ではない
対話型の人工頭脳を持っている…
宇宙船は誰にも止める事はできない主人であるゾッドが解放されるまでは
クラーク:止める方法があるはずだ
ジョー・エル:1つだけある
ゾッドがファントムゾーンに囚われたのは
我々の星を破壊に導いた罪によるものだ
クラーク:ゾッドがあなたを殺したのか?
ジョー・エル:お前の母親もだ
そして我々種族全員を
地球でも同じ事をしようとしている
クラーク:僕がそれを止める
ジョー・エル:ゾッドの肉体は既になくなっている
ファントムゾーンから逃げ出すことができないように
もし肉体を見つける事が出来ればゾッドは解放される、容れ物としての
制御クリスタルの装置が光りだします。
そしてその中からクリスタルの柄でできた一本の剣が空中に浮かびます。
ジョー・エル:お前は入れ物となる人間を見つけだして破壊する必要がある
それが誰であっても
剣の刃の部分にはクリプトンの文字が刻まれています。
そして文字は光り輝きます。
デイリープラネット。
日中。
クロエがクラークを連れてコピー室に入ります。
クロエ:そんな事を息子に言う親の事を聞いた事があるわ
でもあなたに人殺しをしろって言ってるの?
それは横暴すぎる
クラーク:クロエ、僕は誰も殺さない
クロエ:言いたくはないけど
今までジョー・エルの言う事を聞かないと大変な事になってるわ
クラーク:別の方法があるはずだ
クロエ:オーケー、じゃあ、容れ物って?
つまりゾッドはどうして完全体になる必要があるの?
クラーク:ジョー・エルが言った事だと
ゾッドの精神が人間に乗り移る必要があるんだ
そのゾッドは広域被害をもたらしたのと同じなの?
そして世界征服?
クラーク:クロエ
もしレックスが容れ物だとしたら?
クロエ:宇宙船が彼を連れて行った理由がそうだったとしたら
ラナはファインが準備をしているって言ってたわ
クラーク達が話している部屋の近くにラナがやってきます。
そして二人の会話を立ち聞きします。
クラーク:もしそれが正しければ…
レックスを殺さなくてはならない
クロエは「そんな」という顔になります。
立ち聞きしていたラナの顔もひきつります。
ケント家、納屋。
日中。
クラークが机の引き出しを開け隠しておいた剣を取り出し見ています。
そこへライオネルが階段を上がってきてクラークの手にしている剣を見ます。
ライオネル:クラーク、ある種の文化で父親が息子にナイフを贈る
それは…
成人の儀式だ
クラーク:これがジョー・エルからのだって事か?
ライオネル:記号のついたナイフ…それはクリプトンのだね?
ジョー・エルはそのナイフで何をすることを望んでるだね?
クラークは剣を見つめたまま答えません。
ライオネル:クラーク
君を探しに来たんだ
(ポケットから紙を取り出し)
今朝、目を覚ましましたらこれを見つけた
(クラークに渡し)
寝ている間に書いたに違いない
ジョー・エルからの別の警告か?
クラークは文字を見つめています。
ライオネル:なんと書いてあるんだね?
クラーク:(間があり)
「容れ物を犠牲にしろ」
ライオネル:容れ物とは何だ?
(クラークは何も言わずライオネルから離れます)
私に手伝えることは?
クラーク、お願いだ
自分一人で背負いこむ事はない
クラーク:誰かが手伝える事ではありません
ライオネル:私を見くびらないでほしい
クラーク:ジョー・エルは僕に殺せと言ってる…
入れ物になる人間を
ゾッドは人間の姿を持つ
そして地球を破壊する、クリプトンと同じように
でも僕には殺すなんてできない
その事は知っておいてください
ライオネル:クラーク…
真のヒーローになるための試練だ
大きな善行をするためには悪行も仕方がない
地球を救うためなら
一人の命で救われるのなら
クラーク:(言いづらそうに)
たとえその命があなたの息子でも?
ライオネルは愕然とします。
クラーク:レックスがゾッドの入れ物なんです
ライオネルは力が抜け座り込んでしまいます。
クラーク:彼は今朝誘拐されました…
マイヤーフィールドで
ライオネル:マイヤーフィールドと言ったのか?
マイヤーフィールド。
日中。
シンボルを描いている土から煙が上がっています。
その真ん中にレックスが倒れました。
レックスが目を覚まし立ち上がると後ろからライオネルがやってきます。
ライオネル:レックス?
レックス?
息子よ、大丈夫か?
レックス:(振り向かず)
何か変わったような気がする
ライオネル:クラークから誘拐されたと聞いた
何があったんだ?
(レックスは振り向きます)
怪我はないのか?
レックス:ファインの事を警告してたな
でも俺は聞こうとはしなかった
ライオネル:お前は一度もそうしたことはなかった
私が何を言っても欲しい物は常に自分のものにしようとした
今回は無理をし過ぎている
レックス:(怒って)
ここに講義しに来たのか、助けに来たのか?
ライオネル:どちらにしても遅すぎだな?
お前は悪魔と取引をしたんだ
奴は魂を取りに来るぞ
レックスが背を向けるとライオネルは近づいて肩に手をかけます。
ライオネル:レックス…
レックスはライオネルを払いのけます。
するとまるでクラークの力と同じように
ライオネルは停めてあった車のフロントガラスまで吹っ飛びます。
フロントガラスは粉々にヒビが入り、ライオネルは額から血を流します。
レックスは自分の力に驚き、ライオネルの元に超スピードで近づきます。
ライオネルはそれ見てさらに驚きます。
レックス:親父、大丈夫か?
ライオネル:奴らは…お前に何をした…レックス?
お前を何に変えたんだ?
レックスは何も言わず超スピードでその場を走り去ります。
レックスの屋敷、書斎。
ラナが研究所で写した写真を慌てて調べていると空気の摩擦音と共にレックスが現れます。
ラナ:レックス
(レックスに抱きつき)
二度と会えないと思ってた
レックス:大丈夫だ
ラナ:(離れて)何が起きたの?
レックス:俺は贈り物を与えられたのさ
レックスはラナから離れ机の上の小箱を開けます。
中には銃が入っていました。
彼は銃を握りしめラナに向きます。
ラナが何をするのかとビクビクしているとレックスは銃で自分の掌を打ちます。
ラナは短い悲鳴をあげます。
レックスが撃った手を握りしめラナを見ると彼女は涙を浮かべながら恐る恐る近づきます。
そしてレックスの手を広げさせるとつぶれた弾丸がありました。
それを落とすと掌には何の傷もありません。
ラナ:(しゃくりあげながら)
あなたの手、傷がないわ
レックス:俺の本当の姿を知る必要があるな
ラナはレックスの目を見て後ずさりします。
ラナ:奴らはあなたを仲間に変えたのね?
レックス:俺は奴らの力を得た
だがまだ俺は俺だ
ラナ…俺は一度も君に嘘はついたことがない
ラナは再び恐る恐る近づきます。
レックス:どうやってこの力を持つことができたのか
奴らから話を聞いた
ラナ:(思い出して)レックス…
クラークとクロエが話しているのを聞いたわ
あなたが戻って来たら…
クラークが…あなたを殺すって
レックスは頷いて小箱に銃をしまいます。
レックス:それは怖いな、ラナ
親父はそれに感化されたようだ
俺を殺そうとするのは
クラークは俺が変わってしまった事に耐えられないんだ
レックスは書斎から出て行こうとします。
レックス:どこかに隠れないとな
ラナ:それなら私も連れて行って
レックス:ダメだ
レックスは近づいてラナの顔を両手で挟みます。
レックス:なあ…
俺は君を愛している
ラナ:二度と会わないって事?
レックス:それは君が選ぶんだ
もし君が一緒に居たいと望むなら
ルーサーコーププラザの屋上に来てくれ
今晩そこで待っている
そう言うとレックスは超スピードでその場から去ります。
スモールビル・メディカルセンター。
日中。
ライオネルが治療を受けていた診察室にクラークがやってきます。
クラーク:レックスを見つけたんですか?
ライオネル:ああ、そうだ…
フィールドで
あの子は…違う…
変わってしまった
クラーク:(ライオネルの傷を見て)
何があったんです?
ライオネル:全てファインがした事だ
レックスの準備は初めから意図されていた
あいつはどういうわけか君と同じ力を持っている、クラーク
あいつが何をしようとしているのか想像もつかない
クラーク:どうしてそんな風に?
ライオネルは立ち上がってテーブルに置いてある腕時計などを身に付けます。
ライオネル:あいつは君とは違う育ちをしているんだ、クラーク
どんな犠牲を払ってでも生き残ることを教え込んだ
完全に無情であるために
クラーク:それが彼を救うカギかも
まだ戦う事ができるレックスの一部がある
ライオネル:ああ、君にはそう思えるだろうな
あいつの心の中には闇の部分が常にあった
クラーク:レックスを傷つけたくはない
ライオネル:ゾッドがあいつを悪の手先として見込んだのなら
なぜレックスを容れ物として選んだのか理解できる
ライオネルは部屋から出ようとして振り返ります。
ライオネル:ラナはどうなんだ?
君と同じだ
彼女は今あいつの人生に大きくかかわっている
何をすべきか気をつけるんだ、クラーク
誰を犠牲にするのか
そう言うとライオネルは部屋から出て行きます。
ルーサーコープのプライベート機。
マーサとロイスが乗り込みます。
ロイス:上空20,000フィートの贅沢ですね
マーサ:じゃあ、楽しまなきゃ
もし飛行機がキャンセルされなかったら
こんな贅沢はできなかったんだから
ロイス:こんな贅沢を求め始めるんじゃありません?
これで最後っていうわけじゃないと思いますよ
これからはずっとこうかもしれません
マーサ:これはただの友好的な表現よ
ロイス:そうですかね
(酒のボトルについているカードを手に取り)
ほら…別の表現ですよ
(カードを渡し)
このカードはあなたにですよ
ライオネルは非常に気前がいいんですね
マーサ:(動揺し)
私はライオネルとの関係に興味は持ってないわ…
何もね
ロイス:本当ですか?
マーサ:ええ
ロイス:それともクラークにどう思われるのか心配なんじゃ?
マーサはロイスをにらみます。
ロイス:すみません、言いすぎました。
レックスの屋敷。
夜。
クラークが書斎に入ってきます。
クラーク:レックス!
(辺りを見回し)
レックス!
そこへラナが入ってきます。
ラナ:彼はいないわよ。
クラーク:ラナ、レックスはトラブルに巻き込まれてる
ラナ:私を助けに来たって言うの?
クラーク:僕はレックスに何も起きて欲しくないんだ
ラナ:どんな風に?
友達を裏切ってまで?
あなたとクロエがレックスを殺そうとしているのを聞いたわ
あなたがどうやって彼が変わった姿で戻って来たのかを知ったのは分からない、
でも、私は驚かないわ。
クラーク:ラナ、レックスのところに行ってはダメだ
レックスは君が思っているレックスじゃない
ラナ:レックスは自分の秘密を話してくれた
だから私の考えは変わらない
クラーク:レックスに起こった事…怖くないのか?
ラナ:レックスを見捨てるつもりはないわ
決してね
クラーク:本当に?
聞いてくれ、ファインがただ力を与えたりはしない
見返りもなしに
まだ終わったわけじゃない、ラナ
レックスを助けられるんだ
どこにいるか教えてくれ
ラナ:あなたが彼を傷つけない保障はないわ
クラーク:僕の事を知ってるだろ
ラナ:いいえ、知らないわ
あなたはずっと違った事を言ってる。
本当の事を話さないんなら私も言わない。
もし本当に私の事を気にかけてるんなら…
レックスに何があったのか教えて
クラーク:ラナ、お願いだ
ラナ:あなたは私を信用してない
一度も私を信頼してくれたことがないわ
どうしてあなたを好きになったのか分からないわ
ラナが部屋を出て行くと後ろからファインの声が聞こえてきます。
ファイン:考えてみれば…
彼女は君の味方だったはずだ。
もし正直に彼女に話していたなら。
ゾッドなら彼女を大切にするだろう。
クラークは振り返るとファインを殴りつけます。
ファインは後ろの壁に激突し倒れます。
クラーク:ラナを巻き込むな
ファイン:そこが君の欠点だ、カル・エル
(立ちあがって)
お前が器になるはずだった
だがお前の父親の精神はあまりにも強すぎた
もし最初の時ゾッドを開放できていれば助けられたものを
もう一度チャンスをやろう。
クラーク:ゾッドのような怪物なんか解放させない。
ファイン:君の弱いところの一つは…
人間的だ。
人間とはもろいものだ。
テクノロジーの産物がなければ生きる事はできない。
いかに知恵があっても
それらを取り除けば人間は本屋いの動物に戻る。
そして君は全世界の人々を救う事はできない
クラーク:僕は絶対に屈服しない
ファイン:これから始まるんだ。
ファインがノートPCに手を置くと画面は乱れ部屋中の照明器具に過電流が流れ破裂します。
部屋は暗闇になります。
ファイン:ショーを楽しんでくれ。
メトロポリス。
夜。
電気が次々と消え町中が暗闇になります。
デイリープラネット。
夜。
皆が慌てふためいている中、クラークがクロエの元にやってきます。
クラーク:クロエ !
クロエ?何が起きたんだ?
町中が停電じゃないか
クロエはPCのモニタをクラークに見せます。
モニタにはクリプトンの文字が無数に表示されています。
クロエ:私に教えてよ
町中に広がってるわ。
どこから始まったの?
クラーク:スモールビルだ
ファインがレックスのコンピュータに何かをしたんだ
多分君なら分かるかと思って
クロエ:多分コンピューターウイルスの一種ね
追跡できないほど早く広まっている
どんなファイヤ・ウォールさえ破って全ての通信をダウンさせてる
今やメトロポリスの大部分に感染しているわ
クラーク:僕のせいだ、ゾッドの開放する事を拒否したから
ファインは僕の手をこじ開けようとしている
クロエ:確かにそのようね
エレベータ、ガス管、地下鉄…全て閉鎖している
まるでY2Kみたいに
クロエはポータブルラジオのスイッチを入れます。
ラジオ:突然都市の機能の完全な崩壊に破壊とパニックを引き起こし
何十人もの市民が怪我をし、少なくても5人が死亡しています
クロエ:クラーク…もしこれが続くとなると…
世界中の全ての都市が汚染されるわ
突然車のブレーキ音が聞こえるとデイリープラネットの窓を突き破り車が突っ込んできました。
クラークはクロエをかばいながら車を片手で受け止めます。
そしてクラークは出て行こうとします。
クロエ:(引き留め)
クラーク、一人じゃ無理よ。
あなただけで世界中を救うなんてできない
クラーク:ゾッドを解放するわけにはいかない
クロエ:もしジョー・エルが正しかったら?
ゾッドを止めてファインを止める唯一の方法が
容れ物となる者を殺せばいいとしたら?
クラーク:もし失敗したら?
あなたをここに置いて行くわけにはいかない
クロエ:あなたがやらないと
クラークが行こうとするとクロエは再び引き留めます。
クロエ:クラーク…二度と会えないかもしれないから
そう言うとクラークに駆け寄りキスをします。
社内の公衆電話が鳴りだします。
クラークは公衆電話に出ます。
レックス:やあ、クラーク
俺に会いたいと聞いたが
ジェット機の中。
マーサは色々考え事をしながらノートを取っています。
ロイスは座席で転寝をしていましたが、ハッと目を覚まします。
マーサがニコッとロイスに微笑みます。
ロイス:(口元を指で拭き)
顔によだれがついてるって言いたいんですよね?
マーサは仕方がないという顔で笑います。
ロイス:今何時ですか?
マーサ:9:10ぐらいよ
ロイス:まだ着いてないんですか?
今頃はペンシルバニアを歩いている時分ですよ
マーサ:(不審顔になり)
そうね、時間がかかり過ぎてるわね
向かい風で遅くなってるのかも
ロイス:どんなに強風だって一時間前には到着してるはずです
マーサ:ロイス、落ち着いて
遅れる理由なんて沢山あるでしょ
きっと大丈夫よ
ロイスは窓のカーテンを開け地上を見ます。
ロイス:地理は単位を落としたけど
最後に地図を見た時には
東海岸は…こんな風景じゃなかった
マーサは立ち上がってロイスのところに行き窓の外を見ます。
外の景色は山脈が連なり雪に覆われていました。
操縦席には一人しか座っていません。
機長はファインでした。
ケント家、納屋。
夜。
クラークがやってきて辺りを見回します。
レックスが入口にやってきます。
レックス:で、どういう決定をしたんだ、クラーク?
俺を殺すつもりか?
クラーク:僕を非難できる立場じゃないだろ、レックス
自分のせいでこうなったんだ
レックス:おいおい、クラーク!
(近づきながら)
そういうところが好きなんだ!
あの橋の事故以来ずっとお前の事を命の恩人だと思って来た…
既に歩き始めていた闇の道から引きずり出してくれる
それがまだ俺にあると思っているようだな
お前はその事を失ってしまったという事実に顔を背けたいと思っている
クラーク:信じないよ、そんなに意志が弱いとは思ってない
レックス:難しいだろうな鉄の意志と戦うのは
親友を殺そうというんだから
どうやって知ったんだ?
俺が戻って来た事を?
クラーク:自分がどれだけ危険にさらされてるのが分かってないのか?
レックス:お前は持っていたと思っていたがな…
強い心を
お前は聖者のような奴だった
にも拘わらず嘘をついてた
いつも…
俺や、ラナ、周りの人間達に
どういった気持だったんだ?
クラーク:もしこの友情が最初から不運だと思ったなら
どうして激しく抵抗し続けてきたんだ?
レックス:それはお前の持っている全てを欲しかったからさ…
家族、平穏な生活
誠実なガールフレンド
まあ、少なくともお前が最も愛した者はいただいたがな
クラーク:君じゃない
レックス:俺は俺だ
レックスはクラークに掴みかかり争いを始めます。
クラークはレックスを二階へと投げ飛ばします。
クラークが近づこうとすると背後からレックスの声が聞こえてきます。
レックス:お前が普通とは違う事は分かっていた
クラークが振り返ると今度はレックスがクラークを二階へと投げ飛ばします。
レックスは超スピードで二階に駆け上がりクラークをねじ伏せようとします。
クラークは逆にレックスをねじ伏せクリプトンの剣を取り出しレックスの喉に突き付けます。
しかしクラークはレックスを殺すのをためらいます。
すると一階からファインの声が聞こえてきます。
ファイン:やるんだ、クラーク
お前が本当にあの父親の息子かどうか見てやる
クラークはしばらく躊躇った後、剣をファインに向かって投げつけます。
剣はファインの胸に刺さり、柄のクリスタルが赤く光りだします。
孤独の要塞のクリスタルが反応し同じように赤く輝きます。
ファインはその場にひざまづきます。
クラークもレックスも立ち上がりファインを見ています。
クラーク:僕は何をしたんだ?
孤独の要塞のクリスタルから赤いビーム(ゾッドの記号の形)が空に発射されます。
ファイン:お前はゾッドを解放する入り口を開けたんだ
赤いビームはケント家の納屋、ファインの背中に当たります。
そして胸に刺さったクリスタルから赤いビームがクラークめがけて飛んできます。
クラークは脇に飛びのきますが、後にいたレックスに当たります。
ビームが全てレックスに吸収されるとファインの姿は消えてしまいます。
クラークは立ちつくしているレックスに近づきます。
クラーク:レックス?
レックス?
レックスは振り向いてクラークの前に歩きます。
レックス:父親と同じ目をしているな
やあ、カル・エル
クラーク:(間があり)レックスはどこだ?
レックス:レックスは死んだ
クラーク:なぜここにいる?
レックス:刑務所に入れられた者は獣と同じでな…
復讐のためだ
(クラークから離れ)
お前の父親は私を永遠の地獄に追放した
不幸な一族を助けようとしてな
そして結局、無駄な努力の結果の唯一の生存者が…
奴の息子だった
クラーク:それは僕らの問題であって
地球の人達は関係ないだろ
レックス:そうだ
だがお前に他の者達の痛みを感じ苦しむ姿を見せたい
クラーク:この地球は僕が破壊させない
お前がクリプトンを破壊したようには
レックス:お前には選択肢はない
私に従わないのなら
クラーク:お前なんかに従うものか
レックス:なら、お前には甘んじて受け入れてもらおう…
永久にな
レックスは銀のブレスレットを取り出し窓の外に向かって飛ばします。
クラークがそれを見ていると、レックスがわずかに頷きます。
すると突然クラークは銀のブレスレットに引き寄せられるように飛んで行きます。
ジェット機。
ロイスがコックピットのドアを叩いています。
ロイス:ドアを開けて!
ロイスはドアを蹴ったり体当たりしますが開きません。
コックピットの操縦席には誰もいません。
マーサは携帯を使おうとしますが電波が届かないようです。
マーサ:(苦しそうに)ロイス、気分が悪いわ
ロイス:私もです
マーサ:息ができないわ
ロイス:ちょっと待ってください、ケントさん
ロイスは再びドアに体当たりします。
ロイス:気圧と、酸素が必要なの
ドアを開けて!
ロイスが客室の方を見るとマーサが倒れていました。
ロイス:ケントさん…
(這うように近づき)
ケントさん、目を開けて!
起きていてください
マーサを揺すりますが目を覚ましません。
ロイスは天井にある酸素マスクの扉を開けようとテーブルにあったナイフを掴み
気力を振り絞って立ち上がりカバーを外します。
酸素マスクに手を伸ばしますが、そこでロイスも気を失います。
ニューヨーク、ロサンジェルス、各地で暴動が起きていました。
メトロポリスも同様で暴徒の中をクロエが走っています。
機動隊も出動して鎮圧しようとしていますが暴徒の方が多勢のため無理でした。
暴徒の中を逃げまどうクロエはライオネルのリムジンを見つけます。
クロエ:(怒鳴って)助けて!お願い!
中に乗せて!
ライオネルはドアを開けクロエを載せます。
ライオネル:乗りなさい
(運転手に)ロン、ここから脱出だ
しかしリムジンは暴徒に襲われ運転手のロンが引きずり出されてしまいます。
そして暴徒はリムジンを揺さぶりだします。
ライオネル:ロン、ロン !
クロエ:ちょと、ヤダッ !
窓を壊されライオネルも引きずり出されます。
クロエ:ルーサーさん!
同様にクロエの方の窓も壊され引きずり出されてしまいます。
クロエ:イヤーッ!
その頃ラナも暴徒の中を走っていました。
途中暴徒の一人に襲われますが、ラナは暴徒を蹴り倒します。
そしてルーサーコーププラザの屋上へと上がります。
屋上ではレックスが外壁の上に立ち町を無表情で見ています。
ラナが屋上にやってきます。
レックスは振り返ります。
ラナ:レックス
(近づき)
ねえ
考えたんだけど、これはあなたに与えられて試練の一つだって
あなたは捨てられ多くの年月に裏切りられた
その次は私じゃないって分かってる?
私じゃないわ
(レックスは壁から降ります)
ここにいるんだから
大変な事が起きているのにここにいるんだから
この先何が待っているのか分からない
でも…ここに来たのは見つけたいから
そうでしょ?
レックスは黙ったままラナの肩を引き寄せキスをします。
地球を離れ宇宙空間には以前二人のクリプトン人を閉じ込めた鏡が浮いていました。
その中にはクラークが閉じ込められていました。
シーズン6に続く