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スターゲートアトランティス シーズン4

4X19

アトランティス。
観察室で、ジョン、ロドニー、ロノンが隔離室を見下ろしています。
「変な感じだな。」ロノンは呟きます。
隔離室では、ジェニファーと他の医療従事者が防護服を身につけ、
ベッドの上に座り白い検査着を着せられているベケットに検査を行っています。
ジェニファーはモニターから目を離し、少し当惑気味のベケットに笑顔を向けます。
「こんな事をしてごめんなさい、先生。」
「気にしないで。長い間囚われの身になっていた者は、検査の必要がある。
実際、それを書いたのは僕だし。」
医療従事者の一人が彼の腕からもう一度採血を行います。
「これ以上採血されると、気を失うかもしれないけど。」
「それで最後の採血です。」
「薬物の検査もした方がいい。
マイケルは僕に何かの薬を定期的に注射してたから、鎮静剤のようなものだった。」
「分かりました。」
検査が続く中、ベケットは観察室のジョン達を見上げ笑顔になります。
ジョンはロドニーに話しかけます。
「彼はレプリケーターじゃないのか?」
「いや、それならスキャンで直ぐに分かったはずだ。」
「それなら彼は一体何者なんだ?」
「分からないよ!僕だって君と同じぐらい混乱してるんだ!」
「本当に彼じゃないと思ってるのか?」
「ああ!…つまり…多分。」
ジョンはロドニーをチラッと見ます。
「レプじゃないことは確かだけど、まだ他にも色んな可能性を残してる。」
ロノンが訊ねます。
「どんな?」
「まあ、別の時間軸だったり、パラレルワールドにクローン、好きなのを選んでよ。」
「タイムスリップかもな。」
ジョンが付け加えます。
「そうかもね。」
ジェニファーがやって来てヘルメットを脱ぐと彼らは彼女に振り返ります。
「まあ、予備検査は終わったわ。」
「それで?」
ロドニーは尋ねます。
「全ての検査項目を確認したけど、あそこにいる人物はカーソン・ベケット先生よ。」

後に。
隔離室からはベッドと設備が取り除かれ、テーブルと一組の椅子に交換されていました。
検査服を着たままのベケットが部屋を歩き回っていると、部屋のドアが開きロドニーが入ってきます。
「ロドニー!」
「カーソン。直ぐにこれなくて悪かった。ここ数日間、かなり大変で。」
「いいんだ。分かってるよ。僕がここから出られるって話しかい?」
「それはもう少し時間がかかる。」
「ああ、そうなの?」
二人がチラッと顔を見合わせるとょっと、ロドニーは微笑んで手を伸ばします。
「君に会えてよかった!」
二人は握手します。
「僕がどう思ってたか分かるかい?」
ベケットは座ります。
「二年もの間。囚われの身だったんだ。」
驚いてロドニーは彼の向かいに座ります。
「二年?」
「そうさ。M8G-352で、マイケルや他のレイスを置いていった星で。」
「…そうか。そこで君は捕まったのか?」
「ああ、そうさ。覚えてるだろ、ロドニー?」
ロドニーは目を見開いて隠そうとします。
「ああ。覚えてるよ、ただ…少し詳しく聞いておかないと。」
「ああ、分かった。まあ、知っての通り、治療は100パーセントじゃなかった。
 毎日注射していたにもかかわらず、マイケル達は戻り始めた。」

フラッシュバック。
S3E02で、カーソンは森の中で、炎を囲んで詠唱を唱えているレイス人間の一団を見つけます。
『彼らはハイブを呼び出すためにレイスのテレパシー能力を使っていたのかもしれないけど、
 僕にはよく分からなかった。』
カーソンは捕らえられて、テントでベッドに括り付けられていました。
マイケルが彼に屈んでいます。
「覚えてるのは、マイケルに尋問されて、僕に何か週者をした事だ。
 次に目覚めたときには、別の星にいた。」
「なぜ君を捕虜にしたんだ?」
「彼は僕に研究を手伝わせたかったんだ。
 レイスと人間のD.N.A.を結合するための。もちろん僕は最初は拒否したさ。
 でもある日、彼は別の囚人を僕のオリに連れてきた。
 若い娘さんで、20歳になってなかったろう…」
ベケットは床を見つめ記憶を手繰るような顔をします。
「…彼は冷酷に僕の目の前で彼女を殺したんだ。
 彼は僕が手伝うのを拒否すれば、毎日同じ事を繰り返すと言った。
 その瞬間から、僕は協力をしたんだ。」
「カーソン…大変だったな。」
「簡単な事じゃなかった。ほとんど諦めていたよ。」
彼はロドニーを見ます。
「でもね、君やシェパード中佐、テイラやみんなの事を考えると、
 いつか僕を探し出してくれると思っていた。」
ロドニーは真実を伝えようとしますがうまく口にできません。
「…ああ。」
やっとロドニーは渋々彼を見ます。
「あのさ、実のところを言うと、そうじゃないんだ。」
「そうじゃないって?」
「僕らは君を探してないんだ。君が行方不明であった事さえ知らなかった。」
「どういうこと?」
「僕らはM8G-352に戻って、君をマイケルから救いだしたんだ。
 つまり、奴には逃げられたけど、君は五体満足でアトランティスに戻ってきたんだよ。」
「一体何の話をしてるんだい?」
「君のことじゃなくて、もう一人の君だ。別のカーソン・ベケットだ。」
「冗談だろ?」
「そう思いたいけど。」
「この基地内を歩き回ってる別のカーソン・ベケットがいるって言ってるのかい?」
「いや、そうじゃない。」
「ロドニー!」
「彼は星から戻って仕事を再開したんだ。全てがいつもの状態に戻った。」
カーソンは驚いて彼を見つめます。
「そして半年後、彼は… 爆発事故で死んだんだ。」
ロドニーは再び彼に目を向けます。
「僕らにとって、君は行方不明になっていないんだ、カーソン。
 君は…死んだんだよ。」
ベケットは驚いて溜息をつきます。

コントロールルーム。
サムはジョンと一緒に彼女のオフィスに向かって歩いています。
サムはジョンに尋ねます。
「接触してきたレイスと話した?」
「あいつはマイケルについて知っている全てを教えたと言ってるが、嘘をついていると思う。
 いいネタをやるまで、あいつは話さないだろうな。」
「それじゃ、他から情報を得ないと。」
「ああ、その事を話したかった。」
「ベケットの事?」
「彼はマイケルの作戦に関与していた。何か知ってるかもしれない。」
「あそこにわざと置いて、私達に探させたのかもしれない。
 今までの例から見て、罠かもしれないわ。」
「それはそうだが、疑ってたら何でもそうなっちまう。」
「ジョン、あなたが知っていたカーソンベケットは死んだのよ。あなたも知ってるでしょ?皆も?
 言いたくはないけど、思い出して。」

隔離室。
ロドニーの話にベケットは鬱になっています。
「君に酷な事は分かる・・・」
「そうだよ、酷すぎる!
 僕が本物のカーソン・ベケットじゃなく、もう一人の方は爆発で死んだなんて!」
彼は突然何か思いつきます。
「大変だ!母さんに言ってないだろうね?」
「えっ、言ったよ。」
「何だって!」
「君は死んだんだ!
 ぶっちゃけて言えば、君を埋葬までした!
 君の母親の教会で追悼式もしたんだ。
 僕も行ったよ!」
「そんなバカな!」
ベケットは立ち上がります。
「戻らないと!母さんと話をしなきゃ!」
ロドニーも立ち上がります。
「ダメだ、それは!君が行ったらどうなるか考えないのか?
 それに何て母親に言うんだ?」
「空軍が大間違いをしたって言えばいいじゃないか!」
「カーソン。」
ベケットは腹を立てます。
「ロドニー、これはあまりにも酷すぎる。ここにウィアー博士を呼んでくれ。
 今すぐ彼女と話しがしたい。」
ロドニーは別の悪い知らせを言わなければならないのかと、目を大きく見開きます。
「何?」
ロドニーの声は小さくなります。
「それは無理だ。」
「どうして?」
「彼女は死んだんだ、カーソン。彼女はレプリケーターに殺された。
 僕達を救うために、自分を犠牲にしたんだ。」
ショックを受けてカーソンは椅子に腰を落とします。
「すまない。僕は…他に何て言っていいか分からない。」
ベケットの声は小さくなります。
「この二年間、僕はずっと楽しみにしていたんだ。いつかアトランティスに戻ってこれる事を。
 こんな事になるとは想像してもいなかったよ。」

オフワールド惑星。
レイスのクルーザーは荒れた都市の縁に着陸しました。
マイケルは都市を通ってテイラ、カナン、2、3人のハイブリッドを連れて行きます。
マイケルの実験の結果、3人のアソスの男は鼻と並んで溝を持っているだけではなく、
眉の形もが普通の人間とは異なっています。
「この場所は何なの?」テイラは訊ねます。
「滅亡した場所だ。レイスによって滅ぼされ、生き残った者達にも見放された。
 私の仕事を行うのにぴったりの場所だ。」
彼は大きな倉庫の中に彼らを連れて行き、鍵の掛かった扉に近づきます。
「開けろ。」
ハイブリッドの一人が大きなドアを開けスライドさせます。マイケルはテイラに向きます。
「君が必要になるまで残していく。」
彼女は部屋の中を歩きます。
およそ15人の人々が中にいた。
彼らは驚きながらボンヤリと彼女を見てオズオズと近づきます。
男の声が彼女の上の方から聞こえてきました。
「テイラ?」
彼女は見上げて驚き、男は階段を降りてきます。
「ホーリング?!」
ホーリングは彼女に急いで彼女の手を取ります。
その他のアソス人達は囁きあいながら、彼らのリーダーが来た事に安堵します。
テイラとホーリングは再会に喜びお互い見つめると、アソス式の挨拶で額同士を触れ合います。

アトランティス。
医務室。
サムが入って来てジェニファーに近づきます。
「私に何の用、先生?」
「謎を解明したようです。」
ジェニファーはサムを大きなスクリーンに導きます。
「テロメアをご存知ですか、大佐?」
「人間の染色体の一部でしょ?」
「ええ、その通りです。
 細胞が分裂するさい、染色体はバラバラになり、再建されるときテロメアが消費されます。
 その結果、テロメアは時間がたつにつれて短くなります。
 年をとれば年をとるほどより短くなっていくんです。」
サムはスクリーンを見ます。
「それで、これはベケット先生のなの?」
ジェニファーはため息をつきます。
「ええ。
 スキャンの結果によると、彼の年齢のにしてはテロメアが30パーセント短いんです。
 説明をつけるとすれば、オリジナルのD.N.A.は成熟した細胞から採取され、
 テロメアが短くなってしまった。」
「それって…」
「パラレルワールドは除外できます。彼はクローンですよ。」

オフワールド惑星。
テイラはホーリングとアソスの女性と共に座っています。
「もう二度と会えないと思ってた。」
テイラはホーリングに言います。
「俺達は諦めなかった。いい状況じゃないが、希望は捨てていない。」
「残りの人たちはどこなの?」
アソスの女性が応えます。
「連れて行かれたわ。」
「連れて?」
「実験のために、あいつらの仲間に変えるの…皆を。」
「いつからこんな事が?」
ホーリーングが応えます。
「ここに連れてこられてからもう何カ月にもなる。」
アソスの女性が付け加えます。
「カナンが最初の犠牲者だったわ。」
「知ってるわ。マイケルの船で彼に会ったから…」
彼女は皆を悲しげに見回します。
「…でも皆にもそんな事しているとは思わなかった。
 本当にごめんなさい。あの日、私が村にいたら。」
「君がいたところでどうしようもなかった。
 50人もの連中がスタナーを持って夜の闇に潜んで村を襲ったんだ。
 俺達は完全にお手上げだった。」
アソスの女性が続けます。
「あの日以来、私達はずっと四方を囲まれた刑務所の中。」
涙をこらえてアソスの女性は俯きます。
「望みを捨ててはだめ。
 アトランティスの人たちは私の失踪を知ってるわ。彼らは私を探してるはず。
 私たちを救出に来るまで、それほど長くはかからない。」
アソスの女性は顔を上げます。
「それなら本当にいいけど、私たちは今までずっとあなたが救いに来ると思っていたのよ。」

アトランティス。
医務室。
カーソンは服を着て、ジェニファーがサムに見せていたスクリーンを見ています。
ジェニファーとロドニー、2、3人の武装した警備員もそこにいます。
ジェニファーはベケットに話しかけます。
「自分の、目で検査結果を見たいだろうと思って。」
「これって確かに僕の細胞サンプルなのかい?」
「私自身が二度も検査を行ったわ。間違いないわ。ごめんなさい。」
ロドニーは彼女の腕に手を置きます。
「そんなの…」
彼はカーソンに近づきます。
「そんなの関係ないだろ。」
「言うのは簡単だけど、自分が試験管で作られたと知ったら。」
「僕の考えじゃ、親友が死から蘇ったと思ってる。
 2、3テロメアが減ってたってどういう事じゃない!」
「慰めてくれてありがとう。でも僕が本物のカーソン・ベケットじゃないって事実は変わらない。」
「いや、それは違う。
 本物のカーソン・ベケットは残念だけどここにはいない。
 彼なら僕らを助けてくれようとする。」
「僕にできる事があれば何でもするよ、ロドニー。でも僕の助けは必要ないだろう。」
「どうして?」
ベケットは警備員をチラリと見て溜息をつきます。

後に。
サムのオフィス。
サムがジョンとロドニーと話しています。
「誰の事について話してるの?
 どう見たって、今までの中で最悪な人物によって造られたのよ。
 基本的に、彼はハイブリッドとそれ程違いはない。
 言ってる事を信じろっていうほうが無理だわ。」
サムの言葉にロドニーは意見します。
「まあ、彼が普通のクローンじゃないっていう事は否定はしないさ。
 でもマイケルは彼の記憶や、思考能力、それに人格さえ再生させたんだ。
 僕は彼と長い時間付き合ってきたんだ、断言する、彼はカーソンだ!」
「そういう事じゃないの、彼が持っている情報が私達にとって危険かも知れないって事よ。
 彼は私たちを助けたいと思っているかもしれないけど、
 まだマイケルに操られているかもしれない。」
「彼女に一理ある、ロドニー。彼はいったい何を話したんだ?」
「マイケルは別の星に少なくとも4つの施設を持っていて、その内部を知ってるって。
 どうやら、彼は物色して回るのが好きみたいだ」
「ゲイトアドレスは?」
「移動の際はいつも目隠しされれてD.H.D.は見られなかったって。
 一度だけマイケルの部下がダイヤルしているアドレスをちらっと見たと言ったけど。
 そこから始めてみようよ。」
サムとジョンは顔を見合わせ思案します。

ロッカールーム。
テイラを除きベケットを加えたシェパードのチームが海兵隊員と共に準備しています。
彼らの一人がロドニーにライフル銃を手渡すと、ロドニーはまだベストを身に着けているベケットを見ます。
「先に行ってて、ロドニー。後から行くから。」
ベケットの言葉にロドニーと一人の海兵隊員は台から無線機を取りドアに向かいます。
もう一人の海兵隊員はジョンにライフル銃を手渡し、無線機を手にして部屋を出ます。
ロノンは何も言わずに部屋から出ていきます。
ベケットはジョンを見ます。
「いつもなら声をかけてくれたのに?」
「勘弁してやってくれ。あいつはこういうのが苦手なんだ。」
「どういうこと?」
「ああ、まあクローンとかコピーとか死者が蘇るとか。エリザベスの時もそうだった。」
「ロドニーから聞いたよ。本当に大変だったね。」
「ああ。あいつもいつかは分かる。」
「そうだね。」
ベケットはバックパックを背負い肩掛けに腕を通しますが、もう片方の腕が抜けずに苦労します。結局ジョンが手伝ってやります。
「ありがとう。少しなまったみたいだ。」
「なまってないさ、先生。もともと得意じゃないだろ。」
「そうだった!」
ジョンは部屋を出始めます。
ベケットはジョンの後に続きますが、彼の肩を掴み止めます。
「ジョン、これだけ言わせて。僕を信じてくれてありがとう。」
ジョンは少しぎこちなく頷きます。
「君に後悔はさせないから。」
ジョンが再び頷くとベケットは彼の肩を軽く叩いて部屋から出て行こうとします。
「先生?」
ベケットは振り返ります。
「何?」
ジョンは無線機を取って彼に投げます。
「無線機を忘れてる。」
ベケットは無線機を掲げます。
「後悔はさせない。」

ワームホール旅行。
別のオフワールド惑星。
ジョンたちは村の居酒屋に入ります。
彼らが入って来ると客達は話すのをやめ黙り込みます。
ジョンはカウンターに行き周りの雰囲気を口にします。
「んん、サービスタイムに間に合ったみたいだな。」
しばらくすると、客達は再び話し始めます。ジョンはバーテンを見ます。
「聞きたい事があるんだが、
 ここに時々立ち寄るっていう俺らの友人を探してるんだ。」
バーテンはそっけなく応えます。
「ここじゃないんじゃないか?」
ロドニーが即座に言い返します。
「まだどんな奴かも言ってないだろ?」
「勘違いするな。ここに来る連中の顔なんかいちいち覚えてねえ。
 情報を探していなら、場所違いだ。」
ジョンはカウンターに身を屈め、バーテンに小さな声で話します。
「なあ、みんなの手前、体面を保ちたいのは分かるが、それなりの礼はするぞ。」
バーテンはニタニタ笑います。
「お前らがここから出て行くのが一番いい。」
その間ロノンはずっと居酒屋の中を見回していて、中二階の薄暗い場所を見つめます。
人影が動くき、床のきしむ音を聞くと、ロノンは皆に叫びます。
「銃だ!」
ジョン達は身を低く屈め、ロノンはカウンターの方へ飛び込みます。
自動ライフルの特徴のある音が中二階から聞こえ、バーテンは胸を撃たれ倒れます。
ジョンとロノンはカウンターを盾にして、ロドニーはベケットをつかんでしゃがませます。
「P-90だ!」
ジョンが叫ぶとカウンターの陰から、彼とロノンは発砲します。
撃ってきた男は全弾撃ちつくします。
即座にロノンは声を上げ立ち上がり、ブラスターを撃ちます。
男は胸を撃たれ中二階から一階へと転落します。
ベケットは急いで落ちた男に近づくと確認をします。
皆は銃を男に向けたままです。
「死んだのか?」
ロドニーが聞くとベケットは男の目を指で開きます。
「いや、すぐにアトランティスに運ばないと。」

アトランティスゲイトルーム。
スターゲイトは開いていて、サムがチームの到着を待ちながら立っています。
ジェニファーと医療班はストレッチャーを運んできます。
「何があったの?」
ジェニファーはサムに尋ねます。
「シェパード中佐のチームは戻ってくるんだけど、負傷者がでたみたい。」
ジェニファー達がゲイトにストレッチャーを運ぶと海兵隊員が負傷した男をつれてきます。
ジョン達が後に続いて出てきます。
サムはジョンに事情を尋ねます。
「何があったの?」
「こいつは俺達を撃ってきたんだ、P-90でな!」
ジョンがサムに近づくと、彼女は顔をしかめます。
「俺達は無事だが、こいつは中二階から頭から落ちて。」
「P-90?どこで手に入れたのかしら?」
「それが疑問だ。」
ベケットは医療班を指揮して、男をストレッチャーに移しています。
「3でいくよ。1、2、3、上げて!」
ベケットはジェニファーを見ます。
「G.O.C6。呼吸16回。脈拍150。血圧70の50だ。
 現場で圧迫止血の応急処置をしてある。」
ジェニファーは頷ずくと男を見下ろします。
男は頭の半分に包帯を目の位置まで巻きつけられていました。
彼女は包帯を少しずらし男の顔を見ると、驚いて一歩下がります。
ベケットはジェニファーに訊ねます。
「どうしたの?」
「この男を知ってる。名前はNabel。
 テイラとニューアソスに行ったとき、彼もそこにいたわ。
 私たちを殺そうとしたのよ!」
「大丈夫だよ。今は意識がないからね、それに当分の間、監視が必要だ。
 後で彼を改心させる事もできる。今は彼の命を救うのが先決だ。
 行こうか、みんな。」
ベケットと医療従事者がストレッチャーを押しだすとジェニファーは彼らの後を追います。

医務室。
医療従事者がベッドにストレッチャーを持ち上げると、
看護婦はジェニファーとベケットの手術着の装着を手伝っています。
Nabelがモニターに接続されると警戒音が鳴り響きます。
「血圧は?」
ジェニファーはマリー婦長に確認します。
「50の40です。」
「もっと低下するはずよ。」
彼女はブラスターで撃たれた胸の傷を見ます。
「この出血を止めないと。吸気器を!」
ベケットはまだ看護婦に手術着を着せられていて、
振り返ってジェニファーを見ると今は彼女がここの責任者だと悟ります。
「頚椎のエックス線の準備を。」
ベケットは彼女に近づきます。
「僕は何をする?」
「クランプして止血を、急いでください。」
「了解。」
ベケットは道具の準備をしようと振り返ります。
「かなり厳しい状態だわ…」
ちょうどその時カーソンは床に倒れ喘ぎだします。
「カーソン?!」
彼女は彼の脇にひざまずいて首の脈を確認すると、看護婦を見上げます。
「ベッドに彼を、急いで!」
看護婦達がベケットを担ぎ連れて行くと、ジェニファーはNabelに急いで戻ります。

サムのオフィス。
サムはシェパード達と話しをしています。
「そこに行くのは、ベケット先生の考えだったわ。」
「まあな、でも俺達が行かなかったら、マイケルの部下のを捕まえる事もできなかった。」
「待ち伏せされて、殺されかけたのよ。」
「そうでもなかったがな。」
ロノンの言葉にサムは彼を見ます。
「一人しかいなかったしな。」
「私たちの武器を使ってたのよ!」
「奴はアソスの村でマイケルのスパイだった!
 奴は僕達が設置した武器保管庫からP-90を手に入れたんだ。」
ロドニーはベケットを擁護します。
「だからといって待ち伏せされた事実は変わらない、故意じゃなくてもね。」
その時ジェニファーの声がスピーカーから流れます。
「カーター大佐、ケラーです。医務室に来て下さい。
 ベケット先生の事で問題が発生しました。」

医務室。
ベケットはベッドに横になり目を閉じ、酸素マスクをつけています。
サムとジョンたちはベッドの脇に立っていて、ジェニファーは彼らに説明をします。
「彼が倒れた後、内臓をスキャンした結果、内臓不全を見つけました。
 彼の細胞は組織機能を維持できるほど早く再生ができないようです。」
ジェニファーの説明にサムが聞き返します。
「どうして?」
「私に言えるのは、彼がクローンのため複雑になっているんだと。
 細胞の成長を刺激しようと一連の治療を行いました。
 でもそれは若返らせる療法をしてるようなものなんです。」
ジョンは理解できず訊ねます。
「どういう意味だ?」
「見かけは何でもないように見えますが内臓は…彼は、死に掛けています。」

後に。
ベケットは意識を回復してベッドに起き上がっています。
ジェニファーとロドニーが一緒にいました。
ジェニファーがちょうどベケットに容態を知らせたところです。
「何てことだ。ここに到着して以来、調子が悪かったから驚かないけど。」
「ごめんなさい、カーソン。できる限りの事はするわ。」
するとロドニーは疑問を口にします。
「どうして今なんだ?」
ジェニファーは意味が分からず聞き返します。
「どういう意味?」
「だって、彼は約2年もの間マイケルのところで生きてきたんだろ?
 だったら前からこんな症状が出ててもおかしくないだろ?」
「ええ、それはそうよね。」
彼女はベケットを見ます。
「推測が間違ってなければだけど、あなたの細胞が劣化している速度ならとっくに死んでたはずよ。」
ベケットはしばらく考えていると、ふと何かに思い当たります。
「彼は僕に週1回、注射をしていた。
 彼は僕が逃げださないようにする鎮静剤だと言ってたけど、僕の細胞の劣化を防ぐ薬だったんだ。」
「その薬をあなたが持ってるわけないわね?」
「うん。マイケル自身が僕に投与していた。
 でもシェパード中佐が僕を助け出した時、注射をしてから4日たっていた。
 今日が、その仮説通りなら丸7日で崩壊だ…」
「あなたがここに到着したとき、スキャンしてある。」
「そうだった。スキャナで検出できれば、それを隔離して合成できるかも。
 すぐ始めないと。」
彼はベッドを出ようとしますが、ジェニファーは彼を押し留めます。
「ダメよ。どこに行こうとしてるんです?」
「仕事をしないと。」
「いいえ、仕事は私がします。あなたは寝ていてください。安静にしていた方がいいわ。」
「ここで寝てろなんて本気で言ってるのかい、自分の命が危ないっていうときに?」
ジェニファーはロドニーに顔を向けます。ロドニーは肩をすくめます。

マイケルの惑星。
アソス人の収容所では、テイラが外の足音に気づき立ち上がってドアに歩きます。
カナンが呆然とした表情で立っています。
「カナン、私を見て。」
テイラの言葉にしばらくカナンは無反応ですが、彼女に向かって頭を向けます。
「私が誰なのか分かるでしょ?
 マイケルがあなたに何をしたか知らないけど、
 あなたの心の奥底では、まだ私を覚えてるはずよ。」
カナンのうつろな表情は変化しませんが、ドアに近づきます。
「あなたの助けが必要なの。」
彼女は後ろにいるアソスの仲間を見回します。
「皆、あなたの助けが必要なの。
 ここからすぐに逃げ出す方法を見つけないと、
 マイケルはあなたにした事と同じ事を皆にするのよ。
 私たちの子供がもうすぐ生まれるわ、そしたらマイケルは何かをするために連れて行かれる。
 そんな事を許してはダメ。」
近くのドアが開く音が聞こえると、カナンはドアの方をちらりと見て歩き去ります。
テイラは彼を呼び止めます。
「カナン!待って!」

アトランティス医務室。
カーソンとジェニファーは並んで机についています。
ジェニファーがコンピューターに向かっていると、ベケットは顕微鏡から顔を上げます。
「目が変になるよ。」
「どこかにあるはずよ。何か見逃してるのよ。」
「二度もチェックした。多分、薬の崩壊は思ってた以上に早いのかも。」
ジェニファーのコンピュータが鳴ります。
「ちょっと待って。」
ベケットは立ち上がって彼女に近づきます。
「どうしたの?」
「未確認のポリペプチド鎖よ。腎細胞のスキャンから見つかったわ。」
「レイスのD.N.Aと照合してみて。」
彼女はタイプします。
スクリーンは「進行中」というメッセージを示しています。
そして「照合完了」に変り「特定」というフレームがポップアップします。
「見つけたわ。これはレイスの酵素に間違いない。」
コード化された画面がスクロールします。
「ものすごく複雑だわ。そう簡単に複製は作れない。」
カーソンはがっかりした顔で彼女を見ます。
「そのようだね。」
彼は顕微鏡に戻って仕事に戻ります。

マイケルの惑星。
アソス人収容所。
テイラは床の上のベッドのようなところで眠っています。
ドアが開きマイケルの部下が数人のハイブリッドと入ってくるとアソス人たちは逃げ隠れします。
テイラが立ち上がって急いで移動するとホーリングは彼女に急ぎます。
「刺激するな。」
部下は室内をぐるりと見回してテイラを指し示します。
「彼女だ。」
ホーリングは彼女の正面に立ちふさがります。
「ダメだ。代わりに俺を連れて行け。」
ハイブリッドの一人がホーリングに近づきバックハンドで彼の顔を殴ると、ホーリングは倒れます。
アソスの女性が叫びます。
「ホーリング!」
アソスの女性、テイラ、数人のアソス人達はホーリングに駆けつけ助けます。
2、3人のハイブリッドがテイラに近づき引き立たせ連れて行きます。
「いや!」
「やめろ!やめてくれ!」
彼はよろよろと立ち上がりながら彼女に向きます。
「やめろ!」
ホーリングは痛みに倒れます。オリのドアは閉まります。

アトランティス医務室。
ジェニファーは二つの小さなガラスビンをマリーに手渡します。
「検査結果が出たら私にすぐに知らせて。」
「OK。わかりました。」
「ありがとう。」
マリーは部屋を出ます。
ベケットはため息をついて顕微鏡から顔を上げます。
「ちくしょう。」
「どうしたの?」
「自分の目で確かめてみて。」
ベケットが脇によけるとジェニファーが顕微鏡を覗きます。
しばらくして彼女は頭を上げると残念そうに彼を見ます。
「プライマーがD.N.A.のテンプレートにアニーリングされてないわ。」
「あまりにも汚染物質が多い。一からやり直しだな。」
「残念だわ、カーソン。でもまだ始めたばかりよ。
 簡単じゃない事は初めから分かってた。」
カーソンは深呼吸して、しかめつらをします。
「直ぐにできると期待してたけど…」
彼は痛みに唸り屈みます。
「カーソン?」
「大丈夫だ。平気だよ。」
「いえ、だめよ。状態が悪化してるわ。」
彼は再び椅子に腰を落とします。
「すぐに元に戻る。一時的な目眩なだけだ。
 P.C.R.2を持ってきてくれないか?頼むよ。」
「あなたには分かってるはずよ。」
「他の何をしてろって言うんだい?」
「冬眠ポッドでのあなたの細胞の劣化は食い止められる。」
「いやだ。そんな事はしないでくれ。」
「でも、分かって欲しいの!
 つまり、いつか、私がこの治療方法を見つけたら…」
ベケットは言葉を遮ります。
「もしできなかったら?僕は機械の中でずっと足止めをされる事になる。」
「無益な時間を過ごしてるより、その方があなたの命を永らえさせる事ができるわ。」
「いや。」
彼はため息をついて再び顕微鏡を覗き込みます。

マイケルの研究室。
研究室の周りには、多段ベッドのような仕切りがあり、アソス人達が横横たわっています。おそらく彼らはハイブリッドに調整中なのでしょう。
研究室の中央では、テイラが45度に傾けられた金属製のテーブルにいます。
彼女の手足は金属の留め金でテーブルに固定されています。
誰かが彼女の後ろから近づいてくる音を聞くと、彼女は頭を向けます。
「マイケル?あなたなの?」
彼女の側に来たのはマイケルではありません、カナンでした。
彼は彼女の横で立ち止まりますが彼女を見ません。
「ああ、カナン!」
彼はしばらくすると頭を動かし彼女を見ます。彼の顔には初めて感情らしきものが伺えます。
「早く!私を解き放って!マイケルがすぐにここに来るわ。」
カナンは辺りを見回し誰もいない事を確認します。
「彼はあなたにしたことを私にする気よ。お願い。」
彼は彼女を見ます。
「あなたを逃がしてあげられるのよ、皆も。」
初めて彼は彼女を見分けられたかのように彼女を見ます。
「テイラ。」
テイラは彼に微笑みます。
「ええ!私よ!」
ゆっくりと彼は彼女の近くに来て、そっと彼女のお腹に手を置きます。
彼は少し見つめると、彼女の左手の金具に手を掛け解除しようとします。
しかし開ける事はできず、辺りを見回して近くのテーブルからナイフを取って金具の隙間に差込みこじ開けようとします。
「そうよ!それでいいの!」
カナンは金具を外そうと留め金を必死の形相になりますが、突然無表情になり動きを止め直立した状態になります。
「カナン。どうしたの?」
カナンがテーブルから離れると、直ぐにマイケルが入ってきます。
マイケルはカナンに近づきいぶかしげに見つめますが、カナンは無表情のままたっています。
「出て行け。」
カナンは即座にきびすを返し歩き去ると、マイケルはテイラに向い見下ろします。
「さあ。始めよう。」

アトランティス医務室。
Nabelは頭に包帯をしベッドに横になっていましたが、意識を取り戻し頭をゆっくり動かします。
彼が枕もとの方を見ると、ジェニファー、ジョン、ロドニー、ロノンが立っていました。
NABELはジェニファーに言います。
「また俺の命を救う方を選んだのか。」
「苦渋の決断だと言っておくわ。」
ジョンが付け加えます。
「彼女が助けたわけは情報が必要だからだ。」
「マイケルの事か?ああ、知ってるよ。
 俺を助けるなんて無駄な努力だった。死なせればよかったんだ。」
「どうして?」
ロドニーが訊ねます。
「マイケルが俺を見つけ捕らえられたら、俺は死んだも同然だ。」
「まあ、それはそうかもな。だが、俺達が奴を見つけ出すのを手伝うなら、そうじゃなくなる。」
ジョンは取引を持ちかけます。
「奴にはあちこちにスパイがいる。俺がこの銀河のどこにいても奴に見つかる。」
「誰がこの銀河だと言ったんだ?」

マイケルの研究室。
「人間にも使えるように、この装置を変更しなければならなかった。」
マイケルはテーブルの横のコンソールに行って、パドルを手に取ると装置に取り付けます。
「急ごしらえだが、うまく動くはずだ。」
マイケルは笑うとコンソールに向かって起動し始めます。
「マイケル、過去の事で何があったとしても、お願いだから子供には手をださないで。」
マイケルは彼女に向いて顔をしかめます。
「そんな事は夢にも思っていない。
 さあ、リラックスするんだ。痛みなどない。
 聴いてみろ。」
マイケルはパドルを彼女の腹に当てます。すると赤ん坊の心音がスピーカーから聞こえます。
「君の子供は健康だ。」
しばらく心音を聞くと、マイケルはコンソールのスクリーンに顔を向けます。
「見ろ。」
赤ん坊の三次元画像がスクリーンに表示されます。
テイラはそれを見るとマイケルに向きます。
「どうしてこんな事を?」
マイケルは返事をせずコンソールに向かいスイッチを切ります。
「船の中でカナンは、私たちの子供が目的を果たすと。
 それはどういう意味なの?」
「君は贈り物を持っている。カナンもだ。
 それが子供にどう影響するのか考えた事はないか?」
マイケルは再びテーブルに歩きます。
「この子の遺伝子は特殊だ。そして私はハイブリッドを多く作ったが、解決すべき項目がまだある。
 この子がそれを解決する手助けとなるだろう。」
マイケルは後ろのテーブルに置いてある薬品を手に取り注射器に吸い取ります。
「君は彼を大切にしている。それが君の誇りだ。
 だがそうだとしても、君には少し助けがいる。」
注射器から空気を抜いて、マイケルは再びテーブルに近づきます。
テイラは心配そうに彼に向きます。
「マイケル、何をする気?お願い。」
「この子は必要だ。何も危害を加えるつもりはない。」
彼は彼女に注射し始めます。テイラはうめきます。

サムのオフィス。
ジョンがコントロールルームからやってくると、サムはジョンに向かって歩きます。
「どうだった?」
「Nabelがアドレスを言った。彼女の居場所が分かったよ。」

会議室。
サムとシェパード達がそこにいます。
ベケットはマイケルの基地の地図をホワイトボードに書き込み、矢印でルートをマークしています。
「これはマイケルの基地の1つだ。
 研究室は本館の中央にあるけど、見つけにくい場所にある。
 もし彼がそこにいれば警備は厳重だ。」
「素晴らしいな。」
ジョンが皮肉をこめて言うとサムが尋ねます。
「そこに間違いないという確証は?」
「Nabelの情報は合ってる。僕を信じて、この場所に間違いない。
 僕も連れて行くべきだ。」
他の者達は顔をしかめお互いを見ます。
カーソンはホワイトボードに向き直ります。
「これは基地のごく一部だ。内部は迷路になっていて、迷うのは確実だよ。」
サムは渋々納得します。
「分かったわ。ありがとう、先生。」
「どうも。」
ベケットは部屋を出ます。
サムは他の者に向きます。
「皆はどう思う?」
ロノンが応えます。
「まあ、先生が俺達を罠にかけようとしたとしても、いようがいまいが変わらないな。」
ジョンが続けます。
「だがそうでなければ、かなり役に立つかも。」
「おいおいおいおい、待ってくれ。
 彼をこの任務に連れて行ったら死んでしまうかもしれないんだぞ。
 そんなむごい事、頼みたくはない。」
ロドニーの言葉にサムが答えます。
「彼に頼んではいないわ。彼が買って出たのよ。」
「ちょっと待ってくれ!」
「落ち着け、ロドニー。」
「何でだよ?彼を安物のコピー品と同じように、使い捨てするような事を心配してるんだ。」
「彼だって、テイラのために申し出たんだ。お前だって彼の立場なら同じ事をしたはずだ。」

後に。
驚くほど疲れきったベケットは武装した警備員と共に廊下を歩いています。
彼の歩みは遅くなり始め、腹を押さえ呻き声を上げて膝を崩します。
警備員が彼を立たせようと手を伸ばします。
「大丈夫だ。平気だよ。ありがとう。OK。」
ロドニーは心配してベケットに急ぎます。
「カーソン。」
「ロドニー。下に行って装備の準備をしないと。」
「自分を見てみろ!立つこともできないじゃないか。
 君は行かなくてもいい。」
「君が言ったんじゃないか。本物のカーソンなら、何もしないで心配しながら待つ事はないって。」
「本当のカーソンなら僕のアドバイスなんか無視してる。
 なあ、僕にそんないい訳はしないでいい。」
「分かってる。心配なのかい?大丈夫だよ。」
ベケットは警備員を促します。
「行こう。」
ベケットと警備員は立ち去ります。
ロドニーは辛そうに彼らの後姿を見つめてから、彼らの後を追います。

ワームホール旅行。
マイケルの惑星。
シェパード達は基地の中を進んでいます。
ロドニーはライフサイン検出器を起動します。
「この上に沢山の反応がある。」
「多分、アソス人達だ。」
ロノンが応えます。
「ああ、多分、フランケンシュタインの群れになってるんだろう。」
彼らは前方へ進んでいきます。
「先生?」
ジョンはベケットにどちらに行くか訊ねます。
ベケットは指を刺しながら応えます。
「こっちだと思う。」
ロドニーはベケットのあいまいな言い方に強い口調で名前を呼びます。
「カーソン。」
「いや、間違いない。こっちだ。」

研究室。
マイケルは2、3人のハイブリッドと共に研究室に戻ります。
テイラは不信に思い訊ねます。
「何が起きたの?」
彼女を無視してマイケルは近くのコンソールを操作します。
テイラは彼を見ます。
「あなたの心が乱れてるわ、マイケル?怖がってる。」
「そういうわけではない。心配なだけだ。」
彼は別のコンソールに行ってスイッチを切ります。
部屋の中のアソス人たちのハイブリッドを含むプラットホームの明かりが消えます。
「何をしたの?」
「シャットダウンした。」
テイラは一瞬、目をぎゅっと瞑ります。
「皆を殺したのね。」
「どんな証拠も残しておくわけにはいかない。すぐに連中がやってくるだろう。」
マイケルは彼女を拘束している金具のスイッチを切ります。
ハイブリッドはすぐに彼女の腕を押さえます。
「彼女を船に連れて行け。ここを放棄する。」

基地内の別の場所で、シェパード達はハイブリッド二、三人から90Pで攻撃を受けます。
彼らは陰に隠れ応戦します。
近くのオリにいたアソス人達は銃声を聞きます。
ホーリングはドアに駆け寄り格子越しに仲間を見ます。
ジョンはベケットをチラッと見ます。
「俺達の銃で撃たれるのはなんともな。」
「どんな武器でも僕は好きになれないよ。」
ベケットは銃撃戦に参戦しません。
ジョンは何とか一人を撃ち倒し、ロノンがもう一人を撃ち倒します。
ジョンたちが隠れている場所から用心深く出て来ると、収容所からホーリングが大声で叫びます。
「おーい!誰がそこにいるんだ?」
シェパード達は慎重に用心しながら部屋を進みます。
「助けてくれ!」
「聞こえたか?」
ロノンが声を聞くと、ロドニーは声の主に思い当たります。
「ホーリングか?」
彼らは声のする方へと向かいます。
「ホーリング?」
ジョンは声を掛けます。
「中佐!こっちだ!」
ジョン達はドアに走ります。
「シェパード中佐。あなたに会えてよかった。」
「俺達もだ。」
ロノンはドアを押して開けます。
「大丈夫だったかい?」
「俺は大丈夫だ、他の者達を。」
ホーリングはジョンに言います。
「テイラは、あなたが来ると言っていた。」
「彼女は?」
「マイケルが連れて行った。彼女を追いかけてくれ。」
「OK。皆を連れて行ってくれ。俺達も後から合流する。」
チームがアソス人たちを解放している方へとホーリングは向きます。
「皆、時は来た。さあ!元気を出して。出て行くんだ!皆!」

その後まもなく、チームは研究室に駆け込みます。
疲れ果てたベケットはプラットホームを見回します。
「なんて事だ。」
ベケットはプラットホームに向かい、中にいる男の脈を確認します。
「皆、死んでいる。」
ジョンとロノンは部屋の中央のテーブルに行きます。ロノンは注射器を拾います。
「シェパード。」
彼はジョンに注射器を見せます。
「テイラにかな?」
ロドニーが不安そうに言います。
「いや、そうは思いたくない、そんな風に考えるな。」
その時レイスのスタナーのビームが上の方から放たれます。
二人のハイブリットが階段を駆け下りてきて、陰に隠れながら撃ってきます。
ジョンたちも陰に隠れます。
上の階では別のハイブリッドがP-90をチームに向けています。
ロドニーはライフサイン検出器を出してチェックすすると、ジョンに叫びます。
「急がせるつもりはないけど、エネルギーが増大してる。
 誰かが船を起動してる!」
ジョン達はハイブリッドを片付けようと応戦します。
ベケットは突然部屋から走り出します。
ロドニーが振り返るとベケットは陰に回りこんだところでした。
「カーソン!カーソン!」
ロドニーは動く事ができず銃撃戦に戻ります。

近くの場所で、二人のハイブリッドがテイラを連れて歩いています。
カーソンは後ろからやってくると一人をピストルで四発撃ち倒します。
もう一人のハイブリッドがベケットの方に振り向くと、ベケットはすかさず二発を撃って倒します。
テイラは後ろを振り向き驚いて彼を見つめます。
「カーソン!」
「分かるよ。僕に会えるとは思ってなかったんだろ。」
彼は彼女に向かって近づきますが、彼女は怯え後退します。
「大丈夫だ。君を助けるために来たんだ。」
彼女は頭を横に振ります。
「無理よ。」
「悪いけど、説明してる時間はないんだ。
 シェパード中佐達が研究室で待ってる。行かないと、直ぐに。」
「できないわ。」
ベケットは彼女の手首を押さえます。
「テイラ!」
「カナンが、この子の父親が、まだここにいるの。
 彼を置いて逃げるわけにはいかないわ。」
「時間がないんだ。」
彼女を引っ張り始めますが、マイケルが彼らの目の前に現れます。
「その通りだ。」
カーソンはテイラの前に立ちふさぎ、マイケルに銃を向けます。
「逃げられるときに逃げてればいいものを、感情が邪魔をしたな。」
マイケルは歩み寄ります。
「後ろに下がれ。これは警告だ。」
ベケットの言葉にマイケルは立ち止まります。
テイラはきっぱりとベケットに言います。
「彼を撃って、カーソン。撃って、直ぐに!」
恐れずにマイケルはベケットの目を見つめたまま再び歩き出します。
ベケットの手が震え出します。
「彼は私を撃ちたくはない。
 正確に言えば、撃ちたいと思っても、私の他の創造物と同じように私の支配下にある。」
ベケットは歯を食いしばり引き金を引こうとしますができません。
テイラはベケットを見ます。
「カーソン。」
ベケットは辛そうな顔をします。
「すまない、テイラ。」
テイラは彼のピストルを掴もうとしますが、マイケルがレイスのスタナーを取り出し彼女に向けます。
「やめるんだ。」
テイラが動きを止めると、マイケルはベケットを見て彼の手からピストルを奪います。
「具合が悪そうだな、先生。私と一緒にいるべきだった。
 注射をしてやりたいが、今は持っていない。
 とにかく、あなたの役目は終わった。」
マイケルはベケットにスタナーを向けて撃ちます。
ベケットが呻いて床に倒れると、マイケルはテイラに向きます。
「出発の時間だ。」
マイケルは彼女の腕を掴み彼女を引っ張ります。
研究室では、銃撃戦がまだ続いています。
ロドニーが上の階にいるハイブリッドを撃ち殺しますが、一階ではスタナーを持った二人が巧妙に隠れています。
ジョンは隠れている場所からチラリと様子を伺うと、ロノンに向きます。
ハイブリッドの後ろにはいくつかの背の高い金属性のタンクがあります。
「見てみろ。東壁だ。ガス・ボンベじゃないか?」
「そうだな。試す価値はある。」
少しの間待って、彼ら二人は隠れている場所から立ち上がります。
ジョンが援護射撃をするとロノンはブラスターでタンクを撃ちます。
ガスタンクは轟音をたてて爆発し、ハイブリッドたちを吹き飛ばします。
倒れたハイブリッドが起き上がろうとすると、ロノンとジョンが二人を撃ちます。
近くにいたロドニーは隠れている場所から出て来ます。
ジョンはロドニーに向きます。
「ベケットは?」
ロドニーはベケットの走っていった方を指差します。
「あっちだ。」
彼らは基地内を走りだします。
彼らがたどり着くと、二体のハイブリッドが倒れ、その先にベケットが倒れているのを発見します。
ジョンはハイブリッドに銃を向けたまま、ロノンとロドニーに手招きします。
「カーソンだ。」
ジョンとロノンがハイブリッドの武装を解除していると、
ベケットが意識を回復し、ロドニーは彼に急ぎます。
「どうなったの?」
「君が逃げ出したんだろ、こっちが聞きたいよ。」
「テイラが。」
「彼女を見たのか?」
ジョンの言葉にベケットは何が起きたか思い出します。
「僕のせいだ。」
ビルの外からエンジンの轟音が聞こえます。
「あれは何だ?」
ロノンが音に気づくとロドニーが応えます。
「船だ!」
ジョンはロノンを見ます。
「先生に手を。」
「ああ。」
ジョンとロドニーは最も近い出口まで走ります。
ロノンはベケットのベストをつかんで強引に立たせます。
「さあ。」
彼らもジョンたちの後に続きます。
四人が出口まで来ると、開いていたドアからマイケルのクルーザーが飛び立っていくのが見えます。
彼らは空に消え去っていくクルーザーを見上げます。

アトランティス。
ジョンとサムが廊下を歩いています。
「隅々までさがしたが、彼女はいなかった。」
「それじゃあ、彼女はまだ生きていて、マイケルと一緒にいると思っていいわね。」
「囚人がいるさ。連中に吐かせてやる。彼女を見つけださないと。」
彼らが医務室に入ると、ベケットの枕元にロドニー、ジェニファーが立っています。
ジェニファーは入り口にいる彼らに近づきます。
「どんな具合なんだ?」
「彼の肉体は限界です。これ以上何の治療もできません。
 もう待つことはできません。」
「ゼレンカが冬眠ポッドの準備をしてる。」
ベッドではベケットが苦しそうにロドニーに話しています。
「僕の目の前に彼がいたんだ。ただ、引き金を引けばよかっただけなのに。」
ベケットが自分の行動に悔やんでいるとロドニーが慰めます。
「なあ、それは君のせいじゃない。奴は君の心を操ってたんだ。
 皆を操るように、ハイブリッドみたいにさ。」
「それでも、役に立たなかった。」
「君は役に立ったさ。
マイケルを逃がしちまったけど、奴を捕まえるのは時間の問題だ。」
ベケットは彼を見ます。
「ロドニー…」
彼は慌ててベケットの言葉を止めます。
「なあ、何も言うな。そんなに大騒ぎするようなことじゃない。
 君の治療法方が分かるまで、冬眠ポッドに入るだけだ。」
ロドニーは微笑もうとします。
「僕は医者だよ。自分の事ぐらい診察できる。
 僕がポッドに入ったら、もう出てこれない可能性が大きい。」
ベケットが本当のことを言っているのを知っていて、ロドニーの顔は暗くなります。

後に。
冬眠ポッドの前で、サムとロドニーはそれぞれのコンソールを操作しています。
ロドニーは冬眠ポッドの近くに立っているジョンとロノンに近づきます。
以前エリザベスがS01E15で出てきた場所です。
ロドニーはポッドを見てから他の者達に向きます。
「よし。準備完了だ。」
ジェニファーが車椅子でベケットを連れて来ます。
ベケットは検査着に着替えています。
車椅子を止めると彼女は彼の肩に腕を回し立たせます。
「聴いてください。私たちは治療法を見つけるまで頑張ります。
 チームを結成しました、最高のね。」
「ありがとう。」
「どっちにしても治療法は見つけるし、すぐにマイケルも捕らえる。」
ジョンの言葉にベケットはかすかに微笑んでから、サムに向きます。
「サマンサ、母宛の手紙が僕の部屋にある。
 心配ないよ。何も変な事は書いてない。
 僕の荷物を片付けてたら見つけたと言ってくれればいい。
 ずっと思ってた事、昔に話すべき事を書いてある。」
サムは頷き目に涙を浮かべます。
「間違いなく、お母さんに渡すわ。」
「ありがとう。」
彼女が彼の腕をなでるとベケットは頷いて、次にジョンに向いて握手をします。
「心配いらない、先生。すぐにここから出してやるさ。」
「中佐。彼女を連れ戻してくれ、すぐに、いいね?」
「任せておけ。」
ベケットは頷くとロノンに歩きます。
ロノンは残念そうに彼を見ます。
「こういうのが苦手なんだ。」
「分かってるよ、ビッグマン。」
ベケットがビッグマンと呼んだ事にロノンは少しモジモジします。
「ごめん。」
ベケットが謝るとロノンはベケットを抱きしめてから不器用にその場を離れます。
次にベケットはロドニーに向きます。
ロドニーはポッドを身振りで示します。
「大丈夫、何も感じないから。最初の起動時にちょっと冷たいかも知れないけど。」
ベケットはポッドに入ると、正面を向きます。
「君の状態はこの機械で24時間ずっとモニターされる、だから…」
彼は一生懸命微笑もうとしますが、顔が強張ってしまいます。
「ありがとう、ロドニー。」
彼は皆を見回します。
「皆、聞いて欲しい。数日間だったけど、君達に再び会えてよかった。起きた事は別にしてね。」
「これに夢を見れるようにプログラムしようと思ってるんだけど。興味ある?
 高地で釣りもできる…」
ロドニーは微笑んで、近くに顔を寄せ小さい声で話します。
「…二人っきりで背の高いブロンドのマッサージ譲とか?」
「いや、ロドニー。僕は大丈夫さ。」
ロドニーは無理に微笑みます。
「そうだよな、その通りだ。これはさよならじゃなくて… 「また後で」だ。
 意見が一致したな。」
「そうなのかい?」
「僕がそう思えればいいんだ。」
ベケットは健気に微笑もうとします。
「そうだね。」
ベケットは最後にもう一度皆を見回します。
「また後で会おう。」
彼は準備ができている事を示して、体を体をまっすぐに伸ばして正面を向きます。
ロドニーは他の者達を見回し、冬眠ポッドを起動できずにうろたえた表情になります。
彼はやっとの思いで手にしているエンシェントの装置を持ち上げタイプします。
冬眠ポッドは起動し始めます。
しばらくの間ロドニーは顔を上げられず、悲しげな顔で俯いています。やっとの思いで顔を上げると、彼を取り囲んでいる皆を見つめます。
皆は悲しげにベケットの凍りついた姿を見つめていました。

おしまい