- 第4話 -

「314km/h  目的地=千代田区大船公園=まで0分6秒」

G7の乗るグライドチェイサーの車載モニター、
グライドチェイサーは自動運転モードからマニュアルモードに切り替えられ、
現場までの最後の直線に入っていた。
モニターでは赤いブレーキングランプの点滅。
時速300キロを越えた走行では優れた制動力をもつグライドチェイサーのブレーキであっても
停車までに相当な距離を必要とするため、制動のための適正な距離でブレーキングランプが点滅する。

滑り込むように大船公園に到着したG7。

「こちらG7、現場大船公園に到着しました!」
「よーし、がんばりなさい古東君、
 G7戦闘オペレーション開始!」
「了解!」
G7はグライドチェイサーからGM-01L、GM-01Rを取り出し、
GM-01Rを手に、GM-01Lを腿のアジャスターに装着した。
GM-01Rを顔の位置で構え、慎重に足をすすめるG7、大船公園は無気味なまでの静寂につつまれている。
噴水の音と木の芽を啄ばむ鳥の声、辺りの静けさにより大きく聞こえる。
いつまでも続きそうな静寂、そんな静けさから一転、

「きゃぁーーーー!」

女性の悲鳴、近い、新生物は近くにいる。

「古東君、急いで!」

声の方向へ全力疾走するG7、草むらから飛び出してきた女性を救出に向かう。

「きゃー、離して! 近寄らないで!」
「え? 警察です、安心してください!」
救出するために女性の前に立ったのに激しく拒否されてしまったことが分からない。
女性は顔を小刻みに振り、身体も震えている。
「ぎゃぁーーー!」
眼前の女性がさらに叫んだ。
G7の背後からの殺気、G7は振り向きざまにGM-01Rの銃口を向けた。
「!」
G7の動きが止まった。
その瞬間、GM-01Rをはじかれ、腹部に大きな衝撃を受けた。
「くっ!」
「なんなのこれは!」
Gトレーラーのモニターを見て小沢が立ち上がった。
腹部に攻撃を受けたG7は姿勢を崩しながらGトレーラーに指示を仰いだ。
「小沢さん! どうすれば・・・」
「とにかく女性を守りなさい! そいつは一般市民を狙ってるの、悪いヤツよ!
 見た目なんかどうでもいいの、闘いなさい!」
「り、了解!」
GM-01Lを手にしたG7が発砲を始めた。
弾丸は軽微な金属音ではじかれる。
漆黒のロボット、いやロボットではない、肩で大きく息をしているその姿は人間が中に入っている。
顔の部分の大きな円形の窓の奥にはスモークグラスで見えにくいが人間の顔が確認できる。
「くっ、ぜんぜん効かない!」
G7は腰を落とし、女性を守りながら発砲を続けた。
GM-01Lの銃弾は残りわずかになっている。
「GM-01L、弾数残りわずか!」

「なんなんだあれは!氷川!どういうことだ!」
バイクで涼が現場に駆けつけた。
すぐ後をおって氷川も到着、
「ロボット? いや、ロボットじゃない、もしや」
『氷川君、聞こえる?! もしかしてあれがゼロシステムなんじゃないの?』
車の内線から小沢の声が氷川の声をかき消すように響く。
「ゼロシステムだと? お前たちと何か関係あるのか!?」
驚きを隠せない涼が氷川に訊く。
「わかりません、とにかく今はあのロボットを倒すのが先決です!」
氷川の言葉に涼の返事はない、涼は真っ直ぐにロボットの方へ走っていった。
これが涼の返事だ。

「 変 身 ! 」

涼を包み込む光の中からもうひとつの影が涼に重なる。
涼の姿は次第に深緑の戦士にとけこんでいく。

「ウォォォーーーーー!」
無気味なまでの雄叫びを上げるその戦士、ギルス。

ジリジリとG7に近付くロボットの間合いに入り、一撃を入れる。
感情の爆発、ギルスは三発、四発とその拳をロボットの腹部へ叩きこむ。
動きのなくなったロボットから一旦遠ざかり、とどめの一撃、
ヒールクロウをくらわそうと走り出したその瞬間、後ろからギルスに何者かが飛びついた。

「や、やめ ろ 」
眼前の漆黒のロボットと全く同じロボットがギルスに飛びつき、ギルスの身体を締めつけながら言った。
ロボットの腕はみるみるギルスの腕に食い込む。
ギルス負けじと脇を開けようとしたその時、 

バキッ!

ロボットの動きが突然止まった。

「大丈夫ですか!葦原さん!」
崩れ落ちるロボットの影から輝く金色の角。
「つ、津上! お前、なぜここに!」
「あ! 後ろ、危ない!」
アギトのとっさの声に間一髪、ギルスは残るもう一体のロボットの攻撃をかわし、
手首から伸びるギルスクロウで喉を一突きした。
ロボットは音も立てずに崩れ落ちた。
中に人間が入っているとは思えない崩れ方、現場に到着したGトレーラーから小沢が走り寄ってくる。

プシュューーーン

ロボットのマスクを取り外した小沢が中に入っている人間をみて大きな声を上げた。

「なんなのこれは! これもクローン人間だわ!
 いったいどうなってるの、しかもこんなに痩せ細って・・・」
「とにかく小沢さん、すぐに本庁に戻ってこのクローン人間の検査を!」
尾室の言葉に小沢は一呼吸おいて言った。
「そうね、でも検査じゃないわね、検死よ。
 もう死んでるわ。」

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