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スターゲートアトランティス シーズン4

4X16

アトランティス。
ジョン、カーター、ロドニー、ジェニファーがゲイトルームに入ります。
ジョン、ロドニー、ジェニファーは装備していてオフワールドからちょうど戻ったところです。
話しながらサムのオフィスへと、コントロールルームへの階段に向かいます。

サムは帰ってきた三人に訊ねます。
「またその星に?」
「M5V-801だ」ジョンが応えます。
「微弱地震が頻繁なんだ。」ロドニーは状況を説明すると、ジェニファーは医師の立場で説明します。
「呼吸疾患の患者が多くて。」
「あそこは鉱山惑星だ。それほど驚くべきものじゃない。」ロドニーは反発します。
「どれだけ長い間、鉱山で働いてると思ってるの、ロドニー?」
「要点を言ってくれないか。」ジョンは二人の意見が異なっている事にうんざりします。
「1日あたり4回以上の地震が発生してる。
 地震のチームは村のある場所は不安定で危険だと結論を下した…」
「私の環境と大気テストはずっと危険を示してたわ。」
相変わらず二人の意見はそれぞれの見地から説明します。
「僕の分析で十分だろ、どうも。」
「どうみても十分じゃないわ。
 とにかく彼らは昔から地震には耐えてきてた。」
「ああ、彼らはもっと昔から息をしてきた、だから僕の方の問題のほうが重要だ。」
サムは二人の言い合いに口を挟みます。
「これは競争じゃないのよ。
 明らかに村は安全ではなさそうね。
 大陸の別の地域に移り住むように説得する必要があるわ。」
「それはもう試した。でも無駄だった。」これはジョンが説明を始めました。
「どうして?」
「20年前に、ジェナイは星を占領して、坑夫として彼らを使ったんだ。」
「採掘のために?」
「手がかりはなし。
 でもそれが何であったとしても、彼らは埋蔵物を掘り尽くしていなくなった。」
ロドニーが口を挟みます。
「それで?」サムはジョンに続きを促します。
「それで、彼らは俺達をジェナイだと思って、自分達の取り分を欲しがってる。」
「そう。」サムが頷くとジェニファーが口を挟みます。
「移住しても構わないと言ってますが、1マイル半にも及ぶ要求リストをだしてきました。」
それを引き受けジョンが続けます。
「異星人の村との交渉をするために、俺は空軍に入隊したわけじゃないからな。」
ジェニファーはサムへ依頼をします。
「もし時間があれば、あなたが行って欲しいと思ってるんですが…」
ロドニーは彼女の言葉を遮り言います。
「そうすれば行ったり来たりする時間の節約になる。」
「OK。午後なら開いてるわ。」
「感謝します、大佐。」
ジョンがそう言うと、ロドニー、ジェニファーは立ち去ろうと向きを変えます。
サムは二人を呼び止めます。
「ジェニファー、ロドニー。」
彼ら2人は彼女に向きます。
一時間後にゲイトで待ってるわ。」
ロドニーは嫌そうにします。
「えー、君一人で行くと思ってた、僕は…」
「一時間後。」
ロドニーはため息をついて立ち去ります。

一時間後。
サム、ロドニー、ジェニファーはスターゲイトを潜りM5V-801に行きます。
三人は広大な開けた草深い地域を歩いています。
ジェニファーは疲れ深呼吸をしています。
「もっと有酸素運動をしないと!
 これほど外を歩いた事なんてないわ。
 ジャンパーではこれなかったの?」
「おい、愚痴を言うなよ。そんなに悪くはないぞ。
 僕はほとんど毎日このぐらいは歩いてる。」
ロドニーがそう言うとサムが驚きます。
「あなたが?」
「ああ。僕はとても行動派なんだ。」
「あなたが?」
サムが不振そうに言うとジェニファーが言います。
「前の健康診断の結果とは矛盾してるわ。」
「それは僕の個人情報だろ、そんな簡単にベラベラ話すもんじゃないだろ、先生。」
サムとジェニファーはにやりと笑います。
「大佐が驚くような事でもないわ。」
「そういう事じゃないだろ?
 僕はロノンとは違う。
 雑誌の表紙を飾るような体型じゃないけど…」
サムがくすくす笑うとジェニファーも笑い出します。
「戦闘には自信があるんだ。
 必用があれば自分の身ぐらいは守れる。」
ちょうどその時、地面が崩れだしロドニーは足から地面に吸い込まれていきます。
「ロドニー!」
ジェニファーがロドニーの落ちた穴に近づこうとするとサムは彼女の腕をつかみます。
「動かないで。」
二人はロドニーが姿を消した穴を見つめます。
直ぐに彼が呻く声が聞こえてきます。
「腹ばいになって、体重を分散するのよ。」
サムは不安定な地面にこれ以上重さを掛けないように言います。
二人は腹ばいになり慎重に穴の縁に行って下を覗くと、ロドニーが再び呻きます。
「ロドニー?マッケイ、大丈夫なの?」
サムはロドニーに呼びかけます。
ロドニーは洞窟のような場所に落ちて仰向けに倒れています。
深さはおよそ30フィートです。
「痛い。」
「ああ、よかった。」
サムはロドニーが生きている事に安堵しますがジェニファーは怪我を心配します。
「動かないで、いいわね?」
「大丈夫だ。」
彼が倒れている場所は自然な洞窟ではありません。
床は平坦で、上から落ちた土砂の上にロドニーは倒れていました。
そして、大きな木枠と共にいくつかの壊れている板が彼の近くにあります。
「ゲイトに戻って、誰か助けを呼んでくる。」
「そのまま静かに…」
ジェニファーが言いかけるとその瞬間、彼女達の地面も崩れます。
サムとジェニファーは大声で叫び、下に落ちていきます。

洞窟の中では、埃が全体に舞っています。
明かりがついていない電灯は長いケーブルで天井から吊り下がっています。
そして自然光が部屋の中を照らしています。
辺りには色々なサイズのいくつかの木箱があります。
運よく誰も人の上に重なって落ちてはいませんでした。
ロドニー達は床に横たわって意識を取り戻します。
「どこか痛みを感じたら動かないで。」ジェニファーが皆に言います。
「痛かったら絶対に動かないよ。」
ロドニーは仰向けのまま動きません。
用心深くジェニファーとサムは身を起こします。
「誰も出血はしてないようね。」
サムが皆を確認するとロドニーはいつものように反発する言い方をします。
「外見はね。」
「まあ、運がよかったとしか言いようがないわ。」
ジェニファーがそう言うと呻きながら彼らはゆっくり立ち上がります。
ジェニファーは地表の方を見上げます。
上には壊れた木の枠と埃が舞っています。
「破傷風の予防注射をした方がよさそうね。」
ジェニファーは辺りの不衛生さからそう判断します。
身を起こしロドニーは近くの壁に大きな金属製のシンボルを見ます。
彼はかんしゃくを起こしてため息をつきます。
「実際、ここは何なの?」
ジェニファーが訊ねるとロドニーは後ろのシンボルに親指をぐいと動かします。
「ジェナイの鉱山施設だと思うよ。」
「それにしても造りがお粗末過ぎない?」
サムは天井を仰ぎ言います。
「特に天井の造りが悪い。」
「ここが大きな施設の一部だとすると…」
ジェニファーの言葉の後にサムが続けます。
「ここから出て行く道があるはずよ。」
彼女は左の青色のドアに行きます。
「OK。」
ロドニーは右のドアに行きます。
そのドアは赤く塗装され、その中央に大きなエアロックタイプのホイールがついています。
彼がホイールを掴むとサムは振り返って彼に呼びかけます。
「手伝ってくれない。」
ロドニーは彼女に向きます。
「こっちの方がいいんじゃない?」
サムは首を横に振ります。
「赤は危険って意味じゃない?」
「ああ、そうか、そういう見方もあるな。」
サムとジェニファーがドアを開けようと引っ張っていると、ロドニーがやってきます。
彼はドアの横の壁のキーパッドを見ます。
「ねえ、これを見た?
 正しいコードを入れないと開かないよ。
 この文字はジェナイの数字だ。」
ジェニファーはロドニーに尋ねます。
「ええ、でもあなたなら暗号を解けるでしょ?」
サムとロドニーは同時に話し出します。
彼らの言葉は入り混じって聞き取りにくい状態ですが、
最後には二人そろって同じ言葉になります。
『…電子なら。』
サムは更に付け加えます。
「彼が言うように。」
ロドニーも付け加えます。
「彼女が言うように。」
サムが言葉を続けます。
「つまり、不可能じゃないって事?」
「いや、いや、これは…とても無理だ。」
「OK、それじゃ…」
サムは赤いドアを示します。
「もう片方のドアは?」
「お先にどうぞ。」
サムとロドニーはドアに行きます。
サムは肩を打ったようで左肩に右手を掛けて肩を動かします。
彼女とロドニーは一緒にホイールをつかみます。
サムは合図をします。
「OK、3で行くわよ。
 1、2、3。」
彼らはホイールを回そうとしますがびくともしません。
ロドニーはため息をつきます。
「あっちをやるか。」
サムは室内をぐるりと見回します。
「待って、待って。」
彼女は床に落ちていた長い金属の棒を拾ってドアに持ってきます。
彼女とロドニーは棒をホイールに差し込みます。
「OK、3よ。
 1、2、3、それ。」
棒を梃子にしてホイールを回すと、堅く閉まっていたホイールが緩みます。
ロドニーは棒を引き抜き、サムがホイールを掴み回そうとすると、
ジェニファーが止めます。
「待って、ちょっとちょっと。
 もし…そのドアが何かの理由で封印されたとしたら?」
ロドニーはからかうような顔で言います。
「何、怖い怪物でも出てくると思ってるのかい?」
「違うわ!
 でも、ここは鉱山施設よ、もし毒物をそこに封印してたとしたら?
 さっき言ってたように赤は危険を意味するわ。」
ロドニーは少しそわそわとして頷き彼女の意見に納得します。
サムは室内をぐるりと見回し、他の者に顔を向けます。
「私はチャンスに掛けるわ。」
ロドニーとジェニファーはそれしか方法がないと悟ります。
ロドニーとサムはドアを押して開けます。
彼女はドアの内側を見て驚きます。
「うわっ!」
ドアの枠組にしがみ付き彼女とロドニーはドアの内側を見据えます。
そこは深い谷のようになっていて足元はわずかに突き出た岩石が水平に伸びています。
日光がシャフトの上の方から差し込んでいます。
遠くには大きな金属製の箱があり大きさは今、彼らがいる部屋とほぼ同じくらいのサイズです。
向こうの部屋は土台の部分が金属の井桁で出来ていて、その上に部屋が乗っている形です。
彼らは今いるところからその先に進む方法が全くありません。
ロドニーはぞっとして光景を見つめます。
「ジェナイの使う赤は「騙された」だな。」
「OK。」
サムは再びドアを閉じ、皆を見ます。
「OK、さあ…私たちが地上を歩いてたのは30分ぐらいよね?
 定時連絡を入れるまであと30分あるわ。
 それまでとりあえず安全な場所でじっと座って待つしかないわね。」
サムが話している間、ロドニーは青いドアのキーパッドに戻ります。
「定時連絡がなければ、チームを送るはずだから。
 無線を動かしておいた方がいいわよね?」
「ああ、そうだな。」
サムは役立ちそうな物を見つけようと金属製のロッカーを開けます。
「OK、じゃあ座って待ってましょ。」
何も入ってないので彼女は再びロッカーを閉じます。
そして別のロッカーを開けます。
ジェニファーは箱の上に座ります。
「OK。」
サムが部屋の中を調査している間、ロドニーはキーパッドをこじ開けようとし始めます。
「誰かトランプでも持ってきてる?」
ジェニファーはみんなの気を紛らわそうとします。
サムは悲しげに笑います。
「いいえ。」
その時、部屋が震動し始めます。
ロドニーは怖そうに見据えます。
「地震だ!」
ジェニファーは箱から飛び上がり、土砂が天井から落ち始めると泣きべそをかきます。
部屋が不吉にきしみ始めると、サムはヒヤヒヤして壁に捕まり見回します。
数秒後、揺れは収まります。
「これはよくない感じだ。」
ロドニーが不安そうに言うと、サムが訊ねます。
「それって、どういう意味?
 さっき見た向こう側の部屋みたいにこの部屋も足場の上に乗ってるって事?」
「その可能性が高い。」
ジェニファーはそわそわしています。
「でもここは安定してるんでしょ?
 つまり、私たちは安全よね?」
「ええ、でも私たち三人とこの土砂が上乗せになってる、約3、400ポンド?」
サムがそう言うとロドニーは自分の体を見てます。
「あー、僕は500位だと思う。」
「そう。それでこのエリアの1日当たりの地震はどのぐらい?」
「少なくとも四回ぐらいは。」
サムは目をつぶって頭を下げます。
ジェニファーはため息をつきます。
「何?何が問題なの?」
サムは彼女に向きます。
「この部屋を支えている足場は、
 今、私たちの余分な重さが加わって急速に不安定になってる。」
「アトランティス側が僕達が行方不明になったのを知るまで待つわけにはいかない。」
「そうね。ここから出る方法を見つけないと。」
サムとロドニーは天井の穴を見上げます。
ジェニファーは辺りの木箱を見ます。
「ここに沢山、多くの木箱があるわ。」
「ああ、でも古くてもろくなってる!
 僕がここに落ちたとき、三つも壊れた!」
「ええ、でもピラミッド見たいに積み上げれば、登る事はできない?」
「多分うまくいかないよ…」
サムは質問します。
「じゃあ他に方法は?
 高さを得るには十分な数があるわ。
 何とかうまくいくかも。」
「僕達の体重を支えられると思う?」
「他に方法はないの。」
ロドニーはため息をつきます。

彼らは行動を起こします。
サムとロドニーは木箱を動かし始めてます。
ジェニファーは部屋の重さを軽減させるために、
金属製の壊れたシャベルで赤いドアから土砂を捨てています。
ロドニーは唸りながら力を出しサムに向きます。
「ちょっといいかな。
 本当にこれをするんだったら、これを積み重ねる数を計算すると20フィートは必用だ。
 たとえ積み上げたとしても不安定になる。」
「じゃあ、1人だけ登っていけばいいわ。」

土砂を取り除き終えたジェニファーはドアを閉じ、他の者に近づきます。
サムがジェニファーを見ると彼女は目を見開きます。
「いやよ。 私は高所恐怖症だから…」
「それじゃ、サムだ。」
「何、あなたが行こうとは思わないの?」
「高すぎるよ! 僕は彼女より高所がダメなんだ!」
サムはため息をつきます。
「始めましょ。」
「分かった。」
ロドニーは箱を彼女に渡し、彼らは積み上げ始めます。

その後、サムは三段目にいます。
ジェニファーは箱を一段目の箱の上に立っているロドニーに渡します。
彼は呻きながら箱をサムに渡し、彼女は積み上げます。
全ての木が不吉にきしみ始めます。
その音を聞いたジェニファーはサムに声を掛けます。
「あの…多分降りた方がいいと思うけど。
 何か変な音が聞こえ…」
音を無視してサムは慎重に膝をついて立ち上がって、最後の箱を設置します。
それにもたれて彼女は用心深く立ち始めます。
彼女が天井の体をまっすぐにして見上げると最初の段の箱の側面の一つが崩壊して、
全体が崩れ落ちます。
サムは床に投げ出されます。
「サム!」
ロドニーはサムに駆け寄ります。
ジェニファーがサムに急いで行くと、彼女は呻いて仰向けにひっくり返ろうとします。
「落ち着いて。大丈夫?」
「大丈夫なのか?」
ロドニーが声を掛けるとサムは身を起こし呻きます。
「あと少しだったのに。
「下になった箱はもたない。
 積み重ねると重さに耐えられないんだ。」
「サム:ええ、そのようね、どうも。
「それで…?」
ジェニファーが言いかけると、また短い地震があり部屋の金属はきしみ始めます。
「よくないわね。」サムは不安そうに言います。
ジェニファーは彼女に手を貸し立たせます。
「別の計画が必要ね、それも早く。」
サムは次の対策を考えようとします。

その後まもなく。
ジェニファーは部屋の隅で折りたたみ式のファイルを見つけました。
「ねえ、ここにファイルがあるわ。」
彼女は仕切りの1つからフォルダーを取り出します。
「ジェナイの文は読める?」
部屋の反対側でロドニーはロッカーの1つで何かおもしろいものを見つけました。
「おい、おい!」
「どうしたの?」サムが尋ねます。
「フックがあったぞ。 このフックを使えば何とかなるかも。」
彼は金属のフックを持ってきて箱の上に置きます。
それを見てジェニファーは喜びます。
「凄いわ! あと必要なのはロープだけね。」
ロドニーは上を見上げます。
「OK、ちょっと待って。天井まで20フィートぐらいか?」
「25かも?」サムが訂正します。
「よし、25だとして、僕らのジャケットを繋ぎ合わせても、5フィートか6フィートだ。
 シャツやズボンも結ばないと。
 そうすれば僕らの体重を支えて上に登れるはずだ。」
サムは別のロッカーに行きます。
「分かった!」
ジェニファーはロドニーがフックをいじっている間、ジャケットを脱ぎ箱の上にジャケットを置きます。
ロドニーは天井をじっと見つめたふりをしながら興味深そうに彼女を見ます。
ジェニファーはシャツ脱ごうとめくり上げます。
彼女のブラが視界に入ったときサムが大声で叫びます。
「ロープを見つけたわ!」
笑顔でジェニファーはシャツを戻します。
ロドニーはがっかりした顔になります。
「ロープとランタン。」
「ああ、いいね。」
「これがあれば何とかなるわ。」
「よく見つけたな。」
「どうも!」
ジェニファーはジャケットを身につけます。
サムがロープを箱のところに持って来るとロドニーはその端を受け取ります。
それを見たサムはロドニーに訊ねます。
「何をしてるの?」
「ロープを括り付けるんだよ。 これを投げて君が登るんだ。」
「無理よ。」
「意気地がないな。」
「そうじゃなくて、このままじゃ登れないって事。
 このロープじゃ細すぎるわ。結び目を付けないと握る事ができないでしょ。」
「そうか。」
ロドニーは天井を見上げます。
「沢山結び目が必用だな。」
「必用な数は…」
サムも天井に目を細めます。
「… 約30フィートね。」
「OK、じゃあ、女性陣で結び目をやってくれないか。僕はファイルを読んでみる。」
ジェニファーは肩をすくめサムのに向かって眉をひそめます。
ファイルに近づきロドニーは何か思いついた顔をします。
「何だよ?
 ドアを開けるコードが書かれてるかもしれなじゃないか。
 それに3人で同じロープを結べないだろ?
 二人ともジェナイ語は分からないんだし。」
「そうね。始めましょ。
サムは諦めジェニファーとロープの端を見つけて、結び目を縛り始めます。
ジェニファーはサムに言葉遊びを提案します。
「じゃあ究極の選択をやらない?
 最初は私からね。
 動物は野菜か鉱物か?
「私はいいわ、どうもね。」
ジェニファーはため息をつきます。
「ああ、もっといいのがあるわ。
 ブラッド・ピットかジョージ・クルーニーでどっちを選ぶ?」
サムは考え深く見ます。
「えーと、クルーニーね、私は。」
「私はピットのがいいわ。
 OK、あなたの番よ。
 簡単よ。私が知ってる男性なら。」
「OK。」
サムはちょっと考えます。
「えー、ブライアン・グリーンかニール・deGrasseタイソンか?」
ジェニファーはあっけらかんと彼女を見つめます。
「物理学者よ。」
ジェニファーは呆けてます。
「へえ。」
「テレビに出てるでしょ。
 あなたが知ってる人を選んだけど。」
ジェニファーは無作為に応えます。
「じゃあ、ブライアン・グリーン。」
サムはしかめつらをします。
「あら!やっぱりタイソンよ!」
その名前を聴いてロドニーが口を挟みます。
「ニール・deGrasseタイソンの事か?
 あいつは僕のアイディアを盗んだ事がある。
 その話をしたっけ?」
サムはうんざりして応えます。
「たった12回だけよ、マッケイ。」
「究極の選択をしてるの…あなたも参加する?」
「えー、「究極」って」 …?
 悪いけど、僕はいいや。」
ジェニファーはお構いなしに続けます。
「じゃあ、誰かといい仲になるとしたら…」
彼女は少し考えます。
「ロバート・レッドフォードかポール・ニューマンか?」
ロドニーは顔をしかめます。
「どっちもない。」
「ええ、でもどっちかを選ぶとしたらよ。」
ロドニーはそれでも顔をしかめます。
「もし選べって言うなら。
 どちらを選ぶとしたら僕は彼らを無理強いしたくないし、なぜなら…」
「これはただの遊びよ、マッケイ。
 ただの遊びに真剣に悩む事なんてないでしょ?」
サムはそのやり取りにニヤリと笑います。
「あー、まあ、そうだな…
 じゃあ、僕はこれを読んでてもいいかい?
 ここからの脱出方法がわかるかもしれないだろ?」
彼は顔を背けますが、遠くの方で声が聞こえ上を見上げます。
これに気づかずジェニファーはサムに向きます。
「ニューマンは?」
「それは問題外ね。」
「ちょっと黙ってくれ。」
ロドニーは二人の会話を止めます。
「いいじゃない! 話ぐらいしたって!」
ジェニファーは文句を言います。
「そうじゃない。 何か聞こえたんだ。」
彼女達は子供の声を聞きます。
「誰かそこにいるのか!」
ロドニーが大声で叫ぶと彼女達はロープを離して彼に近づき上を見上げます。
「助けてくれ!
 ここの下に落ちてしまったんだ!
 おーい!」
ジェニファーは疑問を訊ねます。
「子供達が来てまた天井が崩れたらどうなるの?」
「僕らが穴を開けた場所は腐食していたんだ。
 他のところは見たところ大丈夫そうだ。」
「そのようね。 穴に落ちない限り助かる可能性はあるわ。」
サムが同意します。

子供達の声がより近くなります。
サムは大声で呼びかけます。
「ねえ?」
ロドニーも大声で叫びます。
「助けてくれ!ここに落ちたんだ!
 声が聞こえてるだろ?」
2人の少年が穴の縁から顔を覗かせます。
「おーい?」少年の一人が顔を覗かせます。
「ああ、助かった!」
もう一人の少年が声を掛けてきます。
「誰なの?」
サムが応えます。
「私たちは訪問者よ。
 あなた達と話し合いをしに行く途中だったの。」
最初の少年が言います。
「そこにいちゃいけないよ。」
「ああ、分かってる! 偶然、落ちたんだ。」
ロドニーは子供達に説明をします。
二人目の少年が訊ねます。
「皆、無事なの?」
「ああ、大丈夫だ。
 ただ閉じ込められてしまった。
 助けが必要なんだ。」
最初の少年は相変わらず当たり前のことを言います。
「そこにいちゃ危ないんだよ。」
「ああ、どうも。僕が言いたいのは…」
サムは彼の腕を掴み黙らせ、少年に呼びかけます。
「親に言いに行って。
 私たちがここにいるって言って。
 私たちが閉じ込められて、助けを求めてるって。」
少年はお互いをちらっと見ます。
そして下の皆を見下ろします。
二人目の少年が応えます。
「できないよ。」
「何で!、どうして?」
ロドニーはいらいらして来ます。
最初の少年が応えます。
「本当はここで遊んでちゃいけないんだ。
 親が知ったら…」
サムがロドニーの代わりに応えます。
「大丈夫よ。私がなんとかするって約束する。」
「僕の父さんを知らないからだ。父さんはとても驚く。」
最初の少年は親に怒られる事を心配していました。
「怒られないように話してあげるから。 だから大丈夫。」
ジェニファーも子供達に助けを求めます。
「お願いよ。 私たちは…怪我を。 助けて欲しいの。」
二人目の少年はジェニファーの言葉の揚げ足を取ります。
「ちょっと待って。
 おじさんは大丈夫だって言ってた。さっき聞いたもん。」
ロドニーはついに怒りだします。
「おい。 話を聞け、小僧ども。
 僕はお前らより年上だし、ここの担当者なんだぞ!」
彼を止めようとしてジェニファーは彼の肩に手を置きます。
「ロドニー、ロドニー…」
ロドニーは無視して続けます。
「親のところに戻るんだ。
 そして僕らが助けを求めていると言え、それとも…」
サムは彼を黙らせるために腕をつかんで、少年に呼びかけます。
「何か欲しいものはある?
 何でもいいのよ。あなた達にあげるわ。
 もし私たちが助かったら、あなた達の望む事をしてあげるわ。」

二人目の少年は最初の少年にささやき始めます。
ロドニーはサムに向きます。
「おっ、いいぞ。いいアイディアだ。」
「どうも。」
「多分、あの子達は見たがるぞ、その…」
彼は自分の胸に手をやります。
「ちょっと?」
「僕だって昔は十代の子供だったんだ!
 何があの子達が見たがってるか分かるさ!」
彼はシャツをたくし上げ、胸を少年に見せる真似をします。
「マッケイ!」
「何? ここから出たくないの?」
「そんな事しなくたってあの子達は分かるわ!」
「君がそう言うなら。」
彼は希望をいだいてジェニファーに向きます。
彼女は目を回転させて少年を見上げます。
「僕達、もう行くね。 じゃあ。」
そう一人目の少年が言うと穴から後退します。
ジェニファーが慌てて止めます。
「ちょっと!待って待って待ってよ!」
最初の少年がまた顔を覗かせます。
「無事でね。」
彼は再び姿を消します。
ロドニーは苛立ってサムに向きます。
「君が見せてやらないから…」
「それはやめて、マッケイ! できるわけないでしょ。」
サムは腕時計を見ます。
「4時50分。」
「僕は警告してるんだ。
 こんな場所じゃ僕が狂っちまう。
 2,3年前だったらジャンパーだって狭い空間は最悪なんだよ。」
「お願い、大丈夫よ。
 私はゼレンカと一緒に3時間もトランスポータに閉じ込められてた!
 今はそれ以上よ。」
「待って。 何だって?
 ゼレンカが嫌いなのか。」
「違う。私はただ…
 ここよりもっと狭い空間だって言ったの。」
「いや、そう言ってないね。
 君は「ゼレンカ」を強調したぞ。
 3時間も「ゼレンカ」と閉じ込められたって。
 それがどれほどイヤだったかって。」
ジェニファーも同意します。
「そう聞こえたかも。」
「もう…」サムはあきれます。
「あいつが嫌いだって言えばいい。それはいい事だ!
 僕もあいつは好かないからね!」
「まあ、確かに彼は変わってるけど。」
ジェニファーはサムに一瞬しかめ面をします。
「いつも私の髪がいい匂いだって言うし、ちょっと変でしょ。」
「彼はとてもいい人よ。」
「へえ、本当に本当か! あいつがいい人ね!
 あいつを好きじゃないんだろ。」
「そんな事言ってないでしょ!」
「いやいや、否定する事はないさ。
 君のお気に入りは知ってる。」
ロドニーは自分を指さします。
「争うような事じゃないでしょ!」
「全てが争う事だよ。」
サムはファイルを示します。
「もう読まなくていいの?」
「何も書いてなかった。ドアコードの事はね。」
「そう。」
「そうって?」
「結ぶのよ。」
ジェニファーはロープを結ぶのを再開します。

後に。
サムとジェニファーはまだ結んでいます。
「スティーブ・カレルかスティーブン・コルベールか?」
ジェニファーは究極の選択をまだ続けています。
「ああ!コルベールよ。」サムはそれに答えいています。
ロドニーは近くに立っています。
「カレルだ、でもジョン・スチュワートも捨て難い。」
「へえ!」サムはロドニーの意見に驚きます。
ロドニーは大慌てて否定します。
「…もし選ぶとすればだ。」
「そうね!」
ジェニファーは唐突にロドニーに質問します。
「あなたとケイティーはまだ…?」
「えっ。あー、それはもう終わった。」
「どうして? 何があったの?」
「プロポーズするつもりだった…」
「そうなの?」サムは驚きます。
「ああ、リングとか買ってね。
 彼女に話そうとしたら、あの隔離騒ぎが起きたんだ。」
ジェニファーはロドニーの言葉の意味が理解できません。
「それとどういう関係があるの?」
「あまり詳しく話したくないけど、
 僕は彼女に「もう少し時間が必用だ」って言ったんだ。
 だから彼女のせいじゃない、僕のせいだ。
 僕自身考える必用があった。
 だから今は、彼女は僕と話したがらない。
 彼女は地球に帰還する手続きをした…」
「彼女と別れちゃったんだ。 破局ね。」
ジェニファーがそう言うとロドニーは否定します。
「そうじゃないぞ。」
「いいえ、そうよ。」
サムが口を挟みます。
ジェニファーは彼女の意見に頷きます。
「違う、僕はもう少し時間が欲しいと言っただけだ。」
「それって「僕はもう君とは付き合えない」って言ったのと同じよ。」ジェニファーが言います。
「でも、そうは言ってない!」
「そんな事はどうでもいいのよ!
 プロポーズしたのにそれを取り消すなんて。
 それって結婚詐欺じゃない。」
「おい。僕は良かれと思って言ったんだ。
 つまり、彼女は相応しい人と一緒になる方がいい。」
彼は健気に微笑みます。
「それって、あなたみたいな人じゃないの。」
ロドニーは愉快そうに彼女に微笑みます。
サムはロープを見てロドニーに言います。
「ねえ。」
「何?」
「終わったわ。」
「やっとか!」
サムはフックを取ろうとすると、ロドニーは彼女からそれをひったくって、持って行きます。
サムは苛ついて腕を投げ出します。

その後まもなく。
ジェニファーは木箱を押して持ってきます。
ロドニーは天井の穴の下にロープを運んで床に落とします
もう片方の手にはフックを握っています。
彼はフックを重しにロープを回します。
その時、頭上で子供の声を遠くに聞き見上げます。
「こっちだよ!こっち!」
「聞こえたか?」ロドニーは子供の声を聞いて喜びます。
「あの子供達だわ!戻ってきてくれたんだ!」ジェニファーも喜びます。
「あの子らはいい子だよ!初めから分かってた!」
ロドニーは上に向かって叫びます。
「この下だ!
 戻ってくると思ってたよ!
 なあ?!」
天井が不気味に軋み、少年達は穴から下を覗きます。
そしてもう一人の少年が視界に入ります。
三人目の少年が下を覗きこんで驚きます。
「うわーっ!」
最初の少年が言います。
「見えた?下に落ちてるって言っただろ!」
「お父さん達も来てるの?
 助けて欲しいって言ってくれた?」
サムは少年達に呼びかけます。
「ううん、友達が僕らを信じてくれないから、
 本当の事を言ってるって一週間文のtaffaを賭けたんだ。」
二人目の少年が応えると、四人目の少年が三人目の少年に憤然と言います。
「見えたか? 俺は見えないぞ!」
「大人達はどこにいるんだ?」ロドニーは尋ねます。
「言えないよ! 僕達が困ったことになる!」
最初の少年が応えます。
「困った?待ってろ、ここから出てやる、ガキどもめ!
 何が困った事なのかよく教えてやる!」
ロドニーが怒り出すと子供達は穴から離れます。
直ぐに部屋が震動し始めます。
「地震!もう脱出しないと!」
ジェニファーは怖がります。
三人は部屋の端に走って木箱につかまり、床が傾き始めます。
床の下では、いくつかの支柱がつぶれ始めます。
「もう終わったみたいね?!」
揺れは静まりサムが呟きます。
床は赤いドアに向かって約25度傾いています。
「止まったわ。」ジェニファーはホッとします。
「この部屋の下の支柱がつぶれたのよ。」
サムが言うとロドニーは最悪な事を口走ります。
「もう一度揺れたら部屋全体が谷に落ちるぞ。」

その後まもなく。
サムが見つけたいくつかのランタンに火をつけました。
そしてジェニファーは部屋の周りにそれを掛けます。
床の中央で、ロドニーはフック付きのロープを投げる練習をしています。
それを見ていたサムはロドニーに声を掛けます。
「私が投げようか?」
「いや、僕がやるよ。」
彼はフックを掴みます。
「あー、前にもそんな事した事あるの?」
「何、君はやったことあるのか?」
「ええ、何度もやってるわ。」
「そう?」
ロドニーは説得力なく言います。
「つまり、僕よりも君は任務か何かでやってると?」
「OK。」
「それじゃ君が、その…」
サムは彼の言葉を悟ってその場を離れます。
ロドニーの身振りで遠くに離れろという合図にジェニファーはやっと気づきます。
「ああ、そうね。」
彼女はロドニーの前の壁にいるサムのところに行きます。
「よし。」
彼はロープを十分伸ばし、天井の穴を見上げます。
「行くぞ。」
彼は三回ほどフックを振って投げます。
フックは真っ直ぐに部屋の壁に飛んでいき、サムの頭の近くの壁に激突します。
サムたちは屈んで避けます。
フックは壁の金属に当たり火花が飛び散ります。
サムは怒ります。
「マッケイ!」
「ごめん。ごめん。」
「もう少しで私の頭がなくなるところだったじゃない!」
「そんなつもりじゃなかった。
 手が…滑って。」
サムはフックを拾って中央に行きます。
「私がやるわ。」
ロドニーは彼女からフックを取ろうとします。
「僕がやるよ。」
「あなたじゃ無理よ。」
「できるさ。僕の正面に立たないで…」
彼はジェニファーを見ます。彼女はそわそわとして微笑みます。
「後ろにいてくれ。」
肩をすくめてサムは彼にフックを渡し、彼の脇に移り木箱の後ろに隠れます。
ジェニファーも彼女のところに急ぎます。
「OK。O…K。」
彼はまたフックを三回振って投げつけます。
今回は上に投げられましたが、穴には届きません。
そして再び大きな音を立てて落ちます。
ロドニーは癇癪を起こしてフックを見てから彼女たちに向きます。
「まあ、今度こそは。」
彼女たちは頷きます。
彼は部屋の中を通っている大きな金属パイプに落ちたフックに向かいます。
刃の1つはパイプに突き刺さっていました。
ジェニファーはロドニーを元気づけるように言います。
「あなたならできるわ。」
ロドニーはパイプからフックを引っ張ります。
刺さっていた場所には大きな穴があいています。
誰も気づきませんがその穴から無色のガスが流れ出ます。
「できるわ。今度こそは。
 私には分かる、今度は大丈夫。」
ジェニファーは声援を送ります。
ロドニーは三回フックを振って、上に投げつけます。
また穴には達せず再び落ちてきます。
パイプの上に落ちた瞬間、火花が飛び散りガスに引火します。
爆破がロドニーを吹き飛ばします。
ジェニファーはできるだけパイプからほとばしる炎から離れようと走りますが、
サムはそこへ向かうとジェニファーが驚きます。
「何をする気?」
「そこにいて!」
彼女はパイプの近くにある金属のホイールを掴みます。
しかしそれは既に熱くなっていて、彼女は手を離します。
彼女は袖を手の平に伸ばしてホイールを締めます。
ガスは止まり、炎は次第に弱まります。
ジェニファーはロドニーに急いで行きます。
「どこか痛い?」
「僕のメンツが。」
ジェニファーは微笑みます。
「それは直ぐによくなるわ。」
サムはフックを拾い上げロープを短く持って五回フックを振り回すと上に投げます。
フックは穴を通り抜け、地上に着陸します。
「やったわ!」
ジェニファーがサムの成功に喚起を上げるとロドニーは虚勢をはります。
「ああ、すごいな!」
サムは手首にロープを巻きつけて、強く引きます。
「ここには何もないようね。」
ゆっくり彼女はロープに全重量をかけます。
地上のフックは何も引っかからず穴へ向かいます。
フックは地面を引きずって、土砂と草が落ちてきます。
全てを引き終えると、サムはその場を離れ床に落ちたフックに向かいます。
「本当にもう。」
彼女はフックを拾って、また上に投げつけます。
再びフックは穴の外に出ます。
ジェニファーは微笑みます。
ロドニーはサムがまた成功したことに残念そうな顔をします。
サムは再びロープに全重量をかけるとすぐに、同じようにフックは戻って、
土砂と草が下に落ちてきただけです。
「フックが引っかかる場所がないわ。」
ジェニファーはロープで悲しげに見ます。
「折角結んだのに。」
「別の方法を考えるべきね。
 何かアイディアはない?」
ロドニーは見回して、何か閃き指を鳴らします。
彼は頭上にある約10フィートの金属性の梁を指します。
「あの梁が見えるか?
 あそこにロープを引っ掛けたらどうだ?
 10フィート位だから、橋を架ければ?
 橋になりそうな物は…
彼は床を見渡します。
「これを使えば。」
彼は床にある3つの木の板の1つを拾って、彼女たちの方に持ってきます。
「2、3個、木箱を積み重ねればバッチリだ、前程高くしなくていい。」
「ええ、でも梁に架けるには少し短くない?」
板の長さを見たサムが言います。
「だから金槌と釘を探すんだ。」
「じゃあ、ジェットパックとトランポリンもそのリストに加えたら?」
「金槌と釘ぐらいなら見つけられるだろ?」
彼はロッカーを隅々まで捜し始めるとジェニファーが言います。
「私たちがかなり部屋の中を探したのよ。」
ロドニーはがっかりしたように言います。
「でも、金槌と釘ぐらいは。」
「例え見つけたとしても…」サムは言います。
「なあ、橋を架けなきゃいけないんだ。」
「ちょっと待って。バーでの賭けよ。」
ジェニファーは何か思いつき話します。
「何?」
サムが尋ねるとジェニファーは続けます。
「ビールをタダで飲むためにやる一種の手品よ。」
サムは顔をしかめて顔をロドニーに向けます。
彼もワケが分からずジェニファーに向きます。
「一体なんの話をしてるんだ?」

その後まもなく。
ジェニファーは同じ大きさの金属の器を逆さに三つ三角形の形に木箱の上に置きます。
そして三本の食事に使うナイフを取り出します。
「こんな風にやるのよ。
 三つのカップを動かさずにこの三本のナイフで三つとも橋を繋いで、
 その上にもう一つカップを置くの。」
ロドニーは怒ったようにサムをチラッと見てからジェニファーに向きます。
「もう一つのカップなんかないぞ。」
「なんでもいいのよ。」
ジェニファーは木箱から小さなプラスチックの塊を取り出します。
「これを使いましょ。OK、さあ、見てて…」
彼女はカップの1つにナイフを置き、もう一方のカップに届かないことを示します。
「今の状態はまさにこの状態で、ほんのわずかに届かないわよね。」
彼女は上を身振りで示します。
ロドニーは見上げて、次に部屋の中そして皆を見回します。
「OK、それがどうしたの?
 僕らは天才だぞ、そのぐらい分かる。
 少し焦ってるだけだ…」
「OK。」
彼女はカップの上にナイフを置き始めます。
それぞれのカップの上にナイフを一本づつ置き、カップの三角形の中心にナイフのもう片方を集めます。
ナイフを交差させ重なり、お互い同士が支え合って下に落ちません。
次に、プラスチックの塊を重ねた中心に置くと安定しています。
すぐにロドニーは歩き出して梁を見上げ考え込みます。
サムは木の板に歩きます。
ジェニファーは彼らを見てニヤっと微笑みます。
「今度は二人のやり方で、私にビールを奢ってね。」
「これがうまく行けば、樽ごとおごるよ。」
ロドニーは嬉しさのあまり大げさに約束します。

後に。
彼らはジェニファーのプランを実行に移しています。
サムは天井から下がっている電灯のケーブルにすがりつきながら、細長い金属の梁に立っています。
ロープは梁の上に吊されています。
そしてジェニファーは重さを増すためにバックパックをそれに結び片端を引っ張っています。
もう一つ木の板はもう一方の端に結ばれます。
そしてジェニファーが上にそれを引っ張るのに応じて、ロドニーはそれを誘導しています。
板が梁に達して、水平になるとサムは慎重に屈んで正しい位置に導きます。
その後まもなく、ロドニーは別のバックパックを別のロープの端につなぎました。
そして梁の上と、2番目の梁の上にパックを投げます。
ジェニファーがオドオドしながらすがるように登ります。
用心深く、ロドニーは床の向こう側に別の板を引きずって立ち上がります。
サムは板の端を梁に結んでいます。
その後、ロドニーは3番目の梁に上がって、3番目の板を引っ張ります。
それらの3つの板は水平になります。
そして苦労して板同士を組み合わせやっと組み合わせることができました。
サポートのために電気ケーブルにすがりつきます。
試しにサムは橋に足をかけて一度、二度そっと弾ませます。
橋は持ちこたえます。

少し後。
サムは橋の中間に立っています。
ジェニファーも橋の上に立ち二人でロープを引き上げます。
ロドニーは下からそのロープに固定した木箱を持ち上がます。
木箱はやっと上に上がり中央に置かれます。ロドニーはその行為を黙って見上げています。
そしてもう少し小さな木箱を引き上げ、積み上げます。
ジェニファーは梁の近い方に立ちサムは木箱に登ろうとします。
天井の穴まであと2、3フィートです。
しかし不気味にきしみだします。
ジェニファーは軋み音を聞いて梁まで下がります。
「いいアイディアじゃなかったかも。」
サムが上をは見上げると、木の壊れる大きな音が聞こえてきます。
「聞いてくれ。
 悲観的な言葉なのは分かってるけど、崩れる前に、下りた方がいいと思う。」
ロドニーは木箱が崩れる音を聞いて警告します。
サムは下の彼を見ると、ゆっくり体をまっすぐにし始めます。
木は再びきしみます。
「サム。サム、もうよせ。」
「もう少しなのよ。」
彼女は穴の縁まで達します。
一番上の木箱に彼女はひざを置きます。
ちょうどその時、悪いタイミングで地震が始まります。
「いや。」
ジェニファーは叫び電線を手放して、金属の柱をつかみます。
橋の中央で板は崩れ去りサムは下に落ちていきます。
彼女は下に落ちた木の上に倒れます。
「サム!」
ジェニファーが叫ぶとロドニーは床に苦悶の表情を浮かべる彼女に走ります。
「動くな!動くんじゃない!」
彼は他に何も落ちてこない事を確認するために見上げます。
ジェニファーはロープを伝って降りてきて、呻き続ける彼女に急ぎます。
「診せて。」
ジェニファーはサムを診断し始めます。
ジェニファーが彼女の脚に触れると、サムは悲鳴を上げます。
「脚が折れてるわ。」
「また、厄介なことになったわね?
ロドニーはサムを元気付けます。
「いや、大丈夫だ。 僕たちは…なんとかなる。」

後に。
ジェニファーはサムのズボンの脚をまくりあげ、医療用品一式をとって来ました。
「OK。」
彼女はロドニーに向いて手伝いを求めます。
「手伝って?」
ロドニーは頷きます。
「OK。ここのひざを手で…」
ジェニファーの指示通りロドニーは手を置きます。
ジェニファーがサムのソックスを少し引き下げるとサムは痛みで呻きます。
「もう片方で足首の近くを真っ直ぐに保ってって。」
ロドニーはもう片方の手でサムの足首をつかみます。
ジェニファーは彼女を見ます。
「脱ぎたくはないだろうけど、ブーツを脱がせるわ。」
サムは不安そうな声で言います。
「ええ、そうだと思った。」
ロドニーはサムの痛がる顔を見てしかめ面をします。
ジェニファーが彼女のブーツの紐を緩めると、サムはしかめ面をします。
「OK。やるわよ。」
彼女は慎重にサムのブーツを急いで脱がせます。
サムは痛みで声を上げます。
「OK。」
彼女はソックスを急いで脱がせます。
「足の裏で私の指が感じるか教えて。」
「OK。」サムは頷きます。
ジェニファーはそっとサムの足の裏に指を押し当てます。
「ええ。ええ。」
ジェニファーは親指のすぐ下を押します。
「ここは?」
「ええ。」
「OK。」
ジェニファーは脇に落ちていた板の破片を手にとって、ロドニーを見ます。
「もう一つ、こんな木を見つけてきて。」
「OK。」
彼らは立ち上がって、適当な大きさの木を捜し始めます。
ジェニファーが小さな破片を拾って見ているとロドニーが彼女に近づきます。

ロドニーはサムには聞こえないように小さな声で話します。
「なあ、彼女の容態は?」
ジェニファーも小さな声で話します。
「それ程悪くわないわ。
 まだ足に感覚を持ってるから。
 神経が傷ついているとは思えない。
 でも骨折はかなり厳しいわ…内出血が結構あるかもしれない。」
「それって…悪いってこと?」
「どうなのかははっきりとは。
 スキャナで調べてみないと。」
「OK、最悪の場合、彼女は内出血していたら、どのぐらい彼女は…重症化するの?」
「1時間ね。」
「本当か?」
「来て。」
彼女は彼を率いてサムに戻ります。
戻ってきた二人を見てサムは訊ねます。
「それで、どうなの?
 内出血が問題になるまで1時間ぐらい?」
「どうして…?」
ロドニーは先ほどの話を聞かれたのかと思い驚きます。
「こんなこと、初めてじゃないのよ、ロドニー。」
ジェニファーはキットを開けて、サムに湿布を渡します。
「ここにシップ薬があるわ。」
「湿布だって?それが一番強い薬なのか?」
ロドニーはジェニファーに訊ねます。
「これしかキットに入ってないのよ。
 この先の事を考えると、モルヒネは義務化ね…」
彼女は天井を上目使いで見ます。
「…フック銃も一緒にね。」
ジェニファーが脚に添え木をし始めるとサムが口を開きます。
「モルヒネは使わないわ。頭を正常に保ちたいから。
 ここから脱出する方法を考えないと。
 少なくとも、一人は。
 私が抜け出すのは無理だから。」
サムはジェニファーの治療で少し痛がります。
「痛った。」
「ああ、、箱は壊れたしな。」
「ええ。」
ロドニーはジェニファーにアイディアを求めます。
「ねえ、何か思いついたら、自由に言って。」
「さっきのアイディアを思いついたけどうまくいかなかったから、
 プロに任せようと思うの。」
「そうだな。」
彼は希望をいだいてサムを見ます。
「ごめん。
 全てのエネルギーが、悲鳴を上げないように集中しちゃって。」
「そっか。
 OK、フックは土にしか引っかからないからうまく行かなかった。
 サムが重過ぎたから、木箱もうまく行かなかった…」
サムは憤然と頭を向けて彼を見ます。
「いや、僕が言いたかったのは、僕らの体重一般の事を言ったんだ。
 君だけの事じゃなくて…君は良く引き締まってる、本当に。
 かなりいいスタイルだ。」
ジェニファーはサムの頭に枕として使用するものを見つけるために離れ、
戻って来て彼女の横にしゃがみ、欝なロドニーを睨み付けます。
「ああ、君もそうじゃないとは言ってないよ。
 いや、君の体ってなかなかだ。
 そして、そして、そして、えー、えー。
 君のスタイルがどうだっていう事じゃない。
 いやいや、そんな事じゃなくて。
 それはいい…えー、そういう事。
 つまり、どっちを選べって言われれば…
「安心して、そういう判断はしなくていいから。」
サムはロドニーの言い訳を制止します。
「あら、黙って聞いてれば彼がどっちを選ぶか聞けたのに。」
ジェニファーはロドニーの本心を聞きたがっていました。
「OK、ごめん。」
彼はジェニファーに向かって身振りで示します。
「それって、君は…」
「ロドニー。」
サムがロドニーの名を呼ぶと彼は言葉を止め、彼女を見ます。
「元の話題に戻しましょ。」
「そうだ、そうだった。
 えー、何を話してたっけ?
 えー、そうか。」
彼は壁に立てかけてあった金属の棒を取りに行きます。
「この棒をあの穴の上に出せれば、ロープをこれを取り付けて、
 穴の向こう側で横たえられるだろう。
 僕らの重さを支えられる。
 土砂の心配はなくなるぞ。」
「あなたはフックすらほとんど投げられなかったじゃない。」
ジェニファーはロドニーを批難します。
「「ほとんど」って?君は見てなかっただろ?
 あれは…」
「それはもっと重いわよ。」
サムが言うとロドニーは何か思案しだします。
「だったら、僕らは…」
彼は辺りを見回し、ガス管を見つけ何か閃きます。
「起爆装置だ。
 起爆装置が必要だ。」

後に。
ロドニーは見つけた大きな厚いパイプの端起爆装置をに入れます。
「まず最初に、チューブの下部に起爆装置を固定する。」
彼はチューブを拾います。
「OK。そして…」
彼はガス管にそれを持って行きます。
ジェニファーがパイプの穴に布を巻きつけた場所に穴は塞がっています。
彼はそこへチューブを立てます、そしてジェニファーは彼からチューブを受け取ります。
その間、適所に保持しながら重さを支持します。
「ガス漏れの周りのチューブの下を封鎖しないと。
 こうやって…」
彼はシールをするためにチューブの下の周りに必要以上に布で巻きつけます。
そして二本の鉄の棒をテープで巻いた物を取りに行きます。
それをロープの端を結びます。
彼は天井の穴に向かっているチューブにそれを持って行きます。
ジェニファーはチューブの上部に布を巻きつけます。
「よし、詰め物と棒を砲身に入れてくれ。
 そして、そっとシールをするんだ。」
ジェニファーは布を彼に渡します。
「あまりきつく締めないでくれよ。
 さもないと自分達に鉄パイプが飛んでくる。
 でもうまくやらないと…」
彼とジェニファーは布の残りをチューブに押し込みます。
「僕らの方が吹き飛ぶ。」
「うまく行くと思う?」
ジェニファーが訊ねるとロドニーは安心させます。
「うまくいくさ。」
ジェニファーはチューブに布を押し込み終えます。
次に後ろに下がってロドニーを見ます。
「うまく大砲を組立てられるの?」
「おい!これは圧縮ガスの応用だ。
 こんなの楽勝だね!
 僕の六年生の頃の理科の実習を知らないだろ。
 実際に僕は…」
壁にもたれていたサムは疲れてため息をつきます。
「ロドニー。」
「分かった。OK。うん。」
彼とジェニファーはチューブの後ろに移ります。
彼女は後ろにしゃがみ下部を保持します。
そして片目を閉じて天井の穴に標準をつけます。
「よし。準備はいいか?」
彼女は頷きます。
ロドニーはホイールに向かいガスを数秒間をチューブに送り込みます。
そしてもう一度ホイールを閉じます。
「よし。OK。
 そして…皆、心の準備は?」
チューブに一番近いジェニファーは本当に不安そうにします。
しかし頭を横に振りかけましたが頷きます。
「いいわよ。」
ロドニーはポケットから制動機を取り出します。
「発射。」
彼が制動機を作動させるとチューブの中は爆発します。
金属の棒は上向きに高く昇ります。
そして括りつけてあったロープが舞い上がります。
棒は黒い点となり見えなくなります。
ロープのもう一方の端は木箱に固定されています。
外では、棒は地面に届きます。
「いいぞ!」
「成功ね!」
サムはそれを見て感心します。
ロドニーはロープを木箱から解き、穴の下まで行ってロープを引き戻し始めます。
ジェニファーはロープの最後を掴みます。
土砂が彼の頭に降りかかってきます。
彼は少し離れてロープを引きつけ続けています。
さらに多くの土砂と草が雪崩のように床に落ちてきます。
「あー、マッケイ?
 ストップして。土砂が多すぎるわ。
 部屋が重くなり過ぎる。」
サムが止めるのも聞かずロドニーが続けます。
「もう少しなんだ!」
彼が引き続けると、より多くの土砂が部屋にどっと落ちてきます。
金属が軋みだし部屋の下では部屋を支えている支柱が曲がりだします。
そしてその一本が割れて壊れ、部屋が45度に傾きます。
ジェニファーはバランスを失って、赤いドアに向かって転倒します。
彼女の体重でドアが開いて悲鳴をあげながら彼女は谷に落ちてしまいます。
しかし彼女はまだロープを握っていたため、部屋の下約20フィートで止まります。
ロドニーはもう一方の端に引っ張ります。
「ジェニファー!」
サムはジェニファーの名を叫びます。
「ここよ! ロドニー、放さないで!」
目を大きく見開きロドニーは腕を金属の柱に巻きつけ、ジェニファーの体重を保持しようと苦戦します。
サムは前にあった木箱を押しやって、戸口まで這って行きます。
戸口まで行った彼女は、下で宙ぶらりんになっているジェニファーを見下ろします。
「ロドニー、放さないで!」ジェニファーは叫びます。
「ロドニー?」サムはロドニーに顔を向けます。
「サム、もたない。」
「大丈夫よ!」
ロドニーは泣きべそをかきます。
「ダメだ、僕は重い物を持つのが得意じゃないんだ。
 大学にいたとき、老人カートを使ってたぐらいだから。
 だからデートなんか誘われた事なかったんだ!」
「今はこっちに集中して!
 彼女を引き上げるのよ!」
「えっ、本当に!
 ただこれを放さないだけで精一杯なのに!」
「彼女はいつまでもぶら下がってられないわ、ロドニー!」
「じゃあ、手伝ってくれ!」
「私が?立つ事もできないのに?
 一人で彼女を引き上げるのよ。」
彼は柱に巻きつけられた片腕ではできないと悟ります。
ロドニーはイヤイヤながら手を放して後ろに下がります。
ジェニファーは数フィート落下します。
彼はゆっくり彼女を引き戻し始めます。
「ちょっと待って!引き上げないで!」
ジェニファーは少し下にわずかな割れ目を見つけます。
「何、どうして?」
「光が見えたの!」
「ダメだダメだダメだ!
 光に向かうんじゃない!
 この世に残らなきゃダメだ!」
ロドニーはジェニファーがあの世への入り口を見ているのかと勘違いします。
「違う!日の光りよ! 下に坑道があるの。
 日の光りが見えるのよ!」
「本当? 鉱山の反対側かも。
 気づかなかったわ。」
サムは希望を抱きます。
ロドニーはジェニファーの重さを支えたままどうしていいのか分かりません。
「ねえ、僕はどうしたらいい?
 何をしたらいいんだ?」
ジェニファーは言います。
「私を下ろして!」
「えっ! 下ろすのか?」
「あと10フィート下なのよ。 揺らさないと行けないわ。」
「坑道はこの部屋より出にくいかも…」
サムはロドニーに言います。
「もう出口はないのよ、ロドニー。」
「何で?」
彼は見上げます。
天井の穴は土砂で完全に埋め尽くされています。
部屋があまりにも傾いたため天井の穴は土の中に埋まってしまったようです。
「このチャンスを活かしてみせるわ。
 下ろして。いつまでも、もたないわ。」
「僕もだよ。」
ロドニーは弱音を吐きながらも、ゆっくりと彼は彼女を下ろし始めます。
数フィートを下った後に、彼女は大声で叫びます。
「OK、いいわ、止めて。」
ロドニーはつかれた顔でしかめ面になります。
「喜んで。」
ジェニファーは振り子のように体を前後に揺らし始めます。
サムは元気づけるようにロドニーに向き声をかけます。
「あなたはよくやってるわ、ロドニー。
 本当に素晴らしわ。」
「いや、「素晴らしい」っていうのは光ファイバーのような渚をいうんだ。
 これはただの苦痛だよ。」
ジェニファーは坑道に揺れ動いて、何とか壁にあったパイプをつかみます。
彼女は坑道に入るとロープを手放します。
ロドニーは緩んだロープのため、後方に飛んで床に倒れます。
「やったわ!」
ロドニーは身を起こし叫びます。
「先に手を放すって言ってくれよ!」
ジェニファーは坑道の中に少し入って見回します。
そして入り口に戻ってきて上に向かって叫びます。
「ここはまっすぐ外に繋がってるわ!
 安定したスロープになってる!
 二人とも、こっちに降りてきて!」
サムはロドニーに向きます。
「あなたが行って。」
「何で?駄目だ。」
「私じゃ下には行けないわ。」
「君がやる必要はない。 僕が下ろしてやる。」
「ロドニー、その手。」
彼は手を見ます。
手は緊張で震えています。
そして手のひらはロープですり切れ血がにじんでいます。
「僕は君を置き去りにはできない。
 さあ、君のシートを作るから。」

後に。
ロドニーはロープと板で即席の椅子を作り、サムをそれに乗せてゆっくりと下に下ろします。
部屋では、ロドニーは金属の柱にロープを引掛け、ゆっくりとロープを緩めていきます。
下にガタガタと揺れながら下がると、彼女はうめき声を上げます。
ロドニーも手の疲れと痛みでうめいています。
やっと坑道の前に降りるとサムは上に向かって叫びます。
「OK、いいわ! 止まって!」
「止めるぞ!」
サムはロープの端を坑道に投げ込みます。
ジェニファーはロープを受け取ります。
「OK。」
彼女はサムを引き始めます。
ジェニファーはロドニーに叫びます。
「もう少しよ!あと数フィート緩めて!」
サムは何とか壁にあるパイプをつかみます。
そしてジェニファーは最後の数フィートを引きます。
ジェニファーは坑道の床に着くまでサムを引っ張ります。
「OK、坑道に入ったわ!」
ロドニーはホッとしてロープを落とします。
次にジェニファーはロドニーの番を伝えます。
「あなたの番よ、マッケイ!」
部屋は45度に傾斜しています。
ロドニーは疲労困憊しています。
「そりゃいい!すごいな!
 もっと体力があればもっと良かったのに!」

後に。
ロドニーは柱にロープを結んで、坑道の前まで降りてきています。
ジェニファーはぶら下がっているロドニーに声を掛けます。
「来て。今度は揺れるのよ。」
彼は彼女に背を向けてぶら下がって、しかめ面をしています。
彼は痛みと疲れで震えています。
「ロドニー、身体を使って、揺れないと。
 来て、もうすぐよ。」
「無理、これをやりたくないから頑張ったのに。」
「それじゃどうするの? そこでヤメルの?
 ロープの上で死ぬのを待つつもり?」
ロドニーは腹を立て始めます。
「違う、そうじゃない、一休みしてるだけだ。」
戸口の上に掛かっているロープが擦り切れ始めます。
ロドニーは悲しげにジェニファーに話します。
「ねえ、僕は…現実のアクションスターにちょっと似るだろ?」
「何?」
「あの、人を救って走り回って、銃を撃つんだ。」
ロドニーは体や手の痛みにしかめ面をします。
「君は僕が…こんなの簡単だと思ってるんだろう。
 僕がキン肉マンだと思ってるんだろ。」
「ねえ、シュワルツェネッガー、揺れ始めて。」
「ちょっと待って。」
彼は力を増すために目をつぶります。
しかし頭上の部屋の軋み音が激しくなると二人は上を見上げます。
「OK。休憩は終わり。」
彼はロープを揺らし始めます。
ジェニファーは彼を捕まえようと手を伸ばします。
三度目のスイング時、彼は手を彼女に向かって伸ばしますが届きません。
上の方ではロープが擦り切れ続けています。
彼は再び揺れ動きます。
そしてやっとジェニファーは何とか彼の手を掴みます。
その時ロープが切れ、彼は坑道に倒れこみます。
ジェニファーはひっくり返ります。
彼女は急いで彼の肩をつかみ後ろへと引きずります。
頭上の部屋が再び大きな音で軋み始めると、彼は彼女を見上げます。
「やばかった。」
そして、土砂や岩石が坑道の前を落ちていくと同時に、
部屋も一緒に谷底へと落ちてしまいました。
「ぎりぎりだった!」
ロドニーは谷底を指差します。
「本当にやばかった。」
ジェニファーは頷きます。
「OK。さあ。」
彼女はサムを見てから、ロドニーに向きます。
「手伝って。」
彼らは立ち上がってサムに向かいます。

アトランティス。
医務室。
ロドニーとジェニファーはベッドの縁に並んで座っています。
ジェニファーは手に包帯を巻いています。
そして別の医師がロドニーの手に包帯を巻いている間、
看護師が持っているレポートを彼女は見ています。
「よさそうね。 OK、ありがとう。」
看護師は出ていきます。
「サムはどうなんだ?」
ロドニーはジェニファーに尋ねます。
「彼女は大丈夫よ。
 綺麗に折れてたから、繋ぎ直してギプスをしてるわ。
 二、三週間は松葉杖の世話になるわね、でも…」
ロドニーの包帯を巻いていた医師は終えます。
彼が歩き去るとき、ジェニファーは彼に微笑みます。
「ありがとう。」
ロドニーにさっきの続きを話し出します。
「彼女は大丈夫。
 あなたはどう?」
「どんな軟膏を塗ってもらっても、風呂には入りたい。
 痛みはないんだから。
 傷は残らないんだろ?」
「彼女を傷つけたわ。」
「僕じゃない。」
「大丈夫よ。」
ロドニーは納得はしないものの頷きます。
「ところで、ありがとうね。」
突然のお礼にロドニーは不思議がります。
「何?」
「あなたは私を助けてくれた。
 あなたが放したら…」
「ああ、どういたしまして。
 さて、部屋に戻って、胎児のように丸まって、三日間は寝てるよ。」
「まだ、だめよ。」
「ん?」
「バーのトリックで、私にビールを奢るはずでしょ。
 あなたには解けなかったんだから…」
「時間が無かったからだ!
 時間があればできたさ!」
「ええ、サルにもできるのに、あなたはできなかった。
 だから私の勝ちよ、ビールをおごって。」
「僕はビールの賭けなんかしてないぞ!」
「マッケイ。」
「何だよ?」
「私と飲みたくないの?」
ロドニーは驚いて彼女を見つめます。
「僕と飲みたいの?」
微笑んでジェニファーは彼を見ます。
「こういうのは苦手みたいね?」
「あー、いや、ちがうよ。」
彼女は笑います。
「さあ。」
彼らはベッドから跳んで、部屋を出ます。