- 第5話 -

漆黒のロボットの中から現れたクローン人間と思われる容疑者。
すでに死亡している容疑者をGトレーラーで本庁まで搬送する。

「じゃあ、氷川君、先に行ってるわね。
 津上君にえっと・・・」
「葦原涼です。」
「あ、そうそう、葦原君、ご苦労様。
 またお願いすることがあるかもしれないけどよろしくね。」
笑顔でGトレーラーを見送る翔一。
「おい、津上、どうしてお前がここにいるんだ?
 お前には分からないんじゃないのか。」
「真魚ちゃんから連絡があったんです。とにかく大船公園に行けって。
 すっごく慌ててたからただ事じゃないと思って来てみたら、こんなことになってるなんて。」
ついさっきまでの闘いがウソのようにケロッとした表情の翔一。
「なるほどな。そうか、やっぱりお前には分からないんだな。
 俺は最近、今回と同じような衝動をよく感じている。
 なにが起こっているのかは分からないがいい予感はしないな。
 氷川、今回のあいつのほかにも何か起こっているのか?」
「ええ、報道規制をしている情報なのですが、
 葦原さんと津上さんだけにはお話しておかないといけませんね。
 最近連続する惨殺事件にはクローン人間が関係しているようなんです。
 また、今回の一件はさらにロボットを利用した犯行、正直なところ分からないことばかりです。」
「氷川、クローン人間とはいいながらもあのロボットの強さは異常だ、
 人の命を狙う以上、俺たちの力がまた必要なのかもしれないな。」
「そう言えば氷川さん、青いG3-Xみたいなのは何ですか?
 もう氷川さんは装着しないんですか?」
思い出したかのように翔一が氷川に尋ねた。
「ええ、あれはG7システム、G3-Xの流れを汲む後継機です。
 紹介します、装着員は古東良介です。」
涼の後ろからG7のマスクを外してとぼとぼと歩いてくる古東のほうを見て言った。
「え、あ、私、G7ユニット、古東良介です、先程はありがとうございました。ってあ!」
「何だ氷川、こいつがG7の装着員なのか?」
「こら!またしても氷川部長に向かって・・・!」
古東VS涼の第二ラウンドが始まるかというその時、
「古東さん、はじめまして、津上翔一です。」
古東と涼の雰囲気を知ってか知らずかあいかわらず笑顔の翔一。
「はぁ、どうも・・・」
「氷川さん、よかったですねー、氷川さんにも部下が出来て!
 ちょっとは器用になったんですね。」
「き、器用って津上さん・・・」
ムッとした氷川を気にせずに古東に話しかける
「古東さん、Gトレーラー帰っちゃいましたよ?」
「え!」
本来、グライドチェイサーとともにGトレーラーに戻るべきなのだが小沢はすでに帰ってしまっている。
G7で思うような活躍ができず、沈んだ気分の古東をさらに沈める。
「古東、グライドチェイサーで帰りなさい、もちろんマスク着用だぞ」
もちろん交通ルールは厳守、バイクはヘルメット着用が義務である。
「はい・・・」
「では私たちも、津上さん、葦原さん、またご連絡差し上げます。」

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- Gトレーラー

「氷川君、検死の結果がでたわよ。
 犯人は極度の衰弱死、しかもあり得ないスピードでの衰弱死よ。」
「どういうことですか?」
小沢の言っていることを理解しようとするがどうも頭に入ってこない。
「どうもこうもないわよ、私がどういうことか聞きたいくらいだわ。
 考えられない衰弱で死んでいる、
 理由はともかく、現実、あり得ないことが起こっているのよ。」
氷川の困惑と同じように小沢も困惑を隠せない。
「中の人間の衰弱死だけで決めつけることはできないけど、ゼロシステムはおそらく殺人システムね。」
Gトレーラー内の静けさを破るように小沢が切り出す。
「え、それじゃあG4といっしょじゃないですか !?」
尾室の驚きも無理もない。
かつて警視庁時代に小沢澄子がG3と同時に開発した特殊強化装甲服G4は
装着員の命を奪ってしまうほど強力なシステムゆえ実戦配備を見送っていたところを
自衛隊の手により配備された「魔のシステム」である。
装着員の命を奪う、小沢の見解を聞いてかつての魔のシステムを思い出さずにはいられない。
「違うわ、G4はその能力が高すぎて結果的に装着者の命を奪うシステムだったけど、
 ゼロシステムは人間の命そのものをパワーにして動いているの。
 生命力をエネルギーにすることで短時間だけど爆発的なパワーを発揮すんじゃないかしら。」
「なるほど、まさに命を削って装着する、だから・・・」
「エネルギー源としてクローン人間を使ったのね。まさに生物兵器ね。
 まったく恐ろしいものを作ってくれたわね、いったいどこの誰なのかしら。」
「氷川さん、もしかしてそれも天本教授じゃないですよね?」
「わかりません、でもあたってみる価値はありますね、まだお話を聞いていませんし、
 なにか手がかりがあるかもしれませんから。」
「そうね、氷川君、天本教授と接触できたらすぐに報告してちょうだい。」
「はい。」
氷川は尾室と目を合わし、足早に尾室ともにGトレーラーをあとにした。

「あれ?あなたどうしたの?いつからここにいたの?」
小沢の目線の先にはうなだれた古東の姿。
「ずっとここにいましたよ・・・」
「どうしたのよ、元気ないわね、あなたの年ごろなんて元気くらいしか取り柄がないのに。
 特にあなたは元気だけでしょ?」
「あのー、いいですか?」
死んだ目で小沢を見つめる。
「なによ?」
「僕がG7で被害者を助けに入った時に嫌がられたじゃないですか、
 そんなに僕が頼りなかったんですかね?
 なにもあそこまで嫌がらないでもいいのにと思いまして・・・自信なくしちゃいますよ。」
「なーに言ってるの、避けて当然よ、
 ゼロシステムはおそらくG4の亜種、G3とは兄弟みたいなのシステムよ。
 G7もG3の流れをくんでいるんだから
 ゼロシステムとG7に似たような感情を持ったって別段おかしくないわね。
 まあ、正義のシステムも使い方を誤れば悪のシステムにだってなれるってことよ、
 あなたも気をつけなさい。」
古東の悩みもなんのその、軽く突っぱねる小沢。
「はい・・・でもホントにそれだけなんですかね?」
「なに言ってるのよ、自信持ちなさい、あなたは自身過剰なところが取り柄なんだから!」
結局小沢に言いくるめられたというか、言い負かされた古東であった。

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- 城西大学

「私、警視庁の氷川と申します。
 突然で申し訳ございませんが天本教授、すこしおうかがいしたいことがあるのですが。」
神妙な面持ちで氷川は天本教授に話しかけた。
後ろにはもちろん尾室の姿もある。
「警察の方ですか、どうされました?
 私にお答えできることなら何でも。」
「ありがとうございます。
 では単刀直入におうかがいいたしますが、教授はゼロシステムなる存在をご存知ですか?」
「なんですか、それは? ゼロシステムですか、聞いたこともありませんね。」
緊張を隠せない様子の天本教授、ただ警察に質問をされるだけでだれでも緊張はする。
「では教授のご専門の技術でクローン人間を作ることは出来るのでしょうか?」
「ええ、理論上は出来ますよ。
 ただ、法律もありますし、第一に生命倫理の問題もあります。
 クローン人間を作ることはもちろん研究者に許されざる行為ですよ。
 そう、まさに許されざる行為なんです。
 でもまたなぜクローン人間を?」
「いえ、申し訳ないです、現在調査中の一件でして、詳細をお知らせすることができないのです。
 お忙しいところ、ありがとうございました、参考になりました。」
あっさりと引き下がった氷川。
天本教授とのやりとりの中に何かを見つけたのだろうか、氷川は警視庁に戻った。

「小沢さん、尾室です、天本教授、ゼロシステムもクローン人間も知らないってことです。
 あ、あと氷川さんが天本教授にはもう一度接触する必要があるそうです。」
車を運転する氷川の横、助手席で尾室がGトレーラーの小沢のもとに無線で連絡をとった。
「わかったわ、詳しくはまたあとでね、氷川君ならやってくれるでしょ、期待してるわよ!」

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- 翌日

「小沢さん、風谷さんからの報告書が届きました。」
Gトレーラーに飛び込んでくる尾室。
「そんなに慌てなくてもいいじゃないの、どれ、見せてみなさい。」
「驚かないでくださいよ、身柄確保の容疑者もクローンだったんですよ!」
「もう!黙ってなさい、いま読んでるところなの!」

プシューーン

再びGトレーラーの扉が開いた。
G7装着員としてのトレーニングを終えた古東と氷川が戻ってきた。
「氷川部長、またトレーニング、お願いします。
 やっぱり人命を救うためのトレーニングって充実感がありますよね!」
「こらこら、そんな軽い気持ちではケガをするぞ。」
「ちょうどよかったわ、氷川君、これ報告書よ。」
小沢から報告書を受け取った氷川は言葉を失った。
「これは、またクローン人間なんですか!?」
「そうよ、彼女の透視能力での報告だから確かでしょう。
 それで、クローン人間の記憶には虐待の記憶があるみたいね。」
「そうですね、虐待というよりも迫害でしょうか、
 なんらかの意図があってのクローン人間の製造ですね。」
「なんらかの意図って、ゼロシステムの装着員としてじゃないんですか?」
古東がポツッともらした。
「あなた、たまにはいいこと言うわね、おそらくこのクローン人間もゼロシステムに関係あるわね。」
「二段階の記憶、中年男性、ロボット・・・、
 小沢さん、これ気になるんですが、この『中年男性』ってだれでしょう?
 しかもロボットって、これゼロシステムじゃないんですか?
 クローン人間の視界に写る人物ですから、
 この人物に接触できれば一連の事件やゼロシステムについての
 なんらかのヒントが得られるんじゃないですか?」
「そうね、尾室君、早速風谷さんに連絡をとってちょうだい。」
「はい、すぐに!」 

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