仮面ライダー生誕30周年記念作品
仮面ライダー]U(カイゼル)こちらのHPにあったオリジナルストーリーを拝借いたしました。

基本設定
第1話 序章、ミスクリェーション
第2話 謎のライダー、その名は、]U(カイゼル)
第3話 ミイラ怪人軍団の恐怖!
第4話 新たなる力、神か悪魔か…
第5話 白夜…銀狼の影
第6話 深海の恐怖…


第1話 序章、ミスクリェーション

プロローグ
最近では少なくなってしまったが、一昔前ならどこにでもあるような、
個人経営のオートバイ専門のモーターショップ。
その看板には"立花モータース"と書かれている。
そう、この"立花モータース"とは、かつて仮面ライダーたちに父として慕われた、
立花藤兵衛その人が経営するモーターショップであった。
立花は油にまみれたツナギを着てバイクの修理をしていると、
その背後に一人の青年が近づき声を掛けてきた。
「おやっさん、ご無沙汰しています」 
青年の声に立花が振り向くと、声の主に笑顔を返した。
「おい、滝じゃないか、久しぶりだな」
声の主は滝和也だった。
滝和也は以前ショッカーの計画を阻止するために、
インターポールから派遣されたFBI捜査官だった。
ショッカーを追い日本で、本郷、一文字の二人の仮面ライダーに出会い、
世界平和のために戦って、ショッカーを壊滅させた仮面ライダーの協力者だ。
アメリカに戻った滝は当初FBI内では、
ショッカーを一人で壊滅させたヒーローとして扱われたが、
仮面ライダーの話をするたびにショッカーとの戦いで気がふれてしまったと思われていた。
しかし秘密結社バダンの襲撃により再びライダーたちと一緒に戦ってFBIの信頼を取り戻していた。
「お前も、本郷や一文字も、 ひょいっと現れたと思うと、
 またすぐにどっかいっちまう、まったく冷たいやつらだ」
久しぶりの再会に立花は興奮していた。
バダンが地球を侵略しようとした時以来の再会だった。
「すんません。ところで、本郷と一文字は?」
「おいおい、あいつらも来るのか、久々の、Wライダーだな。
 でも、お前たちが集まるなんてことは、なにか事件か?」
ライダーたちの宿命ゆえ仕方がない事だったが、
立花はその過酷な戦いを目の当たりにして一緒に戦ってきたのだった。
「ええ、いつの時代でも良からぬことを考えるやつらはいるんですよ」
滝は新たな組織が動き出したことを立花に伝える。
「ショッカーか?」
「名前までは、しかし今回は、かなり厳しい戦いになるでしょう」滝の表情が曇った。
「そうか…」
立花もライダーたちの安否を思い暗い表情になったがすぐに笑顔を滝に向けた。
「今日は、ゆっくりして行けるんだろ?久しぶりにみんなで飯を食おう、な」
「まさか…おやっさんの手料理じゃないですよね?」
立花はライダーたちの隠れ家として職を次々と変えていったが、
その中でも喫茶店を経営していたときのことを滝は思い出していた。
コーヒーだけは確かに天下一品の味だったが、料理の方はいただけなかった。
アルバイトに来ていた娘が手伝っていなかったら客など来なかっただろう。
「あたりまえだ。わしが作らずに、誰が作るんだ」
立花は昔取った杵柄と自信満々に答えた。
「え〜〜、勘弁してくださいよ!ありゃ人間の食うもんじゃないっすよ」
二人は顔を見合わせ笑いあった。
「志郎と大介も呼ぶか、あいつらも今、日本に来ているから」
立花は風見志郎から来日の知らせが来ていた事を思い出した。
「そうなんですか、いいですね、呼びましょう。
 結城や、神、筑波、沖なんかも呼んでやりたいですね」 
滝は歴代ライダーたちとはバダンとの戦いで知り合っていた。
本郷と一文字は後輩ライダーたちに少し甘いところがあり、
二人の不足している部分を滝が後輩ライダーたちに活を入れてきたのだ。
「そうだな、たまにゃあ、みんなで、飯食いたいな」 
立花もライダーたちを思い出して遠い目をしてつぶやいた。

中国奥地、深夜の森の中で対峙する四つの影は二人づつ組になって向かい合っていた。
空は晴れて今宵は満月だったが雲が月を覆い暗い森をなおいっそう暗くしていた。
一組は人の姿に似ていたが異形の姿をしていた。
もう一組は青年のようであったが目の前にいる異形の姿に驚いている様子はない。
月を覆っていた雲が晴れ月が顔を出すと四つの影に光を投げかけた。
一人は城茂・ストロンガー、もう一人は筑波洋・スカイライダーだった。
二人に向かい合う影の一つはコウモリと人間が合わさった姿をしている。
もう一つの影はクモと人間を合わせた姿をしていた。
「貴様たちの目的はなんだ!!」茂が向かい合う影に言った。
「言わずと知れたことよ、世界征服人類抹殺だ!」
コウモリ怪人が不気味な笑いとともに答える。
「そんな事はゆるさん!我々ライダーがいる限り!」筑波が言った。
「ライダー?ああ、あのミスクリェーションか。
 貴様らごときでは、我々ラーストバタリアンにとっては何の障害でもないわ!
 力の差を見せ付けてくれるわ!」
クモ怪人が言った。

第2話 謎のライダー、その名は、]U(カイゼル)

「ミスクリエーション、何の事だ!」茂が聞き返した。
「お前たちのような出来損ないのことだ。ケェーケッケッケッ」 
茂は手袋を脱ぎ捨て、「変・身、ストロンガー!」の掛け声とともに
コイルアームを擦り合わせてエネルギーをスパークさせた。
「スカイ、変身!」 
筑波も同時に両手を頭上でクロスさせ二人は変身した!
その時、クモ怪人が異常なまでの速さで二人に迫る。
「チャージアップ!」
ストロンガーの胸のマークが回転をし超電子人間へと二段変身をした。
「セイリングジャンプ!」
スカイライダーはベルトの脇に装備された重力低減装置を作動させ上空へ舞い上がる。
「シャァー、これでもくらえ〜〜」
クモ怪人の口から粘着質の糸のような物がストロンガーを襲う。
その糸に、自由を奪われていくストロンガー 。
「ストロンガー、今助けに…、んっ、もう一体の怪人は?」
空高くジャンプしたスカイライダーの背後にコウモリ怪人の影があった。
スカイライダーのジャンプより、さらに上空から鋭い爪がスカイライダーを襲う。
満月の夜空に不吉な影を落とした。
「ギャァギャギャギャギャギャァ〜〜〜、これでもくらえ〜〜」 
コウモリ怪人はスカイライダーに襲い掛かった。
「ムゥ、とぅ!」
コウモリ怪人の鋭い爪の一撃で地面に落下するスカイライダー。
何とか体制を立て直し着地したが、コウモリ怪人は続けざまに超音波攻撃を発した。
ギュルルル〜〜 
「うわ〜〜、頭が、頭が割れそうだ」
前のめりに地面に倒れるスカイライダー 。
糸に絡め取られているストロンガーがスカイライダーの危機に思わず声を上げた。
「スカイライダー!ムゥ、こんな糸など、超電子ダイナモの放電で焼ききってやる。
 待っていろスカイライダー」
バァババババァ〜〜ン
しかし糸は焼き切れるどころかますますストロンガーを締め上げていく。
「ケェケッケッケェ、そんな物で、俺様の糸がきれるものか」
クモ怪人はストロンガーに巻きつけた糸からエネルギーを吸い取っていた。
「こんな事が、俺の攻撃がまったく効かない上に、超電子エネルギー まで吸い取られていく…」 
二人の怪人に、なすすべも無く倒れる二人のライダー。
「どうする、こいつら、再改造を"あの方"にお願いするか?」クモ怪人が言った。
「こんなミスクリエーションでも、再改造すりゃ少しくらいの役に立つかもしれんな」
コウモリ怪人が答えた。
するとクモ怪人はコウモリ怪人ではなく、誰に言っているのか話し出した。
「ところで、さっきから逃げもしないで盗み見しているやつがいるが」 
そう言うとクモ怪人は、振り向きざまに口から糸を吐く。
すかさずよける影。
「おっと危ない、まったくお前らのようなやつらがいるから、
 いつまでたっても俺たちが戦わなければいけないなんて」
その影からもう一人の男が出てきた。
「まあ、そんなところだが、見て見ぬふりは、できんだろ敬介」 
「そうですね、結城さん」 
結城丈二・ライダーマンと神敬介・Xライダーだった。
「それに、そろそろあいつも追いつくころだしな」結城が言った。
「大・変・身!!トゥ!」神は変身をした。
「Xライダー!見参!」
ライドルを引き抜き、横一文字に構える]ライダー。
「エイ!ヤァ!タァ!」すかさずマスクをつける結城。
「ライダーマンもいるぜ!」
腰のバックルからアタッチメントを取り出す。
「パワーアーム!」 
右ひじに挿入すると、ライダーマンの右腕が鋭い爪状に変化する。
「こしゃくな」 
クモ怪人が言い放ち、すかさず]に向かい、糸を吐きかける。
ライドルスティックをバトンのように回し、攻撃を受け流す]。
「中途半端な改造だな!」コウモリ怪人の爪が低空からライダーマンに襲い掛かる。
ガッキーン!
「半端じゃないパワーだな」
ライダーマンのパワーアームがかろうじて受け止める。
かろうじて攻撃を受け流す二人のライダー。
そのとき、森の奥からもう一つの影が現れた。
「ありゃ、ナニやってるんですか二人とも、自分たちだけ」
男はライダーマンに向かってあっけらかんとたずねる。
「見てわからんのか!」
ライダーマンがその男を怒鳴り飛ばした。
「いやぁ、わかりますけどね、そんでもって、俺は、どおしましょうかぁ?」 
男は相変わらずだ。
「まったくこいつは、こいつ本当に大丈夫ですか?」
Xライダーがライダーマンに聞く。
「わ、わからん、こいつだけは。西岡!とっ、とにかく変身しろ!」 
ライダーマンは男を西岡と呼び変身すよう命令を下した。
「そんじゃぁ、変身!!」
西岡が変身ポーズを取ると鋭い光に包まれた。
その光が弱まってくると、クロームシルバーのマスクに、黒いプロテクター、
赤いグローブに、赤いマフラーの異形の戦士が現れた。
「仮面ライダーカイゼル!!推参!なぁ〜〜んちゃって、かっこいいでしょ」
変身をしても口の利き方は一向に変わらない。
「どうでもいいが、何とかしろ!」ライダーマンはカイゼルに言った。
「はいはい、何とかしましょう」
まるで目の前に何も無いかのごとく、ツカツカとコウモリ怪人に近寄るカイゼル。
「貴様の方が先に死にたいらしいな、ギャァギャギャ」
コウモリ怪人の爪がカイゼルを襲う。
カイゼルはよける事も無く、その爪を右腕で軽く払うと
バキッ!
いともたやすく爪が砕け地面に落ちた。
「アギャァ〜〜、俺様の爪が」
コウモリ怪人は折れた爪を見ながら悲鳴をあげる。
「手ごたえ何にもないっすよ、こいつら、一気に、カタつけていいっすか?」 
カイゼルはXライダーの方に振り返って聞いた。
「好きにしろ!」Xライダーは勝手にしろとばかりに答えた。
「そんじゃ、好きにさせてもらいます。そこのコウモリ君、相手が悪かったね」
自分の爪を、信じられないものを見るようにうろたえるコウモリ怪人に、
パンチ一閃、軽いジャブのようなパンチだが、コウモリ怪人の右脇から左肩口までを貫通し、
言葉無く二つの塊に成り下がるコウモリ怪人。
「神さん、そっちもやりましょうか?困ったときは、相身互いってネ」
カイゼルはXライダーに向かって軽口をたたく。
「本当にこいつは、しかしカイゼルの性能試験でも有るし、やってみろ !カイゼル!!」
Xライダーがカイゼルに許可を与えた。
「ハイな」
カイゼルは二・三歩助走し軽くジャンプをしたが、
その高さは助走から考えられないような高さで、
まるでセイリングジャンプのような高さまで飛び上がった。
「カイゼルキーック!!」
クモ怪人の体を突き抜けるカイゼルのキック。
「こ、こんな馬鹿な…"あの方"になんとしてもお伝えしなくては…」
そういい残し、クモ怪人は動かなくなった。
軽く手足を払い、何事も無かったようにたたずむカイゼル。
「流石に、俺と敬介が協力しただけの事はあるな」
スカイライダーに肩を貸しながら、ライダーマンが言った。
ストロンガーに纏わりついた、糸を取りながら、Xライダーが答える。
「性格に、問題が無ければ、もっといいんですがね」
「しかし、まさかここまで強いとは。その上、例のパーツが出来上がったら…
 敵にだけは、したくないな」ライダーマンが言った。
「本当ですね」Xライダーも同感だとうなずく。
クモ怪人の残骸の頭部がかすかに光ったが誰も気づくものはなかった。
その口の中に小さな光が現れ、
「"あの方"に、お伝えしなくては」
今にも消え去りそうな小さな声で言うと、
その口の中から小さなクモが這い出し、草むらに消えていった。

第3話 ミイラ怪人軍団の恐怖!

エジプトにほど近い砂漠と、草原の境目、内戦が勃発しているS国との国境。
たたずむ二人の男、沖一也と南光太郎である。
またの名を、仮面ライダースーパー1、仮面ライダーブラックRX。
「このあたりだな、例のものが目撃されたのは、光太郎君」沖が砂漠を見渡して言った。
「ええ、沖さん、民間人が二百人も惨殺されたんです。
 しかも、数少ない生存者は、完全に気がおかしくなってしまって、
 うわごとのように、"王家のたたりだ、ミイラが襲ってくる!"そんな事しか言わないんです。
 殺された人は、まるでとてつもない力で引きちぎられた様にバラバラなんです。
 しかも、中には歯形のついたものまである」
光太郎は情報を沖に伝える。
「まさか、ジンドグマやクライシスが復活したんじゃあるまいし、妙な事件だな」沖が言った。
「ええ、それで沖さんに協力してもらおうと…忙しいとこ申し訳ありません」光太郎が謝った。
「いや、例のものは完成したし、後は結城さんと神さんがあいつのテストを兼ねて、
 中国の茂さんと筑波さんの所から帰ったら最終調整するだけだ」
沖はカイゼルの事を知っているらしい。
「いよいよ十二人目のライダーですね、楽しみだな」
光太郎もカイゼルの事を知っているようだ。
「おそらく、歴代ライダー最強のライダーになるぞ!」沖が嬉しそうに言った。
話の内容からすれば、全ライダーがカイゼルの事を知っているらしい。
そんな話をしながら歩いてゆく二人。
その先に広がる砂の大海原… 
「この先だな、事件のあった場所は。何か手がかりが残っていればいいんだが」
沖が辺りを調査しようとした時、光太郎が声を掛けた。
「ちょっと待ってください、あそこに人が」
その声に人影が振り返った。
「あれ?沖さんに、光太郎じゃないか、久しぶり」
人影は村雨良・ゼクロスだった。
「村雨?村雨良か?」沖が確認するように聞いた。
「ご無沙汰しています、沖先輩」村雨が挨拶をした。
「お前ってやつは、姿を見せんと思っていたら、今まで何処にいた」
沖が連絡もせず単独行動をしていた村雨をとがめるような、また冗談めいた口調で聞いた。
「いやぁ〜、俺は忍者ですからね、神出鬼没が、身上ですから。
 ところで、二人で旅行ですか?」
村雨も冗談めいた口調で答えた。
「馬鹿な事を、しかし、お前がいるってことは、まさか、バダンか?」
沖は真剣な顔に戻り村雨に聞いた。
「流石に、するどい!まだ調査中ですが、何かの組織が、動いているのは、間違いないようです」
少しはなれたところで、光太郎が何かを拾い上げた。、
「沖さん、良さん、これを見て下さい」 
二人は光太郎の方に駆け寄った。
光太郎の手には、何かの機械が握られている。
「これは、現代の科学では、作れる代物じゃないな」 
沖はその機械を手に取り観察しながら言った。
「やはり、そうですか」光太郎が言った。
「ここに来る途中、小さな村で、"アヌビスを見た"って、大騒ぎしてましたよ。
 一丁、沖さんに、調べてもらいましょうか、ねっ」
村雨が言うと沖は梅花の型を構えた。
「そうだな、変身!
 チェンジレーダーハンド」
スーパー1の両腕がレーダーハンドに変わる。
センサーを打ち出すと三人はレーダーを食い入るように見守った。
「ん!北東の方角に約五十KM、これは、S国の戦車師団だ。壊滅状態だな。
 一個師団がここまで壊滅するとは…その先にも反応が、これは!?…
 ミイラの大部隊だ!部隊の先に、オアシスと村がある」
スーパー1がレーダーの情報を二人に伝える。
「やばいですね、何とかしなけりゃ」村雨は渋い顔になった。
「行きましょう!!」光太郎が答える。
「変身!」二人とも変身をした。
それぞれ、スーパー1はブルーバージョン、ZXはヘルダイバー、RXはアクロバッターに飛び乗ると、
爆音すさまじく、時速六百KM以上で爆走した。
疾走しながら、スーパー1が二人に指示を出す。
「俺が前に回りこんで部隊を止める。後ろからRX、ZXお前は…」
「わかってますよ。部隊中央に奇襲ですね!」ZXは心得たとばかりに言った。
「そうだ。できれば、部隊を二分してくれ」スーパー1は言った。
「了解!」二人は返事をした。
一番速度の出るブルーバージョンが先行するなか、突然、ZXとヘルダイバーが掻き消えた。
「相変わらず、神出鬼没だな」
RXはさすが忍者ライダーだと感心した。
ミイラ大部隊、その先頭には、オシリス神話のジャッカルの頭と、人間の体をもつ、
アヌビスその物の異形の怪人がいた。
「まずまずの成果だな、五十体の兵士であれだけの戦果なら。
これなら、プラントの残り二千体も、"あの方"にお届けすれば、さぞかしお喜びになるだろう」
ジャッカル怪人がニヤリとしているとミイラ戦闘員がジャッカルの前に進み出た。
「ギィ、報告します、この先、五KMに、オアシスと小さな村があります」
「行きがけの駄賃だ。占拠して補給をする。全軍進め!!」
「ギィ!!」 
速度を上げ、進軍するミイラ怪人軍団。
その前方に、一陣の風とともにスーパー1が登場した!
「貴様ら!何者だ!!このまま進むなら、このスーパー1、 貴様らを許しておけん!」
「なんだ、貴様は?」ジャッカル怪人はスーパー1を睨みつける。
「仮面ライダー スーパー1!!」
「仮面ライダーだと?ああ、あのミスクリエーションか」
ジャッカル怪人は小馬鹿にしたような口調で言った。
「ミスクリエーションだと!貴様、何様のつもりだ!」
「貴様のような出来損ないに、答えるのも癪に障るが、
 "パーフェクトクリエーション"とでも呼んでもらおうか」
「パーフェクトクリエーションだと、貴様らの目的はなんだ!!」
スーパー1はジャッカル怪人に指を突き付けて言った。
「言わずと知れたこと、人類抹殺。その後、我々が理想のミレニアムを創造するのだ」
ジャッカル怪人は当たり前の事を聞くなとでもいうように言った。
「ミレニアムだと、貴様らの思い通りにはさせん!!チェンジ、冷熱ハンド!!」
スーパー1が腕のスイッチを押すと、両腕が高熱ハンドと冷凍ハンドに変化した。
手前にいたミイラ戦闘員に冷凍ガスを浴びせる。
たちまち凍りつく戦闘員。すかさず超高温火炎を浴びせると戦闘員は砕け散った。
「なかなかやるな、出来損ないの割には」
ジャッカル怪人の後方にもう一つの影が現れた。
「お前の言う出来損ないならここにもいるぞ!!」RXが立ちはだかった。
「笑止、たかが出来損ないが、二体くらいでは俺様の軍団はびくともせんわ!やれ!戦闘員β!!」
スーパー1が倒したミイラ戦闘員とは明らかに異なる戦闘員が、スーパー1とRXの前に現れた。
その数、十数体。手にはそれぞれ武器をもっている。
まるで、エジプトやローマの戦士を思わせるいでたちだ。
戦闘員βタイプとミイラ戦闘員が襲いかかろうとしたその時、
軍団の真ん中の砂が突然陥没し、その中に三体ほど飲み込まれた。
慌てふためく戦闘員。砂の中からZXが飛び出してきた。
「ZX、参上!」
「また出来損ないが出てきたか、ムゥ、貴様まだ実戦投入されて無いはずだが、認識番号言え!」
ジャッカル怪人がZXを見ると奇妙な質問を投げかけた。
「何の事だ!俺は、ZX、仮面ライダーZXだ!!」
「ムゥ…そうか、プロトタイプか、まあ、どうでもいいことだな」
ジャッカル怪人はZXの姿を知っているようだったが、プロトタイプと言った。
「何を、言っている、お前の相手は俺だ!」
スーパー1はジャッカル怪人に立ち向かった。
戦闘員をなぎ倒していく三人のライダー。
その時、上空に大きな黒い影、五百Mを超える巨大なピラミッドが浮かんでいた。
そのピラミッドから声が響いてきた。
「いつまで遊んでいる、貴様の任務は二千体の戦闘員を"あの方"にお届けする事だろう」
「まったく口うるさいやつだ。実戦投入する前のテストだ!文句があるか!
 だが、少々遊びすぎたようだな」
ジャッカル怪人はピラミッドからの声にブツブツと文句を言った。
「ピラミッドが、空を…」RXは空に浮かぶピラミッドを見てつぶやいた。
「もうそろそろいいだろう、"あの方"に知れたら大変な事になるぞ!」
ピラミッドからの声は"あの方"と呼ぶ者を恐れているような口調で言った。
「調子に乗りすぎたか、わかった、収容を頼む」
ジャッカル怪人も"あの方"を恐れているようにつぶやくように言った。
「了解した」
ピラミッドの底辺から眩い光がさすと、ミイラ軍団はかき消すように消えていった。
「ミスクリエーションの諸君、いずれまた会おう」
ピラミッドからの声はそういい残すと、凄まじい速度で北の方角へ消えていった。
「チッ、逃がしたか!」ZXが舌を鳴らした。
「何かが始まろうとしている。ほかのライダーにも連絡をとらなくては」
スーパー1は不吉な予感がした。
「一度、日本に戻りましょう」RXが言った。
「日本へ!」ZXも同意をした。
三人のライダーは、ピラミッドの消えた北の方角を見ながら、新たな闘志を燃やしていた。 

第4話 新たなる力、神か悪魔か…

立花モータース、早朝。
事務所兼応接室では立花が朝のコーヒーを淹れていた。
「おやっさん、夕べはどうも、ご馳走様です」
本郷が起きてきて事務所に入ってきた。
「おう、猛、目がさめたか、一文字達はまだ起きねえのか?」
「そりゃ、あれだけ飲めば、象でも倒れますよ」
夕べは久しぶりに集まった、滝、本郷、一文字、風見、アマゾンを交えて飲み明かしたのだ。
「そりゃぁそうだが、ライダーのくせに情けねえな」
ライダーだって脳みそは普通の人間と変わらない。
アルコールだって普通に脳の方に回っていくのだ。
そんな事を言っているところへ一文字が入ってきた。
「誰が象だって?」
「聞こえてたのか、志郎と大介はどうだ」
立花は淹れたてのコーヒーを二人に渡しながら言った。
「志郎は、結城達五人を迎えに行ってます、滝と大介は、抱き合ってまだ寝てますよ」
一文字は起きるとすぐに風見を空港へ迎えに行かせたのだ。
「しょうがねえ奴らだな…ところで、九人ものライダーが集まるとは、今度の組織はかなりのもんだな」
立花はパイプに火を入れながらたずねた。
「ええ、詳しい情報がまだつかめていませんが、今までの組織の比じゃないようです」
本郷がコーヒーをすすりながら言った。
「まあ、お前たちライダーがいる限り、そんな組織なんかなんてこたぁないさ」
そのとき、奥からアマゾンがぬぅ〜〜っと出て来るや否や、
「ハ.ラ.へ.ッ.タ.コ.レ.タ.ベ.テ.イ.イ.カ.」 
喋るが早いか、手じかに有ったドッグフードをむさぼりだした。
「おい!!まて大介、今なんか作ってやるから」
「ガルゥウウ.アマゾン.マテナイ.シニソウニ.ハラヘッタ」
立花の制止を無視して、アマゾンはドッグフードをむさぼり続けていた。

空港到着ゲートには、風見志郎の姿があった。
「おーい、結城ここだ!!久しぶりだな」
風見は結城たちを見つけると手を振り呼んだ。
「ああ、まったくだ。今回の改造は、研究段階からかなりの時間を費やしたからな」
「風見さん、お久しぶりです」神が風見に挨拶をする。
「敬介も、ご苦労様。ところでほかの三人は?」
城、筑波、西岡の姿が見えないので風見がたずねると神が答えた。
「それが、茂と西岡がちょっともめてるんです。それを洋がなだめて…」
「噂をすれば、やっときたようだな」結城がゲートの方を見て言った。
「まったく二人とも、さっさと先にいっちゃって!
こっちの二人はゲートをどっちが先に出るかでもめてるし…」
筑波は結城たちに向かってプリプリして怒っていた。
「とにかくおやっさんが待ってるから、行くぞ」風見が促した。
さすがにこれだけの面々がそろう事は珍しいが、それだけ今回の敵が強大だという証拠でもある!

立花モータース地下(元少年ライダー隊本部)
本郷、一文字、風見、結城、神、山本、城、筑波、
そして西岡の九人のライダーが勢ぞろいしていたが、
全員の顔つきは、かなり険しいものになっていた。
「それで、茂と洋は手も足も出なかったのか」風見が結城にたずねた。
「結果的には、そうなるな」
結城が答えるといつでも勝気な茂が反発した。
「ちょっと待ってくださいよ、この俺があんなクモ男に…」
茂の話をさえぎるように、筑波が言う。
「完敗です。神さんと結城さんが来てくれなかったらどうなっていたか」
「洋!そんな事は、無いだろ!ちょっと油断したが。今度はそんな事は・・・」
茂は筑波に向かって言ったが、結城が茂をにらむと口ごもった。
「あれっ、ぐるぐる巻きになってジョボくれていたのはどちらの方ですか?」
西岡が茂に軽口を叩いた。
「おまえ!!先輩に向かってなんて口の利き方だ!!」
声を荒げる茂をなだめながら結城が言う。
「とにかく、ストロンガーとスカイライダーが簡単にやられたのは事実だ。
 今度の組織はかなり厄介だぞ」
結城の後ろから突然声が掛かった。
「そのとおりですよ、結城さん」
みんなががそちらに目をやると、そこに村雨良の姿が。
「いつからそこにいたんだ、盗み聞きとはまったく貴様らしいな」
本郷がニヤリと笑いかけた。
「盗み聞きなんて…今きたところですよ。後、沖先輩と光太郎も来てます」
扉が開き、沖と光太郎が入ってきた。
「勢ぞろいですね。西岡、後でアタッチメントの調整をするからな」沖が西岡に言った。
「はいはい、わかりました」西岡が返事をした。
「皆さん、お久しぶりです」光太郎が先輩一同に挨拶した。
「どうだった、光太郎、何かわかったか」一文字が光太郎に聞いた。
「ええ、彼らは自分たちのことを"パーフェクトクリエーション"と呼んでいました。
そして、我々の事を"ミスクリエーション"と…」光太郎が答える。
「しかも、ZXのことをプロトタイプと…」沖が付け加えた。
「そおですよ、まったく失礼な」村雨はブスッとした顔になった。
「ここにいる全員が、そうなんじゃないですか?」
西岡がいつものように軽口を叩くと結城が西岡をたしなめた。
「言葉が過ぎるぞ、了」
「言わせておけば、表に出ろ!!」西岡の性格にもっとも近い茂が怒鳴った。
「よさないか二人とも、今はそんな事を言っている場合じゃないだろ」
立花は自分の子供達を叱るような口調で言った。
「くっ!」歯を食いしばる茂。
「へーい」相変わらずの西岡だった。
「戦闘員もかなり強いですよ。俺たち三人がかりで何とか倒したのが十数体ですから」
村雨が続きを話し出した。
「滝、インターポールからの情報は無いのか」本郷が滝に聞く。
「こっちが欲しいくらいだ!」滝は憮然として答える。
「我々が戦ったのがジャッカルの怪人、まるでアヌビス神のようでした。
 あとミイラタイプの戦闘員が三種」
沖が村雨の話を続きを話した。
「そして、西岡が倒したクモ型怪人とコウモリ型怪人」
結城は自分達の方の怪人たちの事と合わせて考えていた。
「ピラミッドから聞こえた声の主」光太郎が続ける。
一同は無言で顔を見合わせた…。
「ピラミッド.ウマイノカ.アヌビス.クエルカ」
アマゾンは相変わらず食うことしか頭にないようだった。
「お前ってやつは…」本郷が笑いながら言ったがすぐに真顔に戻り、
「考えていても始まらん、とにかく情報収集と、カイゼルの調整を頼む」
一同はうなずき、順に席を立った。

スーパー1のメンテナンス基地。
カイゼルがメンテナンス用のベッドに横たわり、手足のメンテナンスハッチを開けている。
「このパーツで最後だな」結城がパーツをカイゼルの足の中に組み入れながら言った。
「そうですね、これだけの装備を内蔵したサイボーグなんか、ざらにいませんよ」
沖は自信たっぷりにカイゼルの体を見渡しながら言った。
「そうだな、しかし、ジェネレーターの出力不足で、実動時間がアタッチメント使用時はかなり減るな」
結城は腕を組み思案げな表情を浮かべた。
「仕方ないですね、追い追いその問題も解決していきましょう」沖が答える。
「もういいんですか、なんかハッチ空けてると、心の中まで見られてるようで…」カイゼルが言った。
「ああ、いいぞ、早速テストだ、いいな」結城がカイゼルに言った。
ハッチを閉めて、カイゼルが立ち上がる。
「OKです、いつでもいいですよ」
ライダーマンとスーパー1の見守る中、アタッチメントを試すカイゼル。
「わかっているな、腕部が五種に、脚部が三種だ。腕部から試せ」スーパー1が言う。
「了解!NO,1ファイヤーストーム」
すかさず右のバックルの1のスイッチを押すと、カイゼルの右腕のハッチが開き形を変えた。
カイゼルの右腕に火器が飛び出した。
「ファイヤーストーム」
火器から高温の炎が飛び出し、五十m程先の金属の固まりにぶち当たると、
見る見る蒸発するように溶けてゆく。
「次、ナックルブースト」ライダーマンが次の武器名を告げる。
「OK!NO,2 ナックルブースト」
バックルの2のスイッチを押すと、両腕のひじの部分に小さなバーニヤが飛び出す。
「カイゼルブーストパーンチ!!」
目の前の厚さ三mの鋼鉄の壁を、いともたやすくぶち抜いた。
「次!」ライダーマンが先を促す。
「OK!NO,3 ブレードアーム」
両手の外側に高周波ブレードが飛び出す。
ぶち抜いた壁にブレード一閃、 まるで鏡のような滑らかな断面をのこし、斜めに切れて崩れる鋼鉄。
「よし次だ、NO,4 ストリングアンカー」スーパー1が言う。
「NO,4 ストリングアンカー」
カイゼルの左腕の上部に飛び出した射出口から、
クモの巣状に発射された特殊合金製のワイヤーが三十m先の怪人のダミーを捕らえる。
「腕部最後だ、NO,5」ライダーマンが言う。
「カイゼルライド」
両腕の内側から二本の棒状のものがせり出し、一本にすると、
先から槍状の高周波ブレードが飛び出した。
スライドして長さが二mに達するライドを振り下ろすと、残りの鋼鉄の塊が真っ二つになった。
「よし、次は脚部だ!」ライダーマンは足の武器の方に指示を出した。
「レッグブレード」
左のバックルのスイッチを押すと、かかとに高周波ブレードが飛び出し、
立ててある鋼鉄の杭を切り倒した。
「NO,2だ」スーパー1が言う。
「グラビトンウェーブ」
クレーンかなにかで吊り上げるように、空中に舞い上がるカイゼル。
「そのままNO,3だ」ライダーマンが指示をする。
「グラビトンテリトリー、アンチウェーブ」
カイゼルのつま先に、空間の歪みが生じ恐ろしい速度で急降下してくる。
「カイゼルグラビトンキィッーク」
凄まじい爆音とともに、キックを受けた鋼鉄の塊が四散する。
「凄まじい、破壊力だな」ライダーマンが驚嘆した。
「よかったんでしょうか、彼にこれほどの力を与えても」
スーパー1はカイゼルの技に市松の不安を覚えた。
「荒ぶる神だな、味方にすれば心強いが、敵にまわすと、恐ろしい悪魔だな」
ライダーマンが本音を語った。
「まったくです」スーパー1が同意する。
そんな二人の会話を聞きながら、カイゼルがつぶやいた。
「これが俺の力、誰にも負けない、俺の力だ。
見返してやる、必ずあいつを…俺を、馬鹿にした、あいつを…」

第5話 白夜…銀狼の影

立花モータースに集まったライダーの面々だが、
翌日には、結城、城、筑波、沖、西岡の四人を残し情報収集の為、世界各国に旅立った。
そして、スーパー1のメンテナンス基地では… 
「茂さん、筑波さん、メンテナンスをしますから、この部屋に」沖が二人に言った。
「メンテなんかしても仕方ないのに…」
西岡がブツブツ言っているのが茂の耳に入った。
「何か言ったか!西岡!」
「いえ、別に…まったく、地獄耳だね」西岡が慌てて答える。
メンテナンスに入る二人。
「今回の敵は今までとは違う!カイゼルはいいとして、我々もパワーアップを考えなければな」
結城が自分達の能力のアップを考えていた。
「そうですね、今のままでは、明らかに戦力不足ですね。
ミイラ戦闘員だけでも厄介なのに、怪人の戦闘能力は我々の能力を遥かに上回っていますから。
ジャッカル型怪人の言葉から推察すると、ZXタイプも多数いるようですし」
沖が能力アップの重要性を説いた。
「研究段階の小型グラビティジェネレーターが完成すれば、
1.5〜2倍のパワーアップも可能だが、まだ試作段階だからな」
結城はすでに新機能の開発は始めているようだった。
「カイゼルのように、最初から組み込む予定では無い改造ですから仕方ないですね」沖が言った。
「カイゼルのデーターを分析して、早急に、実用化しなくては」 
カイゼルには標準装備で小型グラビティジェネレーターが内蔵されていた。

そのころ、立花モータースでは… 
「なあ、滝よ、西岡は孤児だったんだ。
 それでひねくれて、町や学校で喧嘩してはここに来てライダーの話をよくさせられたもんだ。
 それがいまじゃ仮面ライダーだ。不思議なもんだな」立花は語って聞かせた。
「おやっさんには悪いけど、俺はどうもあいつは好きになれないんですよ」
滝は西岡を嫌っているようだ。
「ひねくれ者だから仕方ないが、本当は悪いやつじゃない。俺が保障する!」
「まあ、おやっさんや本郷達が認めたんだからそうでしょうが」
「上手く付き合ってやってくれ、頼むぞ」
立花は兄貴分である滝に一番下の弟を任せるような口調で語った。
「ハイハイ、わかってますよ、それじゃあ俺もそろそろ行きます」
歴代ライダーを面倒見てきた立花の言う事には滝も逆らう気はない。
滝はシベリアにいくことになっていた。
「おお、それじゃあな…滝、死ぬなよ」
「大丈夫ですよ、俺だってライダーと同じで不死身ですから」
「そうだな、お前もライダーみたいなもんだしな」
「それじゃ…」
そう、滝は本郷、一文字と一緒に戦い生き抜いてきたつわものであった。
しかし生身の体ではライダーとの戦いは非常に危険であった。
歴代ライダーたちが苦戦しているのである。
いつもの戦闘服や通常武器では歯が立たないのは歴然であった。
滝は新しい武器を手に入れなければと考えていた。

シベリアの大氷原、一つの影があった。 
「このあたりのはずだが」
氷壁を前につぶやく異形の姿、狼の姿の怪人。
いぶし銀のような艶の体毛を持つ銀狼の怪人。
そのこぶしを氷壁にぶち当てると氷の壁は砕け散りその奥から人口物と思われる金属の壁が出てきた。
「首領、見つけました。ネオショッカーの、怪人プラントです」銀狼怪人が言った。
「おお!よくやったぞ、コマンダー"ウォーウルフ"。早速起動させ、データーを送るのだ」
首領と呼ばれた声は銀狼怪人をウォーウルフと呼んだ。
「了解!早速調べてデーターを送ります」
奥の扉へ向かうウォーウルフ。
その奥には、かってのネオショッカーの戦闘員、怪人改造プラントがあった。
ウォーウルフは制御室に向かった。
「ここが、メイン制御室だな」
力任せに扉をこじ開け中に入ると早速制御装置を操作してゆく。
計器のランプがともり、地下から低い唸るような音が聞こえてくる。
「首領!ここも動力が生きています。早速データーを送ります」
「でかした!よしウォーウルフよ、近くの村の人間どもを捉え、戦闘員に改造するのだ」
「承知しました。すべてはミレニアムのため」
踵を返すと、銀狼の怪人は入ってきた通路を戻っていった。

数日が過ぎたが、未だ誰からも情報が無い。
苛立ちを隠せない結城と沖は、それでも必死に"グラビトンジェネレーター"の研究に没頭していた。
「未だに誰からも情報が入ってきませんが、大丈夫ですか」沖がたずねた。
「わからんが、こっちも時間がほしいからな。
 情報が入りしだい、カイゼルに行ってもらう」結城が答えた。
「それがいいでしょう、今やつらと対等に戦うことのできる唯一のライダーですから」
沖が同意したそのとき、通信機から滝の声が響いてきた。 
「聞こえるか?滝だ!」
「滝、何か情報か?」結城が通信機に向かって応えた。
「シベリアで、小さな村だが、住民が姿を消した。しかも連続して4つの村が」
「怪しいな、早速カイゼルを向かわせる」
「了解した、本郷と風見もこっちへ向かっている。合流して調べよう」
通信が終わり、結城が振り向き西岡に指令する。
「話は聞いていたな?早速、シベリアへ向かえ!」
「俺一人で充分ですがね」西岡がいつもの軽口を叩く。
「つべこべ言わずに、本郷さんたちと合流して調べて来い」沖が西岡をたしなめる。
三人は格納庫に向かった。
「お前専用のバイク、"G-ウィンド"だ」沖がG-ウィンドのシートをはずした。
「カイゼルのバックアップも出来るから、乗っていけ」結城が説明する。
「へ〜、なかなかのもんじゃないですか、じゃあ、一発ぶちかましてきます」西岡がにんまりする。
「油断するなよ、風見達と協力して、ことにあたれ」結城が西岡に注意をした。
「ハイハイ、了解ですよ。それじゃ、行ってきます」
緊張感の無い返事をしてはいるが、その目は真剣そのものだった。

先に合流した滝と本郷達は、早速村人の消えた村を調べていた。
「これで三つ目だ。誰もいないし、何一つ証拠らしいものもない。一体この事件は…」
滝が辺りを探索し終えてみんなの所に戻ってきた。
「しっ…今あの小屋から物音が」風見が小屋の方を指さした。
「よし、風見は裏に回れ、滝はあの横の窓から」本郷が指示を出した。
足を忍ばせ、近寄る三人。
本郷が扉を勢いよく開けると同時に裏から風見、窓から滝が小屋に入ると物陰に気配がした。
「誰だ、ここで何をしている」本郷が大声を出した。
恐る恐る物陰から現れたのは一人の少女だった。
胸に抱いているのは小さな人形だ。
その人形を強く抱きしめながら、か細い声で言った。
「おじさんたちは、人間?人間なの?」
「決まってるじゃないか、もう大丈夫だよ、怖かったんだね」
やさしく滝が話し掛けると、少女は滝に抱きつき激しく泣き出した。
それを見守る本郷と風見。
「お譲ちゃん、何があったんだい?」今度は優しく本郷が声を掛けた。
「村のみんなが、狼の化け物に…お父さんも、お母さんも…」
それだけ喋ると、少女はまた激しく泣き出した。
「どうやら怪人の仕業のようですね」風見が口を開いた。
「そのようだな…、滝、その子を安全な村まで送っていってくれ」本郷が滝に言った。
「本郷、お前たちは?」
「近くを調べてみる、何か手がかりがあるかもしれん」
「わかった、お譲ちゃん、さあ安全なところまで送っていってあげるからね」

同時刻、大氷原を爆走するG-ウィンド
「改造されても、寒さを感じるんだな」
西岡が独り言をいっていると、G-ウイン ドのレーダーに反応があった。
「なんだこの熱源反応は、まるで巨大な工場のようだ。まさか、敵の秘密基地か!」
熱源反応に向かうG-ウィンド。
西岡が岩陰からあたりをうかがっていると氷壁が突然開き、
ウォ―ウルフと狼の顔を持つ戦闘員が十人ほど出てきた。
「ウルフコマンドたちよ、何者かがこのプラントを調べているようだ。しらみつぶしに調べるのだ!」
言い放つとウォ―ウルフは、基地の中に戻っていった。
ウルフコマンドたちは、あたりをうろうろ探し出した。
「見つかるのも時間の問題か、それなら」
西岡は岩陰から飛び出し、ウルフコマンドと対峙した。
「狼男の諸君、君たちも不運だね、まさかこの俺と戦う羽目になるとは」
「ガルゥゥゥゥゥゥゥ」
ウルフコマンドたちが西岡を取り囲む。
「変身!」
眩い光とともにカイゼルの姿に変身した。
「仮面ライダ―カイゼル!推参!」
いとも容易くウルフコマンドを倒してゆくカイゼルをウォ―ウルフはモニタ―で見ていた。
「こいつがウォ―スパイダ―から報告された、ミスクリェ―ションの仮面ライダーカイゼルか。
 よし、もっと、コマンドを出すんだ」
氷壁が開き、新たに百体ほどのコマンドが出てきた。
「きりが無いな、よし、ブレードアーム」
右バックルの3のスイッチを押すと、両腕からブレードが飛び出す。
近づくコマンドをブレードでなぎ倒すカイゼル。
数分後、出てきたコマンドを全て倒したときにはカイゼルの息はあがっていた。
「よし、後はこの基地と、最初に出てきた怪人だな」
肩で息をしながら、右バックルの1のスイッチを押す。
「ファイヤ―スト―ム!!」
見る見る溶けてゆく氷壁と鋼鉄の壁。すると壁の中に特殊合金のハッチがでてきた。
「カイゼルとかいったな、その特殊合金のハッチは貴様などでは破れん、あきらめて帰るんだな」
マイクに向かってほえるウォ―ウルフ。
「何を!見ていろ!グラビトンウエーブ」
見る見る上空に浮き上がるカイゼル。
「アンチウェ―ブ!グラビトンテリトリー」
ハッチに向かってキックを放つカイゼル。
ところが途中で失速し、半減した威力のキックがハッチにあたるも、カイゼルは反対に弾き飛ばされた。
とてつもない爆音はしたが、ハッチには傷一つ入っていない。
「くっ!エネルギー切れか…」
ふらつくカイゼル。
「そこまでだなカイゼル、俺様がとどめを刺してやる!」
ハッチが開くと、そこにウォ―ウルフの姿が現れた。
「クソッ!G-ウィンドを呼ぶ暇さえないなんて…」
なおもふらつくカイゼルにすかさず襲い掛かるウォ―ウルフ。
「ここまでか、結局あいつを見返す事ができずに死ぬのか?」
あきらめかけたカイゼルの肩を抱きとめる二人の男、本郷猛と風見志郎だ!
「カイゼル、大丈夫か」風見がカイゼルを抱き起こした。
「うぬぼれるのも程ほどにして置けよ」
本郷がたしなめるように声をかけると、二人はカイゼルの前に立った。
「貴様ら、何者だ!」
ウォ―ウルフはたじろいだ。
「お教えしよう、貴様たちのような怪人を倒す為、地獄のそこから蘇った…仮面ライダ―1号」
「そして、仮面ライダ―V3」
「ライダー、変身!!」
「変身!!ブイスリャ―ァ」
本郷と風見はライダーへと変身をした。
「カイゼル、お前は休んでろ!」1号がカイゼルに言う。
「後は俺たちに任せておけ!」V3も付け加える。
「わかりました、お願いします」
よろめきながらカイゼルはG―ウィンドへ向かった。
「貴様達では話にならん。二人まとめて地獄へ送ってやる」
ウォ―ウルフの鋭い爪が1号ライダ―を襲う。かろうじてかわす1号ライダ―。
「V3反転キ―ック!」
ウォーウルフに直撃するが、まったく効いていない。
「貴様らの攻撃など痛くも痒くもない、なんなら二人がかりでやってみるか?」
「くっ!よしV3、俺とお前でWライダ―キックだ!」
「よし、食らえ、トゥ」
「Wライダ―キーック!!」
一瞬ウォ―ウルフはたじろいだが、やはりウォ―ウルフには効いていない。
「出来損ないの分際で俺様にはむかうとは、よければ俺様の戦闘員に加えてやろうか?」
ニヤニヤしながらライダ―たちを挑発するウォ―ウルフ。
「言わせておけば…」V3が歯噛みをして悔しがった。
「俺たちだけでは歯がたたんのか!」1号は次の手がないものか考えをめぐらせていた。
「1号ライダ―、俺にエネルギ―を、二人の力で俺の逆ダブルタイフ―ンを使う!」
「よし!任せたぞ!」
1号ライダ―がV3にエネルギ―を送ると、V3の体が真っ赤に輝く。
「食らえ!逆ダブルタイフ―ン!!」
1号とV3のエネルギ―で、通常の数倍の威力の逆ダブルタイフ―ンだ。
ところが、それすらウォ―ウルフにはまるで効いていない。
エネルギ―を消耗して二人の変身がとかれた。
「二人のエネルギ―を使っても太刀打ちできないとは…」風見がうなる。
二人は力尽き、その場に崩れ落ちた。
「後は、カイゼルだけだな」
ウォーウルフはあたりを見回すと、G-ウィンドのそばにカイゼルがいた。、 
「何をしている!死にぞこないが!」ウォーウルフがカイゼルに向かって吼えた。
「よし!チャージ完了!待たせたね!狼君!」
G-ウィンド搭載のグラビティジェネレーターからカイゼルは、
自らのジェネレーターにエネルギーを補充できるのだ。
「死にぞこないが!えらそうに!!やつらと、一緒に血祭りに上げてやる!」
「望むところだ!行くぞ、狼君!ナックルブースト」
カイゼルは、 ナックルブーストでウォーウルフを吹っ飛ばした。
「何だこの力は、さっきまでふらふらしていたのに」
よろめくウォーウルフ。
「先輩方、お待たせです!ちょっと待っててくださいね」カイゼルは二人に向かって言った。
「俺たちの事はいいから、早くそいつを倒せ!」本郷が怒鳴った。
「了解!一気に決めますか、グラビトンウェーブ!グラビトンテリトリー!
そしておまけだ、レッグブレード!」 
カイゼルは、2,3,1とすべてのスイッチを押した。
「アンチウェーブ!カイゼルグラビトンブレードキィーック! !」
なんと、ブレードを出したまま、グラビトンキックをはなった。
さしものウォーウルフも避ける間もなくバラバラに消し飛んだ。
すぐさま二人に駆け寄るカイゼル。
「大丈夫ですか、助かりました。先輩方のおかげです」
「カイゼルを助けるつもりだったんだが…、時間稼ぎになっただけだな」本郷が苦笑いをした。
「いえ、本郷さんたちが来てくれなかったら、俺も危ないところでした」
「あんまり一人で突っ走るなよ」
やさしく風見に諭されカイゼルは、
「ありがとうございます」と素直に頭を下げた。
「おいおい気持ち悪いな、お前らしくも無い」本郷はカイゼルをからかった。
三人は、今はじめて本当の仲間になった。顔を見合わせ笑う三人。

同じころ、一文字とアマゾンは中近東の小島に来ていた。
「ここが、シーサーペントが現れた島だ」
一文字はアマゾンに言ったがアマゾンはそんな事まったく意に介していなかった。
「ナニカ・ニオウ・アマゾンニハ・ワカル」
アマゾンは辺りを見回し鼻をヒクヒクさせていた。
「野生児だからな、大介、敵か?」一文字は一応聞いてみたが、
「ガウ・チガウ・クイモノ・アマゾン・ハラヘッタ」
「またか…よしよし、そこの食堂に入るぞ」
「クイモノ・クイモノ・アマゾンハラヘッタ」
その姿を、海の中からじっと見つめる毒々しい紅の瞳があった。
「ミスクレエーションどもがやってきたか。
 ちょうどいい機会だ、俺のコマンドたちの実戦テストのモルモットになってもらう」
謎の瞳は水中に消えていった。

第6話 深海の恐怖…

港町の場末の食堂、まだ昼まにもかかわらず、カウンターやテーブルで酒を飲む輩がいた。
扉が開かれ、そこに一文字とアマゾンの姿があった。
「大介、腹いっぱい食っていいぞ」
「ガウ?ホントウカ?…アマゾン、シヌホド、クウゾ、ダイジョウブカ?」
「大丈夫だ、死ぬほど食え」一文字がニヤニヤしながら言った。
扉にほど近いテーブルに二人は座ると、少々年季の入ったウエイトレスがオーダーを取りにきた。
「いらっしゃい、この辺のもんじゃないね、旅行かい?それともモンスター見物かい?」
「ああ、両方だ、近くの島に遊びに来てたら、シーサーペントが出るって聞いたから。
 帰るのをやめにして、見に来たんだ」
「いいご身分だね、で何にするんだい、うちは、酒もあるよ」
「いや、酒はいいよ、こいつに腹いっぱい、なにか美味い物食わせてやってくれ。
 俺には、熱いコーヒーを頼む」
「ハライッパイ、シヌホド、イッパイ」
「あいよ、じゃあ、この島のおすすめのとびっきりを持ってくるよ」
厨房に、なにやらオーダーを伝えるウエイトレス。
隣のテーブルでは、三人の男が酒を飲みながら話している。
「まったく、シーサーペント様さまだぜ。
 何とかいう、博士が漁に出なけりゃ金をくれる、てんで、だーれも漁になんかでやしねえ」
「いいじゃねか、漁に出るよりずっと、いい金になるんだからよ」
「そりゃそうだ。それによ、博士の手伝いをして沖の島に行くと、もっといい金になるらしいぜ」
「まったく、昼間から酒飲んで、馬鹿言ってんじゃないよ」ウエイトレスは三人の男に一瞥をくれた。
「ハイよ、お待たせ」
大きな皿の上には、シーフード、キノコ、肉などが、程よくローストされている。
香辛料の香りが鼻をくすぐる。
早速かぶりつくアマゾン、見る見る減ってゆく料理にウエイトレスも言葉無く見とれていると、
エビの殻や、飾りつけの花まできれいに平らげ、恨めしそうに皿までなめる大介だった。
「はっはっはっ、大介足りないようだな、おねえさん、おかわりを頼みます」
「えっ!あっ!ああ…あいよ、おにいさん、いい食べっぷりだね、つい見とれちまったよ」
カウンターの片隅では、一人の老人が酒を飲んでいた。
「だから言ったんじゃ、あの島には、近よるなと、もうおしまいじゃ、何もかも…」
老人はブツブツと独り言を言っていたが、となりに座っていた男がその言葉を聞いて聞き返した。
「ジャンゴ爺さん、なんか言ったか?」
「じゃから、あの島に近ずくなと、言ったんじゃ!」ジャンゴが言う。
「また始まったぜ、ジャンご爺さんの、与太話が」男はせせら笑った。
「おまえら、まだわからんのか、あの博士が来てからサーペントが現れて、
 人喰いガニまで現れ、北の村の人間が消えちまったてえのに、
 あの島にゃ、昔の遺跡があったんだ。遺跡を荒らしたんで、天罰があたったんだ」
ジャンゴは島で起きた事件を遺跡を荒らした事にあると力説した。
「いいじゃねえか、おかげで昼まっから酒飲んでも、食うにゃ 困んねえんだからよ」
「おまえら、漁師の誇りをどこに捨ててきやがったんだ」ジャンゴが吼えた。
「誇りで酒が飲めるか?飯が食えるかよ、えっ?爺いさんよ」
「貴様らは屑じゃ、今に大変な事になるぞ。
 そんときにしまったと思うても遅いんじゃ。もう遅いかもしれんが」
「うるせえ爺いだ、とっとと帰れよ」
「貴様のような若造にゃ、指図は受けん!」
「なにを!」
叫ぶと男は拳を振り上げた。 
とっさに一文字が助けようとすると、一足先に男の拳を後ろ手に捻じり上げる一人の男がいた。
「イテテテテ、放しやがれ!」
「村雨、いつ来たんだ?」村雨の突然の出現に一文字が聞いた。
「昨日ですよ、先輩」村雨が男の手を捻り上げたまま応えている。
「放せよ!」男はうなっていた。
「ソラヨ!」
村雨が男を扉の方に突き飛ばすと、扉の柱でしたたかに額を打ち倒れた。
村雨は何事も無かったかのように、一文字たちのテーブルに座った。
「本郷さんと、風見さん、西岡がシベリアで、怪人と遭遇したようです」
「そうか…ここの敵は、どうも海の中らしい、敬介がいてくれれば助かったんだが…」
「アマゾン、ダメカ?アマゾン、タクサンクエバ、タクサン、チカラデル」
「そうでしょうとも、山本さん、まあ、俺が来たから、何とかなりますよ」
村雨が突き飛ばした男が、ほかの男とともに三人を取り囲む。
「てめえ、よくもやってくれたな!」
「ただじゃおかねえぞ!」
「じゃあ、いくらなんだ?」村雨が目も合わさずに聞いた。
「ふざけんじゃねえ!」
つかみ掛かる男たち。
だが三人は気にもとめない。
不意に一文字が立ち上がった。 
「や、やるか!」 男は一歩引いたが
「おねえさん、代金はここに置くよ」と言って一文字が席を後にした。
「待てよ、逃げるのか!」
「アマゾン、ニゲナイ、オマエタチガ、ワルイ!」
「その通りだな、先輩どうします?」村雨が一文字にたずねた。
「やめておけ、やるだけムダだ」一文字は不機嫌そうな声を出した。
「てめえ、こけにしやがって」
ポケットからナイフを出すと、一文字に切りつける。
一文字は右手の人差し指と中指でナイフを挟み、
軽くひねるとナイフはパキッと乾いた音をたて折れてしまった。
「こんな物を出すと、ただじゃすまないぞ!」
男をにらむ一文字の顔に、改造の傷跡が浮かび上がる。
それを見た村雨が男達に言う。
「おい!おまえら、さっさと消えろ、先輩が怒ると、俺でも止められないぞ!」
一文字の凄まじい形相を見た男たちはたじろぎ、おびえ始めた。
一文字は折ったナイフを持ち替え、三本の指で軽くひねると、
ナイフは簡単に形を変え、 コの字に変り、床に落ちた。
それを見た男たちは、一目散に扉に向かった。
「先輩、落ち着きましょうよ、能天気なやつらはどこに行ってもいるもんですから」
村雨が言うと一文字は無言で椅子に座りなおした。
「あんたたち、度胸と腕っ節があるね、いい男だし、ちょっと待ってなよ」
ウエイトレスの顔がほころび厨房の方に行った。
少し待つと、ウエイトレスが、さらに大きな皿に大量の料理をのせて戻ってきた。
「ほら、あたしのおごりだよ、存分に食べてきな」
「アマゾンモ、クウ!」
「大介、まだ食うのか?大丈夫か?」
「アマゾン、マダ、シヌホド、クッテナイ!」
一文字の顔にも、笑みが帰ってきた。
カウンターに座っていたジャンゴ爺さんが席を立ち近ずいてきた。
「礼は、言わんぞ!あんな若造なんぞ、お前らの手を借りんでも、なんとでもなったんじゃ!」
「ハイハイ、わかってますよ、ところでじいさん?」村雨が言うと、
「わしゃまだまだ、現役の海の男じゃ、爺呼ばわりするな!ジャンゴさんと呼べ!」と怒鳴った。
「ジャンゴさん、さっき言ってた話を、よく聞かせてほしいんですが?」一文字が水を向けた。
ジャンゴの話では三週間ほど前に、
イギリスからホプキンスと名乗る考古学博士が来てからシーサーペントが現れ、
漁に出た船が次々と襲われ、漁に出られなくなったこと。
沖の島に遺跡があり、その島に行った者達が帰ってこない事。大きな人喰いガニも現れた事。
夜な夜な、海岸や港で、半魚人が目撃された事など、
数え上げればきりの無いほどの怪奇現象が起こっていた。
「やはりあの組織だな!」一文字が渋い顔になった。
「間違いないでしょう、その島に渡れば手がかりが見つかるでしょう」村雨が答えた。
「明日、早速調べてみるか」
一文字が言うと、三人の話を店の奥で聞いていた男が立ち上がり、
ゆっくりと一文字たちに近ずいてきた。
「あんたたち、沖の島に行きたいのか?よければこれからいくから、乗せて行こうか?」
「あんたの船に乗せてくれるのか?
 そりゃ助かる。先輩お願いしましょうよ」村雨が一文字に顔を向けた。
「そうだな、お願いするか」一文字もそれに同意した。
「あんたら、わしの話を信じたんじゃなかったのか?
 結局あんたらも、さっきの若造と同じじゃったか」
うなだれるジャンゴじいさん。
「アマゾンタチ、ジャンゴノコト、シンジル…シンジルカラ、イク」
「ジャンゴさん、我々は、信じるからこそ行くんです。確かめる為に!」
そう話す一文字たちの目は真剣そのもの、その目を見たジャンゴじいさんは、
「…無事に、無事に帰ってくるんじゃ、帰ったら、わしがこの店で、おごってやる」
「ホントウカ?.アマゾン.シヌホド.クウゾ」
一文字たちのテーブルに、4人の笑い声が響き渡った。

酒場を後にする一文字たちは先ほど酒場で話した男の後をついてゆくと港の奥へと入っていった。
「おい、どこに船が泊めてあるんだ?」村雨が男に聞いた。
「あの岬の向こう側だ」
男の指差す方向に小さな岬があった。
一文字達は、だんだん人気のない岩場に入っていった。
「まだかよ、もういいだろ?」村雨は男に"船はまだか"とは別の意味で聞いた。
「そうだな、この辺りでもういいんじゃないか?岩陰に隠れているやつらも !」
一文字の言葉を聞くと、案内してきた男の表情が変わった。
「ミスクリェーションでも、これくらいは気が付くようだな」
みるみる男の姿が変わってゆく、硬い甲羅に覆われたカニの怪人だ。
「このウォーキャンサーが島で、ゆっくり料理するつもりだったが、仕方がない、戦闘員ども、やれ!」
岩陰から、ウォーキャンサーに似たカニの怪人が十体現れ、一文字達を取り囲んだ。
「変身!」
「変・身!」
「アーマーゾーン!」
三人は揃って変身した。
「こいつらみんな、怪人ですよ、十一対三か…まあ何とかなるでしょう」ZXが2号に言った。
「この戦闘員達は、俺の調整の為の試作品だ、それでも貴様たちよりはるかに強いぞ」
戦闘員が口から泡をライダー達に吹きかける。
三人のライダーはジャンプして避けたが、泡のかかった岩が見る見る溶けていった。
「あんな物食らったら、大変だ」
叫びながらZXは手裏剣を投げつけるが、硬い甲羅で弾かれてしまう。
着地したライダー達は、それぞれ戦闘員に立ち向かう。
「ライダーパンチ!」
2号のライダーパンチさえも、戦闘員の甲羅に傷をつけることしか出来ない。
アマゾンが戦闘員の背後に回り込み首筋に噛み付くがびくともしない。
「試作品にも劣るのか?貴様らミスクリエーションとプロトタイプは」
「何を!見ていろ!ZXキーック!!」
戦闘員に命中するがたじろぐだけでさほどの効果がない。
「バラバラの攻撃ではだめだ、3人で協力して倒すぞ!」
2号ライダーがZX、アマゾンに目で合図を送ると二人はうなずく。
アマゾンがギギとガガの腕輪を合わせ、戦闘員の背後に回りこむ。
「ZX行くぞ」
二人のライダーがジャンプした。
「Wライダー、卍キーック!!」
弾き飛ばされる戦闘員その後ろにアマゾンが、アマゾンの腕のカッターが大きく伸びる。
「スーパー、大切断!」
さすがの戦闘員も、Wライダーキックを受けたあとではひとたまりも無く砕け散った。
三人ライダーのコンビネーションで戦闘員を倒してゆく。
「クッ!意外にやるな、まあ、戦闘員の代えはいくらでもあるからな」
最後の戦闘員を倒すと、ウォーキャンサーを取り囲む三人のライダー。
「もう逃げられんぞ、覚悟しろ!」
「2号ライダー、あの技を、使いましょう!」
「よし、アマゾンいいな」
無言でうなずくアマゾン。
三人が大きくジャンプ。
「Wライダーきりもみキーック!!」
「スーパー大切断!!」
Wライダーのキックのすぐ後に、スーパー大切断が決まる。
大きな爆音と爆炎のあとに、まだ怪人の影があった。
「三人でその程度か、このウォーキャンサー様に傷一つ付けられんとは」
爆炎の中から現れたウォーキャンサーに、ダメージはみられない。
必死のライダーの攻撃も、ウォーキャンサーにまるで歯が立たない。
徐々に押され始める三人のライダー。
そのとき、三人のライダーの心に直接呼びかける声が聞こえてきた。
「誰だ!…ジェイ…ジェイ…」2号が心の声に反応した。
「J!誰なんだ!」ZXも謎の声に反応した。
「ジェイノ、チカラ?」
『そう、私も仮面ライダーです、仮面ライダーJ!
 時間軸の違う別次元から、貴方たちの戦いを見守っていました。
 今ここであなた方に倒れてもらうわけにはいきません。
 大地の力を、Jの力をお貸しします。受け取ってください』
その途端2号ライダーの赤い拳が、さらに赤く発光し、ZXの右足も眩い光に包まれる。
そしてアマゾンの手には、一つの指輪があった。
「ユビワ?…ジェイノユビワ…」
アマゾンはJの指輪を右手にはめると腕のカッターがさらに大きくなり、眩い光に包まれた。
「凄まじいパワーだ、Jの力か」
すかさずパンチを繰り出す2号ライダー。
さすがのウォーキャンサーも、パワーアップした2号ライダーのパンチに押され始めた。
「ウォーキャンサー覚悟しろ!とう!ZX反転3段キィッーク!!」
吹っ飛ぶウォーキャンサー、よろめき立ち上がるウォーキャンサーのヨロイに亀裂がはいった。
「馬鹿な!俺様の自慢のヨロイに傷が!」
うろたえ、逃げようとするウォーキャンサーの背後にアマゾンが飛び上がった。
「くそ!貴様らなどに、やられるウォーキャンサー様では…」 
「スーパー大切断!!」
ウォーキャンサーは最後まで喋ることなく、絶命した。
「何とか倒したな、しかし、Jとは?」2号が疑問を口に出した。
「凄まじいパワーが体に流れ込んできました。あれが、Jのパワー」
ZXも今の戦いでのパワーが凄まじいものだと実感していた。
三人は変身を解いたが、アマゾンの指には、Jの指輪がついたままだった。
「山本さん、Jの指輪が付いたままだけど、何とも無いんですか?」村雨が聞いた。
アマゾンは指輪をはずそうと奮闘していた。
「ウガッ、ハズレナイ、ジェイノユビワ」
「とにかく島にわたるぞ!」一文字が二人を急かせた。
岬の影に回ると、小船が置いてあった。
三人はバイクとともに船に乗り込み島に向かった。

島が見えてきた辺りで、船を止め辺りをうかがう。
「どうやら、囲まれたようだな」一文字が辺りをうかがいながら言った。
「かなりの数ですね」村雨も水面を見ながら言った。
船を取り囲む無数の赤く輝く瞳が水面に浮かんでいた。
「俺が出ます、その間に島に上陸を!変・身!」村雨が変身した。
「ZX任せたぞ!大介、敵を蹴散らして島に向かうぞ!」
ZXはうなずくと、海に飛び込んでいった。
一文字と大介は、敵の包囲をかいくぐり、島に向かう。
「ざっと見て二十体か、ちょっと辛いな」
ZXはヘルダイバーを呼び、 戦闘員の注意を自分に向けながら、一文字達と別の方角え向かう。
ZXを追う戦闘員達は、まるで海蛇か海竜の様な姿だ。
「よし追って来い!」
戦闘員達を誘導しながら、徐々に島に近ずくZX。
凄まじい速さで迫ってくる戦闘員。
ようやく浅瀬につくと、戦闘員も追いつき、ZXを取り囲む。その数十八体。
「まずいな、流石の俺でもこの数は」
じりじりと間合いを詰めてくる戦闘員たち。
「ここはひとまず退却して、先輩たちと合流だな!ZX旋風脚!」
近づく戦闘員を旋風脚で退け、ZXの姿は煙のように掻き消えた。
そのころ、少し離れた入り江では2号ライダーとアマゾンが三体の戦闘員と対峙していた。
「ライダーパンチ!」
2号のパンチが炸裂するが、戦闘員には全く効いていない。
「くっ!Jの力が無ければ、やはり効果は少ないか」
アマゾンも同じように効果が低い。
「ガルゥゥゥゥゥゥ、アマゾンノコウゲキ、キカナイ」
「他力本願ではだめだ!アマゾン、俺と呼吸を合わせるんだ」
ジリジリ、戦闘員との間合いが詰まってゆく。
突然一体の戦闘員が砂の中に消えた。
入れ替わりにZXが現れ、砂の中の戦闘員に手裏剣を投げつける。
連続して五本の手裏剣が砂の中に消えると、凄まじい爆音とともに戦闘員は絶命した。
「先輩方、お待たせ!」
「ZX無事だったか!よし、コンビネーションで倒すぞ!」
「了解!」
「ガウ!」
「トリプルライダーパアーンチ!!」
パンチを受け吹っ飛ばされ、爆死する戦闘員。
徐々に戦闘員を倒してゆく三人のライダー。
全ての戦闘員を倒す頃には三人の息もあがっていた。
「なんとか、倒したが、三人がかりでやっととは…」
「今回は、Jの助けが無かったけど、何とかなりましたね」
三人は変身を解き、ジャングルの奥深くへ入っていった。
日も暮れた数時間後… 焚き火を囲み三人は作戦を練っていた。
「おそらくこの島に、戦闘員の製造基地があるはずだ」
一文字が島の地形を地面に描きながら言った。
「尋常じゃない人数の島民が、行方不明になってなっていますからまず間違いないでしょうね。」
村雨が答える。
その時アマゾンがジャングルの暗闇を見据えた。
「ガウ!ナニカクル」
焚き火の向こう側に人影が現れた。
「た.す.け.て.く.れ…」
男は一文字達の前に倒れ込んだ。
「大丈夫か」
村雨が抱き起こした男の姿は、すでに人ではなかった。
「改造手術をうけているが、拒絶反応が出ているな」一文字が男を見て言った。
辛うじて人間の顔をとどめているが、その目は魚のように飛び出し、うろこ状の皮膚に変わっている。
小刻みに体が痙攣し、目もうつろで、すでに長くないようだ。
「助けてくれ…仲間たちが化け物になっちまう…」
「どこから逃げてきた!助けてやるから教えるんだ!」
一文字の声に一段と大きく、痙攣した男は最後の力を振り絞るように、
「し.ま.の…い.せ.き…さ.い.だ.ん.の.お.く…」
振り絞るように、それだけ話すと息絶えた。
そのとき、一文字の背後の木の上から声が響いた。
「失敗作は失敗作同士、共鳴するのかね…」
「誰だ!」村雨が木の上の影に向かって怒鳴った。
木の上から降り立った者を見ると色違いの黒・青・黄・白・緑のZXが五人、
体のデザインが少々異なっているだけで外見はまさしくZXそのものだった。
「きさまが、プロトタイプだな」黒いZXが村雨を見て言った。
「良、大介ここは、引くぞ!」
さすがにZXタイプを五人相手にできないと判断した一文字はバイクの方へ走った。
「くっ!了解です!」
三人は、それぞれバイクに乗り、その場を離脱した。
「隊長、いいんですか、俺たちにかかれば…」青いZXが言った。
「黙れ!…楽しくやらねばな、遺跡に先回りするぞ!」隊長と呼ばれた黒いZXが指示した。
「了解!!」
部下であろう残りのZXたちは返事をし茂みの中に消えていった。

遺跡のそばの、ジャングルの中で、三人は息を潜めて、辺りをうかがっている。
「くそっ!この俺が、プロトタイプだと、今度会ったらただじゃおかねえ!」村雨がイライラしていた。
「まあ、まあ、いやでも、また会えるさ」一文字が村雨をなだめる。
「ゼクロス、タクサン、ナカマカ?」アマゾンがトンチンカンな事を聞いている。
「勘弁してくださいよ、仲間なんかじゃないですよ」村雨がガックリと首をうなだれた。
二人の会話を制止し一文字が遺跡を指差す。
祭壇の奥から、カニ型の戦闘員と海蛇型の戦闘員を引き連れ五人のZXが現れた。
戦闘員の数、ざっと五十体。
「団体さんですね、こりゃ、やりがいがある!」
村雨はワクワク声で言ったが顔は真剣そのものだった。
「仮面ライダー、貴様たちのために、貴重な戦闘員をこれだけ用意した。
 我々の、野望を達成する前に、まず、貴様らを始末してやる!」
黒いZXが茂みに向かって言った。
茂みから飛び出す村雨。
「言いたい放題いいやがって、貴様たちこそ覚悟しろ!」
「仕方が無い、大介!行くぞ!」一文字がアマゾンに言った。
「ガッ.ガウッ!」
茂みから飛び出す二人。
「三人で、連携して倒すぞ!」一文字が二人に言った。
「了解!」
三人はライダーが変身した。
連携で戦闘員を倒してゆくが、十体も倒したところで、取り囲まれてしまった。
「くそ!このままじゃ…」ZXがジリジリとした。
「ユビワカラ.コエガ.キコエル」アマゾンが指輪を見た。
絶体絶命の三人ライダーに、Jの声が聞こえた。
『もう一度、力をお貸しします…そこが、その、時間軸が、一つ目のポイント…』
「時間軸?ポイント?何のことだJ!」2号が聞き返す。
『今お答えすることは…出来ません、さあ力を』
2号の赤い拳が、前回よりも激しく光る、ZXの足も、アマゾンのカッターも。
「さっきよりも格段力がUPしている、いけますよ2号、アマゾン!」
ライダー達に飛び掛る十体の戦闘員。
「ライダーパンチ!!」
2号がパンチを連打すると、五体の戦闘員が吹っ飛ぶ。
その体には、無数のパンチのあとができていた。
「ZXキーック!!」
ZXも五体の戦闘員を吹き飛ばす、よろめき倒れる戦闘員達。
アマゾンは、ほかの戦闘員達の背後に、すばやく回り込み、三体の戦闘員を切り刻んでいた。
「なんだ、あのパワーとスピードは?データーの数倍のパワーとスピードだ!」黒いZXが戸惑う。
「隊長、我々の手で、引導を渡してやりましょう」白いZXが言った。
「出てきたな、俺が相手だ!」
ZXが前に立ちはだかった。
「プロトタイプ風情が、パーフェクトタイプに太刀打ちできると思ったか。
 フォーメーションZだ、取り囲め!」黒いZXが全ZXに指示を出した。
「ZX!大丈夫か!」2号がZXの方に駆けつけた。
「任せてください!今なら、負ける気がしないんでね!2号とアマゾンは、戦闘員をお願いします!」
「マカセロ!」
ZXは、戦闘員と反対の方向へ走ってゆく。
「むぅ、速いぞ!追え!」青いZXが叫んだ。
五人のZXは、その後を追う。
「アマゾン!こいつらを、始末したらすぐにZXを追うぞ!」
「ガウッ、ワカッタ!」
次々襲い掛かる戦闘員に2号のパンチが炸裂する。
Jの力が加わった為、2号の拳は空を切るたびに空気との摩擦で炎がほとばしる。
通常の数倍の威力だ。
アマゾンは、ただでさえ素早い動きが、より速くなりほとんど残像しか捕らえる事ができない。
戦闘員を倒すのにさほどの時間はかからなかった。
その頃ZXは…
「この辺りだったな、」
踵を返すと、すぐに五人のZXが取り囲んだ。
「ふっふっふっ、ついに観念したか!」黒いZXが不気味な笑い声をだした。
「それは、どうかな!貴様たちは、すでに俺の罠にはまっているのさ」
「何を、負け惜しみを、貴様は、ここで死ぬんだ!」白いZXが吼える。
「そいつは、どうかな」
ZXは、大きくジャンプすると五人のZXとはまるで別方向に手裏剣を数箇所に打ちこんだ。
「どこを狙っている、プロトタイプは照準さえも甘いのか?」緑のZXがあきれた声をだした。
「そこでいいのさ、貴様らの動きを止める為にはな!」
手裏剣の打ちこまれた場所から小さな爆発が起きると、
五人のZXは、大きく膝をつき地面に十cm程めり込んだ。
「結城さんの開発した、新兵器グラビティボムだ、貴様らの体に二十倍の重力が働いているんだよ」
「くっ、貴様最初からこれを狙っていたんだな」黒いZXが動けない状態でもがいていた。
「今頃気づいても遅いさ、覚悟しろ!グラビトン.テリトリー発生装置始動!」
ZXは腰についている装置のスイッチを入れた。ZXの周囲を薄い光が包み込む。
「ZXキッーク!」
ZXは黄のZXにキックを放つと黄のZXは吹き飛ばされる。
連続して、
「ZX反転キッーク!!」
今度は緑のZXが吹き飛ばされる。爆音を残し粉々に砕け散る二体のZX。
「まずいな、アンカーを使って、重力場から離脱するぞ!」黒いZXが残りの二人に言った。
「了解!!」
残った三人のZXは、腕からアンカーを打ち出し重力場から離脱した。
「チィ、離脱したか」
「二人やられたか、仕方あるまい、動きを止めるぞ!」
「了解!!」
左右から青と白のZXがアンカーでZXの両腕を捕らえる。
「しまった、やはりこいつら速いぞ!」
黒いZXがZXめがけて手裏剣を投げる。間一髪、その手裏剣を叩き落す深紅の拳。
「ZX待たせたな!」2号が現れた。
一陣の疾風がZXを捕らえるワイヤーを引き裂く。
その疾風の先にはアマゾンライダーの姿があった。
「2号ライダー、アマゾンライダー、助かりました」
「これで、三対三だな」2号が言う。
「出来損ないの分際で、1対1なら勝てると思ってか!」黒いZXが吼える。
「当然勝つさ!2号、アマゾン、黒いやつは俺にやらせてくれ!」
2号、アマゾンはうなずくと、それぞれ青と白のZXへ踵を返し対峙する。
「俺様の相手は、初期型か?つまらんな!」青いZXは鼻をならした。
「その、奢った心が、多くの人たちを苦しめるのだ!」2号は青いZXに向かって言った。
「各自、リミッター解除!各個に撃破せよ!!」黒いZXが指示をだす。
「了解!!」
三人のZXの瞳がひときわまぶしく輝く。
「俺様の相手は、動きの素早いやつだったな、丁度いい。
 リミッター解除した、俺様のスピードに付いてこれるかな?」白いZXはアマゾンを相手していた。
白いZXの姿が、あまりの早さに全く見えなくなった。
アマゾンの周囲に鋭い風を斬る音が響くと、アマゾンの体に無数の傷が傷口から鮮血がほとばしる。
「ガッ、グルルルルル」アマゾンは膝を落とし苦痛に耐えている。
「ヘっヘっヘっ、リミッター解除すれば、貴様なんぞ、敵ではない!」
青いZXは2号に向かって言った。
青ZXの姿が、忽然と消えた。
「見えまい、高性能な工学迷彩だ。
 俺様の姿、貴様には見ることも触れることも出来まい、これが力の差と言うものだ!」
2号ライダーの体が不意に真後ろに弾け飛び、もんどりうって倒れる。
「クゥッ、こいつらの性能は半端じゃないぞ、ZX気をつけろ!」
「我らパーフェクトZXは、各人特化した性能があるんでな」黒いZXが得意げに言う。
「俺たちの体にも、特殊な性能、正義を守る力が熱い心がある!!」
「笑止!!そんなものでは我らを倒すことなどできん!」
「やってみるさ、貴様の能力は何だ!」
「我は、コマンダー。すべての能力が特化している!」
黒いZXの姿が、ZXの視界から消えた。同時にZXの体は真横に吹っ飛んだ。
「くっ、なんてパワーとスピードだ」
ZXは大きくジャンプするが、その背後に黒いZXがあった。
「プロトタイプでは話にならんのだよ!」
ZXは叩き落され辛うじて着地するが、ダメージは半端ではない。
「Jの力を借りても太刀打ちできないのか」
「ZX、アマゾン、ジャンゴじいさんとの約束を忘れたのか!」
「アマゾン、ジャンゴト、メシ、クウ!」
「約束したからには、ちゃんと帰らなきゃいけないね!」
「そうだ!俺たちには待っている友人がいるからな、このままやられる訳にはいかんぞ!」
「帰る?笑わせるぜ!貴様たちが帰るのはあの世だろうが!」青いZXがせせら笑った。
「言わせておけば!ウオ〜ォ〜〜〜〜」
ZXの瞳が眩く光る。2号、アマゾンも同じく瞳が眩く光る。
「この後に及んでまだあがく様だな、まあいいそろそろかたずけるぞ」
「了解!!」
三人のZXの姿が消えた。
「いいかZX、アマゾン、目で見ようと思うな、体で感じるんだ!
 こんな風にな!」
2号ライダーはふいに右手を前に出すと青色のZXの顔面にパンチを決めていた。
光学迷彩が解かれた青いZXは、
「グフッ…そんなばかな、貴様のような旧式のセンサーでは俺の姿を捉えることなど…」
2号ライダーのパンチが炸裂すると後方へ弾けとんだ。
「またパワーアップしていやがる、なぜ俺様の光学迷彩を見破ることが出来るんだ」
アマゾンも白いZXを捉えていた。
腕のカッターで白いZXの攻撃をかわし背後から肩口に噛み付いている。
「ガルゥウウウウ…」
「俺様のスピードについてこれる筈などないはずだ」
動揺を隠し切れない青と白のZX
「データー上、我らの方が性能は格段上だ、負けるはずなど無い!」
ZXにパンチを放ち悠然と構える黒いZX。
再度パンチを放つと、
「さっきも言ったろ俺たちには正義の心があるってな!」
ZXのクロスカウンターが黒いZXに命中するダメージは明らかに黒いZXの方が上だ。
「ガハッ…そんなはずは無い!ありえない事だ!」
2号ライダーは青いZXを抱え上げた。
「ライダーきりもみシュウート!!」
上空高く投げ飛ばされる青いZX。
2号はすかさず大ジャンプをし
「ライダーキィーック!」
爆音とともに砕け散る青いZX。
そしてアマゾンも背後から羽交い絞めにした白いZXの胸板を掻きむしり何度も噛み付く。
「グオォーーー」
断末魔の雄たけびとともにアマゾンのカッターが横一線に引かれると、
白いZXの頭部は胴体から離別した。
小刻みに痙攣する胴体を今度は真一文字にカッターが光ると爆音とともに絶命した。
「むう貴様ら、許してはおけん我だけでも貴様ら三人を倒す!」
黒いZXの体が更に激しく光る、しかし今度は三対一、黒いZXの方が分が悪い。
押され始める黒いZXはアマゾンのカッターが右腕を落とし2号のパンチが連続してヒットすると、
黒いZXはふらつき始めた。
「そろそろとどめだ、トウッ!ZXキィーック!!」
そのときZXにエネルギー弾が命中する。
「グハッ」
「ゼクロス!クッ」
2号とアマゾンにもエネルギー弾が、
「ゼクロスいや、村雨久しぶりだな」
「貴様は!美影…生きていたのか?」
そこには美影英介いやタイガーロイドの姿があった。
「いや死んださ、しかし裏切り者を許せなくてな地獄から舞い戻ってきたのよ」
「タイガーロイド俺様の獲物だ手を出すな!」黒いZXがうなった。
「ケッこうるさいやつだ、黙ってろ!"あのお方"の命令だ貴様を回収する!」
言い放つと、黒いZXの首をねじ切った。
「貴様仲間を!」2号が叫ぶ。
「ガルゥゥゥゥゥ」アマゾンがうなる。
「フッ今は貴様と遊んでいる暇は無いんでな、次に会うときが貴様の命日だ!」
そう言い放つとタイガーロイドはエネルギー弾を闇雲に撃ち、その姿を消した。
「逃がしたか、しかしなぜ美影が生き返ったんだ…」
「ZX、今はプラントの破壊が先だ、行くぞ!」
パーフェクトZXとの戦いで、満身創痍の三人ライダーだが、
その足は遺跡に向かって真っ直ぐに歩き出した。
遺跡まで戻るとまたもや戦闘員が現れたが、今度は数があまりにも少ない。
三人のライダーは軽くいなして遺跡の内部に侵入する。
「おかしいですね、あまりにも警備が手薄すぎる」ZXが不信がった。
「罠かもしれんが、プラントを破壊しなくてはいかんからな」2号は用心を促した。
辺りをうかがいながら奥へ進む三人のライダー。
その時、
『仮面ライダーの諸君!よく来てくれたが、ここで貴様たちは死ぬのだ!』
「その声は…まさか」2号が驚く。
『流石は歴戦の勇士だな、ショッカー時代からの縁だからな』
「やはり貴様か!大首領!」
『一文字隼人いや仮面ライダー2号、私は必ず帰ってくると言った筈だが?』
「本当に帰ってくるとは、しかしお前の好きにはさせん!」
『あと三十秒でこのプラントは大爆発を起こす、逃げ道は無いぞ。
それでは、さらばだ仮面ライダーの諸君!ハーッハッハッハッ』
大首領が喋り終えると、大きな爆音と振動が始まった。
「2号!今からでは脱出は不可能だ!」
「あきらめるな、とにかく脱出するぞ!」
走り出す三人のライダー、しかし爆音と振動はどんどん近づいてくる。
いよいよダメかと思われたとき、三人のライダーの体を緑色の光が包み込み光とともに消えた。
遺跡の外に緑色の光とともに三人のライダーが現れた。
「これは一体…」そのときJの声が
『今、手を貸せるのはこれくらいですが、
 いずれまたお会いするときまで指輪をお貸ししておきます。
 大地の守護があるように』
「J!貴方は一体何者なんだ!」ZXが問いかける。
『今は、まだすべてをお話するときではありません。いずれその時が来たら…』
そういい残すとJの気配は消えた。
「J、彼は一体なにものなんだ」2号がつぶやいた。
三人のライダーの背後に異形の戦士が現れた。
「まさかあの爆発から無傷で脱出するとはな」
「新手の怪人か、むう貴様が今回の黒幕か」ZXが怒鳴る。
「失敬な、このウォーティポーン様に向かってなんという口の聞き方。
 舐めてもらっては困る。キャンサーやパーフェクトZXとは違うのだから」
「ミンナ、ソウイウ、デモミンナヤラレル」アマゾンも言い返した。
「私の本当の姿を見てもそう言っていられるかな?」
言い放つとウォーティポーンの姿がさらに変わる。
「なんとゆう大きさだ、優に二十mはあるぞ」2号が巨大化したウォーティポーンを見上げた。
「でかけりゃいいってわけじゃないでしょ」ZXが軽口を叩いた。
「減らず口もそこまでだ、喰らえ」
体長二十mはあろうかというウォーティポーンの完全変身体はすでに怪人の域を超え怪獣だ。
その尻尾の一撃を辛うじてかわす三人のライダー。
「あんなものを食らったら、ただでは済まんな」2号が言う。
ジャンプでよけながら手裏剣を放つZX。しかし硬い鱗に阻まれ跳ね返される。
アマゾンの腕のカッターも歯が立たない。
「貴様たち如きでは、この俺様は倒せん!」
尻尾の先が七本に分かれそれぞれが三人のライダーを狙う。
あっという間に捕まってしまった三人のライダー。
「クッ…凄まじい力だ」
「このままじゃやばいですね…」
「ガルゥゥゥゥ」
じりじりと海に引き寄せられる三人のライダー。
その先には、海蛇タイプの戦闘員が待ち受けている。
「海に引きずり込まれたらまずいぞ、何とか振りほどくんだ!」
2号の叫びもむなしく海中へ引きずり込まれる三人のライダー。
海中には二十体あまりの海蛇戦闘員が待ち受けている。
水中に適した改造を受けている戦闘員はかなり厄介な敵だ。
「くっこんなときに敬介がいてくれたら」
2号がつぶやくが愚痴にしかならない。
戦闘員とウォーティポーンにいいようにもてあそばれる三人のライダー。
そのときアマゾンの瞳が眩しく輝く。
「エッ!ガガの腕輪を使う…Jの指輪から聞こえた!」
ZXはアマゾンからのテレパシーを受信した。
「ギギとガガの腕輪でスーパー大切断だな、任せたぞアマゾン!」2号が了解した。
アマゾンがギギとガガの腕輪をあわせると、
腕と足のカッターが大きくなりアマゾンを捕らえていた尻尾を粉砕する。
間髪入れず2号とZXを救い出す。
「水中では不利だ、何とか海上へ出るぞ」
ZXが2号とアマゾンの手をつかみ、足のブースターで海中から勢いよく空高く飛び上がる。
「ガルゥ!オレニ、フタリノエネルギー、クレ。ジェイガオシエテクレタ」
「いいだろう、アマゾン任せたぞ!」
ZXと2号はアマゾンにエネルギーを預けた。
アマゾンの体が真っ白に光るとZXと2号ライダーから離れ、
頭から海上のウォーティポーンに急降下してゆく。
すかさず触手で捕らえるウォーティポーン。
何本もの触手にうずもれてゆくアマゾン。
最後のエネルギーを振り絞りアマゾンを助ける2号とZX。
アマゾンを絡めとっている触手の中からひときわ眩しい閃光が走る。
「スーパー大切斬!!」
触手の中から閃光に包まれたアマゾンのカッターが飛び出したスーパー大切断の数倍の大きさだ。
手のカッターも足のカッターもそして背びれまでもがティポーンの触手を切り刻んでゆく。
「グゥオーなんとゆう力だ!データーにない力だ」
すかさず2号とZXも最後の力を振り絞って攻撃をかけた。
「ライダーキィーック!!」
「ZXキィーック!!」
とどめはアマゾンだ。
「スーパー大切斬!!」
粉々に砕け散るウォーティポーン。
「やりましたね」
「ああ、何とか倒したな、しかしアマゾンさっきの技は何だ?」
「ワカラナイ、ジェイガオシエテクレタ。
 ギギトガガトジェイノチカラトミンナノチカラ、アワセルトデキタ」
「そうか、J、何者なんだ」
アマゾンがひざを落とし座り込む
「どうしたんですか?」
「大丈夫か?かなりのエネルギーを消耗したんだろう」
「チガウ、ハ、ハラヘッタ」
一同は顔を見合わせた。

港の酒場。カウンターの隅にジャンゴの姿があった。
「じいさん、待ってたって帰ってきやしないよ」ウエイトレスがジャンゴに声を掛けた。
「わかっちゃいるさ、わかっちゃいるが信じてみたいんだ、あいつらのあの目を」
ウエイトレスは無言で肩をすくめた。
扉が開く。
ウエイトレスが扉の方に向き直ると
「いらっし…」
扉の前にの人物を見てウエイトレスが目を丸くした。
「じいさん、待ち人だよ」
ウエイトレスがジャンゴの方をぽんとたたく。
振り返るジャンゴそこには三人の姿があった。
「お言葉に甘えて飯をご馳走に来ましたよ、ジャンゴさん」一文字が笑いかけた。
「目いっぱい食っちゃいますよ」村雨も微笑んでいた。
「ハラヘッタ…チカラガデナイ」アマゾンは腹ペコの顔をしていた。
満面の笑みを浮かべて四人は再会した。